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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] AIソウル・サミット首脳セッション「AI安全性サミットを基礎として:革新的かつ包摂的な未来へ」におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長発言

[場所] ソウル/バーチャル
[年月日] 2024年5月21日
[出典] 国際連合広報センター(https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/50358/)
[備考] 
[全文] 

各国代表の方々、

このサミットを開催してくださった韓国と英国に感謝いたします。

英ブレッチリー・パークでの会議から7カ月足らずですが、私たちは人生を一変させるようなテクノロジーの進歩を目の当たりにしています…。

そして、偽情報から大規模な監視、さらに自律型致死兵器(LAWS)の出現の可能性に至るまで、生命を脅かす新たなリスクも目の当たりにしています。

人工知能(AI)システムは依然として、監視や説明責任をほぼ課されることなく展開されています。

私たちは、少数の人々だけがAIの力を制御するディストピア(暗黒郷)の未来に、夢遊状態のごとく進んでいくわけにはいかないのです…。

もっと悪ければ、それは、人間の理解を超えた不透明なアルゴリズムがAIを制御する未来です。

私たちにはルール、安全、普遍的な防護柵が必要です。

今私たちがどのように行動するかによって、私たちの時代が決定づけられるでしょう。

9月に開催される国連の「未来サミット」は、グローバルなAIガバナンスの基礎を築く機会となります。

また、昨年私が立ち上げた独立の「AIに関する諮問機関」は、包摂的で安全なAIのための優先事項を明確に定めています。

1つ目は、AIに関する科学的な国際パネルを創設することです。

政策立案者たちだけで、この未知の領域を航行することはできません。

普遍的で、異論の余地のない、最新の知識に導かれる必要があります。

2つ目に、私たちにはAIのガバナンスに関する国、地域、産業のレベルでの既存のイニシアチブをつなぐ、定期的かつ体系的な対話が必要です。

これは、国境や部門を越えて、ベストプラクティスを特定し、再現するのに役立つでしょう。

3つ目は、AIに関して共通の倫理と基準を策定することです。

アルゴリズムは、バイアスを減らし、差別を防ぎ、すべての人の基本的権利と尊厳を守るように設計されなければなりません。

基準を、そして規制を調和させることは、開発途上国の新興企業にとって特に重要です。

最後に4つ目として、開発途上国がその能力、特にコンピューティング・パワーを高め、AIガバナンスに参加するのを支援する、グローバルな財政面でのコミットメントが必要です。

デジタル格差が、AI格差となってはなりません。

資源や専門知識を集めることで、私たちは、不平等を減らし、持続可能な開発目標(SDGs)を前進させ、誰一人取り残さないようにするために、AIの力を活用できるのです。

私はまた、こうした取り組みを調整する機動性を備えた組織として、国連AIオフィスを創設するという諮問機関の提言を歓迎します。

各国代表の方々、友人の皆様、

国連総会は最近、米国の主導により、安全・安心で、信頼できるシステムを促進する、AIに関する初の決議案を採択しました。

また、中国が提案した、AIのための能力開発に関する別の決議案が、現在審議中です。

9月に開催される「未来サミット」で各国首脳によって採択される予定の「グローバル・デジタル・コンパクト」には、AIに関する国際協力のための具体的な提案が含まれています。

私はすべての人々に、これらの取り組みを支援するよう要請します。

AIは命を救い、雇用を創出し、前進を育み、革新的で包摂的な未来に貢献することができます。

人権、人の尊厳、そして人間の介在を、前面かつ中心に据えた、AIのための革新的で包摂的なグローバル・ガバナンス・ツールを構築しようではありませんか。

ありがとうございました。