データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] サイバー・イニシアチブ東京2024 藤井外務副大臣ビデオ・メッセージ

[場所] 
[年月日] 2024年11月27日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1 冒頭

●御列席の皆様、こんにちは。外務副大臣の藤井比早之です。本日は、サイバーセキュリティ分野における著名な国際会議である「サイバー・イニシアチブ東京2024」にお招きいただき、ありがとうございます。

●この機会に、国内外のサイバーセキュリティ関係者の間で、産官学の垣根を越えた活発な議論や交流が行われることを期待しております。

2 情勢認識

●情報通信技術の発展やデジタル化の流れを受けて、サイバー空間は社会全体のあらゆる活動に不可欠な基盤となっております。

●そのため、サイバー空間を自由、公正かつ安全なものとすることは、経済社会活動、そして国家安全保障の観点から極めて重要です。

●しかし、サイバー空間の利用の広がりと同時に、国家によるサイバー攻撃を始め、サイバー攻撃の脅威も急速に増大しております。

●特に、発電所などの重要インフラの破壊、選挙への干渉、先端技術に関する情報の窃取、ランサムウェア攻撃といった事案が日々発生し、対応の強化が急務となっております。

3 サイバー外交の推進

●この厳しい状況を踏まえ、外務省では、「いかなる国も一国だけではサイバーセキュリティを確保することはできない」との認識の下、国際社会と連携してサイバーセキュリティを強化すべく、主に3つの取組を柱として「サイバー外交」を推進しております。

(①サイバー攻撃の抑止)

●1つめの柱は、サイバー攻撃の抑止です。通常の物理的な攻撃と比べると、サイバー空間では攻撃の実施者の特定が難しいという特徴があります。攻撃側に有利な構図が、サイバー攻撃のコストを下げています。

●したがって、攻撃者の匿名性を失わせることができれば、攻撃のコストを高め、サイバー攻撃の抑止につながります。

●日本政府として、同盟国・同志国と連携して攻撃者を特定し、その内容を公表する、いわゆる「パブリック・アトリビューション」といわれる手法の積極的な活用に、関係省庁と連携して取り組んでいます。

(②サイバー空間におけるルール形成)

●2つめの柱は、サイバー空間における「法の支配」を国際社会全体で推進していくことです。

●サイバー空間は国境を越えて広がっているため、国際社会全体で共通の行動規範を共有し、遵守することが、サイバー空間の安全確保に必要です。

●この観点から、2004年に国連で政府の専門家グループによる会議枠組みが設置されるなど、いかなる国際法や規範がサイバー空間に適用されるべきかが近年議論されてきました。

●日本としても引き続き、国際社会における議論に積極的に貢献していくとともに、共有された規範が国際社会全体で実践されていくよう、各国政府や様々なステークホルダーと連携してまいります。

(③途上国支援)

●3つめの柱は、途上国のサイバーセキュリティ能力の強化に向けた支援です。

●サイバー空間においては、一部の国の脆弱性が日本を含む世界全体のリスクにつながります。この観点から、日本にとって途上国を支援することは、自国のサイバーセキュリティにとっても重要な取組です。

●日本は、タイ・バンコクに設置した能力構築センターを拠点として、これまでASEAN諸国に対して支援事業を展開してまいりました。

●引き続き、同盟国・同志国や世界銀行などの国際機関とも連携して、インド太平洋地域を中心に、トレーニングの実施や知見・経験の提供を行っていきます。

結語

●今申し上げたようなサイバー外交の取組を効果的に推進できるよう、欧米諸国や豪州などとの二国間のサイバー協議や、日米韓、日米豪印クアッド、日米比などの枠組みを活用し、情報共有や協力の具体化を行っていきます。

●他方で、こうした国際連携は外交当局だけで実現できるものではありません。

●関係省庁と連携し政府一体となって取り組むとともに、民間企業や専門家、研究機関などの様々なステークホルダーの知見や能力をお借りして、日本全体でサイバーセキュリティを推進していくことが、強化していくことが、何よりも重要です。

●この観点から、この会議の開催を心から歓迎するとともに、御出席の皆様との更なる協力への期待を述べさせていただき、私からの御挨拶の結びとさせていただきます。

●御清聴ありがとうございました。