データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウルグァイ・ラウンドに関するAPEC宣言

[場所] シアトル
[年月日] 1993年11月19日
[出典] 外交青書37号,231ー233頁.
[備考] 仮訳
[全文]

ウルグァイ・ラウンドを12月15日までに成功裡に終結させることは世界の成長及び繁栄に不可欠な貢献であり,APEC閣僚は,そのための緊急の行動を呼びかける。APEC諸国・地域は,強化された多角的貿易体制が,APEC域内における貿易拡大のイニシアティブの基礎となることを確信する。

意思表明やコミットメントを行う時期は,いまや大幅に過ぎている。工業品及び農産品の市場アクセス並びにサービス分野における実質的な成果を確保するために,そして完成された「最終合意文書」案によってもたらされる強化されたルール及び規律のシステムを確保するために,具体的な行動が必要となっている。APEC諸国・地域は,残り少ない日々,この課題を達成するため,自らの役割を果たす用意がある。我々の貢献の内容は,具体的な経済的関心,及び,開発の多様な到達水準を反映すべきである。

我々は,世界人口の40パーセント弱及び世界貿易の40パーセントを占め、世界の中で最も経済的に強力で且つダイナミックな地域として,共同で,必要とされているジュネーブでの意見の一致を形成する手助けをすることにより,ラウンドが成功することを確保する決意である。したがって

1.我々は,ウルグァイ・ラウンドの交渉参加国・地域が,ジュネーブにおいて,市場アクセスのオファーを改善するよう求める。交渉に参加しているAPEC諸国・地域は,貿易パートナー諸国より同等のコミットメントがあることを条件に、また,全ての分野におけるグローバルで且つ均衡のとれた成果の中で,以下に関し,最大限可能な範囲で参加する用意がある。

(a)先に四極間で合意された分野において,関税及び非関税障壁の相互撤廃、引下げ,乃至ハーモニゼーションをオファーすること

(b)APEC諸国・地域にとり特に重要な追加的分野において,関税及び非関税障壁の相互撤廃,引下げ乃至ハーモニゼーションをオファーすること

(c)APEC諸国・地域が特に関心を有するモノ及びサービスについて市場アクセスの機会を拡大し且つ確保するため,我々の個々の二国間交渉の作業を加速すること

2.我々は,農業が,引き続き,グローバルで且つ均衡のとれた成果のための不可欠な要素であることを確保する。ブレア・ハウス合意は,既に「最終合意文書」案における農業テキストを弱めるものとなっており,この成果を更に弱めるようないかなる努力も,農業に関する総体として受入可能な成果を確保する能力を危うくする。成功裡の成果を得るためには,加工品を含む,農業貿易の自由化に関する可能な限り強力なパッケージも必要である。

3.我々は,サービスに関し,既に交渉されたルールの強力な枠組みに伴うべき漸進的な自由化のプロセスを開始するため,最恵国待遇からの免除を最小限にしつつ,主要な分野における各々のオファーを,最大限可能な範囲で,レビューし改善することに合意する。

4.我々は,「最終合意文書」案が,合意に基づく修正を最小限に止めつつ,最終合意の基礎を提供しなければならないことに合意する。このことは,ルール及び規律の多角的枠組みの強化,及び,紛争を解決するための有効な仕組みをもたらす。