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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] APEC非公式首脳会議「APEC首脳の経済展望に関する声明」

[場所] シアトル
[年月日] 1993年11月20日
[出典] 外交青書37号,237ー239頁.
[備考] 仮訳
[全文]

我々は,アジア・太平洋経済協力(APEC)というフォーラムの経済首脳が集まる初めての会議を開催した。冷戦後の時代において我々は,多様性に富む我々の経済の活力を活かし,協力を強化し,繁栄を促進するようなアジア・太平洋の新しい経済基盤を作る好機を有している。

我々の会議は,国際情勢の中でアジア・太平洋としての新たな声が出現していることを反映している。21世紀を迎える準備をするにあたり,世界の人口の4割,そのGNPの5割を占める我々の活力溢れる地域は,世界経済にとって重要な役割を果たし,経済成長と貿易拡大の途を率先していく。

我々の経済成長は,多角的開放貿易体制を基礎としてきている。このため,我々は12月15日までにウルグァイ・ラウンドを成功裡に妥結するため最大限努力することを誓約する。アジア・太平洋地域は,ジュネーブにおいて可能な限り力強い成果をもたらすため,率先して具体的な措置をとっていく決意である。強化されたGATT体制にAPEC経済が一層参加していくことも,地域協力を更に促進する。

我々の成功は,変化する状況に対する我々の社会の適応能力の賜であった。我々の経済は相互依存の方向に進んでおり,我々の間で一体感が育まれつつある。我々は,国民のための安定かつ繁栄した未来に対するコミットメントについて団結している。

我々は,我々の経済的相互依存関係及び経済的多様性を認識しつつ,アジア・太平洋経済の地域社会(a community of Asia-Pacific economies)の一つの姿を描いている。この社会においては,

・開放性とパートナーシップの精神の深まりにより,急速に変化する地域及び世界経済の挑戦に対し,協力的な解決方法を見出していくことが可能となる,

・我々は,活力溢れる経済成長が持続し,世界経済の拡大に貢献し,開放的な国際貿易体制を支えるような人口20億の巨大な市場である,

・我々は,我々相互の貿易が域内及び世界との間で増加し,我々の間で,物,サービス,資本及び投資が自由に移動するため貿易と投資に対する障壁を引き続き削減する,

・我々国民は,より高い収入,高度な熟練技術を必要とし且つ高賃金の労働,及び,より頻繁な移動を通じて,経済成長がもたらす利益を分かち合う,

・教育及び訓練の改善は識字率を高め,経済成長の維持に必要な技術を提供し芸術と科学に貢献する考え方の共有を奨励する,

・電気通信及び輸送手段の発達は域内における時間と距離による壁を更に縮め,我々の経済を結び付け,その結果,物や人は,迅速かつ効率的に移動する,

・持続可能な成長を確保し,我々の国民に,より安全な未来を与えるために,空気,水及び緑地の質を保全し,エネルギー資源及び再生可能な資源を管理することにより,我々をとりまく環境は改善される。

我々は,この展望は,我々がこれを確実なものとするために積極的に協力することによって初めて実現することを認識している。我々は成功することを確信している。我々が共有するこの展望を,我々の地域の未来を発展させていくための指針とする考えである。

我々は,この地域に目に見える経済的利益をもたらすためのフォーラムとしてのAPECの引き続いての発展を支援していくことを改めて確認する。我々は,APECが,その経済対話を強化し,個々の作業プロジェクトを推進することを促す。我々の経済的活力を駆り立ててきた企業家精神と市場指向型政策は,APEC内部において引き続き育まれていく。

我々は,アジア・太平洋において自由な貿易を実現し,世界貿易の自由化を進め,この長期的な目標に向けて進んでいくために具体的な計画を打ち出していくという,APEC賢人会議の報告で提示されている挑戦を歓迎する。我々は,APECが,ウルグアイ・ラウンドの成果をさらに深化・拡大し,域内の貿易と投資の自由化を強化し,基準などの分野を含む域内協力を促進することを目的とした作業にとりかかるよう求める。

我々は,マクロ経済の動きや資本の流れを含む広範な経済問題を協議するため,APEC蔵相会合を開催することに合意する。我々は,このような議論がこの地域のインフレ無き成長を確保し,投資やインフラ整備に資金を調達し,資本市場の発展を促進するといったこの地域が直面するいくつかの挑戦に取り組む上で役立つと信ずる。

我々は,経済界の指導者に対し,域内貿易・投資を促進し,域内全般に亘るビジネス・ネットワークの更なる発展を奨励するため,APECが取り組むべき問題を特定することを目的とする太平洋ビジネス・フォーラムを創設するよう求める。我々はまた,APECに対し,中小企業に関する政策対話を強化するよう求める。

我々は,高等教育における地域協力を発展させ,主要な地域経済問題を検討し,労働者の技能を改善し,文化及び知的面での交流を促進し,労働力の流動性を高め,そして我々の地域の多様性に対する理解を醸成するために,APEC教育計画を創設し,もって我々の未来の世代に対する投資を行うことに合意する。我々は,APECが人材の養成,経営技術及び技能の交流の分野における相互の協力を促進するため,APECビジネス・ボランティアー計画を作ることで合意した。

APECのメンバーとして,我々は,国民のために安定,安全保障及び繁栄を実現するという共通の展望に基いて,我々の地域社会の精神を深めることにコミットしている。

       APEC経済首脳

       シアトル,ワシントン州

    1993年11月20日