[文書名] APEC非公式首脳会議の際の内外記者会見における細川内閣総理大臣の冒頭発言
一,本日の首脳会議は,シアトル沖合いのブレイク島にて,午前九時半過ぎから,途中にワーキングランチを挟み約六時間にわたり行われ,先ほど終了しました。
二,会議には三議題ありました。それは,(一)「二十一世紀に向けてのアジア太平洋地域の挑戦と機会」(二)「各メンバーが取り組むべき優先課題」(三)「目標達成のための手段」でしたが,会議においては,各議題を一体として議論しました。その結果,とりまとめられた未来のアジア太平洋地域社会の経済の発展の指針が,先ほど発表された「APEC首脳の経済展望に関する声明」であります。
三,議論においては,
(一)各首脳より一様に,アジア太平洋地域の世界経済における重要性の高まりにつき発言があり,今後の発展を確保するに当たっての自由貿易の重要性,そのためにウルグアイ・ラウンドを十二月十五日までに成功裡に妥結する必要性が強調されました。
(二)他方,インフラ整備,人材育成,エネルギー,環境といった問題を克服する必要性が指摘され,APECを中心に幅広い協力を進めることにつき意見の一致がありました。
(三)また,APECは開かれたものであるべきことにつき共通の認識が示されました。
(四)その他,アジア太平洋地域における中核的関係は日本・米国・中国間の関係であり,三国間の関係が地域全体に大きな影響をもつ,順調な日米関係が重要であるとの発言がありました。
(五)更に,各首脳より,共通の関心事項として,国内経済動向及び政治経済改革につき説明がありました。
四,私からは,アジアに位置する先進民主主義国としての立場及び昨日当地に到着後の各国首脳との会談の結果を踏まえて,
(一)まず,APECでの協力の在り方として,
(イ)多様性の尊重と協力の漸新的推進,
(ロ)交渉ではなく協議を通じての共通認識の形成及び共通目標の追求,
(ハ)GATTとの整合性の確保,
(ニ)「開かれた地域協力」の追求,及び
(ホ)域外との一層の意思疎通,
の諸点を強調しました。
(二)また,取り組むべき課題として,インフラ整備,人材育成,エネルギー,環境といった問題を克服していく必要性を挙げ,我が国の役割として,説明しました。
五,昨日の晩餐会以降,今回の会議への参加首脳は,ほぼ一日にわたり行動を共にしましたが,和気合々とした雰囲気の中で,個人的友好・信頼関係を築くことができました。
六,全体の印象,評価として,発足以来四年目を迎えたAPECが着実に進展しつつあることを実感いたしました。
また,今回の会議は,我々アジア太平洋地域の指導者が,今後この地域をより一層繁栄させ,国際社会に一層貢献するものとしていくための共通認識を醸成し,一体感を強めていく上で何にもまして貴重な機会であったと思います。
七,また,今回の会合に先立って,時間の許す限り他のAPECメンバーの首脳レベルとの意見交換を行いました。
(一)クリントン大統領とは,日米両国において,それぞれ,政治改革,NAFTAという主要な政治課題に前進が見られたことを弾みとして,両国間のパートナーシップを更に強化させようという意欲に溢れた会談を行うことができました。今回合意された明年二月の首脳会談に向けて,日米間の協調を一層促進していきたいと思います。
(二)江沢民中国国家主席とは初めての会談を行い,新たな段階を迎えた日中関係の在り方につき,双方が共通認識できたことは有益でありました。
八,ここで私は,この地域の歴史の新たな一ページを記すこの会合の実現の労をとられ,卓越した議事運営を行われたクリントン大統領に心からの敬意と感謝の念を表したいと思います。そして,最後になりましたが,膨大な準備にも拘わらず素晴らしい会合運営を成功させた米国政府の関係者,そして,我々に心温まるもてなしを与えてくださったワシントン州,シアトル市の関係者及び市民の皆様に心からの謝意をお伝えします。