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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア太平洋経済協力(APEC)非公式首脳会議,インフラストラクチャー整備官民協力増進のためのヴァンクーヴァー・フレームワーク

[場所] ヴァンクーヴァー
[年月日] 1997年11月25日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 経済面、環境面及び社会面の目標を満たすためにAPEC地域が必要としているインフラストラクチャーを整備し、管理するためには、公的部門と民間部門との間のパートナーシップの強化が必要である。この目的のため、われわれは、次のことを宣言する。

自主的原則

 われわれは、大蔵大臣によって策定された次に掲げる「インフラストラクチャー整備への民間部門の参加促進のための自主的原則」を再確認する。

(i)健全なマクロ経済環境を確立し、維持すること。

(ii)高水準の投資家保護を提供するための安定的かつ透明性の高い法的枠組み及び規制制度を確立すること。

(iii)インフラストラクチャー・サービスの競争的かつ効率的な提供を、適当な場合には、促進する部門別政策を採用すること。

(iv)国内の金融資本市場を拡充し、深化するための努力を加速することにより、インフラストラクチャーを投資に必要な長期資本の利用可能性を増進すること。

資金供与及び投資

(v)われわれは、技術協力を通じた健全なフレームワーク政策を助長すること。インフラストラクチャー整備のための直接的な金融支援の提供を継続しつつ、民間資金の流れを促進すること、並びにインフラストラクチャー・プロジェクトに関する長期の資金調達の必要性に対処するための革新的な金融メカニズムを開発することを含め、国際金融機関がインフラストラクチャー整備におけるメンバー自身の努力を触媒的役割を果たし、支援するよう大蔵大臣が要請したことを再確認する。

(vi)われわれは、大蔵大臣に対し、国際金融機関及び民間部門と協力して国内の金融・資本市場の発展を促進するためのセブで打ち出された具体的なイニシアティブを引き続き実施するよう奨励する。この点に関し、われわれは、ABACが留意したとおり、大規模なインフラストラクチャー・プロジェクトへの民間投資を増進する資産担保証券のための市場を含む堅固で流動性の高い国内債券市場の整備を促進するため、民間部門の金融専門家並びにリスク保証及び投資格付の提供者と引き続き協力していくよう大蔵大臣に対して奨励する。

(vii)われわれは、民間部門の参加者にとってプロジェクト毎のインフラストラクチャー投資の魅力を高めるために参加輸出信用機関(訳注:日本の場合、貿易保険機関を指す。)・輸出金融機関により署名された相互協力取決めを歓迎する。

能力の向上

 能力の向上は、民間部門が支援することができる経済的に実現可能なインフラストラクチャー・プロジェクトの整備を加速するための鍵である。この目的のため、われわれは、次の分野における行動の必要性を確認する。

(viii)インフラストラクチャーの計画、開発、管理、利用及び廃棄のリサイクルの各段階における最新の手法の活用を促進すること。

(ix)民間投資家を取り扱う公的機関においてインフラストラクチャー整備に携わる政府関係者が適切な専門的知見及びインフラストラクチャー投資に対する商業的アプローチについての理解を得るため、並びに民間の間のパートナーシップ及び官民パートナーシップを通じたものを含む技術面での協力の促進により、国内の能力を養成すること。

(x)民間部門及び公的部門の能力の最も効果的な利用を促進することを含め、リスクの低減及び管理における最新の手法の活用を促進すること。

(xi)入札及び評価の手続を含め、透明で、予測可能で説明がつく手続を促進するとともに、国際競争入札の活用を奨励すること。

(xii)インフラストラクチャー施設の設計及び運営に持続可能で衡平な開発の原則を盛り込むことにより、インフラストラクチャーが、経済面、環境面及び社会面の目標の達成を支援することを確保すること。

情報及び協議

 われわれは、民間部門、特に中小企業のインフラストラクチャー・プロジェクトへの参加を支援するに当たり、情報の重要性を認識するとともに、情報インフラストラクチャー、統合・インテリジェント運輸システム、経済面及び環境面で持続可能なエネルギー・インフラストラクチャー、持続可能な都市並びに地方の統合及び多様化を支援するためのインフラストラクチャーなどの主要部門において達成された成果に依拠して一般を幅広く関与させることにつきコミットする。

 これらの目的のため、われわれは、次のことを閣僚に要請する。

(xiii)中小企業を含む可能な限り広範囲の企業によるインフラストラクチャー投資への参加を支援するため、要請の有無にかかわらず、情報の入手可能性を改善すること。

(xiv)計画されたインフラストラクチャーがわれわれの共同体のニーズを満たすことを確保するための効果的な協議を助長すること。

 われわれは、APEC地域のインフラストラクチャー整備への民間部門の参加を実質的かつ明確に増進させるとともに、全体的な経済成長及び経済開発に係る目標を支える上でインフラストラクチャー整備を促進するという明白な目的を伴う意図に関するこれらの宣言を履行するために必要な措置をとるよう関係閣僚に対して指示する。