データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第10回APEC閣僚会議共同声明

[場所] クアラルンプール
[年月日] 1998年11月15日
[出典] 外交青書42号,330−338頁.
[備考] 仮訳
[全文]

オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,中華人民共和国,中国香港,インドネシア,日本,大韓民国,マレイシア,メキシコ,ニュー・ジーランド,パプア・ニューギニア,ペルー,フィリピン,ロシア,シンガポール,チャイニーズ・タイペイ,タイ,アメリカ合衆国及びヴィエトナムの閣僚は,第10回アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に出席した。

 APEC事務局員も参加した。東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局,太平洋経済協力委員会(PECC)及び南太平洋フォーラムは,オブザーバーとして出席した。

 ラフィダ・アジズ・マレイシア国際貿易産業大臣が会議の議長を務めた。同議長は,閣僚会議を代表して,新しいメンバーであるペルー,ロシア及びヴィエトナムを歓迎した。

金融の安定{前5文字下線}

2.閣僚は,世界経済における最近の動向をレビューした。閣僚は,特にこの地域の現在の経済動向及び見通しに焦点を当て包括的なレビューを行った「1998年APECエコノミック・アウトルック」を歓迎した。閣僚は,伝播効果を伴う金融危機がメンバーの成長,雇用及び貧困のレベルに深刻な社会・経済的影響を及ぼしたことに懸念を表明した。閣僚は,高級実務者に対して優先度の高いものの一つとしてこの危機の社会的影響に対処するAPECの努力を強化する作業を課した。

3.閣僚は,APECが直面している主要な課題はこの地域の早期回復及び持続可能な成長に向けた政策及び共同の努力を全身{前2文字ママ}させることであることについて意見の一致をみた。各メンバーは,先進経済も開発途上経済も,この目的において重要な利害を有しており,適切な成長指向的マクロ経済政策及び構造改革の実施により,同目的を達成する上での役割がある。閣僚は,影響を受けたメンバーによるこの危機を克服するための努力を歓迎した。閣僚は,また,経済回復を下支えする上で開放的な市場が極めて重要な役割を果たすことを協調{前2文字ママ}した。

4.閣僚は,国際及び国内金融システムの強化,資本市場の発展,資本勘定の自由化及び影響を受けたメンバーのソーシャル・セーフティー・ネットの構築のための方途の策定に関するAPEC蔵相の作業計画を支持した。

5.閣僚は,キャパシティ・ビルディング・イニシアティヴが国内経済の弾力性の強化と,将来の経済的混乱に耐える能力を強化するために不可欠であることにつき意見の一致をみた。この文脈において,閣僚は,「経済ガバナンス・キャパシティ・ビルディング・イニシアティヴ」を承認し,蔵相プロセスにおけるコーポレート・ガバナンスに関する作業を歓迎した。閣僚はこれらのイニシアティヴの進展を期待する。

貿易及び投資の自由化及び円滑化(TILF){前21文字下線}

6.閣僚は,個別行動及び共同行動のプロセスを通じて,APECの貿易及び投資の自由化目標を達成するとのコミットメントを再確認した。閣僚は,貿易及び投資の自由化がこの地域のコンフィデンスを回復させ経済成長を刺激するための重要な要素であるとの見解を示した。

7.個別行動計画{前6文字下線}:閣僚は,改善された1998年の個別行動計画(IAP)の提出を承認し,新規に参加した3メンバーのIAPを歓迎した。閣僚は,この計画の継続的な実施及び改善,特に金融上の混乱により影響を受けているメンバーによるこの計画の継続的な実施と改善に励まされた。閣僚は,時宜を得た具体的な行動に対するコミットメント,1997年の改訂フォーマット・ガイドラインの遵守,及びAPECビジネス諮問委員会(ABAC)の提言への配慮を賞賛した。閣僚は,また,多くのIAPにおいて金融上の不安定状況に対応するための金融分野措置その他の改革が自主的に含められたことを歓迎した。閣僚は,一層の改善のためのフィードバックを提供する上で,現在の二国間協議及び自主的なピア・レビューのプロセスの有用性に留意した。これに関し,閣僚は,韓国及びマレイシアが各自のIAPを自主的なピア・レビューの対象として提示したこと及び1999年にオーストラリア,ブルネイ,日本,フィリピン,チャイニーズ・タイペイ及びアメリカ合衆国が同様に対応することをオファーしたことを歓迎した。閣僚は,高級実務者が大阪行動指針の原則,目的及びガイドラインに従って,1999年にIAPの全般的な進展を評価するためのレビューを実施すべきであることについて意見の一致をみた。閣僚は,ボゴール目標に向けてAPACの貿易及び投資の自由化及び円滑化を進展させる主たるメカニズムとして,IAPの果たす役割を再確認した。

貿易及び投資の円滑化{前10文字下線}

8.閣僚は,1998年の貿易投資委員会(CTI)の閣僚に対する年次報告を歓迎し,承認した。閣僚は,貿易及び投資のためのより開かれた環境を促進し,ビジネスにとって適切なモノ,サービス,資本及び技術のフローを改善する活動を実施するためのCTIの作業を賞賛した。閣僚は,メンバーに明瞭な利益を与えるような,行動志向かつ焦点の絞られた成果が重視されるべきことについて意見の一致をみた。

 閣僚は,CTI及びその作業部会の1998年の成果及び以下に関する作業を歓迎した。

・安全性及び電磁気整合性に関するメンバーの電気・電子機器規格の2004年/2008年までの国際規格との整合化,

・電気・電子機器の相互承認取決めに関する情報交換についての合意,

・投資の自由化及び円滑化のためのオプション・メニューの作成,

・政府調達における支出相当価値,開かれたかつ効果的な競争及び公正な実施に関する非拘束的原則の作成,

・APECビジネス・トラベル・カードの第2試行段階の実施及びビジネス目的の数次入国査証又は許可の利用拡大への共同のコミットメント,

・天然ガスの開発及びエネルギー効率の向上に関する一連の政策提言,

・データ項目の共通化,リスク管理及び迅速な貨物通関手続に関する包括的な税関作業計画の作成,

・ビジネス調査・機会のためのアジア太平洋電子商取引ネットワーク(APECNet)の開始,

・APECエネルギー需給,知的所有権(IPR)行政システム及び「ビジネス滞在ハンドブック」の出版を通じた情報交換及び政策対話の強化,

・1998年に実施された包括的なトレーニング・技術協力プログラム,及び

・貿易サービスの提供を円滑化する「APEC自由職業サービス・ディレクトリー」の作成。

9.閣僚は,1999年における共同行動計画(CAP)の一層の進展及びその実施を要請した。特に,閣僚は,メンバーが専門性を構築し,コストを削減し,モノ及びサービスのより良い移動を促すことに資するテクノロジー及び手法を促進する貿易の円滑化に関する作業の強化を要請した。閣僚は,いかに競争・規制改革が貿易及び投資の円滑化に貢献し得るかを実務者が検討すべきことにつき意見の一致をみた。閣僚は,APECのWTO加盟メンバーが2000年にTRIPs協定の実施を徹底することの重要性を協調{前2文字ママ}した。加えて閣僚は,1999年において,TILF分野及びCAPの実施におけるメンバーのキャパシティを高める手段として,基準・適合性,税関手続,知的所有権,競争政策及びビジネス関係者の移動に関するプログラムを含む複数年に亘るトレーニング・技術協力プログラムの実施にプライオリティーが与えられるよう指示した。

10.閣僚は,ABACからの貢献を含むビジネス/民間部門の貢献を適切な場合に促すために,合意されたガイドラインに従ってCTI及びその下部組織が行った活動を歓迎した。閣僚は,APECのフォーラムにおける中小企業の利益を拡大する活動を奨励した。閣僚は,更にAPECのフォーラムに対し,APECの活動へのビジネス/民間部門による支援と貢献を強化する方法を検討することを指示した。

11.早期自主的分野別自由化(EVSL){前17文字下線}:閣僚は,早期自主的分野別自由化(EVSL)のイニシアティヴは,APECにおける自由化のペースを前進させるための重要なステップであると認識した。EVSLのイニシアティヴは,APECの自主性原則を通じて実施され,円滑化及び経済・技術協力措置を含む自由化への統合的アプローチの一つである。

12.閣僚は,EVSLパッケージを完成させるために1998年中にもたらされた以下の進捗に留意した。

 i.16メンバーによるEVSLプロセスへの参加(オーストラリア,ブルネイ,カナダ,中華人民共和国,中国香港,インドネシア,日本,韓国,マレイシア,ニュー・ジーランド,パプア・ニューギニア,フィリピン,シンガポール,チャイニーズ・タイペイ,タイ,アメリカ合衆国),

 ii.関税,円滑化,経済・技術協力を含むEVSLに取り組むためのフレームワークに関するクチンの成果(関税に関しては,最終税率,最終期限及び対象品目(今後の作業を含む)並びに柔軟性規定に関するガイドラインを含む。),

 iii.高級実務者会合議長報告の表1に示される最終税率,最終期限との整合,

 iv.高級実務者会合議長報告の表2に示される最終税率,最終期限に関する柔軟性の要求。

13.閣僚は,APECメンバーが自主的に関税上のコミットメントを直ちに実施しうることにつき意見の一致をみた。

14.閣僚は,9分野すべてにおいて合意されたスケジュールに従い,円滑化,経済・技術協力その他のイニシアティヴの実施を開始することについき{前3文字ママ}意見の一致をみた。各分野の追加的な円滑化及び経済・技術協力のイニシアティヴは継続的に策定・実施される。

15.参加する16メンバーの閣僚は,以下により1999年にこの進捗を改善・増進することにつき意見の一致をみた。

 i.自由化の利益を最大化するため,関税の要素への参加をAPEC外に拡大する。これに関し,メンバーの参加を一層改善し,1999年にWTOにおいて合意することに努めることを視野に入れて,ステータス・レポートに記載された柔軟性アプローチに配慮しつつ,クチンにおいて設けられたフレームワーク及びその後メンバーから提出された情報に基づき,WTOのプロセスが直ちに開始され得よう。

 ii.9分野すべてにおける合意の達成に必要なWTOにおけるクリティカル・マスを形成するために建設的に作業する。

16.APECを超えて参加を拡大するこのプロセスは,第3回WTO閣僚会議において合意されるべきアジェンダ及びモダリティーに関するAPECメンバーの立場を予断するものではない。

17.閣僚は1999年6月の貿易担当大臣会合において進捗状況をレビューすることにつき意見の一致をみた。

18.他の6分野の要素については,1999年6月の貿易担当大臣によるレビューに向け,更に検討が進められる。すでに合意された非関税措置,円滑化,経済・技術協力その他のイニシアティヴの実施は各分野の作業計画に従って開始される。

19.自由化の影響{前6文字下線}:閣僚は,APECの貿易及び投資の自由化目標の合理性に関するAPEC共同体における幅広い,バランスのとれた理解を促進することの重要性を認識した。閣僚は,ケース・スタディーにより自由化に伴う調整費用・利益及びより幅広い影響に関する有益な概観が得られることに留意した。閣僚は,1999年6月の貿易自由化の影響を伝達する方法に関する基調セミナーのオークランドでの開催を含め,自由化に対する共同体の理解を形成するための効果的なコミュニケーション・プラン策定作業を実務者に課した。

20.多角的貿易体制{前7文字下線}:閣僚は,グローバリゼーションと急速な技術進歩の時代に,開発途上メンバーがグローバル経済に統合し自由化の利益を得るキャパシティを高めるような態様で,一層の貿易自由化を通じて及び貿易ルールの適正性を確保することにより,多角的貿易体制を強化するとのコミットメントを改めて表明した。

 閣僚は,貿易及び投資の自由化及びルールの策定に関するWTOの作業に対する支持を誓約した。これに関し,APECメンバーは,全てのメンバーの様々な懸念や関心に答えるため,幅広い多角的市場アクセスその他の自由化の一層の追求を目指し,第3回WTO閣僚会議の実質的な議題を策定するためのWTOの準備プロセスに積極的に参加し,貢献する。

 閣僚は,また,既存のWTOのコミットメントの完全な実施の重要性を強調した。閣僚は,また,多角的貿易自由化のモメンタムを維持するとのコミットメントを再確認した。閣僚は,WTOメンバーシップの普遍性を達成する観点から,WTOのルールに則りかつ効果的な市場アクセス・コミットメントに基づき,加盟交渉を加速することを奨励した。

 閣僚は,貿易と競争政策の間の相互作用,政府調達の透明性及び投資などの分野において,WTOによって行われている作業を支援するために進められているAPECの貢献を賞賛した。かかる観点から,競争政策,規制緩和,政府調達及び投資といった分野におけるAPECの作業は特に適切である。閣僚は,このような作業が継続されることを奨励した。閣僚は,また,メンバーによるWTOの諸協定の実施を支援するため,技術協力活動が強化されるべきことを指示した。

経済・技術協力(ECOTECH){前16文字下線}

21.閣僚は,経済協力・開発の強化に向けたマニラ・フレームワークの下で,APECにおける経済・技術協力を更に強化する努力を賞賛した。持続可能な成長のための基盤の強化に貢献するキャパシティ・ビルディング・イニシアティヴは,経済危機にかんがみ,優先事項となった。閣僚は,経済・技術協力活動に関する1998年の高級実務者会合報告を歓迎し,毎年報告が提出されることを要請した。

 閣僚は,6つの優先テーマ追求のための経済・技術協力活動の幅広い範囲における進捗,特にキャパシティ・ビルディングに焦点をあてたことに満足の意を表し,調整と管理を改善し焦点を絞った成果を確保するための高級実務者会合の経済・技術協力小委員会の努力を賞賛した。閣僚は,経済・技術協力活動の効率性の一層の改善に向けた作業の強化を要請した。

22.人的資本の養成{前7文字下線}:人材養成は持続的経済成長の鍵となる要素であり,今日人材へ投資することは経済の回復に資するものである。この地域の労働力の技能向上は,新たな千年における課題に対応するためのメンバーの柔軟性を強化するものとなろう。閣僚は,この地域の人的資本の向上に向けた努力を更に強化するための「クアラ・ルンプール技能開発行動計画」を承認し,APECのフォーラム,特に人材養成作業部会に対しこの行動計画を実施するよう指示した。閣僚は,行動計画を受けてメンバーが技能開発のための計画を拡大し,あるいは開始する努力を歓迎した。閣僚は,技能開発における民間部門の貢献の重要性を認識し,技能開発における官民/ビジネス部門のパートナーシップに関する経験を共有するためのセミナーを1999年に開催するとの提案を歓迎した。閣僚は,人材養成作業部会の関連プロジェクトを推進するため,民間部門からの一層の貢献を奨励した。

 閣僚は,この地域の人的資本,特に青年や女性の大きな潜在能力を完全に活用することの重要性を認識し,APECの活動にこれらを統合するための継続的な努力を支援することを改めて表明した。閣僚は,「APEC経済開発及び協力における女性に関する閣僚会合」の全ての提言,特に「APECにおける女性の統合のためのフレームワーク」の構築のための提言を承認した。閣僚は,科学とコミュニケーションへの青年の参加をもたらしたソウルで開催された「APEC青年科学フェスティバル」の成功に留意した。

23.安定した安全で効率的な資本市場{前15文字下線}:閣僚は,APECの金融・資本市場の発展と弾力性を促進するためのAPEC蔵相の努力に留意した。これと並行して,メンバーにより,国内金融制度の改革と強化のための努力が払われている。閣僚は,この地域の早期回復を加速しコンフィデンスを回復するためのAPECのアプローチが,この危機を緩和するために国際金融機関及びその他の国際フォーラムが進めている努力との積極的な連携・協力を含むことにつき意見の一致をみた。

 閣僚は,APECのフォーラムが,年間を通じて,労働市場,インフラストラクチャーの整備,中小企業,貿易,投資,女性,観光及びエネルギー部門に対する金融危機の影響について検討してきたことに留意した。メンバーは人材及び金融危機の社会的影響に関するタスク・フォースの報告を歓迎した。

24.経済インフラストラクチャー{前13文字下線}:閣僚は,「1997年インフラ整備官民協力のためのヴァンクーヴァー・フレームワーク」を実施するための活動に関する「1998年APECインフラストラクチャー報告」を歓迎した。閣僚は,インフラストラクチャー整備に対する投資がこの地域の経済回復に貢献しうることを認識し,以下の5分野における一層の進展を要請した。

・アジア太平洋情報社会の構築,

・統合されたアジア太平洋運輸システムの構築,

・エネルギー大臣により承認された天然ガス・イニシアティヴを含む経済的に実行可能かつ環境上持続可能なエネルギー・インフラストラクチャー,

・持続可能な都市のためのインフラストラクチャー,及び

・地方のインフラストラクチャー開発に対する融資のための革新的なアイデアを含む地方の統合と多様化の支援のためのインフラストラクチャー。

25.将来の技術の活用{前8文字下線}:経済成長の促進における科学・技術進歩の潜在力を認識し,閣僚は,地域的科学技術協力に関する閣僚会合により承認された「21世紀に向けたAPEC科学技術産業協力の指針」を承認した。この指針は,強力で開かれた技術革新システムの構築及び持続可能な地域の科学技術ネットワークとパートナーシップの発展を通じた協力と協調の強化を奨励している。閣僚は,この指針の実施に関する年次進捗報告を要請した。閣僚は,また,APECのクリーナー・プロダクション・イニシアティヴにおける進展を歓迎し,メンバーに対し,クリーナー・プロダクション・プロジェクトに積極的に参加するよう奨励した。

26.環境上健全な成長{前8文字下線}:人口と経済成長が食糧,エネルギー及び環境に与える影響に関する行動志向の報告を求めた首脳の要請に従い,閣僚は,調査機関の学際的ネットワークの構築を含む,食糧,エネルギー及び環境分野における共同行動を概括した「1998年FEEEP報告」を歓迎し,承認した。閣僚は,1999年にこの作業が進展するよう指示した。閣僚は,自然災害及び緊急事態に対処するためのAPECメンバーのキャパシティを高めるための共同協調努力の強化を目的とした「緊急事態準備のためのキャパシティ・ビルディング・イニシアティヴに向けたAPECフレームワーク」を承認し,情報の共有とキャパシティ・ビルディングを通じて予防・対応手段を改善するためのイニシアティヴに期待する。閣僚は,特に,自主的誓約・レビュー・プログラムの実行を通じたエネルギー利用の効率改善に関するエネルギー大臣の決定を歓迎した。閣僚は,クリーン・オーシャン,クリーナー・プロダクション,持続可能な都市に関する環境大臣のイニシアティヴをフォローアップする持続可能な開発に関するAPECの作業の重要性を改めて表明し,APECの関連フォーラムにこれらの分野における作業を進展させるよう指示した。

27.中小企業のダイナミズムの強化{前14文字下線}:閣僚は,急速に展開している競争的ビジネス環境の中で,メンバー経済の弾力性の強化において中小企業の果たす極めて重要な役割を認識した。閣僚は,中小企業担当大臣会合により承認された「中小企業育成統合計画(SPAN)」を歓迎した。SPANは,国内レベルでの行動及び地域レベルでの共同努力を通じた中小企業の発展のためのガイドラインを提供する。

28.閣僚は,また,経済成長と協調の促進というAPECの目的を一層進めるためのAPEC作業部会及びその他のAPECのフォーラムの作業に留意した。閣僚は,これらのフォーラムに対し,調整された活動を通じた「経済協力及び開発の強化のためのフレームワーク」の継続的実施を指示した。

電子商取引{前5文字下線}

29.閣僚は,APECが地域としてこの新しい技術から利益を得ることを確保するための情報交換・共有及び実質的な提言の策定を通じて,電子商取引の問題に関する一層の理解を促進するための「APEC電子商取引タスク・フォース」の作業を支持した。この作業計画は,コンピューター2000年(Y2K)問題,「ペーパーレス貿易」,相互認証といった認証問題,ケース・スタディーの集積,障害に関する調査,「ヴァーチャル電子商取引/マルチメディア・リソース・ネットワーク」及び経済・技術協力活動を含む。閣僚は,ビジネス部門が電子商取引技術及びアプリケーション開発において主導的な役割を果たす一方,政府は,電子商取引の発展のための良好な環境の提供及びその利用に対する信頼の醸成において重要な役割を担っていり{前2文字ママ}ことを認識した。

 APECにおける電子商取引に対する理解を高めるため,閣僚は,APEC域内の電子商取引に関するる{前2文字ママ}協力及びAPEC全域に亘る電子商取引の作業計画のための具体的な将来の活動に関する幅広いテーマを設定した「APEC電子商取引に関する行動のためのブループリント」を承認し,この計画が承認のためにAPEC首脳に送付されることにつき意見の一致をみた。閣僚は,技術協力がAPEC域内における電子商取引に対するメンバーの理解を高めるものであることを認識した。行動のためのブループリントを追求し,継続的な調整を確保するため,閣僚は,ビジネス部門の参加に関するガイドラインに従い,関連する作業部会及び下部組織並びにビジネス部門の専門家を含め,メンバーの代表から成るステアリング・グループが設立されることにつき意見の一致をみた。閣僚は,コンピューター2000年問題への取り組みの緊急性を認識し,1999年の早い段階に,コンピューター2000年問題につき地域的な事後的措置の計画に関する専門家会合開催の提案を歓迎した。閣僚は,実務者に対し,コンピューター2000年問題に取り組むための地域的な準備を強化するために協力することを課した。閣僚は,電子商取引に関するAPECの作業へのPECCの貢献に対し謝意を表明した。

分析作業{前4文字下線}

30.閣僚は,食糧タスク・フォーク{前4文字ママ}の付属報告書及びインフラストラクチャー・ワークショップの報告を含む経済委員会の年次報告を歓迎し,承認した。閣僚は,経済委員会が「1998年APECエコノミック・アウトルック」の作成に当たって行った作業及び「イニシャル・リサーチ・アジェンダ」の完成に向け広範な進展があったことを賞賛した。閣僚は,経済委員会の将来の活動を,閣僚会議及び非公式首脳会議を支援する需要に応じた分析的作業並びに他のAPECフォーラムの政策指向的作業に焦点をあてるとの同委員会の修正された付託事項に留意し,これを承認した。

 閣僚は,また,経済委員会及び食糧タスク・フォースが,首脳に対するFEEEP報告を作成し,食糧に関する補足的分析作業を行い,この問題の分野横断的な側面に取り組んだFEEEPシンポジウムを進捗させたことを賞賛した。

 閣僚はまた,インフラストラクチャーへの投資が成長回復を支える上で果たす役割について議論する貴重な機会をビジネス部門に提供した「1998年官民対話」の成果を含め,インフラストラクチャー・ワークショップがこの重要な分野における作業を進展させたことを賞賛した。

マネージメント・プロセス{前12文字下線}

31.閣僚は,現在の課題により良く対応するため,APECの作業を合理化し,整合的で無駄を省くことを目的とした3年間のマネージメント・プロセスのレビューに関する暫定報告を歓迎した。同レビューは,マレイシア,ニュー・ジーランド及びブルネイが共同で主導し,1997年に「管理事項タスク・フォース」によりなされた作業の基礎の上に立つものである。

 閣僚は,APECのフォーラムのマンデートをレビューする際に使用される一連の共通ガイドラインを承認し,高級実務者に対し,1999年9月に閣僚に対し提言を提出するよう指示した。APECのマネージメント・プロセスの改革への決意を示すため,閣僚は,以下の当初の行動につき意見の一致をみた。

・貿易・投資データ分析作業部会(TIGWD)及び情報収集・分析に関する少人数会合の解散,

・APECフォーラムによる自己レビューのための共通レビュー・ガイドラインの採択,

・レビュー期間中の新たなフォーラムの設立のモラトリアム。必要な場合には,設置期間限定のアド・ホックのタスク・フォースのみが設立される,及び

・行財政委員会(BAC)の財政管理委員会(BMC)への再編成。

民間部門/ビジネスの参加{前12文字下線}

32.閣僚は,ABAC代表と対話を行い,APECの活動におけるビジネス/民間部門との一層の相互作用を奨励した。閣僚は,APECの個別及び共同行動計画における1997年ABAC提言に対する積極的な対応に留意した。

機構及び財政問題{前8文字下線}

33.閣僚は以下に留意した。

 ・分野別大臣会合(金融,貿易,中小企業,電気通信・情報産業,エネルギー,産業及び科学技術)の成果,

 ・APECスタディー・センターの報告,及び

 ・ASEAN事務局,PECC及び南太平洋フォーラムのステートメント

34.閣僚は,財政問題に関する高級実務者会合議長報告を承認し,6,811,559米ドルの1999年予算及びメンバーからの総計3,338,000米ドルの拠出を承認した。

35.閣僚は,APEC事務局報告をテークノートし,APEC事務局の事務局長ノール・アドラン・ヤハヤ・ウディン大使及びAPEC事務局スタッフの業績並びにAPECの各委員会,作業部会及びAPECプロセス全体に対して彼らが示した高いレベルの専門的職業意識及び支援に対し謝意を表明した。

将来の会合{前5文字下線}

36.閣僚は,第11回APEC閣僚会議の準備につき,ニュー・ジーランドが説明を行ったことに対して感謝の意を表し,1999年のオークランドにおける次回会合を期待する。閣僚は,ブルネイが第12回閣僚会議のための計画に関し最新の状況を説明したことに対しても,感謝の意を表した。第13回閣僚会議は,中華人民共和国によりホストされる。閣僚は,2002年の第14回閣僚会議をホストするとのメキシコの申し出を歓迎した。