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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] APEC首脳宣言:コミュニティーへの貢献

[場所] バンダル・スリ・ブガワン
[年月日] 2000年11月16日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1. 我々APECの首脳は、新千年紀の課題を検討するためバンダル・スリ・ブガワンにおいて会合を行い、グローバルな市場において共に成長する能力を強化し、人々に繁栄をもたらすための手段としての、開かれた相互依存的なメンバーのコミュニティーというAPECのヴィジョンへの信頼を再確認する。

2. 我々は、自由で開かれた貿易と投資というボゴール目標への共通のコミットメントを通じて、また、大阪で合意した行動アジェンダに基づいた人々、組織、インフラ、及び市場のキャパシティー・ビルディングにおける広範な協力を通じて、このヴィジョンを実現して行くとの決意を新たにする。

3. 我々は、これまで域内のメンバーが追求してきた開かれた経済政策が、如何に過去20年間にわたって感銘を与えるような成長の牽引力となってきたかを見てきたために、このヴィジョンに引き続きコミットしている。この成長は、人々に対し、収入の向上、より多くの機会、より良い教育、及びより高水準の健康をもたらした。

4. 経済危機のため、APEC10年間の進展の遅れが余儀なくされたが、我々は、迅速かつ安定した経済成長をもたらした基盤の上に政策を構築することを妨げられることはなかった。我々は、経済危機の影響を受けたメンバーの経済的及び社会的状況の改善、並びに、域内経済全体の力強い経済成長への回復の兆しに勇気づけられている。

5. 我々は、しかしながら、石油市場の不安定性が世界経済に及ぼすリスクに留意する。我々は、消費者と生産者双方の利益のために、安定性促進のために適切な措置を要請する。我々は、石油市場の均衡を取るために本年APECメンバーが行った努力を歓迎し、脆弱性の低下を助け、市場安定性を促進するAPEC内での現在進行中の多くの協力活動に留意する。

6. 我々は、回復を確実なものとする政策が、同時に、グローバルな経済への統合を一層確信を持って進めることを可能にすることを理解しているので、成長に向けて改善を続けるための如何なる努力についても、自己満足には陥らない決意である。

グローバル化への対応

7. 我々は、今後の選択肢を検討するに当たり、グローバルな統合への動きが、我々の域内により高い生活水準と社会的福祉をもたらす最も大きな機会を有していることを確信している。我々は、グローバル化による幅広い社会的・経済的課題に直面することが必ずしも常に容易ではないことを認識している。

8. 我々は、全てのメンバーにおいて、特に地方のコミュニティーに、経済成長の利益を享受していない人々が存在することを理解している。我々は、また、経済危機により深刻な影響を受けた多くの人々が、厳しく試されることとなった開放性に対し信頼を持ち続けていることを評価している。首脳として、我々は、共有された繁栄という考え方と個々のメンバーが抱える困難な問題についての相互理解によって結ばれており、富と知識の大きな格差に対処し、全ての人々にグローバル化の利益をもたらすことを決意する。APECの経済・技術協力活動は、このようなプロセスに対して既に積極的な貢献を行っているが、我々は、こうした活動が更に強化出来ると考えている。我々は、従って、閣僚及び実務者に対し、メンバーが必要なキャパシティー・ビルディングを行う助けとなるよう実質的な成果をあげるために、協力アジェンダに明確な目標を与え、より焦点を絞るよう要請する。

9. 我々は、また、国際的なフォーラムにおいて、グローバルな経済の形成を助け、先進メンバー及び途上メンバー双方に、より安全かつ安定した金融環境を提供する作業を継続することを決意する。1997年から98年の危機から重要な教訓が導き出せた。金融パニックのリスクを軽減するために適切な防止措置が必要であるとの理解は、国際社会の反応の焦点となっている。我々は、国際金融構造を強化するための、G20、金融安定化フォーラム、国際金融機関、及びその他のフォーラムの努力を歓迎する。このような努力には、国際的監視の改善、規制・監督体制の強化、危機の解消に当たっての民間債権者の適切な関与が含まれる。これらには、また、IMFの資金を補完する地域レベルでの協力的な資金の取り決め、及び出資比率の見直しを含む国際金融機関の改革が含まれる。我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)に対し、このような問題の実施に関する広範な提言に感謝するとともに、蔵相に対し、明年提言の検討を行うよう要請する。

10. 我々のグローバル化の利益を獲得するための能力は、現在進行中の変化に対しメンバーとその人々が対応出来る能力に依存している。経済危機は、我々に対し、継続的な構造改革及び市場開放の必要性、並びに、健全な経済政策の実施の重要性について教えてくれた。特に、新しい機会を掴むために不可欠な構造調整を促進することの重要性、及び調整を回避することによって被る大きなコストについて警告を与えてくれた。

11. 将来に備えた十分な準備を行うために、我々は、全ての閣僚に対し、必要とされる構造調整をより効率的に行っていくための戦略の策定に関して、APECにおいて新たな努力を行うよう指示する。我々は、全ての閣僚に対し、その中に、ソーシャル・セーフティー・ネットに関する作業の継続を含む、経済の変化によって不利益を被る人々に対する対応を含めるよう要請する。我々は、また、全ての閣僚に対し、金融及び企業セクターのための健全なガヴァナンスのシステムと力強い組織的枠組の発展のための方途を含めるよう要請する。

12. 我々は、蔵相がこうした分野でのキャパシティー・ビルディングに重点を置いたことに留意する。我々は、金融及び保険規制当局の技能開発、並びに、破産法の改革及び金融分野での情報開示を含む広範なプログラムにおける進展と更なる活動の拡大を歓迎する。我々は、蔵相に対し、現在進行中の変化に対して如何に市場や組織を強化出来るかについての域内の理解を深めるために、ソーシャル・セーフティー・ネットの強化とともに、民営化や金融機関の破綻への対応のような重要な問題について、経験や専門的知見の共有を継続することを促す。

新たな機会の創造

13. 情報通信技術の革命が世界経済の発展を劇的に進展させていることに疑いはない。それは、新たな市場形態、より高度な生産性、並びに、知識、起業家精神及び技術革新に対する新たな需要を伴う新しい形態の経済の中で、前例のない機会をもたらしている。

14. 我々は、各メンバー内及び域内全体を通じて、技術の利用がより広範なものとなれば、伝統部門における企業や個人でさえニュー・エコノミーから利益を得ることが出来るということに勇気づけられている。しかし、我々は、技術とそれがもたらす利益が、何百万もの人々には未だ到達していないことを認識している。

15. 我々のヴィジョンは、グローバル化の成果を享受するためのパスポートとして技術革命を利用するために、各メンバー及び人々に準備させることである。本日、我々は、新たな戦略を発表する。この戦略は、今後数年間で域内の生活を大きく向上させるものと考えている。我々は、どのメンバーにおいても、2010年までに、都市及び地方のコミュニティーに住む人々が、インターネットを通じて提供される情報及びサービスに対し、個人として又はコミュニティーを基盤として、アクセスすることを可能にするような政策枠組を開発し、かつ実施することにコミットする。この目標に向けての第一歩として、我々は、2005年までに、域内において個人やコミュニティーを基盤としてアクセス出来る人々の数を3倍にすることを目指す。

16. 政府だけではこのヴィジョンは達成できない。我々は、このためには、大がかりなインフラの整備と人材の養成、及び現在はまだ形成段階にある技術が必要とされることを認識している。このためには、また、企業の投資、並びに、大学、訓練・研究機関、及び学校の協力と技能を引きつけることが出来るような、外向きでかつ市場指向的な政策の制度が必要とされる。我々は、また、メンバーの間の多様性及び現在の情報通信技術の統合レベルの違いにより、適切な政策枠組の開発及び実施の速度がメンバーにより異なることを認識している。

17. 我々は、域内にわたる極めて広範なビジネス・コミュニティーや教育・訓練に携わる人々と連携して、このヴィジョンを可能とする政策を開発することにコミットする。こうした連携を構築し、検討課題を決定して行くための第一段階として、ブルネイ及び中国が、2001年に中国において、ビジネス界、政府関係者、訓練の指導者、及び教育者によるハイレベルのAPEC会合を共催する予定である。我々は、この会合の成果がAPECの閣僚及びフォーラムに対し有益な見解を提供するものと考える。

18. 本日、我々は、ニュー・エコノミーのための広範な行動指針を発表する。これは、生産性を向上させ、成長を促し、サービスを域内全体に拡大させるために、メンバーが情報技術における進展を利用することを支援するプログラムの概要を示すものである。この行動指針には、適切な政策環境を促進する方途や、市場、電子商取引、インフラ、知識及び技能の開発を強化する枠組の形成を支援するためのキャパシティー・ビルディングの方途、並びに、通信及びインターネットに対する安価でかつより効率的なアクセスを提供する方途が含まれる。我々は、これがまだ出発点であることを認識しており、全ての閣僚と実務者に対し、このプログラムを2001年に更に発展させるよう指示する。我々は、我々のヴィジョンのパートナーとして、ビジネス界や人材養成の分野における利害関係者と幅広く協議し、相互に働きかけを行うことを求める。我々は、これらの問題に対するABACの本年の貢献を歓迎し、ABACに対し、協力を継続するよう促す。

19. 我々は、ニュー・エコノミーの発展を支援するために、市場の強化、人材の開発、及び中小企業の発展促進において、APECが既に重要な前進を遂げていることに留意する。我々は、特に、ビジネス界との提携により、メンバーがニュー・エコノミーに対する対応度を評価し、改善することを可能にする上でAPECが世界的な指導力を確立した、APEC電子商取引自己評価イニシアティブの初期の成功に勇気づけられる。

20. 我々は、相当な部分がAPECメンバーの中で活用されることに留意しつつ、日本が九州・沖縄サミットに先立ち発表した、国際的なデジタル・ディバイドに対処するために約150億米ドルを供与するという包括的パッケージを歓迎する。

21. 我々は、若者を将来の課題に備えさせることに特に重点を置いており、情報技術が学習及び授業において中心的な能力となるべきことで意見が一致している。我々は、教育分野における域内の協力プロセスを通じて、教員の質を向上させ、かつ健全な教育管理を構築するためのAPECのプログラムを支援する。我々は、また、環太平洋大学連合及びその他の機関による域内の遠隔学習能力を開発するためのイニシアティブを賞賛する。新たな情報通信技術は、また、衛生及び医療サービスをより広範なコミュニティーへと拡大し、基本的な衛生問題に対処するための重要なネットワークの発展を可能とする。我々は、疾病情報ネットワークの強化における進展を賞賛する。我々は、HIV/AIDS及びその他の感染症と闘うことにコミットする。我々は、また、関連する当局に対し、これらの感染症による課題により効果的に対処していくために、APECにおいて活用出来る戦略について、明年に報告を行うよう求める。

多角的貿易体制の強化

22. グローバル化のこの時代においては、公正かつルールに基づいた多角的貿易体制は、我々の成功と繁栄のために、これまでにも増して決定的な重要性を持つ。この体制は21世紀の課題に応えるべきである。

23. 我々は、全てのWTO加盟国、特に、後発途上メンバー及び途上メンバーの利益となるように、WTOの新ラウンドを迅速に立ち上げる必要があることを再度表明する。我々は、全てのWTO加盟国の関心及び懸念に応えるような、バランスが取れ、かつ十分に広範なアジェンダを2001年の出来るだけ早い時期に策定し、かつ決定して、2001年にラウンドを立ち上げることで意見が一致する。オークランドで我々が合意した要素及び目的は、現在においても適切なものである。

24. 我々は、閣僚に対し、現在行われている農業及びサービス交渉において意味のある進展をとげるよう指示する。我々は、また、閣僚に対し、交渉のアジェンダ全体を予断することなく、新ラウンド準備の一環として鉱工業品関税や他の関連分野についての準備作業を継続するよう指示する。我々は、次回WTO閣僚会議までの間の電子商取引への関税賦課に関するモラトリアムに対するコミットメントを再確認し、電子商取引の利用及び開発を制限するような不必要な措置を回避することの重要性を認識する。我々は、電子商取引の進化に対してWTOのルールがどれほど適切であるかを検討する特別の分析タスク・フォースをWTO内に設立することを求める閣僚の要請を承認する。

25. 我々は、後発途上メンバーのための市場アクセスに関する措置やWTO協定の実施の側面に関する懸念に対処する措置を含め、WTOにおいて採択された信頼醸成措置を賞賛する。我々は、後発途上メンバー向けの市場アクセス・イニシアティブが効果的に実施され、より多くのメンバーが同イニシアティブに参加するよう求める。

26. 新ラウンド立ち上げに向けた勢いを高めるため、我々は、WTO協定実施のためのキャパシティー・ビルディングに関する戦略的なAPEC計画の策定における進展を歓迎する。我々は、示された戦略計画を承認し、閣僚によるその早期実施の決定を支持する。

27. 我々は、この一年間に中国のWTO加盟交渉において達成された実質的進展を歓迎するとともに、中国が出来る限り早くWTOに加盟出来るようにするため、これらの交渉の迅速な妥結を求める。我々は、また、チャイニーズ・タイペイの速やかなWTO加盟、並びに、ロシア及びヴィエトナムの加盟プロセスの前進を支持する。

28. 我々は、アジア太平洋地域における地域貿易取極の最近の進展に留意する。我々は、地域貿易協定や二国間貿易協定がWTOにおける多角的自由化のための踏み台(ビルディング・ブロック)として役立つものであることで意見が一致する。したがって、我々は、既存の地域貿易協定及びこれから出来つつある地域貿易協定が、WTOのルール及び規律に整合的であるべきことを確認する。我々は、また、これらの地域貿易取極はAPECの構想に沿い、また、APECの目標及びその諸原則に資するものと考える。

APECの重要性をより高める

29. 域内に住む人々はAPECの最も貴重な財産である。我々は、APECとは、社会に対して開かれ、かつ透明であって、人々の才能や独創性を活用するようなプロセスでなければならないと信じ続けている。我々は、APECが発展させてきたコミュニティーの関与及びアウトリーチの継続を強く促し、我々の目標を共有し、これに勢いを与えるようなグループとの連携を発展させることを求める。

30. 我々は、APECのプログラムへの女性の参加が増加していること、及び女性の参加が更に促進され増加するよう確保するために努力が行われていることに留意し、うれしく思う。

31. APECにおける作業の多くは将来に対する投資であるが、我々は、これまで既に実施されたプログラムから人々が具体的かつ直接利益を受けていることをうれしく思う。我々は、また、情報へのアクセス、人々の移動、並びに、APEC地域内の財とサービスの移動及び投資の改善に向けた新しいプログラムに勇気付けられている。

32. 我々の個別行動計画は、自由で開かれた貿易と投資というボゴール目標に向けた個々のメンバーの道程を定める上で、現在においても最も重要なメカニズムである。我々は、行動計画が透明で、包括的かつ具体的であることを確保し、また、ビジネス・コミュニティー及びより広範なコミュニティーに対して効率的に伝達されるよう確保したいと考える。従って、我々は、閣僚に対し、本年新たに導入されたe−IAPシステムが2001年には完全に活用され運用されるものとなり、また、将来は電子的手段として改訂され改善されることを確保するよう指示する。

33. 我々は、ビジネス・コミュニティーに対し、新たなBizAPEC ウェブサイトをこの地域内の新しい機会を求めるための手段として活用し、貿易及び通商を促進するよう促す。我々は、実務者に対し、このBizAPEC をダイナミックな情報の中心とし、ビジネス界の現在の関心を反映したものとするよう要請する。このイニシアティブは、APECが実施している他のイニシアティブとともに、中小企業による戦略的提携を構築し、国際的な貿易と投資の利益を活用するための努力を促進することが出来るものである。

34. 我々は、「APECエコテク・クリアリング・ハウス」ウェブサイトが、我々の広範な経済・技術協力のプログラムの効率性を示すための透明で即時性のあるメカニズムを提供し、コミュニティーとの電子的な対話を補足する重要なものであると考える。

35. 我々は、財とサービスの流れを促進すること、並びに、ビジネス及び消費者一般の利益のために国際取引の費用を削減することを、引き続き最重要課題としている。我々は、この分野における進展が中小企業にとって特に利益をもたらすことを理解している。我々は、閣僚に対し、ABAC及びビジネス・コミュニティーが特定した二つの優先課題として、関税手続き及び基準・適合性の、簡素化及び調和に関する作業を継続するよう指示する。円滑化を改善するための将来の作業により強固な基礎を提供するため、我々は、閣僚及び実務者に対し、貿易円滑化に関する一連の原則を2001年に策定するよう集中的な努力を求めるとともに、域内においてビジネスを行う際の費用削減を支援するため、貿易円滑化に統合的な方法で対処するよう要請する。

36. 我々の将来は青年にかかっている。青年がこの地域の豊かな文化的多様性を大切にするよう促すこと、及び青年の知識と技能を発展させることに我々が行う投資は、将来のグローバル化の方向性を相当程度決定することになる。我々は、本年、いくつかのメンバーから申し出のあった青年間の対話を促進する広範なプログラムを歓迎する。我々は、アジア太平洋地域内により強いコミュニティーの意識を構築するため、これらの活動が継続されることを強く促す。

37. 我々は、閣僚及び実務者に対する一連の追加的指令、並びに、ニュー・エコノミーのための行動指針の概要を示す付属書を我々の宣言に添付する。

別添1

APEC首脳の指令

 この別添にある指令は、首脳宣言本文と付属書1への追加である。この指令の扱う課題は、貿易と投資、及び経済・技術協力に関連した問題、並びに、APEC蔵相プロセスから生じた問題である。

貿易と投資、及び経済・技術協力

・我々は、APEC電気通信情報産業大臣会合の行動及び原則を定めたカンクン宣言にある同会合の活動を支持し、我々が本年ブルネイにおいて定めたヴィジョンの達成を支援するために、この作業に基づいて互恵的な方途を見出すよう促した。(http://www.apecsec.org.sg/virtualib/minismtg/mtgtel2000.html)

・我々は、本年サン・ディエゴで開催されたAPECエネルギー大臣会合のメッセージを歓迎し、その宣言にあるコミットメントを賞賛する。エネルギーが、域内の経済的・社会的将来を形成し、市場を強化し、及びクリーンでかつ持続可能な開発を推進する上で中心的な役割を果たすことを認識し、我々は、彼らが経済成長、エネルギー安全保障、及び環境保護を同時に追求していくことを支持する。我々は、新しいエネルギー安全保障のイニシアティブ及び新しい実施戦略を歓迎し、後者がキャパシティー・ビルディングの重要な要素を提供するものであることに留意する。その中には、メンバーから希望があれば、メンバーが表明したニーズに応じて、実施の際の経験を共有するために、促進チームによる現場視察を行う選択肢も含まれる。(http://www.apecsec.org.sg/virtualib/minismtg/emm4.html)

・我々は、4月にシンガポールで開催された第2回教育大臣会合の結果を歓迎し、承認する。我々は、各国の教育制度の発展やニュー・エコノミーの課題に対処するため、APECメンバーの閣僚により特定された主要な戦略に同意する。我々は、また、将来のヴィジョンと教育分野における協力の方向性を計画するため、5年ごとに会合を行うという閣僚の決定を歓迎する。(http://www.apecsec.org.sg/virtualib/minismtg/mtgedu2000.html)

・我々は、観光産業が、域内の中小企業や遠隔地の人々も含む、コミュニティーの広範な部門に雇用とビジネスの機会を提供する域内の最も重要でかつ力強い産業の一つであることで意見が一致する。我々は、前向きなアプローチ、期限付きの包括的な目標の設定、キャパシティー・ビルディングのプログラム、並びに、観光業における能力の開発のため、及びこの分野の将来の発展への障害の除去のための行動計画に留意しつつ、ソウルで開催されたAPEC観光大臣会合において準備されたAPEC観光憲章を承認する。(http://www.apecsec.org.sg/virtualib/minismtg/mtgtwg2000.html)

・我々は、ボゴール目標の達成に向けた本年の具体的な進展を認識するが、この目標達成のための最善の方法に関し議論を続けていく必要があることで意見が一致する。我々は、このプロセスの一環として、貿易、投資及び円滑化に関する大阪行動指針のパート1のガイドラインに基づき、レヴュー及び議論を行うという閣僚による包括的なアプローチを歓迎する。我々は、また、経済・技術協力部分に関する大阪行動指針のパート2の共同行動の実施についてのレヴューに留意する。(http://www.apecsec.org.sg/virtualib/minismtg/mtgtrd2000.html)(http://www.apecsec.org.sg/virtualib/history/osaka/osakaact.html)

・我々は、WTO関連のキャパシティー・ビルディングに向けた戦略的なAPEC計画を、WTOへの完全な参加へ向けて能力を高めるための協調行動の基礎として承認する。我々は、適当な場合には、先進メンバー及び途上メンバーの双方が、開発プログラムにおいて計画の優先順位付けを行うことを確認し、また、APEC貿易・投資の自由化・円滑化(TILF)基金を、TILF基金の確立された承認プロセスに従い、可能なプログラムを融資するために割り当てることに優先順位が与えられることを確認する。我々は、また、メンバーが、この計画の実施に当たり、世界銀行やアジア開発銀行等関連する国際機関との協力を進めることを確認する。

・我々は、APEC閣僚及び実務者に対し、オークランドにおける前回会合の際に要請され、また本年のABACの報告においても繰り返し表明された非関税措置の削減に関し、更なる進展を行うよう促した。(http://www.apecsec.org.sg/abac/reports/ABAC_Report_2000.pdf)

・我々は、経済法的インフラ及び競争の強化、並びに、規制改革に関する共同イニシアティブを含む、多くの分野において進展があったことに留意しつつ、市場強化のためのAPECの作業において努力を継続するよう促した。メンバー個々の努力とともに、我々は、域内において、より強固でかつ効率的な市場に向けて前進している。我々は、また、自主性に基づく、より競争的な航空サービスのための提言の実施における進展を歓迎する。それには、APEC内での措置の拡大及び深化についての提案、並びに、同様の考え方を有する5つのメンバー間での複数国間協定が含まれる。

・我々は、ビジネス界との関与を拡充し、中小企業や新しいビジネスの支援に関して協力イニシアティブを進展させつつある、APEC中小企業担当大臣のコミットメントを歓迎する。(http://www.apecsec.org.sg/virtualib/minismtg/mtgsme2000.html)

・我々は、APECが21世紀の課題に対処するために、目的、優先順位及び原則を規定した人材養成の戦略を準備するという閣僚のイニシアティブを承認する。

・我々は、4月にソウルで開催された「共有された繁栄と調和に関するAPECフォーラム」の結果を歓迎する。このフォーラムは、持続する成長のための経済及び社会政策に関して議論する重要な機会を提供した。特に、我々は、経済格差に対処するために、APECにおいてソーシャル・セーフティー・ネットの活動を強化するとの提案を歓迎する。我々は、このフォーラムによって確立されたこの種の政策対話が、APECメンバー間で継続することを希望する。

・我々は、多くのAPECのフォーラムが、それぞれのプログラムの中でビジネス・セクターと相互に働きかけを行おうとするアプローチを強く承認し、ビジネス・セクター自体に対して、自らが活動する政策環境の形成を支援する上で積極的になるよう促す。我々は、化学産業界との対話に関するイニシアティブを歓迎する。我々は、透明性とコーポレート・ガヴァナンスにおけるベスト・プラクティスと国際基準の採用を促進するために、経営者の団体のネットワークを開発するというABACの提言を支持する。

・我々は、APECにおける女性の統合のための枠組を通じたジェンダー統合に対し現在も強固にコミットしている。我々は、この枠組の実施を一層加速させるためのジェンダー統合に関する特別の諮問グループからの提言を歓迎し、承認する。我々は、これが、メンバー内の全ての人々が改善された経済的・社会的福祉のために潜在能力を十分に実現するという、我々の過去からの努力の継続であると考える。(http://www.apecsec.org.sg/workgroup/gender.html)

・我々は、APEC食料システムの提言の実施に関する閣僚からの進捗状況の報告を歓迎する。我々は、域内の食料部門の重要性に鑑みれば、APEC食料システムがAPECの目的達成に重要な貢献が可能であることを想起する。我々は、農村のインフラ開発、食品貿易の推進、並びに、食品の生産及び加工における技術進歩の普及という、3つの協力分野に同時に対処して行くという我々のコミットメントを再確認する。我々は、APECのフォーラム及びメンバーに対し、ABACからの提言にあるように、この点に関する勢いを高めるよう求める。(http://www.apecsec.org.sg/workgroup/food_sys.html)

・我々は、地方のコミュニティーが地域貿易システムの一部となるための能力を直接的に改善する官民合同のイニシアティブである、「持続可能な経済のための地域統合」に関する進展に留意する。(http://www.riselink.net/) (http://www.pecc.org/food/risesitereport.cfm)

・我々は、閣僚及び実務者に対し、バイオテクノロジーに関連する製品に対する規制が透明でかつ科学的根拠に基づいたアプローチとなるよう、また、生産者及び消費者双方にとっての利益及び意味合いが域内において完全に把握できるよう確保するために、バイオテクノロジー及びバイオテクノロジーを使って生産された食品の進展をモニターするよう求める。

APEC蔵相プロセスの作業から生じた問題

地域経済

・我々は、1997年及び98年の危機により影響を受けたメンバーの経済的・社会的状況において勇気づけられる改善があることに留意する。域内経済全体については、力強い経済成長への回復の兆しが見られつつあるが、自己満足に陥る余裕はない。この進展を持続させるために、構造改革及び健全な政策を継続することが必要である。

・我々は、石油価格の大きな変動が世界経済の回復と石油市場の状況に大きく依存する途上メンバーに及ぼすリスク、及び価格を持続可能なレベルで安定させる必要性に留意する。世界的需要の高まりに鑑み、我々は、消費者と生産者双方の利益のために長期的な価格の安定を推進するよう、供給面での適切な増加及びその他の必要な措置を要請する。

国際金融構造

・1997年及び98年の危機から重要な教訓が導き出せた。金融パニックのリスクを削減するために適切な防止慣行が必要であるとの理解、すなわち、国内バランスシートの一層の強化、効率的な規制を通じた銀行制度の強化、透明性の向上、準政府的保証機関に対するモニタリング及び管理の強化、及び、死活的に重要なものとして、一層持続可能な為替相場制度が必要であるとの理解は、国際社会の反応の焦点となっている。

・我々は、最近のG−20蔵相及び中央銀行総裁会議を歓迎する。同会議では、金融危機に対する各国の脆弱性を減小する方途が検討されるとともに、国際社会がグローバル化の課題にどう対処することが可能かに関して広範な議論が行われた。構造的に重要なメンバーの広範なグループ間におけるそのような意見交換は、国際金融構造の強化を支援するのみならず、途上国側のその他の問題への懸念を前進させるための潜在力を有している。

・サーベイランスは、国際経済及び国内経済の健全性を促進する上で重要な要素である。我々は、IMF/世界銀行金融セクター評価プログラム(FSAP)、並びに、基準及びコードの遵守報告(ROSC)の重要性を確認する。APECメンバーの法的、制度的及び規制の枠組の改善努力を支援することになる、幅広い分野における国際基準、コード及びベスト・プラクティスのガイドラインの策定において前進が見られている。我々は、金融安定化フォーラムにおいて特定された主要な基準を支持するとともに、APECメンバーに対して、各々の状況及び優先順位に応じて、それらの基準を実施するよう促す。焦点を定められ、目標を与えられた技術支援は、メンバーが主要な基準を実施することを支援することになる。

・高レバレッジ機関、資本フロー及びオフショア金融センターに関する金融安定化フォーラムの提言の実施は、国境を越えた資本の流れに関連するリスクを削減し、国際金融の安定性を促進することに貢献することになる。建設的な関与は、メンバーが規制及び監督の枠組を強化するのを支援するために重要である。我々は、同フォーラムが現段階においては高レバレッジ機関の直接規制を提言しなかったが、提言の実施をレヴューした結果、特定された懸念が十分に対処されなかった場合には、それも検討し得ると強調したことに留意する。

・危機の解消に当たって、民間債権者を適切に関与させるための枠組の策定において進展が見られている。我々は、IMF及びその他の関連の機関に対し、努力を継続するよう求める。

・IMFの貸出ファシリティーは、最近、効率性向上のために改革が行われた。我々は、貧困削減への政策及びプログラムに一層焦点を当てるための、国際開発金融機関による作業を支持する。IMF及び世界銀行の代表枠及び出資比率には世界経済の発展が適切に反映されるべきである。

・IMFプログラムを支援する形で国際金融機関により供与される資金を補完するために策定された地域レベルでの協力的な資金取り決めは、危機の予防及び解消のために有効であり得る。この点に関して、我々は、最近の東アジアにおける進展及び北米での類似の取り決めを歓迎する。

・特に、サーベイランス及び危機予防に重点をおいた国際金融構造を強化するための努力は、実質的な成果をあげている。すなわち、レバレッジの縮小及び対外債務の長期化、安定性及び金融危機の回避により融和した為替相場制度とマクロ経済政策の組み合わせ、並びに、外資導入の拡大を通じた、各国の具体的な状況の下でのより強靱な国内銀行システムである。

より強固な基盤作り

・我々は、特に、以下の点について、市場強化のための蔵相による作業を歓迎する。

・「より自由でかつ安定的な資本フローを促進するための自主的行動計画」の発展。蔵相が提言したように、リスクを最小化し、国際資本市場における機会を活用するために、メンバーは健全で信頼できる金融政策の実施に焦点を当てるべきである。メンバーは、また、資本勘定の自由化のためには、強化された金融システム及び効率的なリスク管理の枠組が必要であることに留意すべきである。

・域内の銀行管理の失敗から得た教訓を例示するケース・スタディに基づき、一連の提言を作成することを目標とする、銀行管理の失敗に関するAPECメンバーの経験についての研究。

・金融規制当局の技能開発及び金融監督システムの強化における進展、並びに、保険規制当局の技能開発に関する新たなプロジェクトを含む、この分野における現在進行中の作業。

・コーポレート・ガヴァナンスの改善の必要性に対する明確な認識、並びに、破産法の改革及び金融分野での情報開示を含む、この分野におけるAPECの現在進行中の作業。

・良くデザインされ、かつ費用面で効率的なソーシャル・セーフティー・ネットを開発するためのガイドライン。

・国有企業のガヴァナンス及び規制を含む、民営化に関する経験及び専門的知見を共有するための方途としての民営化フォーラムの設立。

・第3回年金基金フォーラムからの、特に、教育、基金管理、及びグッド・ガバナンスに関する提言。

・金融犯罪に対処するために、国内の法律及び規制の枠組を調査するためのAPECの作業グループの設立。

・格付機関の行動規範及び慣行のレヴュー、並びに、透明性の向上を促す環境醸成の継続。

・電子金融取引に関連する問題を検討するためのAPECの作業グループの設立。

付属書1

ニュー・エコノミーのための行動指針

 我々は、出現しつつあるニュー・エコノミーの経済的、社会的利益を完全に獲得することが出来るようにするためのヴィジョンを、ブルネイにおいて策定した。

 APECは、「電子商取引自己評価」、ペーパーレス貿易、電子個別行動計画、及び電子商取引に関連する分野における組織や人材のキャパシティー・ビルディングを含め、ニュー・エコノミーに関して前進するため、数多くの行動を取ってきた。

 このような始まりを活用し、我々のヴィジョンを達成するため、我々は、正しい政策環境を促進し、キャパシティー・ビルディングを行うことを目標として、以下の行動指針を示す。

 我々は、これがまだ出発点であり、APECメンバー間、並びに、ビジネス界、政府、及びコミュニティー内の極めて広範な層との間で、協力及び連携が必要であることを認識する。

 我々は、閣僚に対し、以下の目的を達成するため、利害関係者と協議し提携しつつ、この指針を発展させ、拡大していくよう指示する。

・財とサービスの分野での貿易及び投資に関する新旧の様式が、新しい環境において十分に機能することが出来るよう、市場構造及び制度を強化する。

・インフラ及び技術開発への投資を誘発するような政策環境を開発する。

・包括的で質の高い教育、訓練、及び技能開発プログラムを通じて、技術革新及び起業家精神を誘発し、人材養成を行い、知識を向上させる。

市場構造及び制度の強化のための環境整備

・最もダイナミックな企業に資金を提供する能力を改善するために、金融市場及び監督・規制の枠組を強化する。

・電気通信及びITサービスの貿易自由化のために、競争促進的でかつ市場に則した政策枠組みに向けた作業を継続する。

・電子個別行動計画(e−IAP)の改善を継続する。自由化に向けた各メンバーの進捗状況を記録するために、透明性が高くかつユーザーが使いやすい方法にする。

・全てのコミュニティーが安価で質の高い電気通信サービス及びインターネットを利用できるようにするための作業において、政府とビジネス・セクターの協力を強化する。

インフラ関連投資、技術開発を行う起業家精神のための環境整備

・APEC域内に通じる消費者保護、電子取引の文書及び署名のための、整合性があり、かつ好ましい、法律及び規制の枠組作成に向けて、合意された作業計画を発展させる。

・中小企業が貿易及びビジネスの全ての面においてICTを最大限活用することが確保されるように、作業を継続する。

・電子貿易に参加するための障害を除去するための現実の行動を示した「自己評価パートナーシップ」のフォローアップの実施を含め、個別行動及び共同行動を更に探求するための、「APECメンバーのためのAPEC電子商取引自己評価」の結果を活用する。

・消費者保護、関税手続、運輸サービス、基準・適合性、及びビジネス関係者の移動の分野において、適切なフォーラムを通じ作業を継続する。

・この地域でビジネスを行う上で有益、適切、かつダイナミックな、一カ所で用を済ますことが出来るようなポータル・サイトとして新たに開設された、BizAPEC.comを改善する。

・電子政府がもたらすであろう効率性の向上、政府の提供するサービスへの一般からのアクセスの向上、及びビジネス・セクターが電子商取引を採用する上での触媒としての機能を考慮して、電子政府の実現に向けた協力を強化する。

・次回WTO閣僚会議までの間の電子商取引への関税賦課に関するモラトリアムに対するコミットメントを再確認し、電子商取引の利用及び開発を制限するような不必要な措置を回避することの重要性を認識し、電子商取引の進化に対してWTOのルールがどれほど適切であるかを検討する特別の分析タスク・フォースをWTO内に設立することを要請する。

・コンピューター及び周辺機器の適合性要件の簡素化を行うとの合意、並びに、通信機器に関する相互承認取り決めを実施する。

・情報及び技術協力のプログラムを通じて、ソフトウェア及び他の知的財産に関するユーザーによる強力な管理体制を推進するための合意を実施する。

人材の養成と起業家精神の開拓

・民間セクターと緊密に協力しつつ、トレーニング・ニーズに関する理解を深め、地場産業が必要とするものを支援するようなプログラムを実施するために、アジア太平洋地域を通じた技能開発センターのネットワークを構築する。

・経済・技術協力及びキャパシティー・ビルディングのプログラムを開発するために、「電子商取引及びペーパーレス貿易に関するハイレベル・シンポジウム」を2001年に開催する。

・学習する社会におけるITの活用を強調し、共通の課題に直面する上でのアイデアや経験を共有し、遠隔教育の分野を含め、急速な技術革新によってもたらされた機会を探求しつつ、基礎教育を含む質の高い教育を促進するために、共同で作業を継続する。

・教育分野でのICTの活用に特化している研究機関及び教育者訓練機関をつなぐ、「APECサイバー教育ネットワーク」の創設に向けて作業する。

・デジタル技術の活用という面で恵まれていないメンバーにおいて、情報収集、研究、及びその他の教育目的でのインターネットの活用に関して訓練や教育を提供するために、「APEC青年インターネット・ボランティア・プログラム」に対する支援を求める。

・急速な技術変化の時代には柔軟な労働市場が不可欠であることを認識しつつ、APECにおける教育および人材養成アジェンダの下での生涯学習の強調を通じて、生涯雇用への対応を継続する。

・効果的な国内発明システムを創設することを目的として科学技術におけるAPECの協力を強化する。

・電子商取引におけるベスト・プラクティスを共有し、優先分野を特定し、ユーザーに合わせた訓練・コンサルティング・プログラムを作成しつつ、現在進行中のやり方で、ビジネスにおけるICT活用に対する理解と活用を促進する。

・デジタル機会及び政策的立場の検討に役立てるための知識ネットワークを創設するために、「電子商取引に関するグローバル・ビジネス・ダイアログ」(GBDe)やその他の民間セクターの組織との協力を促す。

知識の重要性

 我々は、ビジネス環境、発明システム、人材開発及び情報通信技術という問題に焦点を当てた知識集約型経済に関するAPECの報告を、ニュー・エコノミーにおけるAPECの将来の作業を計画するための貴重な助言として歓迎し、閣僚に対し、同報告に含まれる提言の実施のための詳細な計画の準備作業を継続するよう求める。