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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 貿易とデジタル・エコノミーに関するAPEC政策実施のための声明

[場所] ロス・カボス、メキシコ
[年月日] 2002年10月27日
[出典] 外務省
[備考] 概要
[全文]

・APEC首脳は、2000年にブルネイにおいて、「電気通信及びITサービスの貿易自由化のために、競争促進的でかつ市場に即した政策枠組みに向けた作業を継続する」ことを、また、昨年の上海において、ニュー・エコノミーのための貿易政策目標を設定することに合意した。

・国際ビジネスの手段としてのインターネット接続及び電子商取引の活用の急激な増大は、ネットワーク化された世界を促進する貿易政策の策定を必要とする。

・APECエコノミーは、財・サービスが関税や他の障壁なしに電子ネットワークにより交換可能となるデジタル・エコノミーのための効果的な貿易ルールを通じて商取引環境を自由化するため、建設的に努力する必要がある。

・APECエコノミーは、大阪行動指針(OAA)の一般原則を考慮しつつ、以下の目的のパスファインダーとしての実施を支持することを合意する。

1.一般目的

(1)デジタル・エコノミーは自由で開かれた貿易環境において繁栄すべきであり、これが更なる電子商取引の発展と経済成長につながるものである。

(2)様々な関連するモノ・サービス分野にわたる市場アクセスと内国民待遇のコミットメントは、電子ネットワークを利用したモノ・サービスの貿易を促進する。

(3)正当な政策目標が、電子ネットワークを利用したモノ・サービスの貿易に影響を与えるような国内規制を必要とする場合、その規制は、エコノミー間の国際的コミットメントを考慮し、透明で非差別的であり、貿易に対する制限は最小限であるべきである。

(4)デジタル貿易の自由化の重要性にかんがみ、エコノミーは電子送信に対する長期的な関税の暫定不賦課を支持する。

(5)途上エコノミーがニュー・エコノミーの恩恵を十分に享受できるよう確保する観点から、エコノミーは、貿易とデジタル・エコノミーを促進する需要に基づいたキャパシティ・ビルディング・プロジェクトを支持する。

1.個別目的

(6)APECエコノミーは、他のWTOメンバーに対し、APECエコノミーが以下のデジタル・エコノミー関連分野において支持する開放度と同程度のものを追求するよう奨励することを含め、デジタル・エコノミーにおける貿易関連分野の市場解放を追求するWTO交渉に対し、共同でリーダーシップをとることを合意する。

サービス{前4文字下線}

(イ)電子商取引にとって重要と認められるサービスに関し、各エコノミーは、サービス供給者数及び電気通信を含む外資支配制限を漸減し、又は撤廃し、及び最小限の例外を除く市場アクセス、内国民待遇を承認する。

(ロ)電子商取引にとって重要と認められるサービスにつきWTOサービス交渉にオファーを提出する。

(ハ)WTO基本電気通信参照文書をできるだけ早期に採択・実施する。

(ニ)WTO非メンバーは加盟交渉において多くの約束が求められ、WTO基本電気通信参照文書の採択・実行が勧奨される。

知的所有権{前5文字下線}

(イ)「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」を完全に実施する。

(ロ)「著作権に関する世界知的所有権機関条約」及び「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約」を批准する。

(ハ)政府機関における各種合法的ソフトウェアのみの使用を適切な監督メカニズムを通じ確保する。

(ニ)可能な限り、インターネット及び電子商取引が模造品等の貿易を助長することがないようにし、適切な規制・取締制度を構築する。

関税{前2文字下線}

(イ)WTO情報技術協定(ITA)へ参加するとともに、できるだけ早期にWTO・ITA委員会へコミットメント・スケジュールを提示する。

(ロ)追加的な情報技術製品への関税撤廃に向け取り組む。

(ハ)WTO統合データベース(IDB)へ関税・貿易データを提出する。非WTOメンバーは、同種データをできるだけ早期にAPEC関税率データベースに提出する。

今後の作業{前5文字下線}

(イ)実務者は、以上の目的に関するエコノミーの進捗状況について見直し、2003年の閣僚会議に報告する。

(ロ)実務者は、デジタル・エコノミーにおける貿易・投資の自由な行き来を確保する上で重要な分野に関する情報交換及び貿易政策目標の設定を謳った上海アコードの進捗状況について、毎年閣僚会議に報告する。

パスファインダー・イニシアティブ参加エコノミー

 ブルネイ、中国香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュー・ジーランド、パプア・ニュー・ギニア、ペルー、フィリピン、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、米国及びベトナムの計16エコノミー。