データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第15回APEC閣僚会議共同声明

[場所] バンコク
[年月日] 2003年10月18日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中華人民共和国、中国香港、インドネシア、日本、大韓民国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、アメリカ合衆国、ベトナムの閣僚は、世界貿易の47%、世界のGDPの60%以上を共同して占める地域を代表して、2003年10月17日及び18日にバンコクで開催された第15回アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に出席した。APEC事務局も同会議に出席した。東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局、太平洋経済協力会議(PECC)及び太平洋島嶼国フォーラム(PIF)は、オブザーバーとして出席した。

 タイのスラキアット・サティアンタイ外務大臣及びアディサイ・ポータラミック商務大臣が会議の議長を務めた。

 閣僚は、開かれた多角的貿易体制に基づくアジア太平洋地域における安定した経済成長へのコミットメントを新たにした。雇用創出と人々の生活水準向上のために、APECの21メンバーの多様且つ比類ない力の活用を通じて、自由で開かれた貿易及び投資というボゴール目標を達成する誓いを再確認した。全ての者にとって公平で共有された繁栄に向けて取り組む中、閣僚は、APECの2003年作業プログラムの実施を見直し、2004年のAPECの新たな方向性と課題を設定した。これらの成果は、2003年のAPECのテーマ及びサブ・テーマに従い、以下のように整理される。

「相違ある世界:未来に向けたパートナーシップ」

・開発への誓約の実行

・全ての者のための知識基盤型経済

・人間の安全保障の促進

・相違ある世界のための金融構造

・新規成長企業:中小企業及び零細企業

未来に向けたパートナーシップ

 APECが、自由で開かれた貿易及び投資を先進メンバーについては2010年までに、途上メンバーについては2020年までにというボゴール目標を達成するために、閣僚は、全てのAPECメンバーに対し、メンバー間のみならず、市民社会、ビジネス部門や学界といったその他の利害関係者や主体との間でも効果的なパートナーシップをもって協力することを要請した。特にAPECは、文化的な相違や経済発展の程度にもかかわらず全ての者に目に見える利益をもたらすため、専門知識や資源をより利用し活用すべく、国際金融機関(IFI)と協力して取り組むことが奨励される。

開発への誓約の実行

 その多様性にもかかわらず、APECの協力の精神は、援助側と被援助側の関係を通じてではなく、経済・技術協力と提携して機能している貿易と投資の自由化及び円滑化の課題の支えとなっている。このプロセスを通じ、APECは、人々とコミュニティを地域経済活動の本流に統合し、APECがボゴール目標に近づくにつれ、貿易と投資のより力強いパートナーへと変貌させるのである。

世界貿易機関(WTO)

 閣僚は、世界貿易機関(WTO)ドーハ開発アジェンダ(DDA)が、農業改革、物品とサービスの改善された市場アクセス、及び貿易の規律の明確化と改善の分野において、全てのメンバーとりわけ途上メンバーに真の利益の可能性を提供していることに合意した。閣僚は、2003年9月10日から14日にかけてメキシコのカンクンで開催された第5回閣僚会議において、DDA推進の機会を逸したことを遺憾とした。閣僚は、いくつかの交渉分野で進展があったことに留意し、TRIPSと不可欠な医薬品へのアクセスに関する最近の歴史的決定を歓迎した。

 DDAを前進させ、DDAに野心的でバランスのとれた結果をもたらすために、閣僚は、共通の目標とコミットメント、及び成功した多角的貿易自由化の特徴となっているWTO全メンバーによる貢献を再構築する必要につき合意し、開発の側面がDDAの中枢をなしていることを改めて表明した。

 閣僚はまた、ロス・カボスでの首脳宣言を想起し、交渉の目的の一つは、あらゆる形態の農業輸出補助金、不当な輸出禁止・輸出制限の撤廃であるべきことを改めて表明した。閣僚は、貿易規律の明確化と改善を目的としたルール交渉グループで行われている作業にコミットし続ける。

 閣僚は、全てのメンバーからの柔軟性と政治的意思が緊急に必要とされていることを認識し、全てのWTOメンバーに対し、2003年9月13日付デルベス議長テキストを基礎に議論を積み上げていくことにより、早急に交渉プロセスを再活性化することを要請した。閣僚はまた、2003年12月15日までに将来の交渉作業プログラムを策定するため、農業、工業品の市場アクセス、シンガポール・イシューのようにカンクンで議論の中心となった分野について、一般理事会において協議を始めるというWTO一般理事会議長のイニシアティブを支持した。閣僚は、既にAPECにおいて行われている貿易円滑化の貴重な作業がWTOの交渉の文脈においても有益となることを留意した。閣僚は、こうした交渉を前進させていく上で柔軟性を示す意向を強調し、貿易のパートナーに対しても同様の行動を求めた。

 閣僚は、途上メンバーがWTOのDDA交渉に十分に参加し、WTO加盟の恩恵を十分に享受することを支援する上で、効果的なWTOキャパシティ・ビルディング活動が重要であることを再確認した。DDAの成功裏の終了に貢献するため、閣僚は、キャパシティ・ビルディングの重要性を再確認し、高級実務者に対し、途上メンバーが特定した要望への対応に重点を置くことを指示した。閣僚は、APECのキャパシティ・ビルディング分野での貢献を認識し、高級実務者に対し、将来のWTOキャパシティ・ビルディング活動を改善する措置や慣行を特定し、これらをDDA交渉の再活性化に可能な限り効果的なものとするために、これまでの経験及びカンクンにおける第5回WTO閣僚会合で得られた教訓について検討することを指示した。

 閣僚は、ジュネーブの実務者に対し、DDA交渉の議題を進めていくにあたり、バンコクで行われた議論とそこで彼らに与えられた指示をフォローアップすべく、APEC/WTO部会による作業のモメンタムを高めていくよう指示した。

 閣僚は、ロシアとベトナムのWTO加盟に対する支持を改めて表明した。閣僚は、これらメンバーのWTOへの早期加盟を求めていくことで合意した。閣僚は、WTO加盟に向けての交渉プロセスを加速するため信頼や能力を構築していく上で、APECのキャパシティ・ビルディング・プログラムがロシアとベトナムを支援しうることに合意した。

 閣僚は、各メンバーが全ての分野及び供給態様において一層高い透明性を提供することを奨励する努力が現在のサービス交渉において行われていることに留意した。APECメンバーによる一層高い透明性は、そのような努力を推進し、域内における物品とサービスの投資と貿易を促進する。閣僚は、メンバーに対し、透明性に関する議論の継続と、第4モードも含むサービス協定における夫々の特定のコミットメントに関する情報開示状況を改善する実質的かつ効果的方法につき検討することを奨励した。

構造改革

 閣僚は、ボゴール目標を達成するための貴重な方途の一つとして、APEC域内における構造改革を引き続き推進していく決意を強調した。市場開放政策は構造改革を推進する真剣な努力に補填され、関連分野での政策や慣行が常に見直されるように、作業は継続されなくてはならない。閣僚は、「国境での」貿易・投資の自由化及び円滑化イニシアティブを支援するため、「国境内での」改革が必要であると改めて表明した。

 閣僚は、APECの現在及び将来の構造改革の作業を調整し推進することにより、各メンバーの構造改革実施能力の向上を支援する統一的枠組として、「APEC構造改革行動計画」を採択した。同行動計画には、物品とサービスの貿易に対する構造的障害、競争政策及び規制緩和に関する研修、企業統治と破産制度、企業再編及び経済法制度整備などの分野における活動が盛り込まれている。閣僚はまた、構造改革の取組を補完するために、ソーシャル・セーフティー・ネットの強化を奨励した。閣僚は、高級実務者に対し、「APEC構造改革行動計画」の実施の進捗状況について、2004年の第16回閣僚会議(AMM)の場で報告することを求めた。

 閣僚は、商法、会計システムや競争政策等でのイニシアティブを含む、経済法制度整備調整(SELI)キャパシティ・ビルディング・プロジェクトの進展を歓迎した。閣僚は、「APEC地域における債権回収訴訟・調停に関する調査」報告及びAPEC地域における商法の強化に関する報告作業の開始に留意し、ビジネス活動にとり、より透明性が高く、より予測可能性が高い環境が重要であることを再確認した。閣僚はまた、高級実務者に対し、SELI調整グループによる過去のプロジェクト結果も考慮して、更なる経済法制度整備関連の活動を策定するよう指示した。

 閣僚はまた、良い統治は持続可能な経済成長と発展の基礎をなすものであると認識し、APEC地域全体における良い統治の慣行の実施を強く支援する。

貿易・投資の自由化及び円滑化

 閣僚は、APECの貿易と投資の自由化及び円滑化の活動に関する貿易投資委員会2003年年次報告を承認した。

 閣僚は、域内の投資の流れの自由化及び円滑化において多大な進展がAPECによって成されたことを歓迎し、メンバーに対し、投資協力を更に重視することを求めた。

個別行動計画と共同行動計画

 閣僚は、各メンバーの個別行動計画(IAP)に示されている行動を通じてボゴール目標を達成しようとするコミットメントを再確認した。閣僚は、「IAPの改善に関する2003年高級実務者報告」を承認し、貿易円滑化に関して各メンバーが着手した活動や措置を歓迎した。閣僚は、全てのメンバーに対し、貿易円滑化に関するIAPの新しい章において、進捗状況につき報告するよう促した。閣僚は、このIAPの貿易円滑化に関する章が、2006年までに取引費用の5%削減という上海アコードの目標に向けて、進捗状況を追跡する有用な道具となることに合意した。取引費用の削減による増収は、ビジネス界へと戻り、それが貿易量の拡大、新規雇用の創出及び消費者にとっての低価格となる。

 APEC食料システムに関する新たなIAPの章も、IAPプロセスへの歓迎すべき付加となった。1999年のAPECのイニシアティブであるAPEC食料システムは、農村部のインフラ開発、食料生産及び加工における技術的進歩の普及、食品貿易の自由化と促進を堅固な地域食料システムへ統合させるものである。このシステムは、効率的で安全な食料生産を支援し、食品の効果的な貿易を促進し、及びその要請が適正な科学に基づいていることを確保することにより、APECの目標達成に重要な貢献を行っている。この観点から、閣僚は、2004年の農業技術協力作業部会(ATCWG)による農業に関するハイレベル政策対話の可能性を探る計画に留意した。

 閣僚は、また、経済法制度整備(SELI)を新しい章として含めるべく大阪行動指針(OAA)が昨年拡大された後、メンバーの合意を得られた、経済法制度整備(SELI)の年次報告体制を歓迎した。この報告体制は、各メンバーが改善を必要とする経済法の分野を特定することを支援し、当該分野における各メンバーの努力を後押しするものである。更に、この体制は、当該分野におけるAPECメンバー経済間の政策議論や相互協力を促進させる。閣僚は、高級実務者に対し、その他の関連IAPとの関係を考慮した上で、更にこの体制を改善するよう指示した。

 閣僚は、オーストラリア、カナダ、中国香港、日本、韓国、メキシコ、ニュージーランド、タイが成功裏に終了した2003年IAPピア・レビューを歓迎した。閣僚は、チリ、中国、ペルー、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、アメリカ合衆国の2004年ピア・レビュー完了に向けた進展に留意した。閣僚は、2005年の第1回高級実務者会合(SOMI)までに全21メンバーのIAPピア・レビューを完了し、ボゴール目標達成に向けた全体的な進捗状況に関する2005年の中間見直しを実施するというコミットメントを再確認した。この中間見直しに関する準備完了については、第16回APEC閣僚会議(AMM)開催までに合意されるべきである。

 閣僚は、共同行動計画の実施による進展に留意しつつ、高級実務者に対し、ビジネス界にとっての目に見える利益を生みだしボゴール目標を達成するべく、共同行動計画を迅速に見直し、漸進的な改善を行うよう指示した。

 閣僚は、1998年に策定された「APEC経済強化のための投資の自由化とビジネスの円滑化に関するオプション・メニュー」が競争政策や規制改革、キャパシティ・ビルディング・プログラム及び投資分野でのメンバーの能力向上を含めて拡大されたことを歓迎した。閣僚は、ほとんどのメンバーによってオプション・メニューの実施に焦点をあてた報告書が準備されたことに留意し、他の全てのメンバーに対しオプション・メニューの実施状況に関する報告の出来るだけ速やかな提出を促し、この重要な分野において投資専門家会合が作業を進めることを奨励した。

貿易円滑化行動計画

 閣僚は、APEC貿易円滑化行動計画(TFAP)を実施する各メンバーの作業、中でも各メンバーが個別に選択した活動や措置を称賛した。閣僚は、複数のメンバーが、貿易円滑化の活動や措置による恩恵が如何に数量化できるかという研究を発表したことに留意し、この種の詳細を提出する努力を強化するよう奨励した。閣僚は、取引費用の5%削減を測定する手段の一つとして、複数のメンバーによって実施された通関所要時間調査を歓迎した。2006年までの取引費用を5%削減という首脳の目標をAPECが確実に達成するために、閣僚は高級実務者に対し、具体的な活動と措置を特定し、実施することを指示した。この点に関し、閣僚は、貿易円滑化の最善の慣行に関して収集した情報は、貿易円滑化による利益を最大化する観点から、APEC地域の言語で閲覧できるようにすべきであるとの考えである。

 閣僚は更に、高級実務者に対し、中間レビュー及び2004年の第3回高級実務者会合の際に予定されている貿易円滑化に関する拡大対話への準備開始を指示した。閣僚は、中間レビュー、及び各メンバー、非政府組織からの専門家及び民間部門からの代表者が参加する拡大対話は、上海アコードの付託事項達成に向けたこれまでの進捗状況につきAPECメンバーに正確な見解を与えるものであることに合意した。

 閣僚は、取引費用削減によりAPECメンバーは相当規模の経済的利益を実現できると推計した、世界銀行による「貿易円滑化の経済的利益の評価及び調整されたキャパシティ・ビルディングのための勧告」等、最近の研究に対する感謝を改めて表明した。閣僚は、高級実務者に対し、他のWTOメンバーが達成しうる同様の利益についての情報を共有するために作業計画を策定するよう指示した。

 閣僚は、高級実務者に対し、域内における国境を越えた物や人の移動及び税関検査に資するAPEC全域にまたがる具体的な行動及び措置の特定を指示した。閣僚はまた、高級実務者に対し、貿易円滑化と安全な貿易の分野における進展を考察する調査の進捗報告を含め、貿易円滑化行動計画の実施のために各メンバーを支援する更なる信頼醸成及びキャパシティ・ビルディングの活動を策定するよう求めた。閣僚は、費用削減がビジネス部門へ与える効果と利益を示す監視メカニズムの策定を期待し、高級実務者に対し、2004年の第16回AMMにTFAP(貿易円滑化行動計画)の進展につき報告することを指示した。この観点から、閣僚は、2003年10月にバンコクにおいて市場アクセスグループの主催で開催され、参加者が非関税措置(NTM)と貿易円滑化の与える影響の評価のための最新の分析方式について意見交換を行った「NTM及び貿易円滑化の評価のための数量方式に関するAPECワークショップ」の結果を歓迎した。APECの途上メンバーの貿易政策専門家間での能力構築により、本ワークショップは、2006年までの取引費用を5%削減という目的達成に向けた進捗状況の評価において各メンバーを支援することを含め、多岐にわたる議題について政策決定者により良い情報を与えることになろう。

 閣僚は、チャイニーズ・タイペイで2003年9月に行われた「国境を越えたペーパーレス貿易環境を目指して−貿易円滑化行動及びAPEC国境を越えたペーパーレス貿易環境創設のためのロードマップ」と題するシンポジウムの結果に留意した。閣僚は、APECの関連フォーラムに対し、その勧告、特にAPEC域内のペーパーレス貿易の目標を先進メンバーについては2005年までに、途上メンバーについては2010年までに達成するというコミットメント等の検討を要請した。

 閣僚は、貿易と安全保障は相互補完的な問題であることに留意した。したがって、APEC域内における安全な貿易確保(STAR)等安全保障に関係する措置の実施については、貿易に直接結びつく費用を最小化する必要性を考慮すべきである。

APEC透明性基準の実施に関する首脳声明

 閣僚は、サービス、投資、競争法・政策及び規制改革、基準及び準拠、知的所有権、税関手続、市場アクセス、及びビジネス流動性に関する分野別透明性基準を承認し、実務者に対し、2004年の貿易大臣会合までに政府調達の分野別透明性の作業を完了するよう指示した。閣僚は高級実務者に対し、各メンバーが2004年以降に一般透明性基準の実施状況を報告する際に使用するために開発されたテンプレートを更に改善するよう要請した。閣僚は、各メンバーが首脳の透明性基準を国内法体制の中で実施することを確保すべく、貿易大臣によって合意された2005年までの透明性戦略の承認を首脳に勧告することに合意した。閣僚は、高級実務者に対し、分野別透明性基準の実施が如何に個別行動計画(IAP)において追跡可能であるかの研究を指示し、途上メンバーが2005年1月までAPEC透明性基準を実施することを支援するべく、需要に基づくキャパシティ・ビルディングの策定を求めた。更に、ビジネス界はAPECの貿易円滑化の課題に重要な貢献を行うので、閣僚は高級実務者に対し、これらの基準がビジネス界に対しても十分に広報されるよう要請した。

 閣僚は、透明性の強化は汚職との闘いに資することを認識した。閣僚は、既に多くのメンバーにおいて、汚職を排除することを目的とした適正な法制、機関や枠組が官民両部門に存在していることに留意した。閣僚は、これら汚職対策措置は精力的に執行されるべきであり、適当な場合には、我々の共通の目標達成のために、法制、機関や枠組は強化されるべきであることに合意した。

パスファインダー・イニシアティブ

 閣僚は、協調的措置の開始と履行が可能なメンバーは参加する一方、準備ができていないメンバーについては後日参加が可能となる、パスファンダー・イニシアティブの重要な役割を再度強調した。この関連で、閣僚は全メンバーに対し、ボゴール目標に向けた時宜を得た進展を確保するために、パスファンダー・イニシアティブに参加するための積極的な手段を取ることを求めた。

 参加メンバーの閣僚は、2002年の「貿易とデジタル・エコノミーに関するAPEC政策の実施のためのパスファンダー声明」を実施するべく、貿易担当大臣が採択した「次のステップ」行動計画を承認した。閣僚はまた、電子商取引、サービス、知的財産権及び関税の分野において、デジタル・エコノミーに関する首脳声明を実施するためにこの計画の下でこれまでに達成された進展を歓迎し、「次のステップ」計画の下での作業の継続を指示した。

 閣僚は、本声明に添付されている了解に基づき、デジタル・エコノミーに関する首脳宣言に参加を決めたチリの決定を歓迎する(付属A参照)。閣僚は、高級実務者に対し、参加メンバーの提案を踏まえ、関税を撤廃できる追加的な情報技術関連品を特定する作業を行うよう指示した。閣僚はまた、「2002年の貿易とデジタル・エコノミーに関するAPEC政策の実施のためのパスファインダー声明」の参加メンバーの高級実務者に対し、「将来の作業」文章の下での技術選択及び電子関連製品の非差別的貿易に関する作業を指示した。

 閣僚は、人類の才能と想像力を膨らませる上で極めて重要であり、文化的に多様な物資の創造への投資を促進するとの観点から、既存の枠組や国際的約束と整合した効果的な知的所有権の保護の重要性につき合意し、著作権侵害の光ディスクの生産、輸出入及び流通の排除に必要な規制・執行環境を生み出すために、デジタル著作権侵害イニシアティブの下で作業を続けることに合意した。この目的のため、デジタル・エコノミーに関する首脳宣言への参加メンバーの閣僚は、「光ディスクの生産関連規制のための効果的な慣行」を承認した。閣僚はまた、APEC地域における海賊版光ディスク対策の最善の執行手続に関する第1回報告に留意し、来年の貿易担当大臣会合に最終報告を提出するべく、2002年の「デジタル・エコノミーに関する首脳声明」に参加しているメンバーが速やかに執行手続に関する情報を提供することに合意した。閣僚は、実務者に対し、デジタル・エコノミーに関する首脳声明の下での新たな作業分野を引き続き模索するよう指示した。閣僚はまた、途上メンバーが電子取引から恩恵を受けることを支援すべく、需要に基づくキャパシティ・ビルディングの策定を求めた。

 閣僚は、パスファインダー・イニシアティブとして、APEC分野別食品相互認証取決め(MRA)の発足を歓迎し、このイニシアティブ促進を助ける最初の方法として食品規制に関する効果的且つ/又は最善の慣行について共有するようメンバーを奨励した。このイニシアティブは、農業生産者にはより大きな利益を与え、消費者には価格低下の利益をもたらす。このイニシアティブは、APEC食料システムに関するAPECの努力も支援するものである。

 閣僚はまた、以下のパスファインダー・イニシアティブでの進展を歓迎し、各メンバーに対し、パスファインダー・イニシアティブに積極的な参加を求めた。

・片務的事前旅客情報システムの実施

・税関手続の簡素化及び調和に関する改正京都規約の採用

・電子検疫(SPS)証明書

・電子原産地証明

・電気及び電子機器の適合性評価に関する相互承認取決め(第2部、第3部)

・企業統治

地域貿易協定/自由貿易協定

 閣僚は、APEC域内における自由貿易協定・地域貿易協定(FTAs/RTAs)の策定を認識し、2003年5月にタイのコンケンで開催されたAPECの第1回RTAs/ FTAs に関する政策対話を歓迎した。

 FTAs/RTAsが多角的貿易自由化に貢献しうることを認識しつつ、閣僚は、FTAs/RTAsがWTOのルールと原則及びAPECの目標と原則とに整合しなければならない点について首脳が強調したことを改めて表明した。閣僚は、もしFTAが包括的であれば、域内の競争的な自由化を推進することが可能であり、ドーハ・ラウンド交渉に向けたモメンタム形成を助長できることに留意した。閣僚は、2004年5又は6月にチリのプコンで、FTAs/RTAsに関する第2回政策対話が開催されることを歓迎した。閣僚は、APEC域内において、更には、太平洋経済協力会議(PECC)等の関連機関とともに、ボゴール目標の達成に向けたFTAs/RTAsの貢献を最大化するための作業の継続を支持した。特に、閣僚は高級実務者に対し、APECの作業議題の中に、定期的にRTAs/FTAsに関する議論を含ませる方途に関する作業を進展させるよう指示した。

APECビジネス諮問委員会

 閣僚は、域内のビジネス環境の改善につき具体的な助言を提供するAPECビジネス諮問委員会(ABAC)の独自の役割を確認した。閣僚は、APEC経済首脳に対するABACの2003年報告書の提示を歓迎し、APEC各メンバーがコミットメントを実行すべく断固として行動するよう求めたABACの要請を認識した。閣僚はABAC報告にある5つの主要メッセージを歓迎した。

・自由で開かれた、透明性の高い貿易を推進するAPECのコミットメントの再確認。特にボゴール目標の達成とドーハ開発アジェンダ推進のためのコミットメントの再確認。

・自由化の恩恵を確保するための貿易の円滑化、及び安全保障上の措置が正当な商取引を阻害せず、むしろ貿易円滑化の機会を提供することを確保しつつ、2006年までに取引費用を5%削減するコミットメントの再確認。

・自由化によってもたらされる成長が、均衡がとれ、公平で、持続可能であり、強化された財政システムに資することが確信できるようなキャパシティ・ビルディングの探求

・市場への信頼回復のために、良い統治、透明性、国際規格の適用、準拠手続を促進するための民間部門との協力、及び

・APECの努力がビジネス環境と域内経済の実質的改善に帰結するために、ビジネス界からのインプットや参加に対し、APECが常に開かれたものであることの確保。

 閣僚は、2003年のABACと高級実務者の間のより緊密な作業関係に満足をもって留意し、ABACが引き続き建設的かつ具体的な勧告を提供し、APECの目標の達成とこれら目標を実際の経済成長及び恩恵へ転換することを確保すべく実務者に関与していくことに感謝の意を表明した。

 閣僚は、金融財政の安定は、APEC経済の再活性化の鍵となるという事実に留意した。閣僚は、市場に信頼を取り戻すために、APECの金融システムを強化し、金融財政環境を確保し、統治や透明性を改善すべきであるとのABACの勧告を歓迎した。閣僚はまた、財務大臣プロセスに対し、APEC域内において、ビジネスに対する健全な投資環境の創出に貢献する措置の実施に関し、ABACと作業を行うよう勧告した。

APECのビジネス界と政府との対話

 閣僚は、自動車及び化学ダイアローグの結果、ビジネス界と政府との間の卓越した理解が達成したことを歓迎した。

 自動車部門は世界貿易の約10%を占めている。2003年6月に開催された第5回APEC自動車ダイアローグの要請に応え、閣僚は、自動車部門の保護の水準を引き上げる効果を持つような措置の採用を回避すべく努力することを再確認した。閣僚はまた、域内の自動車部門の一層の統合と発展を図る戦略を策定するための自動車ダイアローグへの支持を継続する。

 化学部門では、閣僚は、欧州委員会の化学品および派生品の規制枠組みに関する提案(REACHシステム)に関するメンバーの懸念に引き続き留意した。閣僚は、多くのAPECメンバーが上述の提案されているシステムに対して詳細なコメントを提出したことを認識し、欧州委員会に対し、同提案の貿易効果や貿易政策への影響の慎重な考慮を求めた。閣僚は、APECで貿易の非関税障壁を特定しようとする化学ダイアローグの努力を、ドーハ開発アジェンダへの貢献の一部としても歓迎する。

 閣僚はまた、2003年9月にチャイニーズ・タイペイで開かれ、化学製品の分類、ラベリング、安全情報管理に関するGHS方式を採用するメカニズムとその利点について参加者間の意見交換が行われた「国際統一システム(GHS)キャパシティ・ビルディング・セミナー」の成果を歓迎した。

 閣僚は、2003年8月にロシアのブラーツクで開催された試験的なセミナーの結果を歓迎し、2004年に第1回APEC非鉄金属対話を開催することを承認した。閣僚は、実務者に対し、第1回対話開催の組織的及び技術的側面について、GEMEEDやその他のAPEC関連フォーラムと協議することを要請した。

経済・技術協力とキャパシティ・ビルディング

 閣僚は、APEC全般にわたる経済・技術協力(ECOTECH)の重点目標リスト、いわゆるECOTECH重点目標を承認した:

・グローバル経済への統合

・知識基盤型経済の発展の促進

・グローバル化の社会的側面への対応

・テロ対策におけるキャパシティ・ビルディング

 これらのECOTECH重点目標は、域内の経済的、社会的発展へのAPECの貢献の指針となる。この重点目標は、最新の全般的な戦略的焦点と、将来のECOTECH活動の戦略的ロードマップを提示するとともに、APECがその構成員とより良く意志疎通することを可能にし、外部機関から更なる支援を引きつける努力を促進するものである。貿易・投資の自由化及び円滑化(TILF)とECOTECHの相互補完的、分野横断的な特色は、重点目標リストにも反映されている。しかし、重点目標リストは、首脳によって特定されるかもしれない、将来の重点目標へのAPECの対応を排除するものではない。各メンバーは、追加的なECOTECH及びキャパシティ・ビルディング活動を実施することができる。閣僚は、SOMに対し、4つのECOTECH重点目標の下でのキャパシティ・ビルディング・プロジェクトの特定及び実施に焦点を当て、2004年の閣僚会議に報告するよう義務づけた。

 閣僚は、「2003年経済・技術協力に関する高級実務者報告」を歓迎し、その勧告を承認した。

 閣僚は、高級実務者に対し、特にAPECプロジェクトを中心とするAPECの活動の調整を大幅に強化するために、ECOTECHに関するSOM委員会及び財政管理管員会等の既存の管理メカニズムの活用を指示したが、これにより重複を避け、APECの価値、信用、利害関係者の利益を最大化することができる。閣僚は、2005年のプロジェクトの実施までにはAPECプロジェクト枠組みに統合されるであろうプロジェクト評価枠組み策定を歓迎し、APECのECOTECH活動の評価に関し、引き続き進展があることを期待する。

 閣僚は、人材開発分野における「ECOTECH行動計画」の厳格な評価を歓迎した。これらは議論の基礎として、関心のあるメンバーによるアクセスが可能であり、また各メンバーの独自の使用にあわせて改訂することも可能である。

 閣僚は、国際金融機関を含むその他の機関とAPECとの関係拡大は不可欠であることを認識した。閣僚は、第1回「APECと国際金融機関との経済・技術協力に関するラウンド・テーブル」の成功を、共同作用を明らかにし、更なる協力のための調整とキャパシティ・ビルディングの機会の枠組みを提案する第一歩として歓迎した。これに関連し、グローバル化の与える良き影響、構造改革、安全な貿易、青年、女性、デジタル経済に関する通信教育やアウトリーチ活動は、APECと国際金融機関との更なる共同活動の分野の候補となりうる。閣僚は、各メンバー及びAPECの各フォーラムに対し、ECOTECH活動及びAPECのキャパシティ・ビルディング活動において国際金融機関を引き続き関与させることを奨励し、その他の適切な機関及びビジネス部門との関係を今後構築することを奨励した。特に、閣僚は、2004年の第2回高級実務者会合の際に開催が予定されている第2回APECと国際金融機関との経済・技術協力に関するラウンド・テーブルにより、具体的成果が生まれることを期待している。

全ての者のための知識基盤型経済

 APECのECOTECH重点目標の一つである知識基盤型経済(KBE)の発展促進は、APEC地域の経済・社会的発展の基礎である。APECは、情報通信技術、人材開発、円滑な法的規制枠組を統合させた可能性を最大限に活用することにより、APECの2000年KBE戦略の実施を拡大する必要がある。この分野におけるAPECの活動は、広範な貿易・投資の自由化に従事する各メンバーの能力を高め、APECのボゴール目標達成を支援することになる。

 閣僚は、益々グローバル化され知識基盤型となる経済において、我々の若い世代が今後必要となる技術が習得できるグローバルな学習コミュニティーを作るため、メンバー間で技術支援を実施することを奨励した。閣僚は、我々の地域に影響を与える教育の研究基盤と政策の方向性を調査するため、2004年1月12日から14日、北京において、APEC地域における教育改革に関する作業研究サミットを開催するとのイニシアティブを歓迎した。これらの調査結果は、政策勧告として出され、この地域の行動指向的で実質的な課題を確立することとなろう。

知的財産権

 閣僚は、知的財産権(IPR)の有効な管理が知識基盤型経済の構築に不可欠であることを確認した。適切な知的財産権の保護とその執行は、経済発展を後押しすると共に、外国貿易・投資を推進する主要な要素である。閣僚は、IPRの促進、保護及び執行を目的としてAPEC域内で引き続き緊密に協力することにコミットし、各メンバーは準備が整い次第実行に移るとの理解の下で、共同行動計画の一つとして、IPRサービス・センターの設立を承認した。閣僚はまた、域内のIPRの保護と執行を向上させる「APECにおけるIPR包括戦略」を承認した。この包括戦略の目的は、域内のAPECメンバーの間でのより良い調整・協調のため、域内でのIPRの保護と執行のガイドラインを定めるものである。閣僚はまた、高級実務者に対し、戦略実施のために具体的計画を策定するよう指示した。閣僚は、APECの途上メンバーの特別なニーズを考慮に入れ焦点を絞ったプロジェクトを通じてAPECのIPツール・キットを実施する重要性を強調した。この分野においては、著作権侵害対策を強化するため、インフラの開発と共に、キャパシティ・ビルディング・プログラムへの支援の増加が要求される。閣僚はまた、知的財産権事務所(IPOs)間のデジタル格差を解消し、費用効果のあるIPオートメーションの実施を促進するためのIPオートメーションにおけるAPEC技術協力の重要性を認識した。

サイバー・セキュリティー

 閣僚は、APECサイバー・セキュリティー戦略実施のために行った作業を反映した、電気通信情報作業部会による「サイバー犯罪及びサイバー・セキュリティーに対処するための情報通信作業部会の首脳及び閣僚への活動報告」を歓迎し、APECのフォーラム及び各メンバーに対して、同戦略を実施する努力の継続を求めた。閣僚は、特に、「サイバー犯罪に関する立法及び施行のキャパシティ・ビルディング・プロジェクト」及び2003年にタイで開催された第1回会合を歓迎し、APECのフォーラム及び各メンバーに、法際的なサイバー犯罪の捜査と起訴を促進する法及び手続を策定すべく更なる作業を要請した。閣僚は、安全保障上の脅威に関する情報の共有と国際的サイバー犯罪の捜査に関する相互支援の面での各メンバーの努力に留意し、コンピュータ緊急対応チーム(CERTs)の国際的なネットワーク形成を促進するAPECの努力を歓迎した。閣僚はまた、APECのフォーラムや各メンバーが安全と技術的ガイドラインの促進、コンピュータ・セキュリティーへの脅威に関する一般の意識向上、及びサイバー・セキュリティーに関する訓練と教育の促進に関して行った作業を今後とも支持していくことで合意した。

生命科学の革新

 閣僚は、経済発展と人間の幸福にとっての生命科学革新の重要性を確認した。

 閣僚は、2003年8月にタイのプーケットで開催された「第1回APEC生命科学革新フォーラム」を歓迎し、生命科学分野における経済的側面に特化した長所、及び生命科学革新に関する貿易・投資、経済・技術協力、政府とビジネス部門の協力を促進する方法を特定するための同フォーラムの勧告を支持した。閣僚は、生命科学革新の促進のための戦略計画案の策定過程の進展に留意し、同フォーラム及び専門家グループに対し、2004年の承認に向けて、同計画を完成させることを要請した。同フォーラムの当面の成果として、閣僚は、生命科学製品及びサービスの品質基準を国際的な最善の慣行に従って調和させるという原則的合意を承認した。閣僚は、2004年にニュージーランドで開催される第4回APEC地域科学技術協力大臣会合に同フォーラムの進捗状況を報告するよう要請した。

革新的APEC

 閣僚は、APEC地域の長期的経済成長を確保するには、科学技術革新における協力の促進が重要であることを認識した。閣僚は、科学技術仲介メカニズムの開発及びその開発の妨害・障害要因の特定を通じて、APEC地域内の協力を促進する「革新的APEC」イニシアティブを歓迎した。閣僚は、高級実務者に対し、同イニシアティブの実施を更に促進するため、2004年2月に中国で開かれる「革新的APECワークショップ」で策定される政策提言を検討するよう指示した。閣僚は、高級実務者に対し、「革新的APEC」イニシアティブ実施の進捗状況を第4回APEC地域科学技術協力大臣会合で報告することを要請した。同閣僚会議では、革新的科学を政策やビジネスに結び付けることが主要議題となる。高級実務者は、また、この分野における進捗状況を2004年の第16回APEC閣僚会議で報告することも要請されている。

生物多様性と持続可能な開発

 閣僚は、重大な持続可能な開発の問題に対処する地球規模の努力を引き続き支援していくことに合意し、生物多様性の持続的活用の重要性を強調した。閣僚は、政府、科学関係機関、ビジネス部門からの代表者が生物多様性関連の最善の慣行や貿易に与える影響につき意見交換を行う機会を与えるべく、本件に関するワークショップを2004年に開催するという高級実務者の決定を歓迎した。

 閣僚は、APEC観光憲章に関するソウル宣言にあるコミットメントを再確認した。閣僚は、APEC地域にとっても、個々のメンバーにとっても、持続可能な開発を保持する上で観光業が重要な道具であることを認識した。

農業バイオテクノロジー

 閣僚は、2003年にタイで行われた「第2回農業バイオテクノロジーに関するAPECハイレベル対話」の開催を歓迎し、農業生産性の向上、食糧安全保障、環境促進の面でバイオテクノロジーがもたらす利益を認識した。閣僚は、信頼できる科学的なリスク評価・管理に基づいた農業バイオテクノロジー産品の安全な導入・利用の重要性を再確認した。閣僚は、バイオテクノロジーから作られた産品に対する人々の意識と信頼を向上する必要性があることに再度言及するとともに、高級実務者に対し、この分野での理解の促進を継続するよう要請した。この関連で、閣僚は、知的財産権やキャパシティ・ビルディングが扱われることとなる「第3回農業バイオテクノロジーに関するAPECハイレベル対話」の2004年のチリでの開催を歓迎した。

外来種(IAS)

 閣僚は、外来種(IAS)が引き起こす問題への対処が、困難で経費がかかるものであることに留意した。外来種は貿易にも重大な影響を与える。閣僚は、外来種問題が広範な部門に関係しており、APECは、国際水準に基づいた科学的基準を用いて,この問題に対処するための協力とキャパシティ・ビルディングの機会を特定すべきことに合意した。この関連で、共同戦略策定の可能性を含め、外来種問題を議論し、APECの対応策を検討するワークショップが2004年に開催される。

電子商取引

 閣僚は、「2003年APEC年電子商取引実績調査」に留意した。

 閣僚は、いずれもタイのプーケットで開催された2003年8月14日の「サイバー・セキュリティー・ワークショップ」及び同8月16日の「APECデジタル取引セミナー」を含む、電子商取引分野における高級実務者の活動を歓迎した。2004年については、閣僚は、高級実務者が「APECデータ・プラバシー保護原則」を完成させることの重要性を強調し、「データのプライバシー保護実施メカニズムに関するAPECシンポジウム」が2004年8又は9月にチリのサンティアゴで開催されることに留意した。これらの原則は、効果的なプライバシー保護と国際的な情報の流れの継続性との間のバランスをとったプライバシー保護の法規制を策定し、電子商取引を促進する上でAPECメンバーを支援することとなろう。閣僚はまた、「1998年APEC電子商取引行動計画」の改訂、OECDとの緊密な協力による「スパム(迷惑メール)」に関する更なる作業の実施、「ペーパーレス貿易と共同電子商取引のための電子商取引拡張可能マークアップ言語(ebXML)に関するAPECシンポジウム」のタイにおける開催を承認するとともに、「司法当局職員向けECSG(電子商取引)インターネット捜査研修APECワークショップ」の計画に留意した。

 閣僚は、2004年6月15日から19日に、中国の煙台でAPEC電子商取引フェアを主催するとの中国の申し出を歓迎し、すべてのメンバーにこのイベントへの参加を奨励した。

APEC教育基金及びサイバー教育協力コンソーシアム

 閣僚は、APEC教育基金が中小・零細企業向けの情報通信技術関連キャパシティ・ビルディングを強化するイニシアティブを取ってきたことに謝意を表明した。閣僚はまた,APEC域内の教育と人材養成分野の協力を強化する有効な原動力としての同基金の可能性を認識した。

 閣僚はまた、APECサイバー教育協力コンソーシアムの成果が、APEC域内の情報格差(デジタル・ディバイド)を減少させることを認識し、また、域内の教員、学習者、研究者・行政官からなる幅広い学習コミュニティーの構築に向けたコンソーシアムの新しい方向性を歓迎した。閣僚は、メンバー、ビジネス、学会その他の関係者による基金とコンソーシアムの活動への積極的な参加を奨励した。

電子学習

 閣僚は、21世紀に向けた学生の技能と知識基盤型経済への貢献能力を開発する上で、技術が果たす役割が増大していることを認識した。閣僚は、学生や教師によるインターネット・インフラへのアクセスやインターネットを使った革新的な教育内容の利用可能性・教師の技術利用能力の改善を勧告し、APEC域内で電子学習の努力を行う際に提起された政策課題に対処する「電子学習に関する戦略5カ年計画」の策定を歓迎した。閣僚は、APEC域内の教育担当大臣に対し、同計画を検討し、2004年にチリで開催される第3回APEC教育大臣会合で電子学習促進のために更なる方向性を提示するよう奨励した。

 閣僚はまた、メンバーがAPEC域内の実務言語としての英語に関する適切な知識と実用能力の向上に向けた措置を講ずるよう奨励した。そのような措置は、基準認証を含む様々な経済活動分野において、特に最近の遠隔地学習法の強化、最善の慣行の交換、及びAPEC域内の若者や零細・中小企業が適切な英語使用能力を向上するための枠組みの構築に重点を置いたものとする。

世界情報社会サミット

 閣僚は、2003年12月に開催される世界情報社会サミット(WSIS)の機会にAPECが貢献できることを歓迎した。WSISは、デジタル・ディバイドを解消し、APEC地域を含む世界における協力、経済成長、及び社会的進歩を促進する機会を提供する。閣僚は、WSIS声明へのAPECの貢献は、健全な経済政策、情報化社会における競争と技術革新を奨励する法規制の枠組み、優れた企業統治、及び情報通信技術インフラを犯罪利用から保護する必要性に対するAPECのコミットメントを反映するものであることに留意した。

人間の安全保障の促進

 人々を地域経済に積極的に関与させ、自己依存を高めるために人々の能力を強化することは、人間の安全保障委員会の報告書で指摘されているように、人間の安全保障を促進する上での本質である。キャパシティ・ビルディング・プログラムや人的資源開発に向けた機会の提供を通じて、APEC域内の全ての人々の長所と可能性はよりよく発揮されることになろう。APECがボゴール目標に向かって進むに伴い、経済的、社会的な機会をすべてのAPECの利害関係者が利用できるようにするため、各メンバー内および各メンバー間で、経済調整プロセスを適切に協調し、ソーシャル・セーフティー・ネットを強化する必要がある。

テロ及び重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行も、人間の安全保障の別の側面を示している。

テロ対策

 閣僚は、貿易の安全を確保し、テロの脅威に対してAPECメンバーをより強靱にする決意を改めて表明した。閣僚は、新規に設立された「テロ対策タスク・フォース」がAPECのテロ対策実施を調整する上で果たす重要な役割を歓迎した。閣僚は、「テロ対策行動計画」の策定を、APECメンバーが2002年の「テロリズムとの闘い及び成長の促進に関する首脳声明」を実施し首脳声明に謳われている目的の通りにキャパシティ・ビルディングのニーズを特定・対応することを支援する実際的手段として高く評価した。閣僚は、高級実務者及びAPECフォーラムに対し、貿易の円滑化と安全な貿易確保に貢献する安全保障措置とキャパシティ・ビルディング・プログラムを引き続き明らかにするよう求めた。

 閣僚は,世銀による「APEC域内における非公式の資金移転システムの使用:初期の発見事項と将来の分析のためのフレームワーク」に関する報告に留意し、送金システムがどのように運用されるか、また場合によっては、公式の金融システムが如何にしてより魅力的で使いやすい送金サービスを提供できるよう強化し得るかにつき理解を深めるため、更なる努力が必要であることに合意した。閣僚は,公的部門及び民間部門を集めて、送金の流れが安全で信頼しうるルートを通じて促進される方策を検討するために来年開催されるAPEC政策対話に期待した。

 閣僚は、「テロリズムとの闘い及び成長の促進に関する首脳声明の実施報告」で打ち出された「APEC域内における安全な貿易の拡大(STAR)イニシアティブ」、「エネルギー安全保障イニシアティブ」、「テロ資金対策」、「APECサイバー・セキュリティー戦略」の実施における進捗を歓迎した。この関連で、閣僚は、「エネルギー安全保障イニシアティブ」の勧告を実施するためにメンバーが実施する活動を特定し、適切な場合には、行動実施期限を明記することとなる「エネルギー安全保障イニシアティブ実施計画」を歓迎した。閣僚は、クリーンで持続可能なエネルギー資源の開発のような、「エネルギー安全保障イニシアティブ」の長期的な措置を強調した。閣僚は更に、APECメンバーが引き続きマネー・ローンダリングやサイバー・セキュリティーに関する情報を共有する努力をするよう奨励し、この分野におけるAPECメンバーの国際金融上の義務・慣行についての理解を深めるために、10月中旬に東京で開催されたAPECマネー・ローンダリング対策・テロリストへの資金協力対策に関するセミナーの結果を歓迎した。

 閣僚は、ビジネス部門と緊密に協力し、貿易を確保するために実施された措置に関する情報を共有することにより、ビジネス界の信頼を醸成することの重要性を強調した。閣僚は非拘束的な「APEC民間部門サプライ・チェーン安全保障指針」を歓迎するとともに、メンバーがこの最良の実践モデルをビジネス部門と共有するよう奨励した。

 閣僚は、2003年9月8日から9日にフィリピンのマニラで開催された、海上安全保障協力に関するAPECハイレベル会合の結果を歓迎し、貿易の効率性を高め、コストを削減し、APEC域内での貿易の安全を確保するために、海上安全保障分野における最善の慣行を共有することの重要性を認識した。閣僚は、海上安全保障における協力強化のために、官民パートナーシップを拡大する必要性を強調した。

 閣僚は、メンバーが首脳のSTARイニシアティブにおける呼びかけに応じて、コンテナ安全保障体制を確立し、国際航海に従事する船舶を保護するために行っている努力を賞賛した。閣僚は、カナダ、中国、中国香港、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、米国で実施されている特定のプロジェクトに留意した。閣僚は、全てのメンバーが貿易の安全確保及び貿易円滑化のために更なる措置を講じることを要請し、SOMに対し、テロ対策タスクフォースの2004年作業計画の中で貿易の安全確保のための新規措置にかかるコストの問題を議論することを指示した。

 閣僚は、事前旅客情報システムの基準策定、旅行書類作成発行システムの安全性を改善するための出入国サービス協力の強化など、旅行中の人間の安全保障のために実施されている作業を歓迎した。閣僚は、オーストラリア、カナダ、日本、ニュージーランド、タイ及びアメリカが、事前旅客情報システムを実施し、又は実施へのコミットメントを表明したことを賞賛した。韓国、マレーシア,タイ、フィリピン、及びインドネシアでは実現可能性調査が実施されている。更に8つのメンバーが、事前旅客情報システムの実施検討を可能にする実行可能性研究を行うことに合意している。閣僚は、すべてのAPECメンバーに対し、これらの活動への参加を奨励した。閣僚はまた、高級実務者に対し、貿易円滑化と安全保障措置に関する作業を統合することでビジネス関係者の移動に貢献できる「地域出入国警戒システム」(RMAS)の試験段階に関する戦略オプション、利益及び実現可能性を審査する作業を進めるよう指示した。

 閣僚は、携帯式地対空防衛ミサイル(MANPADS)による航空輸送への新たな脅威が存在することを認識した。閣僚は、テロリストによるこれらの兵器をテの入手及び観光・商用旅行を著しく減少させる可能性のある危機的な攻撃を防ぐため、MANPADSの生産、貯蔵、移転、売買に対し、必要と思われる場合、国内管理の強化を要請した。

 閣僚は、2003年2月にタイのバンコクで開催された第1回APEC地域における安全な貿易(STAR)に関する会議の結果に留意した。閣僚はまた、2004年3月5日から6日にチリのバルパライソでの第2回STAR会議の開催を歓迎した。この会議では、空港・海上安全保障、乗客の機動性及びAPECメンバーによる金融情報収集ユニット(FIUs)の設立を協議する。

 閣僚は、カナダのバンクーバーで開催された「最近の迅速な越境検査手続のための体制に関するシンポジウム」の結果を歓迎した。同シンポジウムにおいては、STARイニシアティブの様々な要素を実施し、貿易円滑化と安全保障上の懸念とのバランスをとる最善の慣行が特定され、更なる国境管理関係のテロ対策キャパシティ・ビルディングの優先分野が示された。

 閣僚はまた、APEC地域の安全な貿易はすべてのAPECメンバーに適用されるべきであり、安全保障のマンデートが非常に重要であるとの観点から、個人及び組織の能力向上が重要であることを強調した。閣僚は、首脳のテロ対策コミットメント実施のために途上メンバーを支援すべく、テロ対策作業計画に盛り込まれた特定のニーズに応え、焦点を絞ったキャパシティ・ビルディングプログラムを作成する上のAPECメンバーやAPECフォーラムの共同努力を歓迎した。この関連で、閣僚は、適当な場合には、国際金融機関のほか、国連安保理事会テロ対策委員会、G8テロ対策行動グループ、ASEAN及びOECD金融行動作業部会などの関連国際組織と技術協力を行う可能性を歓迎した。閣僚はまた、日本が提出した「テロ対策キャパシティ・ビルディングの進行中の活動とニーズ」を含む、テロとの闘い及び成長の促進に関する首脳声明の実施についての閣僚に対する高級実務者の報告を歓迎し、メンバーに対しこの報告に盛り込まれているような必要な事業の実施を奨励した。閣僚はまた、国際テロが経済成長に及ぼす脅威,安全な貿易を確保できないことによるメンバーへのコスト、及びAPEC域内でこの目的に向かって協力して作業することの重要性を強調するオーストラリアの報告書を歓迎した。閣僚は「テロ対策タスク・フォース」に対し、今後一年間、このような協力を更に追求し、実現するよう奨励した。

 閣僚はまた、APEC事務局に対し、APECコミュニケーション戦略におけるAPECのテロ対策イニシアティブの関係者に対する通知の徹底確保に重点を置くよう要請した。

重症急性呼吸器症候群(SARS)への対処

 閣僚は、重症急性呼吸器症候群(SARS)がAPECの各メンバーや地域全体に及ぼす人的・経済的影響とともに、SARSその他の感染病の将来の発生防止の重要性を認識した。閣僚は、「SARSに関するAPEC行動計画」及びHIV/AIDsのような感染症その他の健康上の脅威に対処するために高級実務者会合の下に設置される「アドホックAPEC保健タスク・フォース」を歓迎した。閣僚は、特に感染症の将来の発生の影響を緩和するために、「行動計画」と「APEC感染症戦略」を引き続き実施する必要性を強調した。閣僚は、将来の感染症発生に直面した場合の情報伝達と信頼醸成の重要性を認識するとともに、この関連で、「SARSに関するAPECコミュニケーション戦略」を歓迎した。閣僚は、世界保健機構及び、「米国疾病管理予防センター」など関連地域機関との積極的な協力を歓迎し、将来も必要が生じた場合には、同様の協力が継続されることを奨励した。

 閣僚は、APEC保健安全保障イニシアティブを支持し、首脳に提示した。

 ソーシャル・セーフティー・ネットと労働者の再訓練

 閣僚は、グローバル化の社会的側面に対処する必要とともに、構造変化のコストを最低限に抑えるためソーシャル・セーフティー・ネットの整備の重要性を強調した。閣僚は、特に失業者などの脆弱な人々に力を与え、構造変化の影響をより良く管理し、グローバル化がもたらす恩恵のより公平な配分を確保するためにAPECが実施しているイニシアティブを賞賛した。閣僚は、この観点から中国で2004年に開催される行事を歓迎した。閣僚は、高級実務者に対し、人材開発作業部会及びソーシャル・セーフティ・ネット・キャパシティ・ビルディング・ネットワーク(SSN−CBN)を通じた労働者再訓練計画における努力を強化するよう指示した。この作業は、保健、金融、人材、零細企業・中小企業、ジェンダーの統合と青年、情報通信技術及び、ソーシャル・セーフティー・ネットへのアクセスなどの分野においてAPECが現在行っている作業を基に行われる。閣僚は高級実務者に対し、2004年の第16回APEC閣僚会議において労働者の再訓練問題の進捗状況を報告するよう要請した。

APECにおける女性統合の枠組み

 閣僚は、APEC地域において女性が果たす重要な役割とともに、社会・経済生活における男女間の不平等を除去する必要性を認めた。閣僚は、すべてのAPECフォーラムが実施する活動、プログラム、プロジェクトに女性の統合を確保するイニシアティブ、及び「APECにおける女性の統合に関するフレームワーク」の実施のための持続可能かつ効果的なメカニズムを提供する「ジェンダー・フォーカル・ポイント・ネットワーク」(GFPN)の設立を歓迎し、GFPNの今年度以降の活動に期待を表明した。閣僚はまた、2003年8月に韓国で開催された女性のITキャパシティ・ビルディングのための教育プログラムを歓迎した。

 閣僚はまた、2003年7〜8月にタイで開催された第8回女性指導者ネットワーク会合における勧告を歓迎し、APECのフォーラムとのパートナーシップを強化しようとする同ネットワークのコミットメントを支持する。閣僚は、このAPEC諮問グループが女性の経済活動の機会促進のために果たした積極的役割を評価し、特に、疎外され、失職した女性が経済成長に十分に参加し恩恵を得ることを阻んできた障害を除去する重要性を認識する。

青年

 青年は、APECの将来の基盤を形成する。APECメンバーの青年を一堂に会し協力活動に関与させることにより、アジア太平洋コミュニティが理解と団結に基づいて発展することが確保される。この関連で、閣僚は、タイで行われたAPEC国際青年キャンプが成功裏に完了したことを歓迎した。このキャンプは2003年APEC行事のひとつであるAPECシスタースクール・ネットワーキング(ASSN)構想の下で実施された。今年の青年キャンプは、科学・環境問題に焦点を当てた。閣僚はさらに、2004年のAPEC国際青年キャンプをチャイニーズ・タイペイで行うとの提案を歓迎した。

相違ある世界のための金融構造

 経済や金融面での脆弱性を減らし、異なる社会システムや経済間の投資や貿易を促進するには、健全な国際金融インフラが必要である。1997年以降、APECは世界金融システムの改革において実質的な役割を果たす立場にある。金融規制や企業統治の最善の慣行へ留意することは、経済発展のレベルに関係なく、すべてのメンバーに関連する事項である。また、APECメンバー間の差異を認識する金融インフラは、投資と貿易に関するより多くの選択肢を生み出す。

新しい金融構造

 閣僚は、域内に健全で安定した金融システムを構築するという共通の展望を追求するための金融協力の利益を認識した。閣僚はまた、国内外の資源を最も生産的な投資形態に振り向けることが、持続可能な長期的経済成長のための重要な要素の一つであることを認めた。従って、貯蓄を最も効率的に配分できるような制度的枠組みと構造改革を実現することが不可欠である。

 閣僚は、域内債権市場の発展を促進することが、貯蓄を流動化し、投資の選択肢を提供し、より発展した金融市場を実現する上での代替手段を提供すると認識した。閣僚は、地域債権市場の促進に関する財務大臣の作業を歓迎した。閣僚はまた、次の分野で現在行われている調査及び作業を歓迎した。アジア開発銀行及び世界銀行による地域債券市場の問題、証券化と信用保証市場の開発を提供するAPECイニシアティブ、及び地域債券市場のための新商品の開発。

経済調査・分析

 閣僚は、「2003年経済委員会レポート」「2003年APECエコノミック・アウトルック」「APECにおけるニュー・エコノミーの推進者:革新と組織的慣行」の各報告書を承認した。閣僚は、経済委員会がAPECの抱える優先課題やイニシアティブに対応できることを示した、「APEC地域におけるSARSの経済的影響」に関する報告書を賞賛した。

 閣僚は、「2003年APECエコノミック・アウトルック」、特にその中のAPECにおける特定金融機関(SFI)の役割と発展に関する構造的な章を歓迎した。SFIの経済・社会的影響に関する分析は、APECにおけるSFIの問題に関する適切な政策対応の選択肢を政策立案者に与えるものである。閣僚はまた、構造改革の情報共有と更なる改革の進展を奨励する方途として、地域の各メンバーによる政策とその進捗状況を記述した構造改革に関する個別メンバーの報告書を今年度から同アウトルックに含めることを歓迎した。閣僚はまた、経済委員会に対し、知識基盤型経済(KBE)に関する作業及びニュー・エコノミーに関連する研究作業を継続することを指示した。

 閣僚は、経済委員会の2003−2004年作業プログラムの下で進められているその他の研究プロジェクトにおける進展、すなわち、(1)ニューエコノミー・知識基盤型経済の課題に関する経済委員会の報告書、(2)APECメンバー経済内での不良債務問題に対処する企業再編プロジェクト、(3)貿易・投資の自由化および円滑化(TILF)関連問題の報告書を歓迎した。

 閣僚は、自由貿易協定(FTAs)や地域貿易協定(RTAs)の整備への関心が域内で高まっていることへのAPEC内の理解を深めるために経済委員会が行っている努力を歓迎した。「2004年エコノミック・アウトルック」の構造テーマは、ボゴール目標達成に対してこれらのメカニズムが持つ影響を議論するために、現在のFTAs、RTAsの分析と記述に焦点を当てることになろう。

 閣僚はまた、2003年は、財務大臣プロセスと高級実務者プロセスの間で、これまで以上に緊密なコミュニケーションが行われていることを歓迎した。

新たな成長企業:中小及び零細企業

 APEC地域には、未活用の起業力が豊富に存在する。零細企業が越境取引を行う際の煩雑さとコストを軽減するため、官僚的形式主義の手続きを削減すれば、地域経済の強化と雇用の創出につながる。先進メンバー、途上メンバーの双方において、零細企業創造のための資源を拡大すれば、より広範な所得の分配と経済のさらなる安定化、そして地域社会の一層の発展を実現する。APECは、2002年に着手された作業をもとに前進を続けている。閣僚は、零細企業に関するAPEC下部部会の設立を歓迎し、零細企業育成のために行いうる作業計画を概説した「零細企業育成行動計画」を承認した。閣僚はまた、経済成長と繁栄の共有に力点を置き、零細企業の育成を促進するイニシアティブを賞賛した。

 閣僚は、中小企業(SME)が農業関連貿易において未だに十分に代表されていないことに留意し、SMEにとっての貿易障害の特定において各メンバーが進展を成し遂げたことを歓迎し、暫定的な小規模作業部会を中小企業ワーキンググループ内に設置して,中小企業にとっての貿易障害を特定し、その対処と評価を行うという2003年のAPEC中小企業大臣会合の決定を歓迎した。

 閣僚は、特に、金融、企業統治及び起業家精神の分野において、APEC域内で零細企業及び中小企業を育成するための、財務大臣から中小企業担当大臣への支援を歓迎した。閣僚はまた、中小・零細企業の生産・経営能力の改善に不可欠である情報及び専門知識を共有する重要性を認識した。閣僚はまた、参加メンバーの金融機関による「APEC域内の中小企業関連金融機関間の協力に関する覚書(MOU)」への署名を歓迎した。参加機構間の金融および技術協力を奨励する同覚書は、APEC中小企業金融機構間のネットワーク確立に向けた第一歩である。

 中小・零細企業の育成は、APECのECOTECH重点目標の分野横断的な問題であることを認識し、閣僚は、革新的な零細企業向け融資アプローチ、中小企業・零細企業のデータベース開発、コミュニティや村落でのインターネットアクセス、及び貿易協力促進のためのネットワークの拡充、市場戦略と経路の開発という行動計画の中の勧告を強調した。閣僚は,これらは2004年に優先事項として実施されるべきことに留意した。閣僚は、APEC中小企業作業部会(SME WG)と他のAPECフォーラム、及び財務大臣プロセスが、中小・零細企業が情報技術、ネットワーク構築、市場及び融資へアクセスすることを支援するためのキャパシティ・ビルディングにおいて緊密に協力することを奨励した。閣僚はまた、APEC SME WGに対し、零細企業に関する行動計画を実施し、APEC零細企業キャパシティ・ビルディング基金を設立する可能性の探求を2004年の優先事項として行うよう指示した。

 閣僚は、起業家精神と新ビジネスの推進におけるビジネス育成の重要性を認めた。閣僚は、2003年の7月と8月にチャイニーズ・タイペイで開かれた第1回APECビジネス育成フォーラムの成功を賞賛し、各メンバーに対し、その成果を活用し、技術開発、商業化、およびマーケティングに関する新規企業の能力強化を奨励した。閣僚は、2004年の中小企業に関する課題の中で技術革新と企業家精神に焦点を当てるべく、積極的なモメンタムが作られたことを歓迎し、第2回APECビジネス育成フォーラムが2004年に開催されることに留意した。

 閣僚は、新進企業や中小企業に対し、様々な成長段階において資金供給を行うことの重要性を認識し、「様々な成長段階における中小企業向け資金供給網を強化するための最善の慣行」に関するシンポジウムが2003年8月にチャイニーズ・タイペイで開かれたことを歓迎した。閣僚は、すべての関連するAPECフォーラムに対して、同シンポジウムで合意された「様々な成長の段階における中小企業向け資金供給網を強化するためのAPEC最善の慣行指針」を適用するべく奨励した。

APEC改革

 閣僚は、APECの会議運営をより相互作用的なものにし、APECプロセスを再活性化及び再設計し、その課題をより焦点を絞った政策指向的なものにしようとする近年の努力を賞賛した。閣僚は、APECがプロセスを一層合理化し、急速に変化する環境とAPECの主要な利害関係者、特に一般大衆のニーズに対して一層対応しうるようにする必要性があることに合意した。

 この観点から、閣僚は、高級実務者に対し、広範なAPEC改革の提案策定に取り組み、第16回APEC閣僚会議に進捗を報告することを奨励した。閣僚はまた、APEC事務局に対し、APECの構造、意思決定過程、作業分野及び活動を含むAPECの作業概評を高級実務者にできる限り早期に報告することにより、この見直しと評価のプロセスを促進するよう指示した。

その他の事項

閣僚に対する高級実務者会合報告書

 閣僚は、高級実務者会合報告書を、その中に含まれる決定事項、特に2004年のAPEC予算案及びメンバーの分担金案も含めて承認した。

APEC事務局

 閣僚は、APEC事務局長の報告に満足をもって留意し、広報及びアウトリーチ戦略の実施を含め、APECプロセスの中核的支援機構としてのAPEC事務局の作業を賞賛した。この点に関し、閣僚は、2003年9月2日から7日にベトナムにおいて、APECの業務に対する市民の意識向上と、参加の働きかけのための効果的な活動の一つとして、APEC事務局の支持を得て開催されたベトナムのAPEC週間の成功を歓迎した。閣僚はまた、2003年9月6日、シンガポールのゴー・チョクトン首相と2003年のAPEC議長であるタイのタクシン・シナワット首相が、シンガポールで正式に新事務局を開設し、更に、1993年2月12日に設立された事務局の10周年を祝ったことに留意した。

オブザーバーによる声明

 閣僚は、ASEAN事務局、PECC及びPIFの声明に留意した。

APEC 2004

 閣僚は、チリが第16回APEC閣僚会議及び第12回APEC首脳会議に向けた準備状況に関する報告を行ったことに謝意を表明した。

将来の会合

 閣僚は、将来のAPEC閣僚会議が2005年に韓国で、2006年にベトナムで、2007年にオーストラリアで、及び2008年にペルーで開催されることに留意した。