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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 世界経済に関するAPEC首脳 リマ声明

[場所] リマ(ペルー)
[年月日] 2008年11月22日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳は、11月22日ペルーにおいて第16回会議を、我々エコノミーへの信頼を回復させ、地域の長期的な成長の道筋を維持するために、グローバル金融危機の影響とAPECメンバーが個別的及び集団的に取っている行動についての協議から開始した。

 我々は、18ヶ月間でこの危機を克服することができると確信している。我々は、我々の金融セクターを安定させ、経済成長を強化し、投資と消費を促進するために、緊急かつ異例の措置を既に実施した。我々は、この危機に対処する今後の行動を実行するために、このような措置をとり続け、協調的かつ包括的な形で緊密に協力していく。我々はまた、中小企業を含むビジネスへの十分な資金を確保し、地域における貿易と投資の流れを維持するための輸出信用機関、国際金融機関(IFIs)及び民間銀行による取り組みを支持する。

 現下の状況は、我々エコノミーで進められている金融セクター改革の重要性と、APECの金融セクター能力強化のための作業の重要な役割を際立たせている。我々は、金融セクターにおける発展と革新の継続を歓迎し、金融システムが深化し、より複雑化する中で、規制及び監督手法もより効果的でなければならないと認識する。この危機はまた、金融セクターにおけるコーポレート・ガバナンスとリスク管理に関するより効果的な基準の必要性および社会的責任の重要性も際立たせている。

 我々は、金融・世界経済に関する首脳会合で採択された首脳宣言を歓迎し、金融市場改革のための行動計画の指針となるその共通原則を強く支持する。これに関して我々は、より緊密なマクロ経済協力、負の波及効果の回避、新興及び発展途上経済への支援;{ママ}、並びに新興及び発展途上経済の声と代表権の増大を反映させ、将来の課題により良く対処できるようにするための国際金融機関の包括的な改革及びその強化を通じて、世界経済の成長と安定を回復させるために必要である広範な政策対応を強く支持する。我々は、自由市場の原則と開放的な貿易及び投資に関する体制が世界の成長と雇用及び貧困の削減を引き続き推進するという我々の固い信念を確認する。

 我々は、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、アジア開発銀行、米州開発銀行及びその他の国際開発金融機関が、金融危機による影響を受けたエコノミーを支援する上で決定的に重要な役割を持つこと、及び十分かつ直ちに利用可能な資金が必要であることを認識する。IMFは、そのサーベイランスに焦点を当て、規制上及び監督上の対応をマクロ健全性の政策枠組みに組み入れるため一層の努力をするとともに、他の国際金融機関との協働を強化し、早期警戒を実施するべきである。我々は、APEC財務大臣が、メンバー・エコノミーが、それぞれの開発水準と事情を考慮しながら、IMF/世界銀行金融セクター評価プログラムに参加することを奨励したことを支持する。

 世界経済のより遅い成長には、現在の経済情勢を悪化させるだけにしかならない保護主義的措置を呼び起こすことにつながりかねないという危険が伴う。この観点から、我々は、ワシントン宣言を強く支持し、投資あるいは物品及びサービスの貿易に対する新たな障壁を設けること、新たな輸出制限を課すこと、あるいは輸出刺激措置を含む全ての分野における世界貿易機関(WTO)整合的でない措置を実施することを、今後12ヶ月の間控える。我々は、我々エコノミーが成長し繁栄するための基盤を提供するためのドーハ開発アジェンダ交渉の野心的かつバランスのとれた妥結を追求する。我々は、今日までに得られた進展を基に、来月モダリティ合意を達成することに誓約している。また、我々は {見た目、全角スペース有り}我々の閣僚に対し、かかる目的を達成するために12月にジュネーブで会合するよう指示した。我々と我々の閣僚は、この結果を達成するために必要な収束を作り出すためにWTOの交渉相手への我々の関与を強めている。

 我々は、APECの主たる原則及び推進力として、アジア太平洋の自由で開かれた貿易及び投資のボゴール目標への我々のコミットメントを再確認する。我々は、APECの閣僚および実務者に対し、長期的展望として可能性のあるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を含み、我々の地域経済統合アジェンダに含まれた措置の履行を加速させ、構造改革の作業を強化するよう指示する。現在の成長危機は、気候変動、エネルギー安全保障及びクリーン開発、ならびに貧困、飢餓、疾病及びテロとの戦いという、地域が直面する重要な課題に対処していく我々の決意を揺るがすものではない。我々は、政府開発援助(ODA)及び国連ミレニアム開発目標(MDGs)を含め、これらの分野での我々の国際コミットメントを堅持する。