データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第17回APEC首脳会議首脳声明「21世紀におけるアジア太平洋の連繋のための新たな成長パラダイム」

[場所] シンガポール
[年月日] 2009年11月15日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

我々、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳は、21世紀の世界経済のニーズに対応するアジア太平洋地域の新たな成長パラダイムを描くために、シンガポールに集まった。

グローバル経済は、アジア太平洋地域がリードしつつ、回復し始めた。しかし、我々は、「これまでどおりの成長」や「これまでどおりの貿易」に戻ることはできない。危機が去った後の状況は、これまでとは異なったものとなる。我々には、新たな成長パラダイムが必要である。我々には、経済統合のための新たなモデルが必要である。

我々は、イノベーション及び知識集約型経済に支えられ、均衡ある、あまねく広がりかつ持続可能な成長を追求することを通じ、雇用を創出し、人々が恩恵を得られるよう持続的な回復を確保する。

我々は、ビジネス界のニーズに応え、越境貿易・投資における新たな動向に遅れをとらないようにする。

我々は、ドーハ・ラウンドを2010年中に妥結するよう努力し、あらゆる形態の保護主義を拒否する。

新たな成長パラダイム

我々は、G20の「強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み」が掲げる目標を支持する。世界中で経済的に最も活発な地域を代表し、そして世界の貿易及び生産の半分を占める地域として、APECは、G20の目標達成に必要なモメンタムを与える上で格好な立場にある。

均衡ある成長(Balanced Growth)

強固で持続的な経済成長を達成するには、世界的な不均衡を徐々に解消し、我々のエコノミーの潜在的生産力を高めるための構造改革が必要である。 我々は、各エコノミー内とエコノミー間の双方において、我々の財政、金融、貿易及び構造改革に関する政策が、より持続可能かつ均衡ある成長の道筋に適合したものとなるよう確保する。

我々は、民間企業、投資及び技術革新を取り巻く環境を強化する。

我々は、実体経済により資する形で金融市場を発展させる。

我々は、これら目標を達成するため、国際金融機関と多国間開発銀行と緊密に協力する。

あまねく広がる成長(Inclusive Growth)

「あまねく広がる成長」を達成するためには、経済的機会へのアクセスを拡大し、最も脆弱な層の経済的衝撃に対する強靱性を築く必要がある。「あまねく広がる成長」は、自由で開かれた市場へのコンセンサスを強化するものであり、そのコンセンサスこそ継続的な繁栄にとって鍵となるものである。

我々は、中小企業及び女性企業家が世界の市場と資金へのより良いアクセス得られるよう支援する。

我々は、労働者の再訓練、技術向上、国内における労働の移動を促す。

我々は、良質な仕事に就くための個人の能力を高めるための基盤として、教育に投資する。

我々は、短期的支援を与え、長期的な依存を防ぐようなソーシャル・セーフティー・ネットを設計する。

持続可能な成長(Sustainable Growth)

今後の成長は、環境を保全し、気候変動を軽減する世界的な努力と合致しなければならない。同時に、気候変動への取組は、国際貿易上の我々の義務に適合しなければならない。

我々は、ラクイアにおける「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム首脳宣言」 及びG20ピッツバーグ・サミットのG20首脳声明を歓迎し、国連気候変動枠組条約の目的、規定及び原則の下で気候変動の脅威に取り組むと共にコペンハーゲンにおける野心的な成果に向けて努力するためのコミットメントを再確認する。

我々は、環境物品及びサービス(EGS)に関する貿易及び投資への障壁を削減する方法を検討し、EGS貿易に新たな障壁を導入することを慎む。

我々は、中期的に化石燃料に対する補助金を合理化、段階的に撤廃しつつ、必要不可欠レベルのエネルギー・サービスを必要とする者にはこれを供与する。

我々は、エネルギー効率性における優良事例を共有すると共に、よりクリーンかつエネルギー効率の高い技術を活用し、APECエネルギー・ピア・レビューを歓迎する。

21世紀におけるアジア太平洋の連繋

我々は、21世紀の経済統合モデルに向け、「国境における(at the border)」貿易自由化、「国内での(behind the border)」ビジネス環境改善及び「越境(across the border)」供給網の連繋強化、を統合する包括的なアプローチをとる。

「国境における」貿易自由化

我々は、将来のあり得べきアジア太平洋の自由貿易圏(FTAAP)に向けた基礎作業の検討を継続する。

我々は、ビジネスがAPEC地域における自由貿易協定の恩恵をより一層得れるよう、豪州、カナダ、日本、韓国、NZ、シンガポール及び米国による原産地自己証明のパスファインダー・イニシアティブを開始した。

我々は、越境サービス貿易を促進させるための行動計画及び原則に合意し、APECサービス・イニシアティブを前進させる。

「国内での」構造改革

規制上の障壁のために我々が払っている構造改革努力の中心となっているのが、ビジネス環境改善行動計画(Ease of Doing Business Action Plan)である。

我々は、2015年までに、起業、資金調達、契約履行、許可取得、越境貿易の際にかかる費用、時間、手続きの数を全体で25パーセント削減することを達成するよう努力する。

我々は、2006年から2008年までの間に第二次貿易円滑化行動計画を通じて3.2パーセントの費用削減を達成したことにかんがみ、2010年までにビジネス取引費用を5パーセント削減する。

「越境」連繋

APECの供給網の連繋イニシアティブは、地域の供給網に関する8つの問題点及びそれらの問題に対処するための行動を特定した。

我々は、アジア太平洋を通じて、物品とサービス、ビジネス出張者のより継ぎ目のない流れを促すため、空、海、陸をまたぐ複合的な連繋を強化する方法を探求する。