データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)への道筋

[場所] 日本、横浜
[年月日] 2010年11月14日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 我々,APEC首脳は,2009年11月のシンガポールにおける会議において,アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の達成に向けた一連のあり得べき道筋の探求に合意したこと及びこの目標に向けた2010年の作業についてAPEC閣僚から報告を受けたことを踏まえ,下記の見解を共有する。

 貿易及び投資の自由化及び円滑化は,APECの中核的目的であり続けるだろう。地域経済統合を強化し,深化させるためのAPECの作業は,この目標の達成に極めて重要となろう。

 APECは,FTAAPの長期的展望について検討することを2006年に発表した。APECは,過去数年にわたり,課題一覧表に示されているものを含め,FTAAPの展望に関連するあらゆる領域の課題について議論するとともに,APEC内のFTAの類似点及び相違点に関する複数年にわたる研究を含む,極めて多数のFTAAPに関連する分析作業を実施した。

 この作業の結果に基づき,我々は,今こそ,APECがFTAAPを,野心的なビジョンからより具体的なビジョンへと転換していく時機であることに合意した。そのため,我々は,APECの地域経済統合(REI)の課題を進展させるための主要な手段である,FTAAPの実現に向けた具体的な措置をとるようにAPECに指示する。さらに,FTAAPは,狭義の自由化を達成する以上のことをなすべきであり,包括的で質が高いものであるとともに,「次世代型」の貿易及び投資の問題を組み込み,対処すべきである。

 我々は,FTAAPは,中でもASEANプラス3,ASEANプラス6及び環太平洋パートナーシップ(TPP)協定といった現在進行している地域的な取組を基礎として更に発展させることにより,包括的な自由貿易協定として追求されるべきであると信じる。そのため,APECは,FTAAPの発展のプロセスにおいて,リーダーシップと知的インプットを提供するとともに,FTAAPに含まれるべき「次世代型」の貿易及び投資の問題を規定し,整理し,そして対処することに重要な役割を果たすことにより,FTAAPの育ての親(インキュベーター)として,重要で意義のある貢献を行う。

 APECは,投資,サービス,電子商取引,原産地規則,サプライチェーンの連結及び認定事業者(AEO)制度を含む貿易円滑化,並びに環境物品・サービス(EGS)等の分野において分野別イニシアチブに関する作業を継続し,更に発展させることにより,FTAAPの追求に貢献すべきである。

 上記を実施するに当たり,次の事項が考慮されるべきである。

 − 変容している世界経済及び世界貿易のアーキテクチャーの輪郭,特に,アジア太平洋地域における自由貿易協定及び地域貿易協定の拡散

 − 自由で開かれた地域的な貿易及び投資をAPECエコノミー内において2020年までに達成するというボゴール目標に向けた進展

 − APECの非拘束的及び自主的な性質

 − 伝統的な「国境における」貿易及び投資の課題を進展させつつ,同時に,域内の経済統合を更に深化させるため,非関税障壁又は「国内での」障壁及びその他の「次世代型」の貿易及び投資の問題に対処すべくより活動的に作業することの重要性

 − 多角的貿易体制に対するAPECの長年にわたる支持

 ビジネス界がAPECにおいて果たす力強い役割並びに地域における貿易及び投資の問題についてビジネス界から時宜を得た意見の提供を受けられることにかんがみれば,APECは,地域経済統合の課題を推進するという貴重な立場にある。

 同時に,参加エコノミーの発展段階が異なることを考慮し,APECはAPEC参加エコノミー,特にAPECの途上エコノミーが,更なる貿易及び投資の自由化及び円滑化のための能力を向上させ,新たな課題に取り組むことを支援するためにAPECは,効果的な経済・技術協力活動を提供することに引き続きコミットしていく。

 地域経済統合の課題の更なる進展を通じ,APECは,物品,サービス及びビジネス関係者が国境内で及び国境を越えて途切れることなく移動し,並びに活発なビジネス環境が一層可能となる,より経済的に統合された共同体の創設を追求する。