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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] APEC貿易担当大臣会合 WTOドーハ・ラウンド交渉及び保護主義抑止に関する声明

[場所] ビッグスカイ・モンタナ
[年月日] 2011年5月19-20日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々,APEC貿易担当大臣は,米国ビックスカイにおける第17回会合に集まり,WTOに体現されるルールに基づいた多角的貿易体制の制度的な強さと価値に対する確かな信認があることを改めて表明する。

2.これを踏まえ,我々は,ドーハ・ラウンド(DDA)交渉が直面する困難について共に深く憂慮していることを表明する。

3.横浜における会合以来,DDAの最終局面に向けた取組は,首脳の要望に沿った形で進捗していない。交渉における主要かつ実質的な打開のみが2011年の機会の窓における成功裏の結果につながる。ジュネーブにおける交渉官による集中的な交渉にもかかわらず,多くの鍵となる分野において,今現在かい離を橋渡しすることができない。かかる現状について我々は強い懸念を共有するとともに,ラウンドの成功裏の妥結に向けた我々の継続した要望に整合的な形で,今後の明確かつ現実的な道筋を策定するために我々は協働しなければならない。

4.我々はDDAの成功にコミットしているため,我々は他のWTOメンバーと共に,貿易政策の改革・自由化を維持し前進させる次のステップについて迅速に探求し,世界貿易体制がドーハ・マンデートに従って成長と発展を促進する代替し得ない役割を引き続き果たすよう確保しなければならない。我々は,交渉当局者に対して速やかに,開発の側面を踏まえつつ,全ての選択肢を見直し,他のWTOメンバーと共に今後の道筋を見出すべく作業することを指示する。その際,我々はこれまでの十年のDDA交渉で既に成し遂げられた進展を土台とすること,及び我々が今後数十年の世界貿易の条件を設定する作業を行っていること,に留意しなければならない。これらのステップは急を要するものであり,延期させることはできない。

5.我々は多角的貿易体制の重要性を支持し,この強固で,ルールに基づいた体制は,持続的な経済成長,開発,安定の不可欠な源であることを再確認する。我々は,WTOが,その既存のルールの枠組み及びその協議メカニズムが世界経済の回復の端緒を開くことへの貢献に成功したことに十分満足している。WTOは,極めて困難な時期において,保護主義に対する防波堤として十分にその価値を示した。世界の輸出貿易量が2009年に12%減少した流れを反転し,2010年には14.5%増加したことに我々は関心を持って注目している。我々は,貿易のための援助(AfT)は,開発途上国が多角的貿易体制への参加を拡大し,その利益を実現することを支援する重要な要素であることを再確認し,2011年7月に開催予定の第3回AfTグローバル・レビュー会合に期待している。

6.開かれた市場は成長と雇用創出に欠かすことができず,この地域における強固で持続可能な成長を可能とする。世界経済は回復の途上にあるが,将来,保護主義の圧力が強まる可能性がいまだ残る。我々は,投資,物品・サービス貿易に対する新たな障壁を設けること,新たな輸出制限を課すこと,又は輸出刺激措置を含む全ての分野におけるWTO非整合的な措置を実施することを控えるという現状維持(スタンドスティル)に関するコミットメントを2013年末まで延長することに2011年11月横浜においてAPEC首脳がコミットしたことを再確認する。我々はまた,WTO協定を遵守し,貿易・投資に影響を与える措置を実施する際に透明性及び予測可能性を引き続き確保するとの約束を再確認する。我々は,今次経済危機下に導入された貿易歪曲的な措置を後退させるよう取り組むことにコミットする。さらに我々は,WTOの規定と整合的と考えられるとしても重大な保護主義的影響を及ぼす措置の導入を最大限抑制するとともに,そのような措置が実施された場合には速やかに是正することを継続する。

7.ロシアが開催する2012年APECを見据え,同エコノミーがWTO加盟の完了に向け大幅に進捗していることを我々は歓迎する。我々は,ロシアが2011年中に加盟プロセスの最終的な詰めを行おうとの意図を踏まえつつ,ロシアと緊密に協働していくことへのコミットメントを再確認する。

(了)