データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] WTOドーハ・ラウンド交渉及び保護主義抑止に関するAPEC閣僚声明

[場所] ホノルル・ハワイ・米国
[年月日] 2011年11月11日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.我々,APEC貿易担当大臣は,米国ホノルルにおける第23回会合に集まり,WTOに体現されるルールに基づいた多角的貿易体制の制度的な強さと価値に対する確かな信認があることを改めて表明する。

2.これを踏まえ,我々は,第8回WTO閣僚会議を見据え,WTOドーハ・ラウンド交渉(DDA)が現在明らかに直面する困難,及び近い将来ドーハ・ラウンド交渉の全ての要素が妥結する見込みがないとの現実につき,共に深く憂慮していることを強調した。我々は,この状況が,我々の誰が思う以上に解決が困難で,深く本質的なかい離を反映していることを認識した。過去と同じように引き続き交渉を行えば,我々はDDAを完結できないことは明白である一方,DDAの最終妥結に向けてより良い進展を可能にする努力を放棄することは,誰一人として意図していない。

3.実際に,考え方を新たにし,新鮮で、信頼性のあるアプローチを探究し始める決意を持って,我々は,来るWTO閣僚会議及びそれ以降の交渉に臨むことにコミットする。このアプローチは,進展が達成可能であり,全体のバランスをはかる上で、かかる合意を反映させるための規定を含むドーハマンデートに従って、暫定的に若しくは確定的にコンセンサス合意が得られるドーハ作業計画における特定の分野において,実際的に交渉を前進させる可能性を含むべきである。貿易の更なる自由化,及びルールに基づいた貿易体制の強化に当たり,我々は,DDAにある強い開発の側面を認識し続けなければならない。その際,我々は,後発開発途上国の懸念事項を含めて,これまで達成された進展を土台とする。

4.我々は,多角的貿易体制が,持続的な経済成長,開発及び安定の不可欠な源であることを再確認するとともに,世界経済の回復の端緒を開くことへの貢献にWTOが成功したことに十分満足している。WTOは,極めて困難な時期において,保護主義に対する防波堤として十分にその価値を示した。そして,特に監視の役割を含むこの役割は不可欠であり続ける。我々のエコノミーと他のエコノミーが,展開する困難と機会に対処し続ける際,

WTOが継続する優先事項として発展に貢献することが重要である。我々は,「貿易のための援助」(AfT)は,開発途上国が多角的貿易体制への参加を拡大し,その利益を実現することを支援する重要な要素であることを再確認する。我々は,2011年7月の第3回AfTグローバル・レビュー会合における成果を歓迎し、韓国釜山で今月後半に開催予定の第4回援助効果向上に関するハイレベルフォーラムにおける議論に期待する。我々は,AfTの有効性を確保するための方策を引き続き追求する。

5.開かれた市場は成長と雇用創出に欠かすことができず,アジア太平洋地域において強固で持続可能な成長を可能とする。保護主義の圧力が強まる兆候を含め,不確実な世界貿易環境は,引き続き重大な懸念事項である。我々は,保護主義を食い止めることを決意する。来るWTO閣僚会議は,この状況に対応するための重要な機会を提供する。この点に鑑み,我々は,投資,物品・サービス貿易に対する新たな障壁を設けること,新たな輸出制限を課すこと,又は輸出刺激措置を含む全ての分野におけるWTO非整合的な措置を実施することを控えるとのコミットメントを再確認し,2015年末まで延長した。我々はまた,WTO協定を遵守し,貿易・投資に影響を与える措置を実施する際に透明性及び予測可能性を引き続き確保するとの約束を再確認する。我々はまた,経済危機下に導入された保護主義的又は貿易歪曲的な措置を是正するよう取り組むことにコミットする。さらに,我々は,WTOの規定と整合的と考えられるとしても重大な保護主義的影響を及ぼす措置の導入を最大限抑制するとともに,そのような措置が実施された場合には速やかに是正することを継続する。

6.ロシアが開催する2012年APECを見据え、来るWTO閣僚会議においてロシアのWTO加盟プロセスが妥結することを期待する。