[文書名] 2012年APEC首脳宣言「成長のための統合,繁栄のための革新」
我々,アジア太平洋経済協力(APEC)の首脳は,2012 年 9 月 8〜9 日,この地域 の繁栄と世界経済におけるリーダーシップを強化するための道筋を明らかにする目的で,APEC2012のテーマ「成長のための統合,繁栄のための革新」の下, 第 20 回 APEC 首脳会議のため,ロシア・ウラジオストクに集った。
APEC エコノミーは,過去 20 年間に多大な前進を成し遂げ,今後も成長と繁栄が 続くことを期待する。1993 年の米国シアトルにおける第1回 APEC 首脳会議以来, 我々の貿易は 4 倍に,そしてアジア太平洋地域内での対外直接投資は年率 20% 以上増加している。我々は,今後,共通の経済成長と繁栄を促進するさらなる 措置を取ることにより,この成功を築きあげることを期待する。
我々は,強固な国際貿易,投資及び経済統合は,力強く,持続可能かつ均衡のとれた成長の重要な推進力であると認識する。すべての APEC エコノミーが今や 世界貿易機関(WTO)の加盟国であることに鑑み,我々は,アジア太平洋地域における貿易・投資の自由化及び円滑化のためのコミットメントを強く再確認する。
我々が前回集まってから,世界経済は,多くの課題に直面し続けており,下方リスクにさらされている。金融市場は脆弱なままであり,さらに,いくつかの先進エコノミーでは高い財政赤字と債務が世界的な景気回復への強い逆風を作り出している。欧州における事象は,地域における成長に悪影響を与えている。このような状況において,我々は,成長を支え,金融安定化を促進し,自信を回復するために共同で作業することを決意した。我々は,エコノミーにおける成長を促進させるため,必要に応じて国内需要を強化し,雇用創出を促進し,高い財政赤字と債務を削減し,そして,構造改革を実施することにコミットする。
我々は,ユーロ圏の一体性及び安定性を守るために全ての必要な措置を採るとの欧州首脳のコミットメントを歓迎する。我々は,変化する経済状況を考慮した健全かつ持続可能な政策によって赤字エコノミーの財政を強化するとともに,大幅な経常黒字エコノミーにおいては内需を強化し,より柔軟な為替レートに移行することにより不均衡を縮小させることに引き続きコミットしている。我々は,根底にあるファンダメンタルズを反映するため,市場で決定される為替レートシステムにより迅速に移行し,為替レートの柔軟性を向上させるとともに,為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避け,通貨の競争的な切り下げを回避することへの我々のコミットメントを再確認する。資本フローはその受け入れエコノミーの利益となり得る一方で,我々は,資金フローの過度の変動及び為替レートの無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与えることを再確認する。
財政安定化は,持続的経済成長の重要な要素であり続けるが,昨今の金融危機により悪影響を被った。これらの状況下で,我々は,有効な財政余地内において回復を支援する必要性を認めつつ,エコノミーの長期的な財政安定化を確保することにコミットし続ける。人口高齢化に関連する支出は,財政試算が考慮されなければならない。財政安定化は,緊密に監視される必要がある高い民間債務と脆弱な銀行業からの危険にさらされている。
我々は,G20ロスカボス・サミットの成果を歓迎する。我々は,より多くの雇用を創出し,世界中の人々の福祉を向上するものと確信する力強く,持続可能で 均衡のとれた成長を追求する G20 のコミットメントを支持する。我々は,これらの共通の目標を達成するための協調かつ協働の取組を継続する。
我々は,APEC首脳の成長戦略を支持するために取り組まれた APEC の作業の評価に留意し,APEC成長戦略の実施に向けて取られた措置を歓迎し,特に,2011 年 及び 2012 年に持続可能で革新的成長に向けてなされた進展を評価する。我々は,成長戦略の促進における APEC の進展に関する首脳への2015年報告書に先駆けて,成長要素を促進する作業を継続するよう閣僚と実務者に奨励する。
我々は,APECの開放性と透明性を確保するために,腐敗との闘いに強くコミットする。腐敗は違法貿易及び不安定を煽り,経済成長,市民の安全,並びにAPEC エコノミー間の経済・投資協力の強化に対する多大な障壁であるということを認識し,我々は,腐敗との闘い及び透明性の確保に関するコミットメントを承認する(附属書 E 参照)。
貿易・投資の自由化及び地域経済統合
我々は,経済回復,雇用創出及び発展にとっての国際貿易の重要性,WTOで体現されている多角的貿易体制の価値及び中心的役割を繰り返す。
我々は,この体制の強化への我々のコミットメントを再確認する。ドーハ開発ラウンドの成功裡の多角的な妥結に向けた作業において,我々は,ドーハのマンデート,透明性の原則,多角的貿易体制の重要性及び開発に配慮しつつ,差異のある,斬新で信頼性のあるアプローチを探求し続けるようジュネーブの実務者への指示を再確認する。我々は,第 8 回 WTO 閣僚会議によって権限の与えられた,貿易円滑化及びその他開発関連課題に関するジュネーブで活発に行われている技術的な議論を前進させることに完全にコミットし続ける。我々は,これらの課題を進展させ,2013年の次回の貿易担当大臣会合までに WTO において達成された進展の包括的かつ現実的な評価をする作業を継続するよう閣僚に指示する。
保護主義傾向の高まりと世界経済の継続的な不確実性を考慮し,我々は,投資,もしくは物品,サービスの貿易に対する新たな障壁を設けること,新たな輸出制限を課すこと,又は輸出刺激措置を含むすべての分野における WTO 非整合的な措置の実施を 2015 年末まで控えるとの誓約を再確認する。我々は,保護主義的措置を是正し,WTOの規定と整合的であるとしても重大な保護主義的影響を及ぼす措置の実施を最大限抑制することを継続するとのコミットメントを再確認する。我々は,保護主義を弱めるために WTO が果たしている重要な役割を認識 し,WTO やその他の国際機関に対し,それぞれのマンデートに沿い、保護主義的措置の監視を高めるよう奨励する。
我々は, WTO 情報技術協定(ITA)の適用製品の範囲及びメンバーの拡大に関し現在行われている作業を歓迎し,よい交渉成果を迅速に達成するために,本格的な作業を行うよう実務者に指示する。
我々は,ボゴール目標の重要性を強調し,この目標に到達するために APEC エコノミーを支援する課題に取り組むとのコミットメントを再確認する。我々は, アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)が APEC 地域経済統合課題を推進するための主要な手段であることを認識する。最終的な FTAAP に向けた経路として発展し築かれた様々な地域的な取組に留意し,我々は,その発展過程へ指導力と知的インプットを提供することで FTAAP の育ての親(インキュベーター)としての APEC の役割を推進し,その実現に向けて前進する方途を模索し続けるよう閣僚に指示する。
我々は, APEC エコノミーの統合と地域全体の貿易拡大を進めるための我々の作業の重要な側面として,我々は,次世代の貿易・投資問題を扱うことにコミッ トし続ける。
我々は,新たな次世代の貿易・投資問題として,2012 年に透明性に取り組むことと,APEC エコノミーが指針として使いうる RTAs/FTAs のための透明性に関する APEC モデル章の承認を歓迎する。透明性は,貿易自由化と円滑化の根底にある基本原則の一つで,我々のビジネスと労働者,また,貿易障壁の撤廃及び対処にとって重要である。我々は,この作業は,APEC 地域経済統合アジェンダの成功裡の実施に貢献し,APEC エコノミーが RTAs/FTAs における透明性課題にどのように対処するかについての収斂を促進し,FTAAP の設立に向けた具体的な措置を提供すると確信する。
我々は,地域経済統合の強化と,製品の安全,サプライチェーンの一体性,環境保護を確保するとの我々の共有の目的を達成するための規則収斂及び調和を進展させることにより,不必要な貿易障壁に対処する重要性を認識する。この点につき,我々は,能力構築を通じて行うことも含み,良き規制慣行の実施を強化する2011 年のコミットメントを再確認する。これらの措置をとることは, アジア太平洋に亘る質の高い規制環境を作り上げ,この地域における自由で開かれた貿易と投資を達成するとの我々の目標に到達するために不可欠である。
我々は,投資を促進する法,規制,慣例の採択及び維持の重要性を認識する。我々は,紛争回避と解決に向けたメカニズムにおける経験の交換を通じて行うことを含め,APEC 地域の投資環境の改善への継続的な取組の重要性を再確認する。我々は,地域のインフラ開発における民間部門の投資の決定的な重用性を認識し,官民パートナーシップの枠組みにおける,より幅広い作業を奨励する。
我々は,グリーン成長を促進し,世界的な環境課題に対処するための実務的かつ貿易を強化させる解決策を求める我々のコミットメントを再確認する。2012 年に我々は,この点に関し大いなる進展を遂げた。我々は,グリーン成長及び持続可能な開発目標に直接的かつ積極的に貢献する APEC 環境物品リストを歓迎し,承認する(附属書 C 参照)。我々は,各 APEC エコノミーの WTO における立場を予断することなく,各エコノミーの経済状況を考慮しつつ,2015 年末までに,環境物品に課される実行関税率を5%以下に削減する我々のコミットメントを再確認する。環境物品への関税を削減することにより,我々は,ビジネス及び市民が,重要な環境技術にアクセスすることを支援し,これにより,その普及と使用を促進し,また,我々のグリーン成長と貿易自由化の目標に多大なる貢献をする。
持続可能な成長を支持する一方で,我々は,グリーン成長を促進することが,保護主義的な措置の導入の口実に用いられるべきではないことに同意する。 我々は,環境を保護するための行動は,最も貿易制限的でないものとし,また,我々の国際貿易上の義務と一致するものであることを確保することにコミットする。
我々は,天然資源とそれが依存する生態系は,持続可能な経済成長の重要な基盤であると認識する。我々は,それゆえに,我々エコノミーへの経済的,社会的,安全保障及び環境上の影響がある海洋資源も含め危機に瀕した保護対象の野生生物及び関連製品について,悪化する不法取引を懸念する。我々は,野生動物,木材及び関連製品の違法貿易に対抗する措置を強化し,持続可能な海洋・森林生態系管理を確保するための措置を実施し,また持続可能で,開かれた公平な非木材森林製品の貿易を推進することにコミットする。我々は,また,能力構築,協力,増加する取り締まりやその他のメカニズムを通じて,絶滅の危機に瀕した保護対象の野生生物の違法な供給と需要に対処するために野生生物の持続可能な管理と保存を推進する意味のある措置をとる。
我々は, APEC 域内の更なる統合を促進する上で不可欠な原動力として,情報通信技術(ICT)の重要性を認識する。我々は,電子文書を含む,国境を越えた情報の安全な流通を奨励することにより,グローバルな信用及び信頼できる電子環境の促進をより活発にすることが可能であり,かつ必要であると確信する。我々は,アジア太平洋情報通信基盤の拡大及び強化,そして ICT の利用における信頼と安全を構築するためにマルチステークホルダーの協力の重要性を再確認する。我々は,ICTの開発及び適切なシステムや技術の促進を通じて災害への準備,対応及び復興に向けた加盟エコノミーの協力を奨励し,危険に関する情報へのより多くの時宜にかなったアクセスを通じて,災害や緊急事態で被害にあった人々を支援することに関する議論を歓迎する。
我々は,二酸化炭素排出による世界経済への悪影響を阻止するための共同行動の必要性を認識する。我々は,APEC のエネルギー安全保障(附属書 B 参照)を強化し,エネルギー効率を推進し,持続可能な発展のために,よりクリーンなエネルギー源を発展させることにコミットする。
我々は,エコノミーにおける生産性及び成長可能性を向上させるための構造改革の重要性を再確認し,2010 年に承認された APEC 構造改革新戦略(ANSSR)における進展を歓迎する。我々は,ANSSR の履行に向けた進捗を追跡するための中間評価報告を 2013 年に提出することを実務者に指示し,構造改革目標の達成を促進するために先進及び途上エコノミー間の協力と能力構築を奨励する。
食料安全保障の強化
我々は,世界経済が直面している危機における地域及び世界の食料安全保障への増大する課題を認識する。世界の人口増加を所与として,食料生産の増加,個人又は一般家庭の食料への経済的アクセスの改善及び食料市場の効率性及び開放性の向上による栄養不足人口数の削減は,すべての APEC エコノミーによる一層の協調した措置と協力を必要としている。APECは,食料安全保障に関する新潟宣言の実施及びカザン宣言でなされた進展を通じて,食料安全保障を強化することに尽力した。この作業を進めるために,我々は,持続可能な農業生産の増大及び生産性の向上,世界の環境条件の多様性及び農業の正の外部経済への考慮,さらなる貿易円滑化及び食料市場の発展,食品の安全性の向上,社会的弱者グループの食料へのアクセス向上,及び,農家の福祉の改善にコミットする。我々は,海洋生態系の持続可能な管理と,違法漁業及び関連貿易に対抗することを確保するための措置を実施する。
持続可能な農業成長は,我々すべてのエコノミーにとって優先事項である。この目標を追求するにあたり,我々は,投資の増加及び農業バイオテクノロジーも含めた農業における革新的技術の採用により,農業生産性の向上のために具体的な行動をとる。我々は,食料安全保障を確保する開かれた透明性のある市場メカニズムの重要性を強調する。我々は,官民の農業投資の増加を推奨する有効な環境を作り上げる必要性を強調し,投資分野における官民パートナーシップの重要な役割を認識する。我々は,増加する農業生産への海外直接投資の積極的な役割を評価し,責任ある農業投資原則(PRAI)を留意し,責任ある農業投資のベストプラクティスを特定するために,他の国際機関で行われている作業を歓迎する。
我々は,土地,水,森林及びその他天然資源は限りがあることから,革新的な農業技術の安全な開発及び実施を奨励することの増大する重要性を認識する。このことは,農業の研究への長期的投資の多大な増加と,国際的義務と一貫した革新的農業技術のための透明かつ科学に基づく規制アプローチの採択に沿った発展を必要とする。我々はまた,国内及び国際的農業研究システムを強化することが必要であることに同意する。我々は,地域ネットワークを通じて行うことも含む研究機関やイノベーションセンター間のよりよい協力,相互作用及び能力構築を促進する。我々は,効率的かつ,市場主導型かつ自発的な方法において,農家による革新的技術の普及と利用を奨励する。我々はまた,気候変動の農業への影響を軽減させる方策を模索し,農業及び天然資源,特に土地,森林,水及び生物多様性の効率的かつ持続可能な利用を支持する。
我々は,より開かれた,安定的で,予測可能かつルールに基づいた透明性のある農業貿易システムは,食料安全保障を向上させる上で重要な役割を果たしていることを認識する。我々は,特に主要な食料を輸入に頼る APEC エコノミーにとっては,食料輸出に係る禁輸及びその他の制限措置が,価格の乱高下を生じさせ得ることを認識しつつ,保護主義に対抗するコミットメントを再確認する。我々は,公正で開かれた市場を確保することを決意し,価格の乱高下を抑制し,より大きな地域及び世界食料安全保障を確立することを決意し,食料市場インフラを発展させ,食料サプライチェーン全体における収穫後の損失を減少させるコミットメントを確認する。
食料価格の乱高下を抑制するために,より一層の透明性及び効果的な食料市場モニタリングが果たす重要な貢献に留意し,我々は,アジア太平洋食料安全保障情報プラットフォーム(APIP)の実施において成し遂げられた進展を歓迎し,そのために,APIP と G20 によって構築された農業市場情報システム(AMIS)及 び迅速対応フォーラムとの間の協力を支持する。
我々は,APECの食料安全保障の取組への官民の利害関係者のより一層の関与は,共通の目標への対処に大きく貢献することを確信する。我々は,食料安全保障に関する政策パートナーシップ(PPFS)の設立及び 2012 年の会議の成果を歓迎する。
我々はまた,食料安全保障の目標を促進するための以下の措置をとる。
・食品安全協力フォーラムの効果的かつ多面的な作業を支持する。
・食品安全及び品質に関する国内規制と,貿易の技術的障害及び衛生植物検疫 措置の適用に関する WTO 協定と整合的な国際基準を調和させることの利益に関する,理解,認識及び能力構築におけるエコノミー間の一層の協力及び対話を奨励する。
・最優先の食品安全に関する危害要因に対応し,食品安全に関する事故を最小化するために,予防的管理措置の実施,情報共有ネットワークの構築,試験所能力の強化,地域的能力の構築により国内食品安全システムの改善に努める。
・自然及び人的災害によって緊急事態に直面している人々を含む,社会的弱者グループの経済的及び物理的な食料アクセスを改善するための方策を探求する。社会及び学校給食を通じて行うことを含む社会的弱者への食料供給に関するベストプラクティスの交換を奨励する。持続可能な社会的保護及び社会的セーフティネットを強化する。
・違法,無報告,無規制の漁業及び関連する貿易に対抗するための協力を強化する。持続可能な海洋生態系の管理に向けて作業する。漁獲漁業の管理及び持続可能な養殖の慣行を改善する。並びに,漁業及び養殖製品の持続可能で,開放的かつ公正な貿易を促進させる。
信頼できるサプライチェーンの構築
我々は,個々のエコノミーの状況も考慮しつつ,アジア太平洋地域での物品及 びサービスの移動の時間,費用,不確実性を削減する観点から,2015年までにサプライチェーン能力を10%改善させる APEC全体の目標を達成するというコミ ットメントを再確認する。我々は,より信頼性があり,強靱で,安全で,効率的で,透明性があり,多角的かつ,理にかなったサプライチェーンの構築に向けて,的を絞った能力構築と具体的な方策を通して,サプライチェーンに存在する難点に対処するために,より体系的なアプローチの採択を歓迎し,2012年にこの作業を前進させ,2014年までに完了するよう実務者に指示する。
我々の地域の膨大な貿易量を認識し,我々は,サプライチェーンの信頼性は,APEC地域と世界における,貿易の円滑化,持続的な発展の維持,経済,エネルギー,食料,そして環境の安全保障を確保するために,極めて重要であることに同意する。我々は,最も効率的なサプライチェーン・ネットワークを構築するために,地域における輸送路の多様化及び耐性計画に関するビジネス界とそ の他の関連する利害関係者との継続的な議論を奨励する。我々は,APECエコノミーにおける税関手続を効率化する作業を継続することが不可欠であると信じる。
我々は,環境にやさしく,スマートで,効率的かつ理にかなったサプライチェ ーンを推進することを目的に,サプライチェーンの技術的強化と物流情報サービス・ネットワークの確立に関する議論を進めることも極めて重要であること に同意する。我々は,世界税関機構(WCO)/APEC・SAFE「基準の枠組み」に沿った認定事業者(AEO)制度,及び,情報共有,地方又は地域の物流準供給者の能力向上,越境取引の安全,安心,信頼性を高めるための緊急時早期警戒システムの開発,追跡技術のより広範囲の実施,巨大な物品や危険な物品又は有害 物質の輸送のよりよい管理や追跡を通じて,サプライチェーンの能力,協調及 び可視性を改善することに関するビジネス界とその他の利害関係者によって継 続されている議論を支持する。我々は,サービスの自由化と,世界的なサプライチェーン連結性を促進し,エコノミーの能力を向上させるイノベーションに関する作業を歓迎する。
我々は,テロリズムが,APEC地域における経済成長,安全,安定とサプライチェーンの信頼性に対する深刻な脅威であることを認識する。よって,我々はAPECテロ対策と安全な貿易のための総合戦略を実施するための我々のコミットメントを再確認し,地域の商取引をより安全で効率的かつ強じんなものにするために,本戦略の優先分野である安全な貿易,旅行,金融,インフラに関するより深化した協力と能力構築を支持する。
我々は,アジア太平洋における雇用創出,経済成長及び発展の原動力として,旅行と観光の重要性を認識する。観光は,様々なサービスが,増加する国際的な観光客の流入の要求に合うように供給される越境サプライチェーンの特別な代表事例である。適切なインフラに支えられ,これは,サプライチェーン全体を通じて,新たな成長と雇用機会の創出をもたらす。よって,我々は,海外旅行の円滑化を奨励し,航空輸送サービスの自由化を評価し,観光製品の安全・安心の向上のためのAPEC観光・交通大臣の取組を称賛する。
我々のエコノミーが天災及び人災に脆弱であることを認識し,我々は予防対策の強化,緊急事態に対する備え,災害に対する強じん性,この関連でのAPECエコノミー,地域社会,ビジネス間での科学的及び技術的協力の促進の重要性を再確認する。我々は,被害者数を最小限に抑える災害直後の緊急援助の機動性を容易にする重要性を認識する。災害管理に関するより広範な協力及びよりよい連結性の必要性を強調し,我々は,特に中小企業のビジネス継続・耐性計画の推奨と進展のアイデアを支持する。我々は,また,官民パートナーシップの推進,越境交通における緊急事態早期警戒システムの共通基準の創設,APEC貿易再開計画を基盤とした運用上の貿易再開通信メカニズムの開発の推進,緊急事態への備えの協力及び,インドネシアのジャカルタにあるASEAN災害管理に関する人道支援のための調整センターのような地域的危機管理センター(CMCs)も含めて,APECエコノミーのCMCs間の危機管理及び災害対応準備の協力の進展を支持する。
近年の自然災害のために多くのAPECエコノミーで生じた経済的コストに鑑み,我々は,災害リスクマネジメント(DRM)戦略の発展を通じて災害に対する耐性を強化する適時性と重要性に留意する。我々は,統合された災害リスク・ファイナンシング政策が,総合的な災害対応の備えの一部であると認識する。この点に関し,我々は,APEC域内外での知識交換の価値を認め,G20により取り組まれた作業を十分考慮し,自然災害への財政当局の対応への実務的に適用可能なガイドラインを構想するための世銀,OECD 及びアジア開発銀行やその他の機関の共同の取組を評価する。これらの政策を作成するにあたっては,財政当局の事前の計画及び準備に注意を払うべきである。
革新的成長を促進するための緊密な協力
経済成長,繁栄及び雇用創出の我々の共通の目標のためのイノベーションの重要性を認識し,2012年に,APECエコノミーは,効果的,無差別かつ市場主導型のイノベーション政策の発展,並びにこの地域でのイノベーション協力及びネットワークづくりについての我々のビジョンの精錬へ向けて重要な措置をとった(附属書 A 参照)。
本年,我々は,共通の課題に取り組み,イノベーション能力を向上させるためにイノベーションの3つの重要な利害関係者グループである,ビジネス,政府,学界を一同に集め,産業科学技術ワーキンググループを科学技術,イノベーション政策パートナーシップ(PPSTI)に転換させることにより,これらの目標を前進させた。PPSTIは,新たな革新的技術と関連政策・手段が,いかに APEC エコノミーが直面している現下の課題に対応できるか,また,それらの適用への見通しがどうであるかについて模索・特定するためのメカニズムである,イノベーション技術対話も開催する。我々は,エネルギー効率性のためのナノテクノロジーに関する史上初のイノベーション技術対話の成果を歓迎する。
我々は,また,アジア太平洋に亘る上位での科学関係を強化するために,2013年にAPEC首席科学顧問会合の共同議長となるニュージーランドとインドネシアの意欲を歓迎する。
我々は,中小零細(マイクロ)企業(SMMEs)の重要性を認識し,彼らが,エコノミーの経済統合及び競争の質を改善するアジア太平洋地域の発展及びイノベーションの重要な推進力であると確信している。中小零細企業の成長潜在力を支援するために,我々は,競争的で開放的かつ透明性のあるビジネス環境を引き続き構築し,中小零細企業の国際化を支援,輸出志向の中小零細企業を支援,中小零細企業の市場及び資金へのアクセスを強化,そして,中小零細企業にとって重要な競争優位となるイノベーションを促進することにコミットする。
我々は,早い段階での中小零細企業を支援し,若年者と女性への機会を拡大するイノベーション目標の重要性に留意する。アジア太平洋地域における経済成長への新興企業と若手起業家の重要性に鑑み,我々は,若手起業家ネットワークとAPEC新興企業促進イニシアティブの実施を支援する。我々は,知的資本を促進し,中核能力の最適化及び中小零細企業の発展を阻害する可能性のある紛争の最小化のために,大・小の企業間の相互に利益のある協働を奨励する。
教育は,APEC地域における革新的成長の不可欠な推進力であり,我々は,この分野における実践的及び持続可能な協力を追求するためにエコノミーがとった方策を支持する。このことは,高等教育協力の発展を通じて,APEC内の学生,研究者及び教育機関の移動性を向上させるための措置を含む(附属書D参照)。
我々は,人々が健康であることは,人的資源の持続可能な開発と,延いてはAPEC地域内の持続可能な経済発展及び革新的成長に極めて重要であることを認識し,健康問題に対するエコノミーのセクターを越えた取組を支持し,妊産婦,乳幼児及び小児から人生の終焉までの生涯に亘る非感染性疾患の予防,健康,健康的なライフスタイル及びウェルネスの推進並びにこれらへの投資による保健制度の強化に関する更なる具体的な方策を奨励する。
我々は,APEC地域における経済的繁栄及びあまねく広がる成長の達成における 女性の極めて重要な役割を再確認し,女性へのよりよいビジネス機会の創出と革新的経済に女性を包含することを通じて女性への投資を奨励する。我々は,特に,資本へのアクセス,市場へのアクセス,能力技能形成,及び女性のリーダーシップの分野において,未だに多くの障壁が存在することを認識する。我々は,APEC女性と経済フォーラムの成果を歓迎し,経済における女性の参画とエ ンパワーメントを高める具体的な行動をとるという我々のコミットメントを再確認する。
将来に向けて
我々は,より統合された社会を築き,イノベーションを基盤とした経済成長を確保するために2012年にAPECでなされた作業は,APEC エコノミーの繁栄の達成という我々の共通目標に貢献することを確信する。我々は,第24回APEC閣僚会議における閣僚共同声明を完全に承認する。
我々は,官民部門間のより広い協力に多大に貢献するAPECビジネス諮問委員会の増大する関与を支持する。我々は,APECビジネス界の役割を促進し,APECの作業に参加するため,より多くの機会を提供することに完全にコミットする。
我々は,大阪行動指針で掲げられた効果的な経済・技術協力(ECOTECH)活動を提供し,マニラ・フレームワークに従ってAPECメンバーを支援する我々のコミットメントを再確認する。
成長及び金融不安への脅威に直面し,我々は,悪影響を軽減し,APECエコノミーの強じん性を構築し,我々の地域の発展への新たな高みに到達するための必要かつ具体的な行動をとり続ける。
我々は,中華人民共和国,フィリピン及びペルーによる,それぞれ 2014年, 2015年, 2016 年におけるAPEC 開催の申し出を歓迎する。
我々は,2013 年にバリで再会するというインドネシア大統領からの招待を歓迎する。
附属書 A : 革新的成長に向けて
附属書 B : AEPC エネルギー安全保障の強化
附属書 C : APEC 環境物品リスト
附属書 D : 国境を越えた教育協力の推進
附属書 E : 腐敗との戦い及び透明性の確保