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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第20回APEC首脳宣言--附属書B: APECエネルギー安全保障の強化

[場所] ウラジオストク
[年月日] 2012年9月9日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 世界的な金融の不確実性,中東及び北アフリカでの政治的発展,化石燃料の消費による二酸化炭素の排出は,世界経済に負の影響を及ぼし,世界及び域内のエネルギー市場の確実かつ持続可能な成長に対し,新たな課題をもたらし得る。

 我々は,アジア太平洋のエネルギーミックスにおいて増大しつつあるエネルギー需要を満たす上で化石燃料が果たす主要な役割を認識する。同時に,我々は,持続可能な開発及びエネルギー安全保障を強化し,二酸化炭素の排出を削減するために,優先的に,エネルギー効率及びよりクリーンなエネルギー供給をさらに促進する。

 我々,APEC首脳は,以下につき合意する。

・伝統的なエネルギー市場の持続可能性,効率性,予見可能性,透明性の向上に向け取組を続けること。

・他のエネルギー源に影響を与えることなく,より低炭素な経済への移行を進めるために,エネルギーミックスにおいて,域内で最も普及しかつクリーンな化石燃料の一つとして天然ガスの割合を増やすことを目的として,APEC地域のエネルギー市場の現状及び見通しを再レビューすること。

・シェールガス及び他の非在来型天然ガス資源の生産,貿易の可能性,環境への影響を評価すること。

・APEC地域におけるエネルギー安全保障及び経済成長の強化のため,必要に応じて,天然ガス液化施設を含むエネルギーインフラへの安定的な投資を促進すること。

・APEC地域における石油及びガスに関する緊急事態への対応を向上するための活動を促進すること。

・専門知識,知見,ベスト・プラクティスの共有,原子力安全基準の改善,緊急時の対応及び準備メカニズムの調整により,関心を有するエコノミーにおいて,クリーンなエネルギー源として原子力エネルギーの安全かつ確実な利用を確保すること。

・原子力エネルギーの平和的利用分野において,関心を有するAPECメンバーエコノミーと関連国際機関との間の協力を強化すること。

・二酸化炭素回収貯留及び持続可能なバイオマスを原料とするバイオエネルギー等の再生可能エネルギー源を含む低排出エネルギー供給の技術開発及び展開を促進すること。

・初のイノベーション技術対話「エネルギー効率性のためのナノテクノロジー」 において採択された提言に留意すること。

・石油依存及び運輸による有害な排出の削減のため,市営・鉄道輸送,ガス・電気自動車及びより低燃費の従来型の車等を含む,エネルギー効率が高く持続可能な運輸システムの発展を促進するために,2011年に米国サンフランシスコで採択されたAPEC運輸・エネルギー大臣会合行動アジェンダを実施すること。

・無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し,段階的に廃止し, これらの補助金の改革のために地域的な能力の構築を継続し,自発的な報告メ カニズムを用いて毎年の進展を報告すること。

・各エコノミーの改善率は国内の状況の違いにより異なりうることに留意しつつ,2035年までにAPEC全体のエネルギー集約度を45%削減するという野心的な目標を達成するために,研究及び分析結果を共有し,行動計画を策定すること。