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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第20回APEC首脳宣言--附属書D: 国境を越えた教育協力の推進

[場所] ウラジオストク
[年月日] 2012年9月9日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 教育は,より多くのより質の高い雇用を創出し,生産性向上を支える,21世紀において経済発展の卓越した源である。教育はまた,経済活動の根本的要素である。学生,研究者,教育機関が科学的,技術的及び言語上のコミュニティを形成するにつれ,APECエコノミーの教育部門における協力は,革新的な成長を助長する。

 全てのAPECエコノミーは,国境を越えた教育に関する協力強化により利益を得る。アジア太平洋地域において多くの途上エコノミーは,より高い付加価値の製造業及びイノベーションにより推進された知識集約型産業へと急速に移行している。幅広い質の高い高等教育サービスへのアクセスは,この発展の途上での持続可能な成長にとって極めて重要である。APEC地域はまた,いくつかの世界最大の教育サービスの輸出及び消費国を含む。学生,研究者,教育機関の流れを円滑化し,関連取引費用を削減することは,全てのエコノミーに裨益する国境を越えた教育サービスの大幅な拡大の機会を提供する。

 国境を越えた学生の流れの増加は,地域的なつながりを強化し,人と人との交流を構築し,知識及び技術移転を通じた経済発展を促進する。質の高い国境を越えた教育は,学生に対し,彼らがグローバル化した知識基盤型社会への十分な参加のために必要とする21世紀型の能力を身につけさせる。

 したがって,我々,APEC首脳は,APECエコノミー間の協力強化は,質の保証,認証評価,国境を越えた交流及びデータ収集に関連するものを含む具体的な政策に関する取組の円滑化にとって極めて重要であるということに同意する。このような取組は,APECエコノミーにおける教育部門に大きな影響を与え得る。域内での国境を越えた教育及び研究,情報,知識の共有に関するいくつかの提案を検討しつつ,実践的かつ持続可能な教育協力を強化するために,各エコノミーにより2012年に重要なステップが刻まれた。我々は,任意にかつ個別のエコノミーの状況と整合性をとりつつ,国境を越えた教育協力のさらなる発 展,及び,以下の分野におけるAPEC内での教育サービスの交流の円滑化を奨励する。

a)学生の移動の促進。以下により達成し得るが,これに限定されるものではない。

・APECエコノミー間で,コース認証評価や質保証システム及び対象を特定した能力構築プロジェクトのベストプラクティスを確認,比較,実施すること。

・国内教育機関の事例研究を利用した,改革及び良き規制慣行を導くためのモデルを開発すること。

・学生ビザの要件の透明性を高める方法を検討すること。

b)研究者の移動の促進。以下により達成し得るが,これに限定されるものではない。

・APECエコノミーにおける大学間の既存の学術交流及び共同研究活動を発展させること。

・学術従事者の移動を改善する方法を検討すること。

c)教育機関の移動の促進。以下により達成し得るが,これに限定されるもので はない。

・外国教育機関の規制の透明性を向上させ,市場アクセスに対する不必要な障壁を取り除くための方法を検討すること。

・外国教育機関設立のための現行の規制をまとめること。

・質保証システムに関するAPECのベストプラクティスを評価し,確認すること。

d)既存の二国間協定のネットワークの促進。以下により達成し得るが,これに 限定されるものではない。

・APECエコノミー間で,(オンライン・コースのような)教育用コンテンツの柔軟な設計及び提供に関する問題を検討すること。

・APECエコノミーにおいて,教育プログラムに関するデータの入手可能性を強化すること。

 我々は,閣僚及び実務者に対し,個別のエコノミーの状況を考慮しつつ,APEC地域において,国境を越えた教育協力を発展させるために,国境を越える学生,研究者,教育機関の移動に関するこれらの優先事項を前進させるよう指示する。