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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第20回APEC首脳宣言--附属書E: 腐敗との闘い及び透明性の確保

[場所] ウラジオストク
[年月日] 2012年9月9日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 我々,APEC首脳は,我々のエコノミーにおいて,腐敗と闘い,透明性及び説明責任を強化するとの我々のコミットメントを新たにする。

 我々は,腐敗との積極的な闘い及び経済・社会発展の進展の達成との間の直接的なつながりを認識する。腐敗は,犯罪を引き起こした起業家及び違法取引網といった不正貿易を促し,またそれによって助長され,APECエコノミーの雇用及び重要な税収というコストを払い,合法的なサプライチェーンの健全性をむしばみ,我々の家族や地域社会の富,健康,安全を危険にさらし,我々のビジネス及び市場の経済的利益を害する。腐敗は,開かれた市場,経済繁栄,法の支配の確保といった我々の共通の目標を脅かす。

 腐敗は,海外及び国内投資を阻み,市場競争を阻害・歪曲し,消費者の安全を脅かし,公共サービスやインフラ・プロジェクトの費用を引き上げ得る。腐敗は,経済成長や持続可能な発展を抑制するのみならず,公共の信頼を損なうことにより,不安感及び不安定性をあおる。公務員の腐敗は,政府に対する公共の信頼と同様に,法及び司法制度を阻害する。腐敗による負の影響は,もっとも直接的かつ不均衡な形で,貧困層によって感じられる。

 我々は,この重要な分野でのAPECの取組に指針を与える,腐敗との闘い及び透明性確保のためのサンティアゴ・コミットメント,及び,腐敗との闘い及び透明性確保に関するAPEC行動方針を再確認する。この点において,我々は,これらのガイドラインにおいて示された措置を実施するために,APEC公務員の金融/資産公開に関する原則等の措置の発展を含め,APEC腐敗防止・透明性作業部会(ACTWG)が行った努力を称賛する。

 我々は,国内法に従って腐敗犯罪を捜査・訴追し,公務員の腐敗者が,我々の金融システムにおいて犯罪行為の利益にアクセスすることを防止するコミットメントを強調する。

 我々は,有効な予防的腐敗対策措置の重要性を強調する。腐敗は,不透明な環境において育つ。透明性及び公共の健全性は,腐敗を防止し,グッドガバナンス及び公的資源の良好な管理を促進するために有効な原則である。

 我々は,オープンガバナンスと経済成長に関するAPECハイレベル政策対話の目標に引き続きコミットしている。また,我々は,エコノミー,及び,経済界,学識経験者,非政府・労働団体を含む利害関係者のコミュニティは,透明で,公平かつ説明責任を果たすガバナンスにコミットすることにより,公共の信頼の向上に取り組むことができると信じている。オープンガバナンス,技術及びイノベーションは,腐敗を明らかにし,コミュニティに対し,政府の政策及び資源の利用に対する見方を監視及び表明する権限を与えることを後押しし得る。

 我々は,我々のエコノミーにおいて公共部門の透明性及び健全性を高め,必要に応じて,また国内の法制度に従って,行政負担を軽減することにコミットしている。我々は,国内法及び行政指導と一致する金融及び資産公開の強化拡大を含め,贈賄防止法を厳密に施行し,重要な公共的機能を委任されている/されてきた個人の口座に対する強化された適切な注意を実施するための手続き及び管理の強化を奨励することに取り組む。

 我々はまた,国内法に従って,腐敗利益の回収の促進に取り組む。我々は,腐敗の需要・供給への対策は国内法に従って効果的に実施されることを確保しつつ,我々の国内の贈賄法及び外国公務員の贈賄を処罰する法の厳格な施行を含め,各々の国際的なコミットメント及び国内法に従って,腐敗を犯した公務員及び贈賄者の捜査・訴追を引き続き行う。我々は,海外の贈賄を処罰しないAPECエコノミーに対し,かかる法律を採用するよう求める。

 我々は,国際及び国内金融市場に関わるすべての利害関係者とともに,腐敗に携わる個人により獲得された違法な資産の聖域を拒否し,我々の管轄権で入国及び聖域を拒否されることにより,腐敗を犯した官僚及び贈賄者が,罰せられることなく海外に渡航することを防止することに引き続き取り組む。この枠組みにおいて,我々は,金融市場が贈賄及び腐敗を含む犯罪の乱用から守られることを確保するための具体的な対策を講じることにコミットしていることを,繰り返し主張する。我々は,資金洗浄犯罪の捜査・訴追や,国内法に従った金融活動作業部会(FATF)の改訂勧告の実施により,資金洗浄と激しく闘う。

 我々は,詐欺,腐敗,公共資金の乱用と積極的に闘うために,国際及び域内の開発機関とともに取り組む。我々はまた,腐敗対策機関,法の支配,財政透明性,説明責任の強化,公共調達制度の改革,回収された資産の効果的な返還を支援するメカニズムの発展及び促進,高い水準の倫理規定の実施の奨励により,腐敗と闘う能力を構築するため,各参加エコノミーの努力を支援する。

 我々は,腐敗に対する普遍的なメカニズムとして,国連腐敗防止条約の比類なき価値を評価し,国連腐敗防止条約をいまだに批准していないエコノミーに対し,可能な限り早急に批准することを求める。我々は,APECメンバーエコノミーに対し,必要に応じて,各国の法制度の基本原則に従って,国連腐敗防止条約の条項の完全な実施のために必要となるすべての措置を講じることを奨励する。

 我々は,グローバリゼーションや技術革新が開発及び繁栄にとり前向きな力となってきた一方で,違法なネットワーク及び偽造者が,違法な企業を発展させ,我々の規制プロセスの安全性を損なうために,相互関連を強めている世界を利用してきたことに留意する。我々は,新たに生じた課題に応じるためにエコノミー間での協力を促進することと同様に,腐敗対策及び/又はその他の法執行機関,執行努力を強化することにコミットする。

 我々は,これらの重要な分野,及び,腐敗,不正貿易との闘いにおける,APECビジネス諮問委員会(ABAC)及び腐敗防止・透明性タスクフォース(ACT)による最近の貢献を歓迎する。我々は,医薬品の安全性確保へのさらなる努力を奨励する。我々は,不正貿易と闘い,国境を越えた犯罪組織の財政基盤及び違法なネットワークを攻撃し,犯罪を引き起こした起業家や腐敗を犯した官僚の違法な富を奪い取り,彼らと世界金融システムとのアクセスを断つことに引き続きコミットしている。

 我々は,民間セクターの行動規範,及び,腐敗と戦うための措置,特に,政府,経済界及びその他の利害関係者との間の交流において倫理的なビジネス慣行促進を後押しする措置の策定の促進において,ビジネス及び官民連携の重要な役割を認識する。我々は,中小企業担当大臣,産業界,学識経験者による,この取組に役立つ自発的かつ業界固有のAPEC原則の促進に向けた努力を歓迎する。