データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 附属書C 革新的な発展、経済改革及び成長に関するAPEC アコード

[場所] 北京
[年月日] 2014年11月11日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.世界経済は不均衡な回復,弱含みの需要と下振れリスクのバランスで緩やかなペースで成長している。貿易投資の保護主義が高まっている一方で,国際金融危機の後遺症がまだ残っている。強力で,持続可能でバランスがとれた包摂的な成長を実現するため,我々は,革新的な発展及び構造改革を通じて,需要を回復し,成長の新たな源を特定する必要がある。

2.アジア太平洋地域が世界経済を導くために,メンバーエコノミーは,技術革新を推し進め,新たな成長の源を特定しながら,イノベーション主導を堅持し,経済成長への勢いを維持すべきである。

3.改革は,経済成長と革新的発展を推進するための重要な要因である。改革の深化は,持続可能な経済成長への障壁を取り除き,市場が資源配分における決定的な役割を担い,政府の役割を向上させ,実効性のある成長環境を構築し,生産性の可能性を最大限に引き上げる。

4.この目的のため,我々は,アジア太平洋地域において,引き続き構造改革を推進し,革新的な成長を強化し,経済改革,新しい経済,革新的成長,包摂的な支援及び都市化の5つの柱において緊密な協力を推し進めなければならない。この点から,我々は,以下のとおり合意に達した。

5.経済改革の柱の下,我々は,構造改革に関するAPECの新戦略(ANSSR)の実施についてのレビュー及びポストANSSR構造改革事業の将来の方向を定め,また中所得国の罠の克服方法に関する議論及びビジネス環境改善取組プログラムの継続の検討

を含む,APECの経済改革アジェンダの前進を目的に,2015年に構造改革に関する大臣会合の開催に合意する。

6.我々は,経済政策,規制統一,良い規制慣行に関する交流,情報交換及び能力構築の奨励を決意し,革新,改革,成長促進における経験及びベストプラクティスの共有へのメンバーの努力を支持する。我々は,詳細な議論と協力の為,経済委員会の作業プログラムに,中所得国の罠の克服を含めることに合意する。

7.新しい経済の柱の下,経済改革を促進し,インターネット経済,ブルーエコノミー及びグリーン経済などの新興セクターの潜在成長力を活用する。

8.我々は,インターネット経済の促進における協力を支持し,インターネット経済から生じる問題を議論するための特別運営グループを歓迎し,行動を提案し,APECのフォーラ横断的な協力を奨励する。我々は,能力構築及び起業とイノベーションを奨励の円滑化することに合意する。

9.特に女性,若者,障害者,貧しい人々等,脆弱で不利なグループに力を与えることを可能とする環境を育むため,インターネット経済を活用する。我々は,インターネット金融の健全な発展を支持し,それが,成長のツールとなる為の必要な枠組みを開発するため我々は協力して作業する。インターネット経済の為のオープンで協力的な環境の構築という観点から,我々は,中小企業や個人が経済成長の恩恵を受けられるよう,確実で,効率的で,低コストで,包摂的な金融サービスの促進にコミットする。我々は,我々の経済に対するモノのインターネット(IOT)の潜在的な利益を促進することにコミットしている。

10.我々は,アジア太平洋地域において,海洋関連協力を通じた,より統合された,持続可能な,包摂的な,相互に有利なパートナーシップに向けて努力する。我々は,沿岸及び海洋生態系の保全及び災害強靱性,海洋関連の食料安全保障及び関連貿易,海洋科学技術及び革新,ブルーエコノミーに関する協力を支持する。我々は,APECの目的のため,経済成長を促進するため,海洋・沿岸資源及び生態系の持続可能な管理と保全,及び持続可能な成長を推進するためのアプローチという,ブルーエコノミーに関する厦門宣言の声明を承認する。我々は,アジア太平洋地域において,ブルーエコノミーに関する協力を求め,

関連するイニシアティブの実施を奨励する。

11.重要なエネルギー及び環境問題に応え,我々は,環境保全の努力を強化し,特にグリーンで,省エネで,低炭素な開発及び新たな経済成長の源を追求するため再生可能エネルギー,省エネ,グリーン建築基準,鉱業の持続可能な発展及び循環型経済での協力にコミットする。我々の森林資源を保護するため,我々は,違法伐採及び関連する貿易の対策に特別な注意を払う一方で,合法的に伐採された林産物の貿易を促進する。我々は,グリーン開発に関するAPECハイレベル円卓会議のステートメントを歓迎する。

12.我々は,2014年APEC鉱業担当大臣の共同声明を歓迎する。我々は,公共及び民間セクター間の連携を含む能力構築プロジェクトの支援に重点を置く10のAPRC鉱業政策原則を進めるため鉱業サブファンドの設立に留意する。

13.我々は,オープンで,包摂的で,協力的かつ持続可能なエネルギー安全保障のアジア太平洋コンセプトを支持することにコミットする。我々は,APEC地域におけるエネルギー効率の向上及びクリーンで再生可能なエネルギーの促進の重要性を共有する。我々は,発電を含むAPECエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの比率を,2030年までに2010年比で倍増するという目標を目指す。我々は,メンバーエコノミーに対して、仕向地条項の緩和を含む,地域の天然ガス及びLNGの良好な貿易・投資環境の整備を奨励する。

14.化石燃料がこの地域のエネルギーミックスにおいて中長期的に重要な役割を担い続けることから,我々は,化石燃料のクリーンで効率的な利用の重要性を再確認する。我々は,メンバーエコノミーに対し,石炭に代わるエネルギーの早急な導入展開が困難な場合には,高効率石炭火力発電や炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)といったクリーンコール技術の開発及び適用に向けた協力を強化することを奨励する。我々は,関心を有するエコノミーにおいて,ベースロード電源として機能する原子力発電の安全で効率的な開発を支持する。

15.我々は,エネルギー集約度を2035年までに2005年比で45%削減し,必要とする人に不可欠なエネルギー・サービスを提供する重要性を認識しつつ,無駄な消費を助長する非効率的な化石燃料補助金を合理化し,段階的に廃止するとのコミットメントを再確認する。我々は,この地域における持続可能なエネルギー開発に関する高度な考えやモデルを推進するAPECサステナブル・エネルギー・センターの設立を歓迎する。

16.革新的な成長の柱の下で,我々は,科学とイノベーションにおける協力を推進し,互いに合意された条件のもとで技術の自発的な移転,普及及び商業化を促し,包括的かつバランスのとれた知的財産制度の重要性を再確認しつつ,知的財産の利用及び商業化を促進し,知的財産権の保護及び行使を確保し,経験及び知見を共有し,イノベーションに関する才能を養成し,イノベーション能力を強化し,イノベーションのための環境を改善し,持続可能な発展を追求する。

17.APEC越境電子商取引イノベーションと発展のイニシアティブを歓迎する。我々は,貿易,経済成長及び社会の利益を推進する新たな電子商取引の技術を可能にする政策環境をつくる努力を歓迎する。

18.我々は,財政・金融政策の措置及びその他の方法を通じた,起業家イノベーションを推進するためのメンバーの努力を支持する。19.我々は,メンバーが中小企業の革新的な取組への支援を強化することを奨励し,革新的なベストプラクティスに関するAPEC中小企業データベースの提案を支持する。我々は,メンバーが中小企業のイノベーションの資金環境を改善することを奨励する。我々は,ITの推進のためのAPEC中小企業センターの設立の可能性を中国が探求することを歓迎する。我々は,中小企業の競争力向上のために,APEC中小企業サービス同盟(ASSA),APEC中小企業イノベーション・センター,APECアクセラレーター・ネットワーク(AAN)といったAPECサービス・プラットフォームの支援役割を奨励する。

20.我々は,電気自動車のイノベーションの深化及び環境にやさしい自動車技術を通じたグリーン成長の推進に関するメンバーの協力を支持する。

21.包摂的な支援の柱の下,起業及び雇用,保健,食料安全保障,食品の安全,持続可能な農業開発,女性の経済参加,若者,障害者,災害予防及び軽減,社会責任,ビジネス倫理,腐敗対策に関する協力の強化,並びに貿易の確保にコミットする。我々は,質の高い雇用を促進し,人材を開発することは,革新的成長にとって重要であると認識する。我々は,質の高い雇用促進及び人材を通じた人と人との連結性強化のためのAPEC行動計画(2015-2018)を支持する。22.我々は,「ヘルシーアジア太平洋2020」イニシアティブを実施すべく取組むことをメンバーエコノミーに奨励する。我々は,ポスト2015の課題への活動を補完する形で,ミレニアム開発目標の保健分野の未達成の目標に関する取組を継続し,負傷を含む非感染症疾患の予防と管理,医療制度強化によるユニバーサル・ヘルス・カバレッジの促進,APEC地域における公衆衛生行政の緊急事態や災害時における備え,監視,対応及び復旧制度の改善にコミットする。

23.我々は,経済のけん引役としての女性の潜在力を解放させることは,経済成長の規模と包摂性の観点から,我々の成長にとってきわめて重要であることを認識する。我々は,2014年APEC女性と経済フォーラムの声明を歓迎し,全てのエコノミーが効果的な関連措置を取ることを奨励する。我々は,女性がビジネスを起こし,育成し,地域の貿易協力に関与するよう,ICTを活用する女性の能力構築を奨励し,コミットする。

24.我々は,持続可能な開発,イノベーション,科学技術,実現可能な経済環境を基礎とした農業生産性並びに食料生産及び入手可能性の向上,フードロス削減のためのポストハーベスト・ロス管理の改善,食料安全保障及び食の安全を促進するための地域協力の強化のためのメンバーエコノミーによる努力を支持する。

25.APEC高等教育研究センターの設立を支持し,APEC奨学金イニシアティブを歓迎する。我々は,APECバーチャル・アカデミック・モビリティ・カード・イニシアティブの自主的な実施を含め,様々な学術モビリティスキーム及びメカニズムを考案することを実務者に奨励する。

26.都市化の柱の下,我々は,都市化及び持続可能な都市開発を通じた経済成長の新たな起動力の特定を追求する。我々は,都市化のAPECパートナーシップを支持し,APECエコノミーにおける持続可能な都市の協力ネットワークを設立することに同意する。我々は,フォーラムを組織し,政策対話を開催し,国際的姉妹都市プログラムを活用し,都市化及び持続可能な都市開発に関する経験の共有及び協力を推進する。

27.我々は,都市化に関する研究及び能力構築に係る既存の資源の利用を促進する。我々は,APECフレームワークにおけるサブファンド設立のための任意拠出を行うこと含めたメンバーエコノミーによる都市化に関する協力及び都市化関連プロジェクトの支援を奨励する。

28.我々は,APEC低炭素モデルタウン・プロジェクトの進捗及びその推進の取組を称賛する。我々は,エコシティー及びスマートシティ協力プログラムの重要性を強調し,グリーンな都市化及び持続可能な都市開発の道筋の探求に取組む。

29.我々は,高級実務者会合(SOM),経済委員会(EC),貿易・投資委員会(CTI)及び経済・技術協力運営委員会(SCE)やAPECサブフォーラにおいて都市化関連のトピックについて更に検討することを奨励する。