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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 附属書D 2015-2025年 APEC連結性ブループリント

[場所] 北京
[年月日] 2014年11月11日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

背景

1.2013年APEC首脳宣言において,物理的連結性,制度的連結性,および人と人との連結性を通じ,継ぎ目なくかつ包括的に連結・統合されたアジア太平洋を実現するという願望を共有した。

2.連結性は,APECのような多様な地域機構のための野心的な目標を意味するが,その野心こそが強力で具体的な成果を推進する。

3.連結性は,政府やビジネス界だけでなく,一つの共同体としてのAPECのためにも重要である。APECにおいて既に発展している中心と新興の成長の中心を繋ぐことにより,この地域の成長の質が向上し,アジア太平洋の経済的繁栄と強靭性に貢献する。

4.これに関し,我々は,地域の連結性を進展させるため,APECの様々なフォーラおよび作業部会にて行われてきた重要な取組を称賛し留意する。APECエコノミーは国内および地域レベルにおける連結性を向上させるための相当な取組を行ってきた。

5.一方で,これまでのAPECにおける連結性向上の多くの業績と成功にもかかわらず,多くの課題がいまだ残っている。物理的連結性においては,地域全体に情報通信技術インフラへのアクセスやその物理的な質に関する格差が存在する。

6.制度的連結性においては,様々な規制上の制限または能力不足により,連結性向上のための既存の機関の能力に深刻なギャップが存在する。

7.人と人との連結性においては,人物交流と人の移動を妨げる障壁を緩和するためになすべき取組も多く,継ぎ目のない人々の流れを支援するため共同の努力が必要である。

8.我々は,そのため,APEC地域をより緊密に近づける,現在および将来の取組のための戦略的な指針として,また,多くのAPECの一連の作業がその努力を結束し,目指す高い水準の枠組みとして,このブループリントを策定した。

2025年におけるAPEC連結性のビジョン

9.ブループリントを通じ,継ぎ目なくかつ包括的に連結・統合されたアジア太平洋を達成するという目的を持って,我々は合意された取組を行い,2025年までに合意された目標を達成することにより,物理的,制度的,そして人と人との連結性を強化することに,コミットする。

10.この全体目標を達成するため,APECメンバーエコノミーは,物理的,制度的,人と人という柱において,特定の具体的な取組を行う。

11.このブループリントは既存の連結性に関連する取組を含み,さらなる進展が必要な取組の復活を奨励し,APECの進展を発展させるため,物品,サービス,資本及び人のより効率的な流れのため,将来の取組を提案する。また,ブループリントは広い範囲を扱い,変化し続けるアジア太平洋の状況に適応することが可能である。

12.我々は,このブループリントを,均衡のとれた,確実な,持続可能かつ包摂的成長を加速,奨励するとともに,地域における成長の極を連結させ,APECを一つの共同体としてより緊密に近づけるものとして描いている。

物理的連結性

13.物理的連結性の下で,分野横断的な課題に関連し、我々は、投資環境の改善,APECエコノミーにおける官民パートナーシップ(PPP)やその他の手段を通じたインフラ・ファイナンスの強化,インフラプロジェクトの提案評価において重要な品質要因を考慮する包括的な査定方法の採用,インフラプロジェクトの計画および実施におけるベストプラクティスや人を中心とした投資の適用を促進することに焦点をあてる。

14.我々は,財務大臣プロセスの下で,インフラ官民パートナーシップ(PPP)の分野で,知識共有と能力構築に関する相当の取組がなされていることを歓迎する。

15.我々は,財務大臣プロセスの下でAPEC官民パートナーシップ(PPP)専門家アドバイザリーパネルがインドネシアのパイロットPPPセンターへの自発的な支援の取り組みを開始したことに留意する。我々は,APEC地域におけるグットプラクティスを活性化し,技術的な支援を必要としている途上エコノミー向けにそうした支援を導く手助けをする技能の宝庫としての機能を果たすことにより,APECエコノミーが特にPPPの促進を通じてインフラ開発のために民間資金をうまく活用することを手助けしている同パネルの役割を称賛し留意する。

16.我々は,グットプラクティスを共有するために,PPPセンターの地域ネッワークを発展させる目的で,専門のPPPセンターをAPECエコノミーに更に設立することにコミットする。長期的に,これらのセンターは,域内に広がるインフラ・ファイナンスのためのAPEC市場創設を支援する重要な役割を担うことが出来る。我々はまた,APEC域内においてインフラPPPプロジェクト開発を成功させるための実施ロードマップやPPPを通じたインフラ投資促進に関する行動アジェンダを歓迎する。

17.我々は,エネルギー,ICTおよび交通インフラを含む質の高いインフラを開発,維持および更新し,APEC交通ネットワークの質と持続可能性の向上と,ブロードバンド・インターネット接続の向上,持続可能なエネルギー安全保障の促進,およびエネルギーインフラにおける強靭性の構築に取組む。

18.我々は,特に海上インフラ開発プロジェクトの多くが単独で開発されていることを考慮し,海上交通および輸送の効率的かつ効果的な運用促進を支援する。我々は,将来の協力が具体的な成果につながり得るいくつかの先駆的な取組に留意する。

19.我々は,強固な貿易及び人と人の連結性を増大させるための航空輸送の協力を強化し,航空の連結性の効率及び安全性を促進する経験及びグッドプラクティスを共有する。

20.我々は,情報共有の増加および情報技術の発達により,アジア太平洋地域における人と組織の,より早くかつ信頼できる連結を可能にし,貿易と経済成長を促進させることに鑑み,CT開発が1989年のAPEC発足以来,取組の焦点となっていることに留意する。

21.我々は,特にエネルギー関連貿易および環境の持続可能性の分野において,将来のエネルギー協力における取組を促進すべく,APECの大きな潜在性を活用することを決意する。APECは,国境を越えたエネルギー貿易拡大および非拘束的な形で再生利用可能エネルギーを検討するのに理想的なフォーラムであることを象徴している。我々は,全てのメンバーエコノミーのために質の高い電力供給を目指す。

制度的連結性

22.制度的連結性の下で,我々は地域フォーラムとしてのAPECにとって決定的に重要な,貿易円滑化,構造・規制改革,および交通や物流の円滑化の諸問題に共同で対処することを進めていくよう努力する。

23.我々は,税関および国境機関を近代化し,また,規制,基準,および貿易を担当する機関間の調整を含む規制の策定において,政府全体としてのアプローチが可能となることを目指す。

24.我々は,各メンバーエコノミーが独自のシングル・ウインドウ制度を2020年までに開発することを奨励するAPECの取組を支持し,また,我々は,シングル・ウインドウ制度とペーパーレス貿易との間国際的な相互運用性を促進する努力を奨励する。

25.我々は,APECサプライチェーン連結性枠組行動計画(SCFAP)における8つの課題において,特定の障害を克服するためにエコノミーを支援する能力構築計画の実施を通じてサプライチェーンの効率性を体系的に向上させることにより,SCFAPにおけるイニシアティブをさらに強化する。

26.規制の一貫性において,我々は,規制課題に対するベストプラクティスの共有を通じ,規制協力に焦点を当てた取組を実施する。我々は,このプロセスにおいて既に業界間の対話がかなり進展していることに留意する。インターネットは,エコノミーの良き規制慣行の実施促進を手助けする優れて効果的なツールである(例:規制作業の内部調整確保,規制効果の評価,および市民との協議の実施)。エコノミーは良き規制慣行の実施を促進するためにインターネットを用いたツールの利用を更に探求し,それには,インターネット時代における規制提案に関する市民との協議の実施を強化する上で,APECエコノミーが取り得る新たな行動に関する取組を通じたものも含まれる。

27.構造改革の下で,APECビジネス環境改善(EoDB)の複数年プロジェクト(MYP)は,25%安く,早く,簡単にビジネス行うとの野心的な目標をエコノミーが達成することを支援するための個別の状況に応じた能力構築の取組を促進する。我々は,国内の政策と国際合意の調和を通じて、これらの目標達成を目指し、EoDBでの取組を2020年まで継続することを検討することに合意する。

28.我々は,アジア太平洋における電子商取引を含む,透明で,安全かつ競争力のあるより良く機能する市場の育成及び,2025年までに安心,信頼できるICT及び電子商取引環境の適用の拡大という目標にコミットする。

29.APECは,中所得国の罠(MIT)によってもたらされた政策課題に取組むための戦略を立てる必要がある。ビジネスの環境改善のため,エコノミーの競争力,生産性レベル及び規制環境を向上させる事で,中所得国の罠の根底にある課題の解決に貢献する。

人と人との連結性

30.人と人の連結性の下で,我々は,国境を越えた人の移動及び革新的なアイディア交換の促進に向けて努力する。ビジネス関係者の移動,越境教育,観光の円滑化,熟練労働者の移動に関する課題もこの柱の下で対処される。

31.我々は,APECビジネストラベルカード(ABTC)の保有者数を増加させ,ABTCスキームの効率と有効性の改善に引き続きコミットする。

32.我々は,学生,教師及び業者の移動が地域の結びつきを強化させるとの認識の下,越境教育協力を改善し,人と人との交流を円滑化させ,知識や技術の移転を通じた経済発展の推進に取組む。我々は,2020年までにAPEC域内で年間100万人の交換留学生を達成し,途上エコノミーへの交換留学生数の増加を決意する。

33.観光はAPECの経済成長戦略の重要な一部であり,それは,APEC域内において実施されてきた多くの観光円滑化及び推進に関するイニシアティブに反映されている。この点に関し,我々は,幾つかのエコノミーによる査証要件緩和のための取組の実施や,入国管理プロセスの円滑化に向けたプロジェクトの開始に関する努力を歓迎する。

34.我々は,2025年までに8億人のAPEC観光来訪客を達成するよう努力し,観光に関連した旅行客のコスト及び観光に関連した不確定性を減らすため,「APEC域内における旅行関連事業者の行動規範」の作成にコミットする。

35.我々は,2017年までに各APECエコノミーが,自国以外のエコノミーにおいて毎年最低一つの文化紹介行事を開催することを目指し,APEC域内の文化交流推進における協力を強化する。