[文書名] 2015年APEC閣僚声明
1. 我々,アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚は,2015年11月16日及び17日にアルバート・デル・ロサリオ外務大臣及びグレゴリー・ドミンゴ貿易産業大臣の議長の下,フィリピン・マニラに集まった。
2. APEC26周年に際し,我々は,テーマとして「包摂的な経済の構築,より良い世界をめざして」を選択した。これは,誰しも,また,将来の世代にも裨益する経済成長アジェンダを包含するアジア太平洋地域のための我々のビジョンを表すものであり,スービックにおいてAPEC首脳が持続可能な成長と公平な発展に向けて20年前に設定したビジョンを改めて確認するものである。本年,我々が引き続き21世紀における地域の進路を決める中で,(1)地域経済統合(REI)アジェンダの推進,(2)零細・中小企業(MSME)の地域・世界市場への参画促進,(3)人材開発への投資,(4)持続可能かつ強靱な地域社会の構築,という4つの優先事項を通じたビジョンを追求した。
3. 我々は,APECビジネス諮問委員会(ABAC),東南アジア諸国連合(ASEAN),太平洋経済協力会議(PECC),太平洋諸国フォーラム(PIF),世界貿易機関(WTO),APEC事務局,APECポリシー・サポート・ユニット(PSU)の参加を歓迎した。
4. グローバルな経済活動は,依然として全体的に緩やかでばらつきがある。我々は,いくつかのエコノミーにおける経済活動強化を歓迎するが,世界の成長は我々の期待に届かなかったことに留意する。経済は,弱い最終需要及び金融市場における不安定性を含め,引き続き逆風に直面している。我々は,通貨及び為替レート政策,競争的通貨切り下げの抑制,あらゆる形態の保護主義への抵抗に関する以前のコミットメントを再確認する財務大臣の声明を再確認する。
5. アジア太平洋は引き続き世界の最も活力に満ちた地域であり,大半の他の地域を凌駕してきた。この肯定的な結果は,自由で開かれた貿易投資というボゴール目標へのコミットメントと自由で開かれた貿易への個別的・集団的な取組を基礎として経済的基盤を構築するという地域経済統合を達成する我々の取組から生まれてきている。
6. 現在我々は,これまで以上に,課題に取組み,説明責任,透明性,開放性,包摂性に基づいた機会を掴むために,包括的,戦略的,広範なアプローチを必要としている。制度構築,金融包摂,環境保護,災害リスク減少,社会的一体性は,包摂的な成長を維持するのに不可欠であろう。我々の革新的で,才覚があり,起業家精神に富んだ人々は,我々に対し,成長と繁栄を可能とする環境を提供するよう求めている。我々の地域の豊かな陸上・海洋天然資源は,環境及び持続可能性に適切な配慮を払い,賢明に管理すれば,富,経済及び雇用達成のための重要な手段となるであろう。
7. 我々は,APECプロセス・活動において男女共同参画を主流化する継続した取組を歓迎し,アジア太平洋及び同地域を越えた地域における経済発展と繁栄に対する女性の非常に重要な貢献を再確認する。包摂的な成長の原動力として女性は,労働市場への参加,包摂的なビジネス,世界市場,グローバル・バリューチェーン(GVCs)への参加を通じて経済へ重要な貢献を行う。
8. 我々は,強固で,持続可能で,均衡がとれ,革新的,安全で,包摂的な成長を支えるために,我々の政策を構成する。我々は,持続可能なアジア太平洋パートナーシップのために,地域において平和,安定,繁栄,経済成長及び発展を醸成するための具体的な措置と共同行動をとること,革新的発展,相互に連結された成長,共有された利益に基づくアジア太平洋における開かれた経済を共同で構築することにコミットしている。我々は,過年度からの約束を実施する実質的な取組を称賛する。
9. この目的のため,ここマニラにおいて我々は以下の行動にコミットする。
APEC包括的イニシアティブ
多角的貿易体制への支持
10. 体現された,ルールに基づく,透明性のある,無差別で,開かれた,包摂的な多角的貿易体制を強化するコミットメントを支持する。20年前の設立以降,WTOが達成した重要な成果及び2015年12月15日-18日にナイロビにおいて開催される第10回WTO閣僚会議の重要性を認識しつつ,我々は,首脳が多角的貿易体制及び第10回WTO閣僚会議を支持する独立の声明を発出することを提言する。
ボゴール目標
11. 我々は,2020年までのボゴール目標達成に向けたコミットメントを支持し,また脆弱な人々の問題へ取組み,発展の格差を縮め,貧困を軽減するという追加的イニシアティブに留意する。我々は,ボゴール目標達成の進捗を確認する手段として,APEC個別行動計画プロセス(IAP)及び改訂IAPテンプレートを通じた継続的向上の重要性を再確認する。我々は,ボゴール目標に向けたエコノミーの進捗に関する2016年第二期レビューに期待する。
質の高い成長強化のためのAPEC戦略
12. 我々は,質の高い成長強化のためのAPEC戦略を首脳が採択するために承認する。「2010年APEC首脳の成長戦略」を基礎とし,「2014年革新的な発展,経済改革及び成長に関するAPECアコード」にあるコミットメントを念頭に置き,質の高い成長強化のためのAPEC戦略は,制度構築,社会的一体性及び環境影響といった主要な説明責任分野に焦点を当てることにより,均衡ある,包摂的,革新的,安全且つ持続可能な成長を達成するための協力及び能力構築を強化するものである。我々は,活力に満ちた質の高い成長確保に向けた経済全体,社会全体というアプローチを発展させる上で民間部門の参加を奨励する。
腐敗対策
13. 「腐敗との闘い及び透明性確保のためのサンティアゴ・コミットメント」,「腐敗との闘い及び透明性確保に関するAPEC行動方針」,「腐敗との闘い及び透明性確保に関するウラジオストク宣言」,及び,「腐敗防止に関する北京宣言」に導かれて,我々は,腐敗と贈収賄と闘い,APECメンバー・エコノミー間において,腐敗した職員の本国送還・引き渡し,財産回復,犯罪化及び腐敗防止の分野における国際協力を促進する強いコミットメントを再確認する。
14. 我々は,国内の法律及び政策に従い適切な場合,腐敗,贈収賄,資金洗浄及び不正取引,並びに,それら犯罪による収益の特定及び返還における実践的な協力を進めるために最近組織された「APEC腐敗防止・法執行機関ネットワーク(ACT-NET)」の取組を歓迎する。
15. 我々は,環境犯罪を含め,腐敗と不法な取引が融合される例が増加していることを断ち切ることが必要であると認識する。我々は,違法な経済の有害な影響とよりうまく闘い,国境,市場,サプライチェーンを超えて規律の文化を促進するため,官民パートナーシップを通じることを含め,エコノミー間で,越境協力を強化し,より革新的なパスファインディング・アプローチをとることを奨励する。
16. 我々は,「腐敗対策担当官の保護のためのセブ・マニフェスト」を歓迎し,腐敗行為の発見,捜査,訴追及び防止における腐敗対策担当官の重要な役割を認識する。我々は,さらに,エコノミーに対し,国内的及び国際的局面において腐敗対策担当官を保護するために全ての適切な措置を講じるよう奨励する。
APECサービス協力枠組
17. サービス貿易は,急速に拡大しており,金額だけでなく,社会全体の経済的関与の深み及び広がりにおいて,物品の貿易を上回ると見込まれている。我々は,「APECサービス協力枠組(ASCF)」を首脳による採択のために承認し,サービスをよりよく理解するよう弾みをつけ,革新的,生産的,活力あるサービス分野を最もよく促進する政策及び規制の設定を提供する。これにより,エコノミーがニーズに合った政策を作成する正しい手段を備えることとなり,開かれた,透明性があり,かつ競争力のあるサービス分野が雇用を生み,質の高い物品を生産し,企業の機会を活用し,経済成長を促進し,消費者の選択肢を広げ,生活水準を向上させ,貧困を緩和する助けとなると認識している。我々は,ASCFと整合的な「2016年APECサービス競争力ロードマップ」の策定を支持する。
2015年APEC優先事項への支援
優先事項1:地域経済統合アジェンダの強化
アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)
18. 我々は,「FTAAPの実現に向けたAPECの貢献のための北京ロードマップ」の実施に関する進捗を称賛し,その進捗報告書を歓迎する。我々は,また,タスクフォース及び中核的起草グループの創設,業務指示書の策定,統合された作業計画,研究の最終編集のための編集メカニズムの策定を含め,「FTAAP実現に関連する課題にかかる共同の戦略的研究」開始を称賛する。我々は,2016年末までに高級実務者が包括的研究及び付属の提言を提出することを期待する。我々は,2015年8月に開催されたFTAAPに関するセミナーの結果概要報告,第2次キャパシティ・ビルディング・ニーズイニシアティブ(CBNI)下の様々なワークショップ,RTAs/FTAsのための情報共有メカニズムの下での政策対話を歓迎する。最近の地域における自由貿易協定(FTA)交渉における進展に留意しつつ,我々は,「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)への道筋」に含まれる,FTAAPを進行中の地域的な取組に基づいて発展・構築することにより,包括的な自由貿易協定として追求するとの我々の信念を再確認する。
環境物品及びサービス
19. 我々は,環境課題に取組み,グリーン成長を達成するための貿易強化解決策の重要性を認識する。我々は,2012年に首脳が合意したとおり,本年末までに「APEC環境物品リスト」上の54品目について実効税率を5%以下に削減するとの画期的コミットメントを達成しつつあるエコノミーを称賛する。我々は,まだコミットメントを完全に実施していないエコノミーに対し,期限を守る取組を強化するよう要請する。我々は,実務者に対して本年末までに全てのエコノミーの最終実施計画をとりまとめ,APECウェブサイトにこれらの計画を公表するよう指示する。
20. 我々は,環境サービスにおける自由化,円滑化,協力を促進する「環境サービス行動計画(ESAP)」の承認を歓迎する。我々は,実務者に対してESAPの下で行動を実施するよう指示する。我々は,2018年までの中間見直し,2020年までの最終見直しの実施に向けた進捗に期待する。
構造改革
21. 我々は,「構造改革のためのAPEC改訂アジェンダ(RAASR)」を2020年まで継続するAPEC構造改革作業プログラムとして承認する。同アジェンダは,均衡のとれた持続可能な成長を活気づかせ,格差の縮小を目指すものである。我々は,構造改革,経済ガバナンスに焦点を当てた能力構築を通じて経済における機構構築に取り組む努力を加速すること,サービス分野,規制インフラ,競争政策を更に改善させることに焦点を当てた一方的改革を奨励することにコミットする。RAASRを承認する際に,我々は,APECポリシー・サポート・ユニット(PSU)の報告書「構造改革のためのAPEC新戦略評価(ANSSR)と2015年以降のAPEC構造改革アジェンダ推進」及びそのAPEC構造改革アジェンダの推進を強化するための勧告を歓迎する。
22. 我々は,規制改革,経済,司法インフラ強化,競争政策,企業ガバナンス,公共部門管理を含め構造改革の根本的要素を統合することにより,RAASRにつき,APECプラットフォーム,特に経済委員会(EC)を通じて取り組むことにコミットする。
23. 我々は,現行の「ビジネス環境改善(EoDB)」イニシアティブへのメンバー・エコノミーの貢献を称賛し,我々が2018年までに10%改善するという新たな野心的目標の達成に向け努力する中で,能力構築を導く「APECビジネス環境改善実施計画」を策定するECの計画を歓迎する。
24. 我々は,「構造改革とイノベーションについての2015年APEC経済政策報告」及び同報告書における効果的な構造改革政策を通じてイノベーションがもたらし得る成長潜在性を活用する旨の勧告を承認する。我々は,「構造改革とサービス」に関する2016年APEC経済政策報告,「改革に対する,ハイレベルの支持構築」とのトピックでの2016年良い規制慣行会議に期待している。
金融
25. 我々は,APEC財務大臣プロセス(FMP)の下での「セブ行動計画(CAP)」の策定を支持する。同計画には(ⅰ)金融統合の促進,(ⅱ)財政改革・透明性の推進,(ⅲ)金融強靱性の向上,(ⅳ)インフラ開発とインフラ・ファイナンスの促進という4つの柱がある。我々は,より広範な地域内貿易及び投資に道を開き,APEC全域にわたりより包摂的な金融市場の発展を促す投資家保護,市場規律,規制状況,非リスク化監視,財政安定性等他の考慮事項と均衡を取りつつ,APECにおける地域的金融開発及び統合が必要であると認識する。我々は,ガバナンスと財政の透明性を向上させる財政改革により,一層の包摂性と財政持続可能性を達成し,予算編成プロセスにおける広範な参加を可能にし,税金支出,補助金,政府債務の管理を強化すると認識する。我々は,持続可能で包摂的な成長への金融強靭性の役割を重視する。金融強靭性は,マクロプルーデンシャル政策枠組及び対外資本流出の変動制への強靱性に関する経験の共有を含め,エコノミー間における継続したマクロ経済面での協力継続を通じて強化し得る。我々は,エコノミー内外にわたる連結性への需要に鑑み,質の高いインフラ開発及びファイナンスが地域にとって主要な優先事項であると強調する。
26. 我々は,APECエコノミー間で発展のレベルも国内状況も異なることに鑑み,「共同行動計画
(CAP)」が自主的で拘束力を持たず,ロードマップにあるイニシアティブ及び達成事項は,APEC全体として広く利益があると認識する。CAPは,自由で開かれた貿易及び投資というボゴール目標,APEC域内における将来の成長のための優先事項を特定する成長戦略及びファイナンスに関する京都報告書に向けた進捗を継続しており,財務大臣プロセス(FMP)の活動の参照として活用できる生きた文書である。我々は,エコノミーに対し,国内的,地域的,グローバルに適用可能なCAPイニシアティブ及び成果物を実施すべく共に取組み,域内貿易投資,連結性,インフラ開発,MSME及びサプライ・チェーン・ファイナンスを促進するよう奨励する。
投資円滑化
27. 我々は,「投資円滑化行動計画(IFAP)」の2015-2016年優先行動を歓迎し,メンバーに対し,より予測可能で透明性のある投資環境を支援し,投資の成長・雇用原動力としての役割を強化するために,特定のIFAP措置を自主的にとることを奨励する。
インフラ投資
28. 我々は,「APEC地域における官民パートナーシップ(PPP)枠組に関するガイドブック」の公表を歓迎し,APECエコノミーがPPPインフラ枠組みを発展させるための参考として報告の価値を認識する。我々は,また,PPP専門家諮問パネルによって描かれた取組に基づき,そのイニシアティブを実施することを継続し,能力構築を含め2014年及び2015年財務大臣声明に規定された進行中のイニシアティブを基礎として更に進めることにコミットする。我々は,同様に,国際機関とのパートナーシップや域内のPPPプロジェクトに対する長期的ファイナンス及び資金的支援を支持する。
サービスに関する継続的な取組
29. 我々は,サービス貿易関連の規則の透明性を向上させ,サービス貿易投資を促進し,開かれたサービス市場を発展させる継続的な取組を歓迎する。我々は,「APECサービス協力枠組(ASCF)」の目的達成に直接貢献する知識共有と連携プラットフォームとして,サービスに関するAPECバーチャル知識センターの設立を歓迎する。我々は,更新された「サービス貿易アクセス要求(STAR)データベース」を歓迎し,追加的なサービス分野へ拡大を模索することに合意する。我々は,実務者に対し,ASCFの目的を追求するため他の国際フォーラによって開発された既存のサービスの取組及び指標を活用するよう奨励する。
30. 我々は,ポリシー・サポート・ユニット(PSU)による「APECサービス・ベースライン指標に関する取組の研究」を歓迎する。我々は,エコノミーに対し,サービス貿易に関する統計についての行動計画及び他のAPECによるサービスに関する取組の複数年実施にあたっては,PSU研究の勧告を検討するよう奨励する。
31. 我々は,APEC2015年サービスに関する官民対話(PPDs)及びサービス連合の地域会合の勧告を歓迎し,サービス貿易の成長の障害に対処し,その成長を促進する官民セクター間の更なる関与を奨励する。
32. 我々は,APECにおける鉱業,エネルギー・サービス,電気通信・情報通信技術サービス貿易投資を促進するAPEC良い政策・規制慣行シンポジウムの成果を歓迎し,開催予定の建築・工学サービスにおける貿易及び投資を促進するAPEC良い政策・規制慣行シンポジウムに期待する。我々は,2016年にAPECサービスにおける良い慣行集が,これまで開催された8つのシンポジウムに基づいて公表されることに期待している。
次世代貿易投資問題(NGeTI)
33. 我々は,次世代貿易投資課題としての製造業に関連するサービスに関する取組を称賛し,「製造業関連サービス行動計画」や本年PSUにより実施されるケース・スタディの承認を歓迎する。我々は,この行動計画が分野別アプローチによってボゴール目標及び「APECサービス協力枠組み(ASCF)」のビジョンに貢献していることを認識する。この行動計画の実施の成果を期待しつつ,我々は,エコノミーに対し,重要行動アジェンダの下で具体的行動をとるよう要請する。
34. 我々は,また,潜在的な次世代貿易投資問題として,「包摂的な成長のためのデジタル貿易促進作業計画」の策定を歓迎し,実務者に対し,貿易政策対話実施及びPSUによる独立した調査を含め,この作業計画の活動を実施するよう指示する。
透明性と貿易円滑化
35. 我々は,「APEC貿易情報集積(APECTR)」の立ち上げを貿易関連規則に関するワンストップ情報ポータルとして歓迎する。我々は,実務者に対し,貿易における透明性と予測可能性への我々のコミットメントに合致するように,その関連性と包括性を確保するよう指示する。
グローバル・バリューチェーン(GVC)協力
36. 我々は,「グローバル・バリューチェーン(GVC)の発展と協力のためのAPEC戦略ブループリント」の進捗報告書を歓迎し,実務者に対し様々な異なる取組の下でのイニシアティブ及び作業計画を通じて,戦略的ブループリントの実施を前進させるよう指示する。我々は,天災・人災等の様々なリスクに対してGVCsの強靱性を強化することを含め,アジア太平洋地域における持続可能で,包摂的な,均衡のとれた成長を促進するため,MSMEsを含めGVCをより焦点を絞った形で進化させる取組にコミットする。
37. 我々は,研究及び2016年にサブリージョンで開催される関連の官民対話を通じて,GVC発展のための投資環境改善に関する行動を模索する取組を歓迎する。我々は,実務者に対し,GVCにおける国境を越えた投資の流れを更に促進するために,この点で取組を進めることを指示する。
38. 我々は,GVCの下のAPEC付加価値貿易(TiVA)の測定に関する技術グループの会合を歓迎し,実務者に対し,技術グループの運用メカニズムに関する業務指示書,作業計画を実施するよう要請する。我々は,APECTiVAデータベースの構築に係る準備作業を歓迎し,2018年までに完成すると予測する。我々は,データベースの構築にメンバーや他の関係者からより多くのインプットを奨励する。我々は,零細・中小企業(MSMEs)に関する情報は,MSMEs関連情報の情報源をつなぎ合わせることにより,MSMEsの成長及び国際化を目指す政策や事業の設計のために不可欠であることに留意する。
39. 我々は,雇用創出及び競争力強化のための2013年APECベストプラクティスが他の種類の現地化政策にどのように適用できたのかに関する貿易政策対話の成果を歓迎する。我々は,実務者に対し,引き続き現地化政策の代替案を特定し,雇用創出及び競争力強化のための方法としてベストプラクティスを発展させるよう指示する。
40. 我々は,地域の新たな貿易と投資の課題として,国境を越えたバリューチェーンの強靱性を強化する共同の取組の重要性を再度強調する。我々は,「自然災害に対するGVCの強靭性強化に関するAPECガイドブック」の承認及び自然災害に対するGVC強靱性強化の取組促進,特に,投資環境改善,防災と同様,零細・中小企業のGVCへの参加強化に貢献することを目的とした2016年能力構築セミナーを歓迎する。
41. アジア及びラ米・カリブ地域(LAC)のバリューチェーンを強化するために,貿易投資における相互補完性が重要な要素であることに鑑み,我々は,アジア及びLACにおける地域的バリューチェーン統合強化に関する研究及び2016年に開催予定の官民対話(PPD)に期待している。
サプライチェーン連結性
42. 我々は,ポリシー・サポート・ユニット(PSU)が提供した「サプライチェーン連結性枠組行動計画(SCFAP)」の暫定進捗報告及び2016年のSCFAPの最終評価に向けて,APEC全域でサプライチェーン実績の10%向上を達成するという首脳の目標を支持する行動計画の実施に留意する。
43. 我々は,APECが「サプライチェーン・パフォーマンスを向上させる能力構築計画(CBPISCP)」,特に到着前手続,急送貨物,事前教示,貨物の引き取りと電子決済に引き続き参加することを奨励する。我々は,APECサプライチェーン連結性に関する同盟(A2C2)の貢献をCBPISCP実施における諮問グループとして評価し,A2C2がこの重要な取組を継続することを期待する。
44. 我々は,自発的に申し出たエコノミーによる相互運用可能なグローバル・データ・スタンダード
(GDS)を利用する利点と課題を示すパイロット事業の進捗を歓迎する。パイロット事業に基づいてGDSの費用対効果を評価し,相互運用可能なGDSのより広範な使用を促進するための一連の政策主体の提言を打ち出すPSUによる「APECサプライチェーン連結性のためのGDS適用に関する研究」の成果を期待する。我々は,より多くのエコノミーに対し,GDSに関する直接の経験と能力構築のためにパイロット事業を利用するよう奨励し,ワインのパイロット事業が既に2015年11月に開始し,医薬品製品を含む他のパイロット事業が2016年に開始される見込みであることに留意する。
45. 我々は,「グリーン・サプライチェーンに関するAPEC協力ネットワークの天津パイロット・センター(GSCNET)」の立ち上げ及び5月に開催されたGSCNET対話の成果を歓迎する。我々は,GSCNETの作業計画を承認し,メンバーに対し,この目的のために協力を促進すべく,より多くのパイロット・センターを設立するよう奨励する。
税関手続き
46. 我々は,税関による貿易円滑化及び安全な旅行及び貿易に関する取組を称賛する。我々は,人道物資・機材の輸送に関するAPEC指針の承認を歓迎し,実務者に対し,災害地域への物質輸送への障害を削減する我々の継続した努力に対し,これら原則を適用するよう奨励する。我々は,シングルウィンドウ,到着前リスク管理,乗客予約記録,認定事業者(AEO)に関する取組の進捗を期待する。我々は,世界税関機構(WCO)の手段,ツール,基準に従い,合法的な処理貨物を効率的に輸送することを可能とする貿易円滑化枠組み策定を支援し,認定事業者の相互認証取り決めのネットワークを広げる「認定事業者に関するAPECグッドプラクティス」が2016年に完了することを期待する。
47. 我々は,「アジア太平洋モデルE-Portネットワーク(APMEN)」に関する取組を称賛し,APMEN運用センター設立,官民対話(PPD),上海におけるAPMEN共同運営グループ第2回会合を歓迎する。我々は,APMEN戦略的枠組及び作業メカニズムを承認し,より多くのエコノミーがAPMENに参加するよう奨励する。
48. 越境貿易に情報通信技術(ICT)を利用するにあたり,我々は,実務者に対し,ICT技術へのより広いアクセスビリティの問題,エコノミー間の発展のレベル,APECにおける進行中の取組を考慮し,E-port及びシングル・ウィンドウ・システムの開発を検討するよう奨励する。
49. 我々は,越境電子商取引の開発を促進することを目的として同分野及び第1回越境電子商取引にかかる税関管理に関するワークショップの成果において,APECメンバー・エコノミーによる進捗を歓迎する。
村落開発
50. 我々は,村落開発及び貧困緩和を通じて,持続可能で包摂的な成長に貢献する産品の貿易を探求
する2013年のマンデートを遂行する取組を歓迎し,実務者に対し,この分野における取組を継続するよう命じる。
包摂的なビジネス
51. 我々は,包摂的なビジネスを通じた零細・中小企業の成長促進及び,包摂的なビジネスに関するハイレベル対話といった投資に関する官民対話の成果を歓迎する。我々は,実務者に対し,特に農業ビジネス,住宅建築,観光,林業,水産業といった主要分野における包摂的ビジネス,並びに,経験を共有し,関連の国際機関と連携することにより持続可能で包摂的な成長におけるその役割を理解するための更なる取組を実施するよう指示する。
包括的連結性の強化
52. 我々は,「2015-2025年APEC連結性ブループリント」を実施することにより,継ぎ目のない,包括的に連結され,統合されたアジア太平洋という全体的な目標へのコミットメントを再確認する。我々は,メンバー・エコノミーに対し,物理的,制度的,人と人の連結性という柱において特定の具体的な取組を行うよう奨励する。我々は,高級実務者に対し,合意されたブループリント実施監視,レビュー,評価に関する専従取決めを実施するよう奨励する。
53. 我々は,「APECインフラ開発・投資に関する複数年計画(MYPIDI)」を通じたものを含め,インフラ開発向上に向けたメンバー・エコノミーの努力を称賛する。我々は,「APECインフラ開発投資に関するピア・レビュー及び能力開発のための参照ガイド」,「APEC地域におけるインフラ投資に関する調査」の進捗,APEC地域の港へのクルーズ訪問促進に関する進展及び「海上連結性強化プロジェクト」を歓迎する。
54. 我々は,全員の利益に合致するための協議を通じて,共同で構築される包括的な地域連結性を達成しようとするエコノミーのイニシアティブを称賛する。我々は,エコノミーに対し,アジア太平洋地域における政策調整を促進し,連結性,障害のない貿易,金融統合,人と人との絆を推進するために,これらのイニシアティブを更に実施するよう奨励する。
交通
55. 我々は,航空・海洋の安全・安心の重要性を認識しつつ,包摂的な機動性とグローバル・サプライチェーンの強靱性の達成に向かう中で,安全・安心,効率的,持続可能な運輸制度を通じて生産性を向上し,運輸分野におけるイノベーションを促す取組を加速することにコミットする。
56. 我々は,APECの連結性と経済成長を強化するためのアジア太平洋地域における運輸とロジスティクスの多様化を支持する。我々はITSとグローバル・ナビゲーション衛星システムが商業的な安全・安心の供給網を構築するために不可欠であると認識する。
57. 我々は,交通作業部会(TPTWG)に対し,船舶による汚染防止のための国際条約(MARPOL73/78)を効果的に履行するためのエコノミーの能力を高めることを目的とする能力強化を通じて,APEC地域で操業する船舶による海洋汚染を削減する取組を開始するよう奨励する。
58. 我々は,「交通,エネルギー,環境,人体の健康における横断的課題に関するサプライチェーン
連結性利益の抽出による地域経済統合の促進」,「グローバル・サプライチェーン強靱性(第3期)」,「国際船舶・港湾施設保安(ISPS)コード実施支援プログラム(ICIAP)」を含むプロジェクトを通じて,「APECサプライチェーン連結性枠組行動計画」の実施を支援する取組を歓迎する。我々は,APECのサプライチェーン強靱性7原則を支持し,その複数年度実施にコミットしている。
59. 我々は,開かれた自由な国際航空体制及び国際航空サービスの発展は,APEC域内における継続した経済成長と貿易円滑化の継続に不可欠であると認識する。我々は,エコノミーに対し,例えば,国際航空運輸自由化に関する多国間協定を含む二国間及び多国間の協定に基づく既存の方法,国際民間航空機関(ICAO)の国際航空輸送自由化に対する長期ビジョンに沿った追加的な方法の探求を通じて,市場アクセス自由化の目標を引き続き積極的に追求するよう奨励する。
60. 我々は,また,APEC連結性地図の作成,APEC包摂性移動枠組み,PPPベストプラクティス,質の高い運輸ビジョン策定を含む様々なイニシアティブの進捗及び航空排出を減らす努力を歓迎する。我々は,運輸作業部会においてAPEC全域の運輸カードのタスクフォースの設立を認識する。
観光
61. 我々は,「APEC観光現況報告書」を承認し,観光大臣会合での「2014年マカオ宣言」において示された,2025年までにAPECエコノミー間の国際観光客数を8億人にするとの目標を達成するための努力を奨励する。
62. 我々は,政策協調及び構造改革を通じた競争力と地域経済統合を推進する観光作業部会(TWG)の「2015-2019年戦略計画」を承認し,2016年にペルーが観光大臣会合を主催することを歓迎する。
63. 我々は,関連する作業部会に対して,環境に優しく,持続可能で包摂的な観光開発の促進,連結性の向上,移動の円滑化の改善,需要を支えるインフラへの投資,文化・環境資産の持続可能な利用の確保,APEC地域における移動と観光の成長を推進するための流動性がある熟練した労働力の発展のために,TWGと緊密に連携することを奨励する。
移動の円滑化
64. 我々は,渡航円滑化イニシアティブ(TFI)の中間評価に留意し,実務者に対し,TFIを可能な限り効果的かつ効率的にするために必要な勧告を検討し,実施するよう指示する。
65. 我々は,2015年9月1日よりAPECビジネストラベルカード(ABTC)の有効期限が最長5年に延長されたことを称賛する。我々は,ABTC枠組みの暫定的なメンバーが完全なメンバーになろうとする取組を評価する。
インターネットとデジタル経済
66. 我々は,包摂的な経済成長を可能とするものとして,インターネットとデジタル経済を促進し,その潜在性を完全に活用する取組を強化することにおいて建設的役割を果たすこと,デジタル・デバイドを埋める必要性を考慮しつつ,国境を越えた情報の安全な流れを奨励すること,にコミットする。我々は,インターネット経済を促進するAPEC協力イニシアティブ実施における進捗を歓迎する。我々は,貿易円滑化のためにAPEC越境プライバシー・ルール(CBPR)システムの重要性を認識し,CBPRシステムに参加するAPECエコノミーが増えていることを歓迎する。我々は,協力を促進し,技術・政策的交流を円滑化するインターネット経済に関するアドホック運営部会の役割に留意し,インターネットとデジタル経済の横断的な問題に関するAPECイニシアティブの現状調査に期待する。
電気通信及び情報
67. 我々は,情報通信技術(ICTs)及び適切なシステムの開発を通じた災害への準備,対応及び復旧に関する緊急事態の備え作業部会(EPWG),インターネットとデジタル経済の利益に関する電子商取引運営グループ(ECSG),零細・中小企業向けの安全,効率的,低コストで包摂的なインターネット金融サービスの促進に関する中小企業作業部会(SMEWG),ICTsにより女性の生活向上・強靭性を促す女性と経済に関する政策パートナーシップ(PPWE)との協調を含め,電気通信・情報作業部会(TELWG)と他のAPECフォーラの連携の高まりを歓迎する。
68. 我々は,オンライン連結性を促進する「2016-2020年TELWG戦略的行動計画」の実施を奨励し,アジア太平洋を通じて次世代の成長を解き放つ上でのインターネットの潜在性を最大化する支援を共に行うECSG戦略計画の策定を奨励する。我々は,経済発展を醸成する確実で信頼できるICT環境を確保すべく他の機関と協力するTELWGの努力を歓迎する。
規制の一貫性と協力–
69. 我々は,「良い規制慣行に関する第8回会合」の成果及び質の高い規制環境構築並びに規制の一貫性と協力を推進することに対する同会合の貢献を歓迎する。我々は,APECメンバー・エコノミーにおける「良い規制慣行に関する2013年ベースライン研究」に関する最新情報及び「国際規制協力:行動における協力」に関するECワークショップの成果を歓迎し,エコノミーに対し,異なる方法で規制協力を実施することについて実践的経験と知識を引き続き共有するよう奨励する。我々は,来年のペルーでの良い規制慣行会議における国際規制協力を含め,規制改革に対する高いレベルの支持を構築するテーマを支持する。
70. 我々は,引き続き規制の一貫性と協力に関するイニシアティブを実施し,インターネットと情報技術の役割を最大化し,公的相談と良い規制慣行の実施を強化する。
71. 貿易関連基準と技術規則に関する「APEC規制協力推進メカニズム(ARCAM)」を通じて,我々は,「効果的な広告基準促進における政府の役割のための原則」の承認に留意し,実務者に対し,2016年に同分野における取組を前進させるよう指示し,広告基準・慣行に関するAPEC行動アジェンダ及びその他の特定できる関連する問題の実施について議論を継続するよう奨励する。
知的財産
72. 我々は,創造性にインセンティブを与え,イノベーションが可能となる環境を創造する効果的,包括的,均衡のとれた知的財産(IP)の保護及び執行を促進することの重要性を認識する。我々は,零細・中小企業(MSMEs)が競争力のあるグローバルなブランドを開発することを支援するため,ブランドや商標等の知的財産資産を成長や拡大のために活用することを認識する。我々は,APECエコノミーにおける貿易秘密保護・執行に関する報告を歓迎し,貿易秘密保護がMSMEsのグローバル展開への支援に役立つと認識し,この問題に関する更なる取組を歓迎する。我々は,「貿易秘密保護と不正流用に対する執行におけるAPECベストプラクティス」策定に向けた進捗を歓迎し,実務者に対し,取組を継続し,可能な限り早期にコンセンサスに基づき完成させるよう奨励する。我々は,知的財産権促進,保護・執行における協力を強化し,IP商業化,IPマーケティング,IP管理におけるイノベーションリスクの低減に関するMSMEsの能力を向上させることに合意する。
73. 我々は,特に,イノベーションと技術進歩の分野において学術・研究機関の質の高い研究活動を支援し,その結果生じるIP資産を採用・活用に向けて促進する必要性を認識する。
規制と適合性
74. 我々は,輸出証明書要件を合理化する一方策として,規制と適合性小委員会(SCSC)によるモデル・ワイン輸出証明の取組に留意する。我々は,実務者に対し,同様の貿易円滑化イニシアティブを適用できる他の分野を探求するよう指示する。
食品安全協力
75. 我々は,科学に基づいた国際基準に調和した規制枠組を促進し,食品安全を向上し,農業食品貿易の予測可能性及び透明性,並びにそれが能力と信頼の構築,ひいては非関税障壁(NTBs)の削減に果たしうる役割を確保するための食品安全協力フォーラム(FSCF)及びパートナーシップトレーニングネットワーク(PTIN)による取組を称賛する。我々は,「APEC規制協力計画」の一環として,輸出証明書と残留農薬制限の分野における作業の継続を通じたAPECFSCFの規制収斂に関する継続的取組の成果を期待する。我々は,食品検査システム,試験室試験及び技能試験,水産養殖,抗菌剤耐性制御戦略,及び,国内の食品安全基準の改訂におけるFSCFPTIN能力構築活動が成功裏に完了したことに留意する。我々は,「効果的な産業・規制者間協力に関するFSCFPTINラウンドテーブル」を通じて達成された成果を称賛し,食品安全規制の策定においてステークホルダーが極めて重要な役割を果たすことをラウンドテーブルが強調することを確認する。
76. 我々は,地域におけるバイオ医療規制科学のための中核的研究拠点の設立を歓迎し,2020年までに特に医療製品認可手続きの規制収斂を達成するための我々の能力を強化することを期待する。
産業対話
77. 電気自動車国際基準の採用及び実施を円滑化するために,「電気自動車のためのロードマップ」の採択を歓迎し,我々は,実務者に対して,2016年も引き続き同課題に取り組むことを奨励する。
78. 我々は,「化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)」の実施における乖離をより良く理解するために化学対話によって実施された調査を歓迎し,これらの乖離を縮減させるための方策に関して2016年に化学対話から提出される報告書を期待する。我々は,金属及び金属化合物の科学的査定における能力強化のためのAPEC規制コミュニティの取組,並びに,経済委員会(EC)との良き規制慣行に関する化学対話の取組を歓迎する。
優先事項2:零細・中小企業(MSMEs)の地域・世界市場への参画促進
79. 「零細・中小企業のグローバル化のためのボラカイ行動アジェンダ」を支持し,零細・中小企業
(MSMEs)のグローバル貿易への参加のための実践的かつ重要な行動を追求する固いコミットメントを示す同アジェンダの「実施計画」を歓迎する。我々は,実務者に対して,関連するAPECフォーラ間で重なっている領域を特定し,零細・中小企業イニシアティブの実施におけるプロジェクト間の相互補完性及び資源の効率的利用に関してAPECビジネス諮問委員会(ABAC)と協力して取り組むよう指示する。
80. 我々は,零細・中小企業の競争力向上にとって鍵となる基準及び適合性に関する基準適合性小委員会(SCSC)と中小企業作業部会(SMEWG)の連携を歓迎する。我々は,零細・中小企業が直面する基準及び適合性の問題に対処するための作業計画の策定を期待する。
81. 我々は,2014年にAPEC閣僚によって承認された良き規制慣行の原則に従って,包摂的な成長を促し,とりわけ零細・中小企業にとって予見可能なビジネス環境を提供するため,公正かつ説明可能な競争政策制度へのコミットメントを維持する。
82. 我々は,世界経済における経済主体としての女性の潜在能力を十分に発揮させることに引き続きコミットし,持続可能で包摂的な成長にとって重要な女性起業家の促進を奨励する。我々は,その競争力並びに国内及びグローバル・バリューチェーンに参入するための能力を強化するため,女性オーナーの零細・中小企業を引き続き支援する。
グローバルな サプライチェーン及びバリューチェーンにおける零細・中小企業
83. グローバル・バリューチェーンの発展と協力のためのAPEC戦略ブループリント」を実施するための「グローバル・バリューチェーンへの中小企業参加」に関する取組を歓迎する。我々は,情報技術・電子,自動車,繊維,ヘルスケア製品及びアグリビジネスの5つの主要産業に関する進捗報告書に留意する。我々は,実務者に対して,零細・中小企業をグローバル・バリューチェーンに統合させる実践的イニシアティブを進めるために,フォーラ間及び産業界との協議及びネットワーキング活動を継続するよう指示する。我々は,早期投資を通じた「APEC活性化ネットワーク」を強化及び発展させる継続的な努力を歓迎する。
84. 我々は,自動車セクターのグローバル・バリューチェーンへの零細・中小企業の参加にとって引き続き課題となっている非関税措置を特定した「自動車セクター零細・中小企業グローバル・バリューチェーン調査」の成果を歓迎する。我々は,より良い政策及び的を絞った能力構築を通じて,これらの課題に対処していく。
85. 我々は,中小企業を国際貿易及びグローバル・バリューチェーンに統合するための指針枠組みである「あまねく広がる開発に向けたグローバル零細・中小企業育成のためのAPECイロイロ・イニシアティブ」を歓迎する。我々は,零細・中小企業と他のステークホルダーとの協力及び連結を促進するためのツールとして「APEC零細・中小企業マーケット」を歓迎する。我々は,グローバル・バリューチェーンへの中小企業の統合の度合いを測定する中小企業国際化指数が2016年に策定されることを期待する。
零細・中小企業向けICT及び電子商取引
86. 我々は,零細・中小企業がグローバル市場に参加するための媒体としての電子商取引の重要な役割を認識する。我々は,「零細・中小企業グローバル化のための電子商取引促進」提案を歓迎し,
「インターネット経済を通じた包摂的成長の実現」提案及びオンライン・ツー・オフライン(O2O)新たなビジネスモデルを促進するためのメンバー・エコノミーの努力に留意する。
87. 我々は,零細・中小企業の国際市場へのアクセスを加速させるためにAPECが取りうる具体的で実践的な措置として,「零細・中小企業のためのデジタル経済行動計画」及び「零細・中小企業のための作業アジェンダ」を歓迎する。
零細・中小企業向け金融アクセス
88. 我々は,金融アクセスを改善するために個別の零細・中小企業のビジネスモデル及び成長潜在力を評価するよう金融機関を奨励し,零細・中小企業によるグローバル・バリューチェーンへのアクセスを向上させるための継ぎ目のない金融環境を創出することの重要性を認識する。我々は,零細・中小企業の事業継続性のために設計された信用保証システム等,公的金融の役割を認識する。我々は,関連する公的及び民間機関とのより密接な協働に向けた努力を支持する。我々は,零細・中小企業向け金融の拡大及びサプライチェーンへの零細・中小企業の参加を支援する法改正や政策改革を促進するために公的セクターと連携するとの民間セクター及び国際金融機関によるコミットメントを歓迎する。我々は,共同行動計画(CAP)の下での「金融インフラ開発ネットワーク」の設立における,世界銀行グループ,中小企業金融フォーラム,経済協力開発機構(OECD),APECビジネス諮問委員会及びAPECメンバー・エコノミーの共同の努力を歓迎する。
強靱な零細・中小企業
89. 我々は,グローバル・サプライチェーンの強靱性を改善するため,不測の事態,災害及び金融危機に対する零細・中小企業の強靱性を促進するための更なる努力を求める。我々は,「事業継続計画ガイドブック」の7か国語での出版及び「APEC中小企業災害強靱性政策枠組」を歓迎する。
90. 我々は,医療機器・生物製剤産業協会の倫理規定数を2012年の33から2015年の66に倍増させた,零細・中小企業が関心ある輸出部門における非倫理的な商慣行に対処する「APEC中小企業向けビジネス倫理イニシアティブ」の進捗を歓迎する。我々は,これらの部門における「ステークホルダー間の倫理的連携実施のためのAPEC指針」を歓迎し,メンバー・エコノミーに対して,「2020年までの倫理的ビジネス環境促進のための南京宣言」の目標を進めるよう奨励する。
優先事項3:人材開発への投資
91. 我々は,人材開発が,特にサービス分野を通じて,経済成長を達成し,持続させるために不可欠な手段であると認識する。我々は,本優先分野に沿ったAPECの作業プログラムの目標を遂行することにコミットする。
人材開発及び技能訓練
92. 我々は,グローバルな教育・訓練のベストプラクティスに沿い,人々の雇用可能性,生産性及
び新たなビジネス需要に対応する能力を高める21世紀型技能を目指した人材能力開発における戦略的協力を強化するため,「2015年人材能力構築に関するハイレベル政策対話に関するポートモレスビー共同声明」の目標にコミットする。
93. 我々は,地域における人材開発の競争力を向上させ,熟練労働力の移動性を円滑化し,地域におけるサプライチェーンの需要に応える技能と能力の質を確保する努力を歓迎する。我々は,
「APEC労働市場ポータル」,「APEC職業標準参照枠組」,「APEC技能開発能力構築同盟」,
「APEC企業との協力における職業訓練プロジェクト」等のプロジェクト及び訓練の質を確保するための努力の促進にコミットする。
94. 我々は,障害者,女性及び若者,移動労働者等の社会において脆弱で不利な立場にあるグループに向けた「APEC人材養成作業部会(HRDWG)2015-2018年行動計画」及びそのイニシアティブを支持する。我々は,経済成長へのグローバル・ワーカーの貢献を認識する,「社会保護の強化による人材移動性の円滑化に関するAPECセミナー」の成果を歓迎する。我々は,APEC人材養成作業部会に対して,グローバル・ワーカーに関する政策上の優先課題を特定し,社会保護の強化に際しての格差に対処するよう要請する。
95. 我々は,APEC域内の安全,安心で,効率的かつ継ぎ目のない交通システムの成功は人的資源の能力によるところが大きいと認識する。したがって,我々は,エコノミーに対して,スマートでグリーンなサプライチェーン連結性に関する共同人材訓練の開発における協働に更なる努力を注ぐことを奨励する。
教育
96.我々は,技術進歩,イノベーション及び経済成長のけん引役として,越境教育,科学技術に関する大学間連携,学者,研究者,学生の国際的移動を進めることを目的とする「高等教育における第1回科学技術ハイレベル政策対話の共同声明」を承認する。我々は,「越境教育協力の促進に関する2012年APEC首脳宣言」のマンデートに従い,科学,技術,イノベーション及び高等教育を経済政策策定及び戦略策定の最先端に据える取組を強化することにコミットする。
97. 我々は,APECにおける越境教育及び産学連携のために効果的なメカニズムを通じて,人材開発を探求し,人的能力構築と雇用ニーズの結びつきを強化するため,「包摂的な経済成長のための人材開発」のテーマの下,ウラジオストクで開催された「第4回APEC高等教育における協力に関する会議」の成果を歓迎する。
98. 我々は,とりわけ,越境教育,科学・技術・工学・数学(STEM)教育,教育イノベーション,職業統合学習,資格枠組等に関する我々の取組を推進するため,2016年APEC教育大臣会合
(AEMM)に向けた準備を歓迎する。第6回AEMMは,開催国ペルーとロシアが共同議長を務め,人材養成作業部会(HRDWG)及びそのネットワーク(教育ネットワーク(EDNET),労働・社会保護ネットワーク(LSPN),能力構築ネットワーク(CBN))と連携して開催される。
99. 我々は,APEC域内の大学レベルの留学生数を年間100万人にするとの我々の2020年目標が早期に実現されたことを歓迎する。我々は,「APEC奨学金イニシアティブ」に対するエコノミーの貢献を含めて,留学生,研究者及び教育者の移動性向上を更に支援していく。我々は,アジア太平洋地域における高等教育交流・協力を強化する「APEC高等教育研究センター」の設立及びそのイニシアティブと活動を歓迎する。我々は,第6回AEMMに提出される予定の「教育協力プロジェクト」報告書に基づき,APEC教育協力戦略の策定を通じた取組等,教育ベストプラクティスについてエコノミーが協力するための努力を支持する。これは,教育改革及び教育協力拡大を通じて経済統合と社会福祉を推進していく。我々は,越境教育協力を推進するとの首脳コミットメントを再確認し,エコノミーに対して,「越境教育協力促進のためのAPEC作業計画」を更新し,推進することを奨励する。
科学技術
100. 我々は,共同研究開発及び科学技術イノベーション活動を奨励し,APECの政策形成に助言し,政策の翻訳(policytranslation)を通じた研究及び市場に基づいたイノベーションの商業化及び普及を支援する,科学技術イノベーション政策への共通アプローチ策定に関する「科学技術・イノベーション政策パートナーシップ(PPSTI)政策声明」を承認する。
101. 我々は,「APECバイオ医療技術商業化訓練センター」を通じた保健科学イノベーション奨励への継続的努力を歓迎する。
102. 我々は,災害リスク軽減における科学の重要性に留意し,緊急事態の発生前,発生中及び発生後における科学的助言の提供がいかにリスク軽減及び効果的な災害対応に貢献しうるかに関する首席科学顧問級(CSAE)会合の最近の議論を歓迎する。我々は,既存のAPEC政策パートナーシップや作業部会の活動を支援するCSAEの継続的なインプットを期待する。CSAEは,個別エコノミーにおいて果たしている役割と同様に,域内の共同資源として,APECの文脈で効果的な科学的助言を提供する適切な位置づけにある。
103. 我々は,気候変動の影響に対処する長期的解決策及び統合的アプローチの探求のために,科学界を含めたすべてのステークホルダーの継続的関与を奨励する。我々は,地域共通の課題を解決するために不可欠な国境を越えた科学的協働を促進する,「災害リスク軽減:気候変動及び変動性の役割の理解」をテーマとした「2015年APECイノベーション・研究・教育のための科学賞(ASPIRE)」の結果を歓迎する。我々は,「APEC車のインターネット」及び「APECスマートシティ」プロジェクトの進捗,並びに「再生可能エネルギー及び気候科学の課題測定に関するAPEC地域ワークショップ」を歓迎する。
女性と経済
104. 我々は,特に資本及び資産へのアクセス改善,市場へのアクセス,技能及び能力形成・健康,女性のリーダーシップ及び発言力と行動力,イノベーションと技術の向上を通じて,APECの一連の取組における女性の完全かつ平等な経済参画を推進するため,「女性と経済に関する政策パートナーシップ(PPWE)の2015-2018年戦略計画」を承認する。我々は,PPWE業務指示書が改訂され,必要に応じてPPWE年次会合を年間2回まで開催することが認められるようになったことを歓迎する。
105. 我々は,APECにおけるジェンダー視点の主流化を確保するためのイニシアティブを歓迎する。これらには,「女性と経済のダッシュボード」,「健康な女性・健康な経済に関する政策ツールキット」,「APEC女性起業家(WE-APEC)」,「APEC女性活躍推進企業50選」,「2020年までに管理職に女性の占める割合を高めるための取組(IAP)」,女性の技術及びICTツールへのアクセスに関する「女性と経済の発展のためのイノベーションに関するマルチイヤー・プロジェクト」,「災害復興時のローカルコミュニティにおける女性の活躍・起業(グッドプラクティス)」イニシアティブ,「中小企業発展の促進:グローバル市場への女性経営中小企業のアクセス支援」及び「APECプロジェクト提案書のためのジェンダー基準の指針」が含まれる。
106. 我々は,交通作業部会(TPTWG)内の「交通における女性タスクフォース」の取組,並びに,教育,就職,定着,指導力,及び交通システムへの安全なアクセスと利用を通じた交通における女性の包摂のための枠組を称賛する。我々は,交通における女性の包摂を増大させるための行動の効果を追跡するため,データ収集の利用を支持する。
107. 我々はまた,エコノミーに対して,すべての分野における女性の登用と指導力を促進することを奨励し,フォーラに対して,女性の教育,就職及び定着を拡大するためのベストプラクティスを共有することを奨励する。
保健
108. 我々は,エコノミーに対して,保健上の課題を克服するにあたって5つの重要な成功要因,すなわち,(a)保健への政府全体によるコミットメントの確保,(b)政策対話及びステークホルダーの関与のためのプラットフォームの設立,(c)ヘルスケアにおける予防,管理及び意識の促進,(d)イノベーションの実現,(e)セクター間及び越境協力の強化,を特定する「ヘルシーアジア太平洋2020に向けたロードマップ」を実施するよう奨励する。我々は,エコノミーに対して,持続可能で実効性の高い保健システムを開発し,「保険と経済に関する第5回ハイレベル会合」の声明に示されたユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するとの観点から,全体的なアプローチを通じた保健開発と福祉を促進するよう要請する。我々は,健康で競争力ある労働力の維持を確保する革新的手法を議論するためのフォーラ横断対話を2016年に開催することを推奨する。我々は,北京大学に「APEC保健科学アカデミー」が設立されたことを歓迎する。
109. 我々は,すべてのAPECエコノミーに対して,公衆衛生上の事案に対する,保健上の緊急事態への備え,監視,対応及び復旧体制の改善に重点を置くよう要請する。我々は,エコノミーに対して,適切な場合には,世界保健機構(WHO)の「国際保健規則」(2005年)を引き続き実施するよう要請する。我々は,「公衆衛生上の緊急事態に対応する保健ホットラインのAPEC業務マニュアル」,「APEC医療関連感染政策ガイドライン」,「APEC血液サプライチェーン2020ロードマップ」の策定及び「血液サプライチェーン・パートナーシップ・トレーニング・ネットワーク」の設立を歓迎する。
110. 我々は,精神疾患への対処を優先的な保健上のニーズと認識し,我々は,「WHOメンタルヘルス行動計画」への支持を確認する。我々は,地域における精神的健康を促進するための双方向デジタルハブを本年末までに設立するための努力等,メンタルヘルスサービスへのアクセスを改善するために,ベストプラクティスを共有し,革新的なパートナーシップを促進しようとするAPEC内のイニシアティブを歓迎する。
111. 我々は,エコノミーに対して,ヘルスケア製品のサプライチェーンにおける貿易及び投資への障壁を削減するよう要請する。我々は,グローバルな医薬品開発及び優れた臨床診療についての訓練を促進し,2020年までに医療製品認可手続きを規制上の収斂させることを達成するために,多地域臨床試験のための「APEC規制科学中核的研究拠点(COE)」の設立を支持する。
112. 我々は,感染症の脅威への効果的な予防,発見,対応に必要な能力を構築する上でお互いを支援することにコミットする。我々は,WHOやこの分野の他の関連する普遍的な機関及び他の国際的な法律文書と重複したり,それらを代替したりしないことを条件として,WHO国際保健規則及び感染予防・制御及び抗菌剤耐性削減の強化に関連するプログラムを実施する能力の促進につながる手指衛生等の支援パッケージを含め,「世界保健安全保障アジェンダ(GHSA)」等のイニシアティブを通じた,いくつかのエコノミーにおける感染予防・制御への民間セクターの貢献を歓迎する。
障害者
113. 我々は,障害者の経済的エンパワメントを強化することにコミットし,障害者の経済的参画への障害を撤廃することに努める。我々は,経済発展において包摂的なエコノミーを構築する過程で,障害者が主体及び裨益者として意義ある役割を担っていることを再確認し,我々は,実務者に対して,障害者が労働者,投資家及び経済発展の参加者として,価値を有することを促進するための方策をとるよう奨励する。我々は,情報,資源及びグッドプラクティスの共有を促進し,障害者の経済への包摂を進めていく「APEC障害に関する有志グループ」の作業を称賛する。
優先事項4:持続可能かつ強靱な地域社会の構築
気候変動
114. 気候変動は我々の時代における最大の課題のひとつであり,その悪影響は持続可能な発展を遂げるためのすべてのエコノミーの能力を損ねることを念頭におき,我々は,気候変動に対処するために今すぐ具体的な行動が求められていることを認識する。我々は,2015年12月にパリで開催予定の第21回締約国会議(COP21)において,もう1つの法律文書となる議定書,又は,国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下ですべての当事者に適用可能な法的強制力を伴う合意された成果の採択に向けて緊密に協力するとの我々のコミットメントを確認する。
115. 我々は,気候変動に強靭な発展及び気候変動への適応にとって早期警報システムの強化が重要であることを認識する。我々は,気候変動に適応する長期的解決策及び統合的アプローチの探求のために,科学界を含めたすべてのステークホルダーの関与継続を奨励する。我々は,最先端の科学技術の活用により,信頼できる気候情報の提供や応用技法の開発を含め,「APEC気候センター(APCC)」の活動を支持する。
エネルギー
116. 我々は,APEC内で増えているデータセンターによるエネルギー集約度の削減努力を含め,
エネルギー効率的で低炭素な発展に関する連携を通じて,エネルギー集約度を2005年水準から
2035年までに45%低下させる野心的な目標達成の努力を奨励する。我々はまた,エコノミーに対して,発電を含むAPECのエネルギー・ミックスにおいて,再生可能エネルギーの割合を2010年水準から2030年までに倍増させるという野心的目標を考慮に入れて,クリーン・エネルギー技術及び再生可能エネルギー技術を優先させることを奨励する。
117. 我々は,自然災害及び気候変動に対する我々のエネルギーインフラの強靱性強化に向けて取り組むため,エネルギー大臣会合が「エネルギー強靱性タスクフォース」を設立することを承認する。我々は,アジア太平洋地域における電力インフラの質の向上のためのこのイニシアティブを歓迎する。
118. 我々は,「低炭素モデルタウン(LCMT)プロジェクト」,「APEC石油・ガス・セキュリティ・イニシアティブ(OGSI)」,「APEC地域液化天然ガス貿易円滑化イニシアティブ」及び
「2015年度スマート・エネルギー・コミュニティーズ・イニシアティブ(ESCI)ベストプラクティス賞プログラム」を称賛する。
119. 我々は,APEC域内の多様で柔軟かつ統合的な天然ガス市場を支援するため,貿易及び投資に望ましい環境を創出するためのメンバー・エコノミーの努力を評価する。
120. 我々は,グローバルなエネルギー安全保障及び持続可能な発展の確保を促進し,温室効果ガス排出量を削減するため,クリーンで質が高く先進的な現代的エネルギーへの選択肢として,ベースロード電源として機能する民生用原子力の安全で効率的な開発の重要性を再確認する。
121. 我々は,関心のあるメンバー・エコノミーに対して,安全性,セキュリティ及び不拡散へのコミットメントを前提として,経験とベストプラクティスを共有し,原子力安全性の改善及び緊急事態への対応や備えの調整メカニズムを含めた実践的な協力を追求し,原子力の安全で平和的な開発と利用のための能力構築及び訓練を実施することを奨励する。
122. 我々は,必要とする人に不可欠なエネルギー・サービスを提供する重要性を認識しつつ,無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し,段階的に廃止するとの首脳のコミットメントを再確認する。我々は,この目標に向けて実質的な進捗を得ることにコミットしている。我々は,ペルー及びニュージーランドが「非効率な化石燃料補助金に関する任意のピア・レビュー」を完了したことを認識し,フィリピン,ベトナム,チャイニーズ・タイペイ及びブルネイ・ダルサラームが参加を自主的に志願したことを歓迎する。我々は,この目標に向けた進捗を促進するための能力構築活動及びベストプラクティスの共有を歓迎及び奨励する。
123. 我々は,2016年に開かれるアジア太平洋地域内オフグリッド地域におけるエネルギーインフラの強靱性改善に関するワークショップを期待する。
防災
124. 我々は,自然災害の頻度,規模及び範囲が増大し,その結果として,統合され,相互連結が増している生産・サプライチェーンに対する分断が生じるという「新たな常態(newnormal)」を前にして,包摂的で持続可能な発展を支援するような適応力があり,災害に対して強靱な経済を構築する共同の取組を円滑化するため,「APEC防災(DRR)枠組」を承認する。「APEC防災枠組」は,「予防・軽減」,「備え」,「対応」及び「復旧・より良い状態への復興」という,相互運用性があり相互に強化しあう4つの柱における連携を可能にする手助けとなる。我々は,防災に焦点をあてたAPECの関与について,定期的なハイレベル政策対話又は他のより高いレベルの選択肢を実現するよう要請する。我々はまた,自然災害の脅威に対処する上での地域協力の重要な役割を認識する「仙台防災枠組(SFDRR)2015-2030」に留意する。
125. 「APEC防災枠組」で特定された協力分野に一致して,我々は,地域社会が経済的に回復でき,サプライチェーンを復旧できることを確保するために,早期警報システム,捜索救難及び災害復興の強化,事業継続計画の促進,貿易再開通信メカニズムの開始,災害後の適切な募金活動及び地域社会基盤型の災害リスク管理の促進を含めて,防災に関する協力の必要性が高まっていることを強調する。我々は,「防災担当高級実務者会合(SFMOF)」及び「緊急事態の備え作業部会(EPWG)」を通じて,フォーラ横断的連携の結果として出され,「APEC防災枠組」の運用化に向けた道筋をつける行動計画の作成にコミットする。
食料安全保障,農業技術協力及び農業バイオテクノロジー
126. 我々は,「食料安全保障とブルーエコノミーに関するAPECハイレベル政策対話行動計画」を承認する。我々は,地域の食料供給の安全保障及び持続可能な農業と水管理を確保する取組の強化にコミットする。我々は,メンバー・エコノミーに対して,食料へのアクセスに対する投資及びインフラ開発の極めて重要な役割を強調することを要請し,持続可能な食料安全保障及び低所得層の栄養改善を達成するためのエコノミーの努力を支持する。我々は,フードバリューチェーンにおける廃棄及びロスの削減,アグリビジネス促進,市場開発,並びに,グローバルフード・バリューチェーンへの小規模な農民,漁業者及び養殖事業者の統合を可能にし,沿岸地域社会の生計を改善する開かれた公正な貿易を通じて,全ての市民が食料にアクセスすることを確保する。
127. 食品のロス及び廃棄について,我々は,食料廃棄削減に関してウィン・ウィンの成果を生み出すために,コールドチェーン,サプライチェーン及び効率的な国境での手続を特に強調した持続可能なビジネス手法の適用を要請する。我々は,「APEC食品ロス削減マルチイヤー・プロジェクト」の実施におけるメンバー・エコノミーの努力を歓迎する。
128. 我々は,小規模自作農家にとって共通の課題に対処する科学イノベーションを利用することにコミットし,我々は,APECメンバー・エコノミーに対して,強靭性,包摂的成長,持続可能な農業開発及び食料安全保障の改善のためにバイオテクノロジーの恩恵を最大化すべく協力を強化するよう奨励する。
129. 我々は,食料安全保障に関する政策パートナーシップ(PPFS)に対して,最も有害な非関税障壁をカテゴリー化するために有益な分類法を確立し,その経済的重要性を分析し,食品基準に関する協力を高め,また,それらに対処するための実践的な共同解決法を探求すべく,それらの限定的リストを特定し,分類することを助言する。
130. 我々は,世界貿易の文脈で,科学を前進させ,農業面でのイノベーションの利益を得るために,透明性があり科学に基づいた規則に対する我々のコミットメントを再確認する。
海洋協力及びブルーエコノミー
131. 我々は,「海洋漁業作業部会(OFWG)食料安全保障行動計画」を歓迎し,「海洋ごみに関するOFWG/化学対話共同バーチャル作業部会2015年作業計画」,「海洋・漁業資源への気候変動影響に関するワークショップ」,沿岸生態系評価に関連するOFWGプロジェクト,「APEC地域における石油流出への備え,対応及び評価フェーズ1」プロジェクト等のイニシアティブを通じた海洋資源の持続可能な利用及び管理を確保するための努力を歓迎する。
132. 我々は,関連するAPECフォーラ間での海洋協力における横断的課題に対処する上で,我々の取組を強化するための「海洋関連課題の主流化に関する運営委員会」の進捗を称賛する。我々は,関連するAPECフォーラ及び議長エコノミー及びリード・シェパードに対して,同運営委員会会合に積極的に参加し,連携と意思疎通を改善するよう更に奨励する。
林業
133. 我々は,「シドニー宣言」の森林に関する野心的目標に向けた進捗評価報告書を歓迎し,「持続可能な森林管理及び回復のためのアジア太平洋ネットワーク(APFNet)」の努力を評価する。我々は,「エダ声明」(注:「エダ」は「我々の」という意味)において強化されたように,持続可能な森林経営及び保全,並びに,違法伐採及び関連取引への対処を通じて2020年までにすべての種類の森林面積を2000万ヘクタール増加させるという野心的な目標に対するAPECのコミットメントを再確認する。
134. 我々は,「違法伐採と関連取引に関する専門家部会(EGILAT)」が策定した「違法な伐採と関連取引の範囲の共通理解」及び「木材合法性の手引き」を承認する。
野生生物不正取引
135. 我々は,APEC域内における野生生物の不正取引と闘い,違法に取得及び/又は取引された野生生物の供給,輸送及び需要を削減するための努力を増大させることに引き続きコミットする。我々は,情報,インテリジェンス,経験及びベストプラクティスを共有し,国際協力を強化するための我々の努力を強化する。我々は,「野生生物の不正取引に関連する通関ベストプラクティスに関するAPECワークショップ」や「第2次APECパスファインダー対話」等の協力活動を通じたものを含め,この不正取引を阻止するための能力構築実施のための行動を歓迎する。
鉱業
136. 我々は,鉱業における貿易・投資を可能とする環境及び国内の事業者,鉱業界及び/又は規制者の能力を改善するAPEC途上エコノミーにおける能力構築活動の供給を改善するための鉱業サブファンドの立ち上げを歓迎する。我々はまた,鉱業タスクフォースが,鉱業における官民対話(PPD)を通じて,関連する民間ステークホルダーのパートナーとしての重要な役割を認識し,継続的に関与することを歓迎する。
都市化
137. 我々は,「アジア太平洋都市化パートナーシップ共同設立に向けたAPEC協力イニシアティブ」の実施における努力を歓迎する。我々は,「アジア太平洋持続可能エネルギーセンター
(APSEC)」のようなプラットフォームを含め,関連するフォーラ及びサブフォーラに対して,実施プロセスに貢献するよう奨励する。我々は,「都市化に関する第1回高級実務者会合議長の友の会会合」,「より良い都市建設に関する2015年APEC市長フォーラム」の成果,及び,2016年に都市化に関するハイレベルフォーラムを主催するとの中国のイニシアティブを歓迎する。我々は,固形廃棄物からの経済的有用物の回収も含めた都市廃棄物管理の技術展開を評価・実証するプロジェクトを歓迎する。我々は,本年の第3回高級実務者会合(SOM3)及び関連会合における水に関する官民対話の成果を歓迎する。
テロ対策
138. 我々は,エコノミーに対して,地域のインフラ,渡航,サプライチェーン及び金融システムをテロ及び他の不正な活動から防御するために,「APECテロ対策及び安全な貿易統合戦略」の4つの横断的分野において,引き続き集団的・個別的な行動を実施し,ベストプラクティスの共有を継続することを奨励する。
139. 我々は,実務者に対して,「テロ対策行動計画」の定期的な更新を継続することを奨励する。我々は,APECテロ対策作業部会の「新たな決済システムによるテロの資金調達への対策に関するワークショップ」及び「外国人テロ戦闘員の移動対策に関するワークショップ」の成果に留意する。我々は,域内の合法的な渡航をより安全かつ円滑にするため,事前旅客情報及び乗客予約記録(API/PNR)プログラム実施のためのエコノミーの努力を支持する。
制度としてのAPECの強化
140. 我々は,APECの作業プログラムに関する2015年高級実務者報告書及びAPEC貿易投資委員会の閣僚への年次報告書を承認する。我々は,APEC事務局長による2015年次報告書に留意し,2016年APECの予算及びメンバーの拠出金を承認する。
141. 我々は,「経済・司法インフラ強化に関する経済委員会(EC)議長の友」,「都市化に関する高級実務者会合議長の友」,「インターネット経済に関するアドホック運営グループ」,「APEC障害に関する有志グループ」,「アジア太平洋持続可能エネルギーセンター(APSEC)」,「APEC高等教育研究センター」,「APEC教育研究ネットワーク」及び「アジア太平洋金融開発機構」等の新たに設立されたメカニズムの取組に留意する。
142. 我々は,「1996年経済協力・開発の強化に向けたマニラ枠組」に示されたように,関連する人的及び制度的な能力構築イニシアティブを広げるために,「経済・技術協力(ECOTECH)を通じた2015年APEC能力構築政策」を実施することにコミットする。
143. 我々は,「2015〜2017年第2次地域経済統合(REI)能力構築ニーズ・イニシアティブ」の下でのFTAAPの最終的な実現に向けた能力構築に関連する活動のような,経済・社会開発における人的資源の役割を強調する能力構築活動を歓迎する。我々は,「サプライチェーン連結性サブファンド」の下でのプロジェクトを通じた,サプライチェーンのパフォーマンス向上に関連する努力に留意する。我々は,FTAAP/グローバル・バリューチェーン(GVC),革新的発展,経済改革・成長(IERG),連結性に関するサブファンドの設立を歓迎する。我々は,豪州,中国,中国香港,日本,韓国,ニュージーランド,ロシア及びチャイニーズ・タイペイによるAPEC基金への任意拠出を歓迎する。
144. 我々は,APECのアジェンダにおける様々な分野別及び横断的テーマに関する官民対話の範囲と深みを広げる上で,APECビジネス諮問委員会(ABAC)のAPECの作業への貢献及び本年の努力を歓迎する。
145. 我々は,APECポリシー・サポート・ユニット(PSU)及びAPECスタディセンターによるAPECのワークストリームへの貢献を称賛する。とりわけ,我々は,「2010年APEC首脳の成長戦略」に関するポリシー・サポート・ユニットの評価を含め,「APEC2015年優先課題」を支援するためのポリシー・サポート・ユニットの取組を称賛する。我々は,エコノミー,特に将来のAPEC議長エコノミーに対して,この連携を強化するよう奨励する。
146. 我々は,APECのアウトリーチの努力を歓迎し,我々の実務者に対して,「APECと地域的及び国際的な協力フォーラ及びプロセスとのシナジー及び相互補完性の強化方策」に描かれているAPECと他の経済統合機関との協力を,すべてのレベルで,適切な形で促進するよう奨励する。我々は,近く太平洋同盟と実施される予定である首脳級の非公式対話を歓迎する。
147. APECは継続的なプロセスであると認識し,我々は,北京APEC首脳会議(AELM)の成果の実施に関する進捗の報告に関して,昨年の議長国である中国の努力に謝意を表する。我々は,実務者及びAPEC関連フォーラに対して,2015年のAPEC閣僚会合及びハイレベル政策対話の報告書及び声明に含まれるすべてのプログラム,行動計画及び指示を実施するよう要請する。
148. 我々は,ペルーでの2016年APECに向けた準備を歓迎し,我々の重要な取組を継続することを期待する。