データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 多角的貿易体制の支持及び第10回WTO閣僚会議に関する独立文書(2015年第23回APEC首脳会合)

[場所] 
[年月日] 2015年11月18日
[出典] 外務省・経済産業省
[備考] 仮訳,概要は省略
[全文]

1. 我々は,世界貿易機関(WTO)の設立20周年を機に集まった。アジア大洋州地域は多角的貿易体制の安定性と予見可能性から多大な利益を受けながら,最も急速に成長してきた貿易圏の一つである。この意味において,我々は,WTOの下にある多角的貿易体制の価値,重要性そして優越性を再確認する。我々は,WTOに体現されたルールに基づいた,透明性のある,無差別な,オープンかつ包摂的な多角的貿易体制を強化するための緊密な連携を継続する。

2. WTOの諸成果は,過去20年,我々の経済のダイナミズムと強靱性に大いに貢献してきた。多角的貿易体制の確立された枠組みの中で,我々はAPECとしても,WTOの実効性とすべての者の利益のためのWTOの諸目的のさらなる促進を支持し続けることを約束する。

3. 我々は,ナイロビでのWTO閣僚会議が,ドーハ開発アジェンダを含むバランスのとれた成果及びポスト・ナイロビの作業に明確な道筋を与え,成功するために協力することを約束する。以前の機会のように,我々はこれらの成果を達成するために,必要な政治的後押しを与える。我々は閣僚に,具体的で,有意義,バランスのとれた,開発志向の結果が得られるよう議論に積極的かつ建設的に議論に参画するように指示する。

4. 第9回WTO閣僚会議における2013年バリパッケージの一部として合意されたWTO貿易円滑化協定(TFA)の早期発効は,国際貿易の持続可能性への多大な貢献となり,全世界の関係者に対し,WTOの価値を強調することとなるだろう。この意味において,我々は,その過半がTFAを今日までに批准しているAPECエコノミーのリーダーシップを認識する。我々は,残りのAPECエコノミーに対し,可能な限り早く,可能であればMC10まで

に,批准するよう求める。

5. また,バリにおいて閣僚間で合意された暫定メカニズムについて,2015年12月31日までに食料安全保障のための公的備蓄の問題について恒久的な解決に合意し,採択するための建設的交渉とあらゆる努力をするとのWTO加盟国による決定を歓迎する。

6. パラグラフ6システムに規定されているとおり,医療へのアクセス促進の重要性を認識し,我々は,すべてのWTO加盟国に対して「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定を改正する議定書」(TRIPS協定改正議定書)受諾を促す。議定書のMC10までの発効はWTOの実際的で開発志向の成果をもたらしうるという潜在性を示すことともなる。

7. 我々は,2018年末までの保護主義と貿易歪曲的措置に関するスタンドスティルとロールバックへのコミットメントを通じて,あらゆる形態の保護主義に対抗する約束を再確認する。この約束を満たすために,さらなる努力が必要であると認識している。我々はWTOの規定には整合的であると考えられるが,重大な保護主義的効果のある措置の実施を最大限抑制し,そしてこれら措置がなされた場合には,速やかに是正するとの約束を遵守する。

8. 我々は,二国間,地域間および複数国間の貿易協定は,世界的な自由化の取組の補完に重要な役割を果たしうることを認める。我々は,これらがWTO協定に整合的であり,多角的貿易体制の強化に貢献するよう引き続き協力していく。

 8.1我々は,それゆえ情報技術協定(ITA)品目拡大交渉における対象品目につき合意したことを歓迎し,参加国がMC10までにステージングの議論を終えるために努力することを歓迎する。APECのITA品目拡大交渉参加エコノミーは,同協定への参加メンバーの拡大に向けて協力していくことに合意する。

 8.2我々はまた,多くのAPECエコノミーを含む環境物品協定(EGA)交渉における最近の進展を歓迎し,MC10までに意義のある進展を達成するための参加メンバーの努力を歓迎する。

 8.3我々は同様に,ITA品目拡大及び環境物品協定といったプルリ交渉の妥結による参加メンバーのあり得べき貢献をマルチ交渉に繰り込む可能性の探求に留意する。

9. APECの議題である「包摂的な経済の構築,より良い世界をめざして」の下,我々は,貿易のための援助イニシアチブの第5回グローバル・レビューの成功を歓迎する。我々は,WTOの地域および世界市場における零細・中小企業の参加を増やすためのイニシアチブを通じた取組を含む包摂的で持続的な成長を促進するための取組を継続するよう主張する。同様の精神において,APECは零細・中小企業のグローバル化のためのボラカイ行動計画に基づき本目的のための貢献を継続する。

(了)