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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] APEC首脳宣言 附属書B APECサービス協力枠組

[場所] 
[年月日] 2015年11月19日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

我々,APEC首脳は,2015年11月19日にマニラに集まり,APEC地域における包摂的な成長を実現するための我々のコミットメントを再確認した。我々はこの目的を実現するためにサービスの重要な役割を認識する。質の高い雇用及び成長に向けた新たな手段をもたらすサービス部門は,我々のエコノミーの主要な役割を占めている。効率的で競争力のあるサービス部門は経済全体に利益をもたらす。我々はサービスにおける国際貿易は,技術や管理ノウハウの移転を促進し,イノベーションを誘発し,競争力及び生産性を押し上げ,国内のサービス提供者の水準を高め,費用を削減し,消費者にとっての選択の幅を広げることを認識する。

効率的な提供を含むサービスの発展には戦略的なアプローチが必要であることを認識し,それゆえに我々は下記のAPECサービス協力枠組(ASCF)を採択する。

サービス・アジェンダの促進

1. ボゴール首脳宣言に示されたAPECのビジョンを実現し,APECの目標であるアジア太平洋における自由で開かれた貿易・投資を遅くとも2020年までに実現するとの我々のコミットメントの一環として,我々はサービスにおける地域協力を前進させる重要性を認識する。

2. 我々は,APEC首脳による成長戦略,APEC連結性ブループリント及び2014年グローバル・バリューチェーンの発展と協力推進のためのAPEC戦略ブループリントを実施するための努力に大きく貢献する,様々なAPECのサブ・フォーラにわたるサービスに関するAPECの過去及び実施中の取組を評価する。

3. 我々はAPEC構造改革担当大臣の第2回会合の成果及び同会合においてサービスに重点が置かれたことを歓迎する。

4. 我々は,サービス行動計画,越境サービス貿易のためのAPEC原則,サービス貿易アクセス要件

(STAR)データベース等,サービス貿易・投資におけるAPECの取組を称賛する。我々はまた,製造業関連サービス行動計画,環境物品サービス作業プログラム,環境サービス行動計画,環境物品サービスに関するAPEC官民パートナーシップ(PPEGS)の設置がサービスに関するAPECの実施中の取組に重要な貢献を行っていることを認識する。

5. 我々は,2015年に開催された経済委員会(EC),サービス・グループ(GOS)及び太平洋経済

協力会議(PECC)による規制改革及びサービスに関する第1回合同会議等を通じた,サービスに関するフォーラ間の連携を更に深化する方法を検討した。2013年にインドネシアによって開始されたサービスに関する官民対話は,協議の場を拡大するために,APECビジネス諮問委員会

(ABAC)及びPECCとの協力で実施された。これらの対話は,サービスへの焦点を高める価値を強調し,規制に関する経験及び課題の共有を促進すると共に,APECエコノミーの状況を勘案したサービスの競争力を改善する方策に関する考えを生み出した。

6. 我々は,サービスの提供においてデジタル対応の貿易等,急激な変化が生じていることを認識する。地域におけるサービス貿易・投資を促進するために,APECは,サービスに関する取組においてモメンタムを更に深め,構築する必要がある。

ビジョン

7. 我々はAPECにおけるサービスのための長期ビジョンを設定することに合意する。

8. 1994年のボゴール目標を想起し,我々は下記の協力原則を通じたサービスにおける努力を強化することを決意する。

・世界貿易機関(WTO)の原則に一致したサービスにおける自由で開かれた貿易・投資

・透明性のある改善されたコミュニケーション

・APECプラットフォーム間及び様々なステークホルダーとの連携及び関与

・人的及び制度的能力構築及び途上メンバー・エコノミーの参加の拡大を通じたサービスにおける競争力

・分野横断的及び分野特定型アプローチ

9. 1995年大阪行動アジェンダ,サービスに関する取組のための2000年政策枠組及び2009年越境サービス貿易のためのAPEC原則に沿って,個別エコノミーの状況を考慮に入れ,我々は下記の戦略的目標の重要性を確認する。

・法律,規則及び行政手続の透明性

・不要な現地化要件を含むサービス貿易・投資に対する制限の段階的削減

・国内外のサービス提供者間の無差別化

・良き規制慣行及び効果的競争政策

・サービス提供者とビジネス関係者の移動円滑化

・競争力のあるサービスの提供のためのエコノミーの能力向上を図る能力構築取組への支援

10. 我々は,ボゴール目標の完全な実現,共通の戦略目標の規定,サービスに関するAPECの取組の一貫性推進において,2015年ASCFが,極めて重要な役割を果たすことを信じる。ASCFは,APECの複数のフォーラ及び複数のステークホルダーによるサービス・アジェンダが活力を持ち,各APECメンバー・エコノミーの経済的,市場的及び技術的発展に対応するものであることを確保するものとなる。

将来へ向けて

11. 我々は,一連の共同行動及び2025年までに達成されるべき相互に合意した目標の承認とともに,

2016年に戦略的,長期的なAPECサービス競争力ロードマップを策定することに合意する。ロードマップの起草プロセスは,ロードマープの要素について議論を行うことから開始し,行動及び相互に合意された目標の審議がそれに続く。ロードマップは,特に,

・サービスに関するAPECの過去及び継続中の取組に基づき,

・合同の会合,プロジェクト及びイニシアティブ等,APECフォーラ間の対話及び連携の増加及び強化を促進し,

・サービスに関する定期的な官民対話を通じたABAC,PECC及び他のステークホルダーとの緊密な連携を追求し,

・サービスに関するAPEC仮想知識センター(APECのサービス関連政策及びプログラムの情報及びベスト・プラクティスに関する仮想知識共有プラットフォーム)を通じた複数のステークホルダーによる関与を拡大し,

・良き規制慣行の交換及び効果的競争政策を促進し,

・能力構築の実施やOECDのような他のフォーラによって維持されている既存の指数を必要に応じて考慮に入れたAPEC指数の策定の探求を含め,サービスにおける規制環境を測定するための指数を持つAPECエコノミーを増加させるためのより良い方法を追求し,

・関連するAPEC作業部会及び委員会を通じ,サービス規制者,貿易・投資・競争政策を担当する実務者,民間部門関係者の間で議論を行うフォーラを定期的に開催し,

・ロードマップを実現するため,世界貿易機関(WTO),国際連合(UN)関係機関,国際貿易センター(ITC),経済協力開発機構(OECD),東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA),アジア開発銀行(ADB),米州開発銀行(IADB),世界銀行等,地域的及び世界的関連機関とのパートナーシップを活用し,既存のイニシアティブとの重複をさけ,一貫性を確保する。

12. ASCFの望まれる成果は:

・APECエコノミーのサービスに付加価値を与える能力向上,

・APECエコノミーにおける世界的に競争力のあるサービス分野の開拓,

・物理的,制度的及び人と人の連結性の改善を通じたAPECエコノミーにおけるサービスの貿易・投資の拡大,

・全てのビジネス,特に零細・中小企業(MSMEs)によるGVCへの参画強化,

・APEC及びその人々のより効率的でより多様性のあるサービスへのアクセスの拡大,

・社会的包摂及び人的開発を促進すると同時に雇用創出及び成長,

・包摂的で,革新的で均衡ある,安全な,持続可能な成長のためのAPEC首脳の成長戦略を追求する措置の追加。

13. 我々は閣僚及び高級実務者に対し,全ての関連委員会及び作業グループ,特にサービスグループ

(GOS)を通じて,この枠組みをAPEC作業プログラムの戦略的・長期的計画の主流に組み込むことを要請する。最後に,我々は高級実務者に対し,2016年初めにASCF実施のためのメカニズムの策定を指示する。