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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 附属書B APECサービス競争力ロードマップ(2016年-2025年)

[場所] リマ,ペルー
[年月日] 2016年11月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

2015年,我々APEC首脳は,行動と2025年までの達成に相互合意した目標を伴った,戦略的且つ長期的なサービス競争力ロードマップの策定を求めた。我々は今,APECサービス競争力ロードマップ(2016年-2025年)を承認し,高級実務者に対し,本ロードマップに概要が示され,付随の実施計画で詳述されるコミットメントを実施するよう指示する。

我々は,今後10年間にわたって,我々の地域の成長においてサービスが担う重要な役割を認識する。新技術は,我々のサービス貿易の能力を向上させるとともに,女性や小規模専業者等の多くのサービス提供者がサービス貿易に参加することを可能とするプラットフォームを作り出す。サービスは,グローバル・バリュー・チェーンにおける,成長中のダイナミックな構成要素でもある。これらの発展はともに我々のエコノミーに著しい生産性向上をもたらす可能性を有している。

我々はまた,我々のビジネス界がサービス市場において競争や貿易をすることを阻害する障壁に対処するとともに,サービス貿易や投資を促進し,サービス分野の競争力を強化する具体的な行動をとる必要があると認識する。規制は我々のエコノミーにおいて正当な役割を担っている一方,我々は,規制が,貿易,公正な競争及び新技術の導入において不必要な障害として用いられないことを確保するよう努める。

目標

2025年までにサービス分野におけるAPECの競争力を高めるため,我々は以下の目標を定める。

・サービス貿易・投資の規制を漸進的に削減することにより,サービス市場へのアクセスのための開放的で予測可能な環境を確保する。

・世界のサービス輸出におけるAPECエコノミーからのサービス輸出の割合を増やし,2025年までに現在の世界におけるサービス輸出の割合を超える。

・APEC地域におけるサービス貿易を増加させ,2025年までに,年平均成長率を歴史的な年平均成長率である6.8%以上にし,APECのGDPに占めるサービス分野の付加価値の割合を全世界における平均的な割合以上にする。

これら目標の達成のため,APECは,世界でもっともダイナミックで効率的なサービス市場を発展させることが求められる。APEC内の一体性の向上及びAPECメンバー間の協力を含む,APEC全体の行動が極めて重要である。我々は,進捗度合いの測定を支援するため,また意思決定への情報提供のために,2020年までにサービス規制環境に関するAPEC指標を立ち上げることを含め,サービス関連の統計を改善することにコミットする。

我々はAPECエコノミー間の経済的・社会的状況の違いを認識し,開発途上エコノミーのための政策対話や能力構築を通じて,エコノミー固有の行動を前進させる上で協力することを決意する。

実現のための要素

競争力の高いサービス分野を構築し,維持するためには,一連の実現のための要素を必要とする。我々は,APEC全体及び個々のエコノミーとしてのサービス競争力にとって実現しうる最良の環境を整備することに,必要に応じた能力構築の実施を含め,コミットする。

これらのステップは,以下を含む:

・良き規制慣行,国際的な規制協力及び健全な競争政策の枠組・制度を促進すること

・サービス貿易に関するAPECの全般的なスタンドスティル・コミットメント及び保護主義的・貿易歪曲的措置へのロールバックを延長することにより,サービス市場の開放性を確保すること。

・経済の急速な変化の中で適切なスキルの供給を確保すること,労働者に対して変化への適応を支援すること,また,女性,若者,零細・中小企業及び地元の事業者等のグループによる労働力への参画増加を促進すること

・ダイナミックで,競争力が高く,効果的な,通信,イノベーション,情報通信技術(ICT)政策を促進すること。

・金融市場における包摂性を促進するための新技術の利用を含めた,効果的な金融市場を促進すること。

・人的,物理的,制度的連結性を改善すること。

APEC全体の行動

APEC全体の行動を通じて,これら実現のための要素を追求することは,目標を達成し,APECエコノミー全体におけるサービス分野の競争力を向上させるために必要な貿易・投資を促進することの助けとなりうる。APECは,主要な地域経済協力フォーラムとして,多くの場合,既存の又は計画中のサービスに関する作業を基礎として本行動を進める上で,有利な立場にある。

我々は,以下のAPEC全体の行動を承認する:

・合意された「グローバル・バリューチェーンの発展と協力のための戦略的ブループリント」の下,零細・中小企業及び女性の参画促進を含めたグローバル・バリューチェーンを強化させること。

・相互承認取決めを円滑化するための「APEC建築家・技術者登録」のようなイニシアティブに基づいて,専門家の越境移動を支援すること。

・「APEC・ビジネス・トラベル・カード(ABTC)」などのイニシアティブに基づいて,ビジネス出張者や企業内転勤のための柔軟性を強化すること。

・「構造改革及びサービスに関する2016年APEC経済政策報告書」の進展を含む「構造改革のためのAPEC改訂アジェンダ」を実施すること。

・合意された「環境サービス行動計画」の下,環境サービスに関する自由化,円滑化及び協力を支援すること。

・合意された「製造業関連サービス行動計画」の下,製造業関連サービスの漸進的な自由化,円滑化を促進すること。

・(ASEAN資格証明フレームワークのような方法を参照し)インターンシップ制度,留学生交換プログラム及び協調的政策研究の促進だけでなく,国内の教育体制に応じて,相互承認を探るためのエコノミーの教育水準,資格及び単位制度・方法に関する情報を共有することを含む教育分野における協力を支援すること。

・世界のデジタル化の進行の中で,貿易関連データの流れを可能にしながら,適切な健全性管理,正当な消費者及びセキュリティの保護を提供するような規制アプローチを促すため,インターネットに基づく技術の急速な発展への対応において協力すること。

・金融包摂イニシアティブ及び関心のあるエコノミーによる「アジア地域ファンド・パスポート・イニシアティブ」への参加を含め,特定の金融サービスの国境を越えた提供を支援すること。

・「2015-2025年APEC連結性ブループリント」に基づき,陸海空の交通開発,またICTインフラに関するAPECの作業を支援すること。

・「APEC観光戦略計画」の作業に基づき,持続可能で,包摂的な成長のための旅行と観光の発展に関するAPECの作業を支援すること。

・サービス分野における国内規制に関するグッドプラクティス原則を作成すること。

・ロードマップの実施を測定してこれを支援し,また,より広範なサービス貿易・投資の捕捉を改善するため,サービスに関連する統計を作成すること。

更に,我々は,更なる作業を必要とするであろう,APEC全体の潜在的な追加的行動に留意する。

・アジア太平洋にまたがる安全で高品質な食料供給へのアクセスを確保するため,地域食料システムの改善のためサービスの漸進的な円滑化を図ること。

個別エコノミーの行動

本ロードマップに提示した目標及び実現のための要素を達成するには,エコノミー全体に加え,個々のサービス分野における構造改革実施のための各エコノミー側の個別行動を必要とする。個別エコノミーにおける改革の重要性から,我々は,各エコノミーが,「構造改革のためのAPEC改訂アジェンダ(RAASR)」の下の構造改革行動計画の一部として,サービス分野の更なる改善を目的とした個別の改革を実施することを奨励する。このコミットメントは,発展レベル,準備状況,適切なタイミング等,各エコノミーの状況を考慮に入れる。このような措置は,各エコノミー及びAPEC全体の双方に高いプラスの効果をもたらすことを目指すべきである。

個別の改革プロセスを支援するため,我々は,APECが相互学習と能力構築のプロセスを促進することに合意する。本プロセスは,APECエコノミーに対して,自主的に個別の改革に着手するために必要なツールや情報を提供する。

実施

我々は,このロードマップ及び付随の実施計画は生きた文書と見なされるべきであることに同意する。追加のAPEC全体の行動は,本目的を達成するためにいつでも合意されることができる。

APECは,APEC全体及び個々のエコノミーの双方のレベルにおいて,ロードマップ実施への支援を求め,関心を有する開発途上エコノミーのための能力構築プログラムを実施する。能力構築のための資金は,(RAASRサブファンドを含む)関連する既存のAPECファンドに求めることができる。各エコノミーからの能力構築のための追加資金は歓迎される。

APECはまた相互学習のプロセスも促進する。改革の実施に関心のあるエコノミーは,関連の経験及びベストプラクティスを有する他のエコノミーに相互支援を求めることが奨励される。

APECはロードマップの実施を支援するため,また,鍵となる問題への理解を促すため,サービス貿易及び投資に関する測定の改善を進める。最優先事項は,OECDや世界銀行など他のフォーラムで既に作成された指標を参考にしつつ,APECエコノミーにおけるサービス規制環境を測定するAPEC指標を作成することである。

高級実務者は,ロードマップの下,進行状況の監視,評価に全責任を持つ。高級実務者は,進捗を定期的に閣僚に報告し,ロードマップの実施期間中に追加の行動を進めるため,適切な場合には閣僚から更なる指示を求める。我々は,ビジネス組織,特にAPECビジネス諮問委員会,太平洋経済協力会議及びアジア太平洋サービス連合がロードマップ作成において果たした重要な役割を賞賛する。我々は,ロードマップの実施及び進捗の監視において,関与を受けた組織と更に協力していくことを奨励する。

我々は,中間レビューを2021年に行い,2025年までの目標達成のために,各エコノミー及びAPEC全体においていかなる行動が必要かを検討することに合意する。