データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第25回APEC首脳会議 首脳宣言(ダナン宣言,新たなダイナミズムの創出と共通の未来の促進)附属書A:APEC地域における経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する行動アジェンダ

[場所] ダナン
[年月日] 2017年11月11日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.我々,APEC首脳は,アジア太平洋地域において一層必要となっている効果的な経済的・金融的・社会的包摂を改めて強調する。貿易・投資の拡大及びデジタル分野における変革により経済成長及び雇用が大きく促進されたが,そうした利益は,我々の社会の各層に均一に広がってこなかった。我々の地域は,根強い不平等,失業,健康,教育及び生活水準に影響する多方面にわたる持続的な貧困,技術進歩の影響といった,経済的・社会的包摂に対する課題に直面している。さらに,APECの中には高齢化,中間層の拡大といった重要な人口統計上の変化が起きているエコノミーも存在し,そうした変化は包摂的成長の新たな課題となっている。

2.我々は,包摂を前進させることは,太平洋の両側で南半球・北半球の大小全ての途上・先進エコノミーに広範な影響を与える包摂的成長の達成に死活的に重要であるという考えを共有する。多くのAPECの取組が,既に包摂の支持に向けて動いていており,地域及び世界の新しい潮流を捉えることを目指すものとなっているが,対処すべき大きな格差は依然として存在する。APECが包摂の多様な側面を推進するため,全体的な政策及び措置を策定することは不可欠である。この取組は,「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に沿った共同の努力の一環である。

3.経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する本行動アジェンダは,現在APECにおいて進んでいる包摂に関する作業を統合し,努力が適切で,かつ急速に変化する世界及び地域情勢に対応するものとなるよう新たな要素を加えるものである。我々の最も重要な目標は,2030年までにより包摂的なAPECコミュニティを実現することである。

4.行動アジェンダの3つの重要な柱は以下のとおり。

 a.経済的包摂とは,社会の全ての人が,経済に有意義に参加するため,経済機会についての情報の取得及びアクセスにおいて平等であることを指す。

 b.金融的包摂とは,個人及び企業が,責任ある持続可能な方法で提供される取引,支払い,貯蓄,信用及び保険といった,自らのニーズを満たす,有益で手頃な価格の金融商品とサービスに適切にアクセスすることを意味する。

 c.社会的包摂は,貧困と社会的排除の危険にさらされている人々のために社会への参加条件を改善し,公平性を高めるプロセスと定義される。

5.行動アジェンダは,以下のAPECの野心的な目的を達成することを目指す。

 a.経済的包摂:完全かつ生産的な雇用,若者,高齢者,障害者を含む全ての人への良い仕事の提供,同一労働同一賃金の達成に向けた進捗を促進する。持続可能な開発のための2030アジェンダで描かれているとおり,所得下位40%の層について,各エコノミーの平均を超える所得成長を漸進的に達成し,持続させる。

 b.金融的包摂:銀行,保険,金融サービスへのアクセスを奨励・拡大し,全ての人の金融リテラシーと金融にアクセスする能力を高めるため,金融機関の能力を強化する。

 c.社会的包摂:社会の全ての人が経済機会を利用できる能力を備えるよう支援する。

5.我々は以下の優先分野を特定する。

a.経済的包摂

 ・主要分野である競争政策,ビジネス環境改善,良い規制慣行と協力,公共部門及び

コーポレートガバナンスにおける構造改革を進めることにより,新たな機会と雇用への公平なアクセスを拡大する。組織能力,透明性及び腐敗対策に係る取組を強化する。イノベーションと創造性を促し,また,サービス分野の競争力を向上させる。

 ・職業訓練及び雇用に対する障壁を取り除く施策を実施し,積極的な労働市場政策を強化し,労働市場の需要と教育能力をつなぐ人材開発を支援することにより,若者,女性,高齢者,障害者や農村といった,少数の脆弱な立場に置かれた人々等にとっての経済機会及び就労を強化する。

 ・貿易促進や市場アクセスの改善,零細・中小企業の国際化等により,地域統合を深化し,貿易・投資を増加させる。

 ・質量ともにインフラへの投資を加速する。エネルギーへのアクセスを改善する。開発の遅れた地域,遠隔地,農村部を含め,物理的,制度的及び人的つながりを強化する。

 ・インターネットとデジタル経済,スタートアップ企業と起業家精神を推進する。第4次産業革命によりもたらされた機会を活用し,課題を克服する。

b.金融的包摂

 ・金融インフラ整備,特に電子決済取引を可能とするためのデジタル・インフラ及び法的枠組みを促進し,また,零細・中小企業の信用へのアクセスの拡大を促進するための信用情報の共有,安全な取引,評価及び破産体系を促進する。マイクロファイナンス及び零細・中小企業向けのサプライチェーン・ファイナンスの利用可能性を高める。零細・中小企業が金融サービスにアクセスできるような環境を整備し,そのための能力構築及び技術援助を提供する。

 ・持続可能な開発及び貧困緩和を促進するための手段として,十分なサービスを受けられていない金融消費者,特に地方や農業部門の金融消費者に適した金融商品・サービスを促進する。

 ・マイクロファイナンス・プロバイダーが効率的で費用対効果の高い方法でサービスへのアクセスを更に容易に提供することを可能とし,また,適切な水準の消費者保護が確保されるような規制環境を確保する。

 ・金融セクターにおける金融リテラシー及び人材育成を向上させるための能力構築や金融教育及びデジタルツールを含め,APECエコノミーの金融包摂戦略を策定し実施する。安全でよく規制されたデジタル金融(特にデジタルバンキング及びFintech)を開発する。財政的に脆弱な人々が,正規金融サービスにアクセスできるように支援を提供する。

 ・基準及び政策の調和を含む国際協力を促進する。金融的包摂と識字率データベースを構築する。知識を共有し,能力構築を強化する。

c.社会的包摂

 ・デジタル化の恩恵を活用し,技術革新の影響をより良く理解するためのエコシステムを開発する。それには,教育,訓練,保育の機会へのアクセスを改善することが含まれる。技能の学び直しと生涯学習のための取組を強化し,構造的変化によって職を失った労働者を対象に定めること等により,デジタル時代と仕事の未来ための人材育成政策を強化する。

 ・デジタルプラットフォームや質の高い社会サービスへのアクセスを可能とすること等により,女性,若者,高齢者,障害者,農村,その他の少数の脆弱な人々の社会的エンパワーメントを強化する。社会的投資手法を促進する。

・社会のセーフティネットを強化する。社会的保護の土台に関するILOの勧告202に沿った最低限の保護の促進等により,社会的保護へのアクセスを改善する。労働における基本的原則及び権利,安全で健康的な職場づくりを促進する。

7.行動アジェンダを実施するため,我々は以下の行動にコミットする。

 ・APEC委員会,フォーラム及びサブフォーラに対し,作業計画や戦略計画に経済的・金融的・社会的包摂を組み込むよう奨励する。

 ・APECフォーラムに対し,2018年に少なくとも合計6つの新たな取組,すなわち,経済的・金融的・社会的包摂の各分野で2つの取組を共同で提案することを求める。

 ・経済的・金融的・社会的包摂を強化するための取組の策定及び実施において,特にAPEC高級実務者(SOM)と財務高級実務者(SFOM)間の分野横断的調整を強化する。

 ・適当な場合,特にG20,経済協力開発機構(OECD),世界銀行,国際通貨基金(IMF),東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA),太平洋経済協力会議(PECC),APECスタディセンター等の経済的・金融的・社会的包摂の促進に注力している重要な地域・世界機関との協力及び相乗作用を強化する。

 ・実務者に対し,2018年から本件行動アジェンダの実施を開始し,2024年に進捗に関する中間報告,2030年に最終的なレビューを行うよう指示する。この取組は,経済及び技術協力に関するSOM調整委員会を通じて調整されるべきである。