[文書名] 2020年マレーシアAPEC閣僚会議閣僚共同声明
我々、APEC閣僚は、2020年11月16日、アズミン・アリ・マレーシア上級大臣兼国際貿易産業大臣による議長の下、集まった。APEC閣僚会議(AMM)がテレビ会議で開催されたのは、今回が初めてである。我々は、2020年におけるフォーラムの成果を評価し、将来の作業に関するガイダンスを提供し、APEC首脳会議(AELM)に向けた準備について議論した。
我々は、世界貿易機関(WTO)、APECビジネス諮問委員会(ABAC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋経済協力会議(PECC)、太平洋諸島フォーラム(PIF)及びAPEC事務局の参加を歓迎する。
我々は、悲劇的な生命の損失に対し、また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックのために苦しんでいる人々に対し、衷心からの哀悼の意を示す。我々は、中小零細企業(MSMEs)、女性及び未活用の経済的潜在力を有するその他の人々に対する過度な影響を含む、パンデミックによってもたらされた前例のない経済的、保健的及び社会的課題を認識する。我々は一致団結し、脆弱な開発途上エコノミーに対する新型コロナウイルス感染症の影響に関する懸念を改めて強調する。我々は、経済の強靱性を高め、力強く包摂的な経済回復を支援するため、質の高い成長を促進し、人々の生命と生活を保護するよう、引き続き協力し、機動的に行動する。
我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが、アジア太平洋地域及び世界経済全体に深刻な影響を与えたことを認識する。我々は、必要不可欠な物品及びサービスの越境移動を促進し、また、ウイルスの拡散を防ぐ努力を阻害することなく人々の必要不可欠な越境移動を促進する方策を探求するため、協働することにコミットする。我々は、新型コロナウイルス感染症から回復し、強靭かつ安全な成長を促進するため、情報共有と技能開発を強化し、APECの人間の安全保障のアジェンダを強化する。我々は、新型コロナウイルス感染症への対応及び新型コロナウイルス感染症へ対処することを目指した全ての取組に関する情報共有のためのデジタルプラットフォームの迅速な設立を評価する。我々は、パンデミックに対処し、経済回復過程を通じて、労働者と各セクターを支援するための、APEC全体での多様で継続した努力及び追加的なリソースの貢献を歓迎する。
我々は、「共有された繁栄の強靱な未来に向けた、人間の潜在能力の最適化:方向修正・優先付け・進歩」という2020年のAPECのテーマと、「貿易・投資のナラティブの改善、デジタル経済と技術を通じた包摂的な経済参画、革新的な持続可能性の推進」という三つの優先事項の下、本年の作業を推し進めた。
我々は、これらの三つの優先事項に沿って、人々の豊かさ(ウェル・ビーイング)に貢献する課題に引き続き対処する。この目的のため、我々は、GDPを補完する指標や、包摂的で責任あるビジネス及び投資に関する議論を評価する。
我々は、ボゴール目標を土台とした、新たなAPECのビジョンに係る作業の完了を歓迎する。我々は、これまでの進捗を強調し、更なる取組が必要な事項を特定した、「ボゴール目標に向けたAPECの進捗に関する最終評価報告書」を歓迎する。
貿易・投資
我々は、このような困難な状況において経済回復を推進するための、自由で、開かれた、公正で、無差別的で、透明性のある、かつ予見可能な貿易・投資環境の重要性を認識する。我々は、「APEC貿易担当大臣による新型コロナウイルス感染症に関する共同声明」、「APEC貿易担当大臣声明」及び「必要不可欠な物品の流れの円滑化に関する宣言」を再確認する。我々は、新型コロナウイルス感染症に対処するためのいかなる緊急の貿易措置も、的を絞り、目的に照らし相応かつ透明性があり、一時的なものであるべきであり、貿易に不必要な障壁を生み出さず、かつWTOルールと整合的であることを改めて強調する。
我々は、市場の予見可能性を高め、ビジネスの信頼を可能にし、貿易が行われるようにする、WTOの合意されたルールの重要性を確認する。我々は、WTOの機能を改善するために必要な改革を支持すること等により、WTOの課題に引き続き建設的に関わっていく。第12回WTO閣僚会議(MC12)に至るまでの間に、我々は、現在進行中のWTO交渉を加速することを求め、また、共同声明イニシアティブに参加しているAPECエコノミーは、進捗を求める。我々は、APECが多角的貿易体制を支持し続けることに対するABACからの要請に留意する。
我々は、質の高い包括的な地域での取組に貢献するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のアジェンダに関する作業等を通じて、市場主導による地域における経済統合を更に推し進める。
デジタル経済・技術
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、経済成長を持続させる上でのデジタル経済・変革・技術の役割を強調した。我々は、保健上の脅威から地域を保護し、デジタル技術の活用等を通じて保健システムの強靭性及びヘルスケアの質を強化するために、イノベーションを支える必要性を認識する。デジタル経済から生じる機会へのアクセスを高め、新興のデジタル技術を活用するための革新的なデジタルなエコシステムを発展させる喫緊の必要性がある。我々は、イノベーションを推進するために新たな技術の適用を奨励し、デジタル包摂を改善し、デジタル技能の能力を高め、デジタル格差を縮小させることが、包摂的な経済参画にとって核心的な推進力であるので、これらに向けた取組を加速するよう努める。我々は、高級実務者に対し、「APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップ(AIDER)」の実施を加速させることを指示し、「APECデジタル金融包摂性に関するロードマップ」を歓迎する。
信頼性があり、相互利用可能で、開かれた、アクセス可能な、安全な情報通信技術(ICT)環境は、より相互に連結され、包摂的な地域につながる。我々は、データの流通を促進し、デジタル取引に対する消費者及びビジネスの信頼を強化することに関する協力の重要性を認識し、APECメンバーに対し、デジタル経済の機会を活用し、環境改善を促進するベストプラクティスを共有することを求める。
構造改革
市場主導で、イノベーションに支えられた環境改善は、社会における全ての部門へ経済的機会を増やすために極めて重要である。構造改革は、繁栄、景気回復及び力強く、持続可能で、均衡ある、包摂的な成長にとって、主要な推進力の役割を果たす。我々は、構造改革に関する新たな行動アジェンダに向けた進捗に留意し、APECエコノミーに対し、改善された構造改革アジェンダをまとめること等により、新たな行動アジェンダを2021年以降に推し進めるための実際的な手段を講じる措置をとることを求める。
我々は、「構造改革及び女性のエンパワーメントに関する2020年のAPEC経済政策報告書(AEPR)」に留意する。女性は、デジタル対応サービスに対するアクセスを含む、経済参画と経済的安定に影響する大きな構造的な障壁に依然として直面している。我々は、これらの課題に対処するための必要な手段を講じ、女性が経済、労働参画及び起業において直面する既存の法的、規則的、構造的障壁を撤廃する努力を推し進めることにコミットする。我々は、女性及び女児に恩恵を与え力づける経済回復の取組に焦点を当てたアプローチ並びに実体的な措置及び政策をとることに対するコミットメントを再確認する。我々は、女性の十全な潜在能力を実現させ、女性の経済への完全で平等な参画を推し進めるため、「女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ実施計画」を実行している。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって引き起こされた経済的混乱は、我々の現在及び将来の職務環境に大きな変化をもたらした。高度にデジタル化された職務環境に必要な知識、技能、訓練を人々に身につけさせるための、APECエコノミー間の更なる協力に対する差し迫った必要性がある。我々は、2021年の、「構造改革及び仕事の未来に関するAPEC経済政策報告書」を期待している。
経済・技術協力
我々は、低炭素で気候変動に強靱なグリーン成長、地域の経済的繁栄及び健全な地球の間の相互依存を理解し、持続可能な開発を達成し気候変動、異常気象及び自然災害を含むあらゆる環境上の課題に対処する我々の努力を補完する経済政策を実現するために、経済・技術協力を強化することに努める。我々は、よりクリーンなエネルギーへの移行を推し進め、持続可能な経済成長を支え、力強く包摂的な経済回復を達成する、エネルギー安全保障、エネルギー強靱性及び多様な燃料と技術を使用した低廉で信頼できるエネルギーへのアクセスの必要不可欠な役割を認識する。
我々は、天然資源の持続可能な管理の重要性を認識するとともに地域の急速な人口増加と都市化に留意し、廃棄物を安全かつ革新的に管理するための方策を探求することにより資源効率性を支援するAPECの取組を歓迎し、スマートで持続可能な都市に関する取組に留意する。我々は、革新的な廃棄物管理に関する複数年政策対話が開始され、2022年まで継続される見込みであることを嬉しく思う。この対話は、サプライチェーンにおける資源及び廃棄物の効率的で持続可能な管理を可能にする政策提言を追求するためのプラットフォームとなる。我々は、既存の優先事項を見直し、官民連携等を通じ、地域の食料安全保障と食品安全性を強化し、食品ロスと廃棄を減少させるための将来的な機会を特定した。我々は、「食料安全保障ロードマップ2020」の評価、並びに、「食料安全保障及び気候変動に関する複数年行動計画」及び「農村・都市開発に関する戦略的枠組み」の実施に留意する。
我々は、海洋保全と海洋・森林資源の持続可能な利用を含む、責任ある資源管理を促進する必要性に引き続き焦点を当てる。我々は、違法・無報告・無規制(IUU)漁業、違法伐採及びそれに関連した貿易と闘い、海洋ごみに対処する取組に留意する。
我々は、「質の高い成長を強化するためのAPEC戦略」に関する最終報告書に留意し、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を含む世界的な取組を支えるため、地域における、力強く、均衡ある、包摂的で、持続可能で、革新的かつ安全な成長に向けて、制度構築を推進し、社会的一体性を向上させ、有害な環境への影響を緩和する重要性を認識する。
我々は、腐敗が制度に対する信頼を損ね、経済発展を妨げ、不平等と社会的分断を更に悪化させることから、APECエコノミーに対し腐敗がもたらす深刻な脅威を認識する。我々は、腐敗を防止し闘うとともに、透明性を確保するよう共に取り組むことで、良い統治、経済発展及び繁栄を、引き続き促進し、持続させていく意図を有する。
我々は、地域における金融の安定に向けた我々のコミットメントを再確認する。我々は、長期の強靭な発展及び将来の資金需要を支えるため、財政の持続可能性及び透明性を改善することの重要性を強調しつつ、経済回復を助けるため景気刺激策を進める継続的な必要性を認識する。我々は、危機を通じた、また、回復に向けたAPECの経済対応を支援する国際機関及び金融機関の取組を歓迎する。
我々は、APEC連結性ブループリントに沿って、2025年までに、物理的、制度的及び人的連結性を強化することに対するコミットメントを再確認し、ブループリントの中間評価に留意する。我々は、デジタル技術を向上させ、継ぎ目のない連結性を円滑化し、関連するAPECの作業に基づく質の高いインフラを開発し、貿易円滑化を促進し、サプライチェーンの強靱性を強化し、人の移動に関する協力を促進することを期待している。我々は、バーチャル・APECビジネス・トラベル・カード(ABTC)の最終的な開始に向けた進捗に留意する。
その他の主題及び制度的事項
我々は、APECがその核心的な目的に対し意義を有しかつ忠実であり続けるために、APECの委員会及びサブ・フォーラに対し、より近代的、包摂的、効果的かつ効率的で、将来の課題に対応でき、将来志向であるよう求める。
我々は、他の地域及び国際機関とのフォーラ間協力及び関与の重要性を強調する。我々は、ABAC、PECC、ASEAN事務局及びPIFとの緊密な協力を評価する。我々は、地域のアジェンダを促進し、年間優先事項を推し進めたことについて、APEC事務局とPSUを評価する。
我々は、APECの作業に関する高級実務者会議議長の報告書及びABAC議長の報告書に留意する。我々は、閣僚に対する貿易・投資委員会(CTI)年間報告書を承認する。我々は、経済・技術協力に関する高級実務者報告書に留意する。我々は、APEC事務局会計予算と、それに応じた2021年のメンバーによる分担金の水準を承認する。
我々は、マレーシアに対し、この困難な年を通じてAPECを主催した、その確固たる努力と有能なリーダーシップに感謝する。我々は、本年、オンライン形式でAPEC会合を導くに当たっての、揺るぎないコミットメントと先駆的な役割について、マレーシアを評価する。我々は、2021年にニュージーランドが議長を務めることを楽しみにしている。