データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2021年APEC貿易担当大臣共同声明

[場所] オンライン会合
[年月日] 2021年6月5日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)貿易担当大臣は、2021年6月4日及び5日にオンライン会合を実施した。我々の会合では、ダミエン・オコナー・ニュージーランド貿易・輸出振興担当大臣が議長を務めた。我々は、世界貿易機関(WTO)事務局長、APECビジネス諮問委員会(ABAC)議長、太平洋経済協力会議(PECC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)及び太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局の参加を歓迎した。  

 我々、APEC貿易担当大臣は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響に対処し、全ての人々のための力強い経済回復を可能にするにあたり、貿易が果たす必要不可欠な役割の下に団結している。この不確実な時代において、我々はプトラジャヤ・ビジョン2040実施の重要性を理解し、次の3分野で大胆な行動が必要であることに合意する。

1. 新型コロナウイルス感染症パンデミック対応のツールとしての貿易

 新型コロナウイルス感染症に打ち勝つことは、全てのエコノミーにとって最優先事項である。世界的な公共財としての、新型コロナウイルス感染症に対する広範な予防接種の役割を認識し、安全で、効果的で、品質が保証されかつ手の届く価格の新型コロナウイルス感染症ワクチンの製造及び分配を早急に加速する必要がある。貿易担当大臣として、我々は、ワクチン及びその関連物品への広範で公平なアクセスを確保するための貿易・投資の役割に焦点を当てる。APECは、プトラジャヤ・ビジョン2040と整合的な形で、この取組において重要な役割を果たしている。2020年7月、我々は「必要不可欠な物品の流れの円滑化に関する宣言」を発表したが、これは貿易の円滑化のために協働する我々の意思と能力を強く示すものであった。ただし、取り組むべき更なる作業がある。

 本日、我々は新型コロナウイルス感染症ワクチンサプライチェーンに関する独立した声明(附属文書1)を発表することに満足している。これは、貿易環境が、新型コロナウイルス感染症ワクチン及びその関連物品の安全で効率的な分配を支援することを確保するための我々のアプローチを示している。我々は、新型コロナウイルス感染症ワクチン及びその関連物品の分配促進のための運用上及び実践的な貢献として、APEC税関当局向けベストプラクティス・ガイドラインを歓迎する。新型コロナウイルス感染症の課題に対応するAPECの力強い取組を継続するため、APECエコノミーは、世界税関機構(WCO)新型コロナウイルス感染症医療品リストに記載のあるような、医療品の貿易を円滑化する方法を検討し、11月のAPEC閣僚会議までに報告することにも合意する。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック下において、サービス貿易が行われ続けることが重要である。我々は特に、ワクチン及び医薬品の製造、分配、販売において貨物とロジスティクスの供給者が果たすことができる不可欠な役割を強調する。我々は「必要不可欠な物品の流れを支援するサービスに関する声明」(附属文書2)を発表することに満足している。我々は、2020年の「必要不可欠な物品の流れの円滑化に関する宣言」のレビューの一環として、この作業の進捗状況を毎年更新するよう実務者に指示する。我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック以後、サービスの供給者に予見可能性を与えることの重要性も認識する。我々は、地域全体でサービス競争力を高める上でのAPECの役割を検討する作業の一環として、特に必要不可欠な物品の流通を加速し円滑化するようなサービスの貿易に関する不必要な障壁を特定し、その後、撤廃を検討することに、優先して取り組むことに合意する。

 国境制限と移動制限が人々と経済に悪影響を及ぼしていることに留意し、我々は、新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐための努力を弱めることなく、国境を越えた移動の安全な再開への道を開かなければならない。我々は、現在進行しているマルチでの議論に沿って、既存のAPECのデジタル・プラットフォーム等を通じて、国境を越えた移動措置に関する情報を共有し、地域における安全な移動の確立に係るイニシアティブやプロトコルを特定するよう実務者に指示する。我々は、APECがより良く航空機乗務員を支援し、地域におけるビジネスの流動性を促進する方途を議論し、地域における安全な移動を促進するためのデジタルソリューションに係る議論を前進させ、本年11月のAPEC閣僚会議までに進捗を報告するよう実務者に指示する。

 我々は、パンデミックと闘うためのAPEC全体にわたる多様で継続的な努力及び追加的なリソースの貢献を歓迎し、この観点から関連するAPEC支援基金サブファンドの新たな設立に留意する。

2. ルールに基づく多角的貿易体制

 我々の地域の驚異的な成長を誘発する上で、ルールに基づく多角的貿易体制の役割を想起し、我々は、第12回WTO閣僚会議(MC12)が成功し、全ての人々に具体的成果をもたらすことを確保するため協力することを決意している。我々は、自由、公正、予見可能、無差別的、透明性があり、開かれた貿易・投資環境を支えるルールを確立する上でのWTOの役割を更に強化するために協力する。

 WTOは、世界的なの貿易ルールが、新型コロナウイルス感染症による人類の大惨事への対応に役立ち、回復を促進し得ることを示さなくてはならない。APECエコノミーは、ジュネーブにおいて、新型コロナウイルス感染症ワクチンの一定の知的財産権保護の一時的な適用免除を含むテキストベース交渉が、できるだけ早期、遅くともMC12までに行われることを支援するよう、能動的かつ緊急に取り組む。我々が新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの回復を促進しようと模索する上で、我々は、必要不可欠な物品に関するAPECの作業を補強し、サプライチェーンの混乱を最小限に抑えるとともに強靱性を高め、世界的な保健上の緊急事態に対応する上で、貿易が果たし得る積極的な役割を示す貿易と保健に関する実践的かつ効果的な解決策を示す取組を支持する。APECエコノミーは、新型コロナウイルス感染症対処のための緊急措置が、的を絞り、目的に照らし相応かつ透明性があり、一時的なものであり、WTOルールと整合的であることを確保することを通じて、その役割を果たし、適切な場合には残されている貿易制限的な措置を緩和する取組を支援する。

 我々は、WTOの機能を改善するために、現在行われている必要な改革努力を、引き続き支持する。このため、透明性強化を進展させる重要性を認識している。我々は、WTOの交渉及び紛争解決の役割の改善された機能に関して、率直で建設的な議論を行った。また我々は、こうした議論を継続することにコミットする。我々は、MC12までに必要な改革の種類にかかる共通の理解を追求するよう、WTOメンバーに求める。

 WTOが、新たなルールを交渉し、我々の天然資源を守るフォーラムとしての信頼性を強化するために、本年果たす最も重要な貢献の一つは、数十年にわたる漁業補助金交渉を成功裡に妥結することである。APECエコノミー一同は、有害な漁業補助金に関する効果的な規律について2021年7月31日までに、WTO漁業補助金交渉が包括的で意義のある合意に達することを呼びかけるWTO事務局長の要請を支持する。

 我々は、21世紀の貿易ルールに現代化するために、WTOとその加盟国を支持する必要がある。我々は、既存の複数国間の交渉や議論が、成果を進展させる上で積極的な役割を果たしていることを認識している。電子商取引、サービス分野における国内規制、中小零細企業(MSMEs)及び開発のための投資円滑化に関する共同声明イニシアティブ(JSI)に参加するAPECメンバーは、関連するイニシアティブにおける実質的な進展を求める。我々は、MC12での野心的な成果に向けて、貿易と女性の経済的なエンパワーメントに関する共同宣言を承認したAPECエコノミーによる要請に留意する。

 APECは、貿易と環境の政策が相互に支援的であることを確保する牽引役であり、我々はこれが継続されるべきであると確信している。我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダの達成やパリ協定の目標といった世界的な取組と連携し、気候変動その他の深刻な環境課題に貢献するような経済政策及び成長を促進することの重要性に合意する。これに関連して、我々は、APECエコノミーの低炭素排出の未来に向けたエネルギー移行は、各エコノミーの異なる状況を反映するものとなることを認識する。我々は、WTOで貿易と環境問題を前進させることに取り組む。我々は、気候変動に対処するために取られた貿易措置が、無差別的で、WTOルールと整合的であることの重要性を再確認する。

 我々は、2012年にAPEC首脳がAPEC環境物品リストを承認して以来、当初のリストに含まれていない、新たな環境に優しい物品、技術、イノベーションが出現したことを認識している。この遺産に基づき、我々は、最も深刻な環境課題に対処するためのAPECの更なる貢献に向け、具体的な措置をとる用意がある。我々は、グリーン成長に貢献し、気候変動に対処し、持続可能な経済開発目標を達成するために、当初のリストの実施をレビューし、11月のAPEC閣僚会議までに、参照目的のために、統一システム(HS)コード関税分類に照らしてリストを更新するよう実務者に指示する。その時点で、リストを更新するための更なる潜在的な作業を実務者に指示することを検討する。我々はまた、環境物品の貿易における非関税措置の影響を議論するAPECの取組を支持する。

 我々は、環境サービスに取り組むというAPEC首脳のコミットメントを再確認し、APECエコノミーが、増加する環境サービスの貿易を支援しうる方法を示した、最近のAPECの報告書を歓迎する。我々は、サービス分野全体において環境関連サービスを特定することを含め、環境サービスの貿易拡大にかかる取組を前進させ、11月のAPEC閣僚会議において進捗を報告することを実務者に指示する。サービスが長期的な持続可能性に貢献できるよう、我々は、エコノミーが環境サービス及び環境関連サービスの貿易をいかに拡大させるかにつき議論を前進させることに合意する。我々は、議論の成果を2022年の貿易担当大臣会合で報告することを実務者に指示する。

 我々は、食料、繊維及びその他の重要な製品を世界中の人々に提供し、世界の食料安全保障と持続可能な経済発展を支援する、WTOルールに支えられたグローバルな農業及び食料体制の重要性を認識する。農業分野には強靱性があり、国際市場はパンデミック下においても比較的安定しているが、国際貿易において最も保護されたままの分野の1つである。我々は、農業協定20条に記載のある改革過程の継続及び既存のマンデートにおいて想定されているとおり、助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減することを目指し、MC12において、我々全体の関心事と機微を反映した、農業に関する有意義な成果が必要であることに合意する。

 市場歪曲的な補助金は公平な競争条件を弱める。我々はまた、環境に悪影響を与える補助金への懸念もますます強めている。我々は、必要不可欠なエネルギーサービスを必要としている人々に提供することの重要性を認識しつつも、無駄な消費を助長する非効率的な化石燃料補助金を合理化し、段階的に廃止するというAPECの2015年のコミットメントを想起する。我々は、11月に閣僚に進捗を報告するため、その立場にあるメンバーが、新たな非効率な化石燃料補助金の潜在的な任意の停止に着手する選択肢を検討することを実務者に指示する。我々は、更なる任意のピアレビューを含む、コミットメントを前進させるための能力構築の取組を支援する。

 APECの取組は、女性、中小零細企業、未活用の経済的潜在力を有するその他の人々を含む、社会の全ての構成員に成果をもたらす必要がある。この点に関して、我々は、先住民の経済的潜在力を開花させるためのAPECの最近のイニシアティブに留意する。我々の経済政策と貿易・投資環境が機会の平等と経済的包摂の促進をも確保することは、我々の責任である。あらゆる種類のビジネス、特に中小零細企業やスタートアップ企業が国内及び国際市場にアクセスするのを支援するために、APECはより迅速に行動すべきである。我々の経済・技術協力と能力構築は、行政上の障壁を減らし、教育、訓練及び技能の開発を促進し、テクノロジー、ファイナンス、国境を越えた支払メカニズムへのアクセスを強化し、市場及び規制に関する情報へのアクセスを確保することができる。

 またAPECは、仕事の未来への包摂的で持続可能な移行を支援するための政策の特定と構造改革の実施に対して有益な貢献をしている。この目的のために、我々は、APECの取組アジェンダ全体を通して女性の経済的エンパワーメントを支援する、「女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ」を実施するために進行中の取組を強く支持する。我々は、女性や未活用の経済的潜在力を有するその他の人々が、貿易等を通じて、資本や市場にアクセスできるようにする取組を奨励する。

3. 我々の将来的な繁栄の形成

 我々が経済危機に対応する上で、各エコノミーの経済状況が、貿易・投資を長期的な経済繁栄の原動力となるようなものとすることが重要である。我々は、構造改革アジェンダを更新するAPECの取組を歓迎する。これには、開かれた、透明性があり、競争力のある市場を可能にする環境を作り、力強く、均衡ある、包摂的で、革新的で、持続可能な成長を促すために、ビジネスの回復と将来のショックに対する強靭性を高めることを含む取組の柱が示されている。

 パンデミックはデジタル化のプロセスを加速させ、デジタルソリューションの採用はもはや任意ではなく必須となった。我々は、「APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップ」のワークプログラムの進展を加速するための、ABACの喫緊の呼びかけに応えることを実務者に指示する。我々は、新たな技術の適用を促進し、ビジネス及び起業家の活躍を可能とし、データの流通を促進し、消費者とビジネスの信頼を強化し、物品及びサービスが継ぎ目なく国境を越えて移動することを可能とするような、実現可能で、包摂的で、無差別的なデジタル経済を作り出さなければならない。同時に、誰一人取り残されないデジタル経済において、全ての人が繁栄のために必要な情報通信技術や技能へのアクセスを促進することにより、デジタル・デバイドを埋めることが重要である。デジタル経済に関する我々の取組は、将来の経済的繁栄にとって極めて重要であり、APECの連結性アジェンダと、開かれた、健全で、競争力があり、継ぎ目のない、包括的に連結し統合されたアジア太平洋地域を構築し、保護する取組を反映している。

 新型コロナウイルス感染症への対応にも大きく貢献しうる具体的なステップとして、我々はWTO貿易円滑化協定、特に国境の手続きにおけるデジタル化の加速、電子申告の到着前処理、電子文書、電子認証、電子決済、迅速な出荷及び国境機関の協力に関連した条項の履行を加速化する。APECは、エコノミーがこれらの取組を進めることを支援する立場にある。これにより、サプライチェーンの効率性がさらに向上する。我々は、新型コロナウイルス感染症の中でAPECメンバーによってとられたデジタル貿易円滑化措置を定着させることに合意する。我々は、11月のAPEC閣僚会議において再会する際に、実務者に進捗状況を報告するよう指示する。

 我々は、人々に恩恵をもたらし、保護し、我々のビジネスの予見性と透明性を高め、多角的貿易体制を補完し、地域における経済統合の深化に貢献する二国間及び地域間貿易協定を締結、批准、履行及び見直しに向けた現行の取組を支持する。これらの取組は、アジア太平洋における質が高く包括的な貿易・投資の成果を支えるAPECの広範な取組、特にアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に関するリマ宣言の履行によって強化されている。我々は、FTAAPが地域経済統合を構成していく上での原則であり続けることを確保するというABACの要請に留意する。我々はまた、関連するAPECの作業に基づく質の高いインフラの開発・投資を通じた、地域、サブリージョン、遠隔地の連結性の重要性を認識する。

 昨年、APEC首脳は、2040年までに開かれた、ダイナミックで、強靭かつ平和なアジア太平洋共同体のためのプトラジャヤ・ビジョン2040を宣言した。我々は、2021年のAPEC首脳会議までに、ビジョンの全ての要素にわたる具体的な実施計画の設計を完了するよう、実務者に要請する。我々は、APEC貿易担当大臣会合を主催したニュージーランドに感謝するとともに、11月に再会する際に進捗をレビューすることを楽しみにしている。

Haumi ē, Hui ē, Tāiki ē

Join, Work, Grow. Together

共に参加し、共に取り組み、共に成長する



附属書1: 新型コロナウイルス感染症ワクチンサプライチェーンに関するAPEC貿易担当大臣声明

 我々、APECの貿易担当大臣は、

 輸出制限、非関税障壁、貿易円滑化、関税を含む、2020年の「必要不可欠な物品の流れの円滑化に関するAPEC宣言」に関する実施の進展を歓迎し、

 必要不可欠な物品の国境を越えた円滑な分配を確保するためのAPEC首脳らの決意とコミットメントを想起し、

 新型コロナウイルス感染症パンデミックからの地域の回復のために、新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品のサプライチェーンの安全性、効率性及び強靭性を確保することの重要性を認識し、

 世界保健機構(WHO)の権利と義務、世界税関機構(WCO)及びその他の国際機関による新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品の円滑化における取組を認識し、

 世界貿易機構(WTO)の権利及び義務、WCO基準及び国際保健規則と整合的な形で、WTO貿易円滑化協定の履行を加速化することにコミットし、以下の分野において更なる行動をとる。

1. WCO-WHO新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品リストを、貿易円滑化のための参照として使用することに合意。APECエコノミーは、全ての新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品の流通と通過を迅速化させる。情報の事前電子提出及び処理を含め、到着後の通関を迅速化する。

2. 新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品の分配促進のためのAPEC税関ベストプラクティス・ガイドラインの実施を前進させる。税関手続きのデジタル化、物品の国境を越えた流通の迅速化、貿易業者と国境機関との間の調整強化を含め、パンデミックの間に実施された貿易円滑化措置を定着させることに合意。

3. WTOルールは特定の状況においては輸出規制又は禁輸措置を許可しているが、新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品に関して、このような措置を適用しているエコノミーは、これらが的を絞り、目的に照らし相応かつ透明性があり、一時的で、不必要な貿易障壁を生み出さないことを確保するため、新型コロナウイルス感染症の状況の変化に応じて、措置継続の必要性を評価する。他のWTO加盟国に対しても同様の自制を求める。

4. 特に国境において課される手数料を見直すことを各エコノミーに促すことにより、新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品のコストを下げる任意の行動を検討する。

5. サプライチェーンに犯罪がつけ入ることを防ぎ、違法、危険、低水準又は偽造品の新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連物品の入域及び輸入を防止するために適切な措置を講じる。これには、グローバルな医療製品の品質とサプライチェーンの安全性促進のためのAPECロードマップ及び関連ツールキットの更なる実施が含まれる。

レビュー・メカニズム

 APEC事務局は、2021年11月のAPEC閣僚会議までに、本イニシアティブの下で各

エコノミーが実施した行動に関して概要報告を行う。その後、新型コロナウイルス感染症が、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態でないとされるまで、12ケ月毎に報告を行う。

 APEC事務局からの報告に基づき、APECエコノミーは本イニシアティブの進展をレビューし、11月に再会する際に報告する。


附属書2: 必要不可欠な物品の流れを支援するサービスに関するAPEC貿易担当大臣声明

 2020年、新型コロナウイルス感染症への対応として、APEC貿易担当大臣は、国境を越えた必要不可欠な物品の流れを円滑化し、グローバル・サプライチェーンへの混乱を最小限に抑えることに取り組むことにコミットした。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック下において、貿易の流通を継続することを保証する重要性を認識し、

 ワクチンの分配だけでなく、必要不可欠な物品の流れの支援においてもサービスが果たす重要な役割を認識し、

 この重要な時期に、必要不可欠な物品の流れを支援するサービスの供給を促進するために協力することにコミットし、

 自由で、開かれた、公正で、無差別的で、透明性のある、包摂的かつ予見可能な貿易・投資環境にコミットし、

 新型コロナウイルス感染症パンデミックの経済的影響への効果的で透明性のある対応を行い、パンデミックの間に必要不可欠な物品が必要とされている目的地にたどり着くことを確保するとのコミットメントを改めて強調し、

 以下をここに宣言する。

サービス分野における貿易障壁

 APECエコノミーは、必要不可欠な物品の流れの迅速化及び円滑化を妨げる可能性

のある関連サービス分野の貿易における不必要な障壁を特定することを優先し、いかなるこうした障壁もそれぞれ、WTO及び特恵貿易協定の義務及びコミットメントと整合的であることを確保すべきである。

 これらの取組は、強力な一連の国際規律によって支援されるべきである。この観点から、我々は、サービス分野における国内規制に関する共同声明イニシアティブの下でのWTOにおける進展に留意。このイニシアティブに参加するAPECメンバーは、これらの交渉を可能な限り早期に締結するよう促す。

貿易円滑化

 APECエコノミーは、グローバル・サプライチェーンの支柱として機能する、物流ネットワークの円滑かつ継続的な運用の確保のために取り組む。「必要不可欠な物品の流れの円滑化に関するAPEC宣言」に基づき、我々は、必要不可欠な物品の税関手続きに必要なものを含む、輸送及び物流サービスに関する調整、効率性及び透明性の強化にコミットする。

 各APECエコノミーは、到着した必要不可欠な物品を迅速に処理し、発送を支援するサービスを円滑化することが奨励される。これには、物品の到着前に処理を開始できるように、サービスの供給者が、輸入に関する文書やマニフェスト(積荷目録)など、その他の必要な情報を電子データで提出できるようにすることを含む。

レビュー・メカニズム

 APECエコノミーは、「必要不可欠な物品の流れの円滑化に関する宣言」のレビューの一環として、本イニシアティブの進捗をアップデートする。第1回レビューは2022年に実施される。