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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2021年ニュージーランドAPEC閣僚会議 閣僚共同声明

[場所] テレビ会議
[年月日] 2021年11月9日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 我々、APEC閣僚は、2021年11月8-9日に集まった。我々の会議の議長は、ナナイア・マフタ・ニュージーランド外務大臣及びダミエン・オコナー・ニュージーランド貿易・輸出振興担当大臣が務めた。我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋経済協力会議(PECC)及び太平洋諸島フォーラム(PIF)の参加を歓迎した。

 APECエコノミーが共に参加し、取り組み、成長するために、これほど重要な時は今までなかった。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、我々の地域及び世界の保健、豊かさ及び経済的繁栄に対して、広範囲に影響を与え続けている。それに対して、APECは、前例のない方法で動き出した。我々は、経験を共有し、協力イニシアティブを前進させ、適時のコミットメントを行った。それらが合わさり、強靭かつ持続可能な長期間の回復を確保する。我々は、全ての人々及び未来の世代の繁栄のために、開かれた、ダイナミックで、強靭かつ平和なアジア太平洋コミュニティを描く「プトラジャヤ・ビジョン」の2040年までの実現にコミットする。この目的のため、我々は、我々の首脳が「プトラジャヤ・ビジョン2040」の実施計画を公表することを楽しみにしている。

 本会合において、我々は、新型コロナウイルス感染症危機に対応するために我々が直接的に行っている取組及び2021年の優先分野における我々の取組に関して議論を行った。

1. 新型コロナウイルス感染症

 我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対応するにあたって、人々の命と生活を最優先にすることにコミットする。我々は、研究及び開発を含む新型コロナウイルス感染症に関する国際協力を強化する必要性を強調する。我々は、安全で、有効で、品質が保証され、かつ手の届く価格のワクチン、診断薬、治療薬、及び関連する物品、サービスへの公正かつ適時なアクセスを加速するために我々の取組を継続する。我々は、新型コロナウイルス感染症の広範な免疫獲得の役割を国際的な公共財と認識し、ワクチン製造及び供給の拡大、世界的なワクチン共有の取組の支援、及び相互に合意した条件に基づくワクチン生産技術の自主的な移転の奨励のための努力を加速させる。

 新型コロナウイルス感染症ワクチンサプライチェーンに関する声明を含む2021年APEC貿易担当大臣会合(MRT)の共同声明で示されたコミットメントを想起し、6月以降の以下の取組を喜ばしく思う。

 − APECメンバーは、関連の国際機関と協力して、偽造ワクチン及び関連物品の移動を防ぐことを含む、新型コロナウイルス感染症ワクチン及び必要不可欠な物品の越境移動のための貿易円滑化の取組を強化してきた。

 − 我々は、不要な輸出規制を課すことを控えてきた。

 − いくつかのエコノミーは、ワクチン及びその他の医療物資に関し、関税の自由化、又は、無関税・低関税の維持を継続してきた。

 我々は、世界税関機構(WCO)の新型コロナウイルス感染症リストを参照のために利用し、より広範な医療物資のリストにおける貿易円滑化を行っており、以下の取組を継続する:

 − パンデミックに対処するための国境措置の透明性を向上させる。

 − 不要な輸出規制及び非関税障壁の使用を抑制し、それらの措置がWTO整合的であることを確保する。

 − 新型コロナウイルス感染症ワクチン及び必要不可欠な新型コロナウイルス関連の医療品のコストを自主的に削減する。

 − 国境機関の協力及び調整を強化する。

 − サプライチェーンの混乱を最小化し、その強靭性を高め、連結性を向上させる取組を強化する。

 我々は、我々の地域の回復のために依然として重要である必要不可欠な物品の移動及びワクチンの分配を支援するサービスの極めて重要な役割を改めて表明する。我々は、必要不可欠な物品の流れを支援するサービスに関する2021年のAPEC貿易担当大臣声明の実施のためのエコノミーによる継続した作業を歓迎する。

 我々は、人々や経済に多大な影響を与えた国境・渡航制限の結果により実現しなかったAPEC地域の経済活動の実質的な損失に留意する。我々は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑制する取組を損なうことなく、越境移動を再開するための道を開き続ける必要がある。我々は、安全に継ぎ目のない航空機乗務員の移動を一層可能にする措置の種類についての作業完了を歓迎し、航空機及び船舶乗務員の移動を支援するためのプロセスに係る更なる作業を推進させるよう実務者に指示する。我々は、地域内の安全な渡航を円滑にするための、追加的な個別のイニシアティブ、解決策及びベストプラクティスを探求し、人々がビジネス、観光及び学業のために越境を再開できるような道筋をつける。我々は、APEC全体で安全な渡航に関する調整を行い、2022年の具体的な成果に向けて取り組むことを実務者に指示する。

 我々は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するための目標に整合的な形で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応及び将来の保健上の危機に向けた備えのための戦略的財産として、持続可能で、強靭で、革新的かつ公正な保健システムへの投資を継続する。我々は、パンデミックに対抗するための、多様で継続的な取組及びAPEC内の追加的な資源の貢献を歓迎する。

2. 力強い回復のための経済・貿易政策

マクロ経済政策及び構造改革

 パンデミックは前例のないマクロ経済政策の対応への契機となり、それが本年の地域の経済活動の立ち直りを支えた。しかしながら、完全な回復には程遠く、エコノミー間及びエコノミー内に大きな相違が見られ、依然として下振れリスクに晒されている。我々は、金融の安定及び長期的な財政の持続可能性を保全しながら、政策支援措置の継続を通じた経済回復を持続する必要がある。この観点から、我々は、「セブ行動計画の実施に係る新戦略」を含むパンデミックの現在まで続く経済的及び社会的影響に対応する行動を支援する。

 パンデミックは、APEC地域における構造改革の継続した重要性を強調した。我々の構造政策への対応が、イノベーションを支援しながら、より包摂的かつ持続可能な回復を確保する必要があり、将来の経済的ショックに対する強靱性を高めていることは明らかである。この目的のため、我々は、「構造改革のための強化されたAPECアジェンダ(EAASR)」を歓迎する。我々のマクロ経済及びミクロ経済政策対応が補完的であることを確保することは、我々の長期的な回復の成功に向けた鍵となる。これを達成するために、我々はAPEC経済委員会とAPEC財務大臣プロセス間の一層の協力を奨励する。

 サービスは、地域の経済成長、生産性及び将来の繁栄を決定づける重要な役割を果たす。我々は、APECサービス競争力ロードマップ中間評価(附属書1)の概要報告書を歓迎し、地域におけるサービス競争力のパフォーマンス評価に留意する。中間評価は、2016年以降進展した多くのイニシアティブが確かな基盤を築いた一方で、我々のサービス供給者がサービス市場で競争し又は取引を行うことや、規制が公正な競争や新しい技術の導入を促進するよう確保することを妨げる障壁に対して、我々はより注力し、対処し続ける必要があることを示した。我々は、2025年までに、我々の地域がロードマップの目標を達成するための道筋を示す概要報告書の提言を承認する。

貿易・投資

 我々は、パンデミックの影響緩和に貿易が果たす極めて重要な役割を強調する。貿易は全ての人々の発展と将来の繁栄のための柱となるべきである。我々は、経済的な包摂性の推進を含む貿易の恩恵を人々が共有できるようにしたい。我々は、重要な国際的・地域的課題に対処する上で貿易が果たし得る貢献を再確認する。

 アジア太平洋が世界で最もダイナミックで相互に連結した地域経済であり続けることを確かなものとするために、我々は、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性があり、かつ予見可能な我々の貿易・投資環境を確保するべく、共に作業を継続する。我々は、市場の開放を維持し、サプライチェーンの混乱に対処することにより、相互に恩恵のある貿易関係を促進し、貿易摩擦を減少させるという我々のコミットメントを再確認する。我々は、好ましい貿易及び投資環境を育成するため、公平な競争条件の確保に引き続き取り組む。

 我々は、市場主導による地域における経済統合を推し進める。我々は、人々及びビジネスに利益をもたらす地域の貿易協定の締結、批准、実施及び改訂に向けた進行中の取組を支持する。この文脈で、我々は、質の高い包括的な地域的取組に貢献するために、リマ宣言の実施に則したAPECアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のアジェンダを前進させる。我々は、ABACがFTAAPの実現を重要な経済的な優先事項とみなしていることにも留意する。

 我々は、地域の継ぎ目のない連結性を促進するために、開かれた、安全かつ強靭なサプライチェーンを構築及び維持するため、我々のビジネスを支援し続ける。我々は、関連するAPECの作業に基づく、質の高いインフラ開発・投資を通じた地域、サブリージョン及び遠隔地の連結性向上の重要性を再認識する。我々は、「APECサプライチェーン連結性枠組行動計画2017-2020」の最終評価を歓迎する。我々は、デジタル時代の連結性協力の強化等を通じたAPEC連結性ブループリントの実施にコミットしている。

世界貿易機関

 APECは、WTOをその中核とするルールに基づく多角的貿易体制(MTS)に対する積極的な支持の長い歴史を誇りとする。MTSは、我々の地域の並外れた成長の触媒であり、我々は、それを向上するために共に取り組んでいく。我々は、即応的で、意義のある、活性化したWTOを求めている。我々は、21世紀に標準を合わせた貿易ルールの現代化のために、WTO及びその加盟国を支援しなければならない。我々は、共に、第12回WTO閣僚会議(MC12)が成功し、具体的な成果が得られるよう、建設的に関与し、協力していく。

 MC12の優先事項として、MTSが新型コロナウイルス感染症パンデミックという人類の苦難に対処することを支援し続け、回復を促すことができることをWTOが示す機会があることを我々は認識している。我々は、新型コロナウイルス感染症パンデミックに迅速かつ効果的に対応し、回復を加速することを容易にする、実際的かつ効果的な閣僚の成果を求める。我々の優先事項は、ワクチンを含む必要不可欠な医療品の製造、流通、サプライチェーンの円滑化を支援することを含む。我々は、新型コロナウイルス感染症ワクチンに関する一定の知的財産権保護の一時的な適用免除を含む、テキストベース交渉を支援するために、ジュネーブにおいて、積極的かつ緊急性を持って取り組んでいく。

 我々は、SDG14.6に則り、有害な漁業補助金に関する効果的な規律の交渉を行う決意を改めて表明し、MC12までの数週間の間に包摂的かつ意味のある成果の合意を求める。

 農業は、世界の食料安全保障及び持続可能な経済発展を確保する上で重要であるにもかかわらず、国際的な貿易において最も保護されている分野の一つである。我々は、WTO農業協定20条に記載のある改革過程の継続及び既存のマンデートにおいて想定されているとおり、助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減することを目指し、MC12において、我々全体の関心事と機微を反映した、農業に関する有意義な成果の必要性を認識している。

 我々は、交渉及び議論の成果を進展させる既存の多国間による前向きな役割を認識している。関連の共同声明イニシアティブ(JSIs)に参加しているAPECメンバーは、サービスの国内規制に関する交渉のMC12までの妥結、電子商取引、中小零細企業(MSMEs)、開発のための投資円滑化におけるJSIsのMC12までの実質的な進展を求める。我々は、「貿易と女性の経済的能力強化に関する共同宣言」を承認したAPECエコノミーによる、貿易及びジェンダー平等の推進を支援するための、MC12における野心的な成果を上げるための取組に留意する。

 我々は、WTOの監視、交渉及び紛争解決制度の改善に関する率直で建設的な議論を継続した。我々は、WTOの監視及び交渉機能を支援するための透明性向上の進展の重要性を含め、WTOの機能を改善するために必要な現在進行中の改革作業の支援を継続する。我々は、長期間の課題への対処が求められるWTOの交渉及び紛争解決機能の適切な運用を推進するために、WTOにおいて、より広範囲のWTO加盟国とも協働していく。我々は、WTO加盟国が、必要な改革の種類にかかる共通理解を追求するよう求める。

3. 回復のための包摂性及び持続可能性の向上

包摂的な成長

 今まで以上に、新型コロナウイルス感染症からの回復の一環として、我々の経済、金融及び社会政策及び我々の貿易・投資環境が機会の平等を促進し、全ての人々にとって働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)及び経済的な包摂性を推進するよう確保することは我々の責任である。

 我々は、労働・社会保護制度が、パンデミックの影響、より幅広い文脈での仕事及び雇用の性質の変化、世界的な労働市場の進化に対応できるよう努める。我々は、技能再教育、技能強化及び柔軟な生涯学習の機会の向上、雇用市場に参入する人々のための訓練機会の創出、専門的・学術的資格の流動性を支援する取組の奨励、当該分野におけるその他の能力開発活動の増加のための情報共有の強化を継続する。

 我々のエコノミーが第4次産業革命に適応するのに伴い、我々は、仕事の未来に関する課題を認識している。パンデミックは、既に急速に進んでいるイノベーションと技術的変化を加速させた。我々は、エコノミーに経済的包摂を実現するための政策を前進させ、仕事の未来に適応可能にする構造的改革の重要性を認識している。我々は、構造改革及び仕事の未来に関する「2021年APEC経済政策報告書(AEPR)」を歓迎し、エコノミーが同報告の提言を実施することを奨励する。

 中小零細企業(MSMEs)は、雇用及び経済成長の必要不可欠な基盤を提供しながら、地域全体で重要な役割を果たしており、我々は、地域及びグローバル市場への中小零細企業の参加を一層促進することに引き続きコミットする。この目的のため、中小零細企業のグローバル化のためのボラカイ行動アジェンダ研究報告書の最終評価の結果を歓迎する。特に中小零細企業のデジタル化や金融へのアクセスに関して、未だ残された課題がある。

 我々は、政府の責任と公的信用を損ない、経済成長を妨げる汚職がもたらす深刻な脅威を強調する。危機の際には、汚職がより蔓延し、復旧や復興の努力を弱める可能性がある。汚職を撲滅し、将来的にAPECエコノミーを強化するために、当局間における効果的で適時の情報共有と協力を奨励する。我々は、腐敗の防止に関する国際連合条約、腐敗防止に関する北京宣言及び腐敗防止・透明性確保に向けたサンティアゴ・コミットメントの実施の円滑化に取り組む。我々は、国境横断的な腐敗に対抗するため、国内法に従って、汚職違反者及び彼らの資産の安全な逃避先を否定する我々のコミットメントを再確認する。我々は、腐敗を防ぎ、免責を終わらせるための基礎として、地域全体にわたり透明性、説明責任、高潔性及び腐敗拒絶の文化を促進する。我々は、適切な場合には、他の国際機関、民間分野及び市民社会との協力も含め、実際的かつ一致団結した取組を実施し、お互いに利益を得ることにコミットする。女性のエンパワーメントを阻害し、経済発展のための機会を減少させる汚職への対処を続けていく。

 パンデミックは、我々の地域の多様なバックグラウンドを持つ女性や少女に過分な影響を与え、女性の経済的エンパワーメントに対する新たな課題や障壁を生み出した。パンデミックからの回復は、女性のリーダーシップ及びエンパワーメントを支援するための機会を創出する。我々は、「2019-2030女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ」の完全かつ迅速な実施を含む、「2021年女性と経済フォーラム」でのコミットメントを再確認する。我々は、ロードマップの行動分野を再確認し、APECフォーラで非常に多くの活動が行われていることを記した「ラ・セレナ・ロードマップ」の実施計画報告書を認識する。我々は、資本と市場への女性の完全かつ平等なアクセス、スキルと能力構築、リーダーシップの機会、発言力と行動力、革新的な技術、労働力及び性別データ収集・分析を通じた女性の経済的エンパワーメントの促進を目指すAPECの活動に強く期待している。

 APECは、未活用の経済的潜在力を持つ他の集団の経済的エンパワーメントにも特別な注目を払ってきた。本年は、先住民族や地方及び遠隔地に住む人々等も含まれている。この取組には、先住民族自身の間での対話を通じて、経済的エンパワーメントを促進することも含まれていた。APECの取組は、これらのグループが、パンデミックの間に悪化した経済社会状況の影響を受けやすいことを示した。我々は、政策的な対応につながる分類データの収集・分析、電子商取引を通じたこれらグループの機会の促進、食料安全保障の強化、経済的強靭性を維持するための伝統的知識の役割の重要性を強調する。

持続可能な回復及び気候変動

 我々は、気候変動に対処するための緊急かつ具体的な行動の必要性を認識する。我々は、気候変動に備えた将来の世界経済への移行の経済的利点を認識し、この点において、ネット・ゼロ又はカーボン・ニュートラルのコミットメントを評価する。気候変動に対処するためには、APECの関連委員会及びサブ・フォーラを含む学際的かつ横断的な手法が必要となる。

 APECの貢献は、排出量を削減するための気候変動への取組に貢献し、環境課題に対処する経済政策に関する取組を含む。我々は、2022年APEC経済政策報告書の議題が「構造改革と経済的ショックからのグリーンリカバリー」であることを歓迎する。この議題は、各エコノミーが情報を共有し、即応的でグリーンな政策アプローチと、包摂的で持続可能な成長への貢献を比較するための基盤を提供するものである。

 貿易政策は、持続可能な経済開発を追求し、低排出で気候変動に強いエコノミーを支える物品やサービスへのアクセスを向上するための効果的なツールでもある。我々は2012年APEC環境物品リストの参照のための更新を歓迎する。我々は、2012年のリストの実施に関するAPEC評価、これらの製品の貿易における成長、そしてグリーン成長及び持続可能な経済発展の目標に向けたAPECの貢献を歓迎する。環境物品及び技術が進化し、広範な分野に及ぶことに留意し、我々は、更なる作業指針を提供する観点から、自発的かつ拘束力のない参照リストを生み出す可能性のある提言を作成し、また、参照目的のAPEC環境物品リストをHS2022に更新するよう実務者に指示する。我々は、非関税措置が環境物品・サービスの貿易に与える影響及びより持続可能なサプライチェーンの発展を支えるその他の規制措置について、さらなる議論を行うことを奨励する。

 我々は、環境サービスに取り組むというAPEC首脳のコミットメントを再確認し、これらサービスが、環境悪化を予防し、保護し、改善するために今まで以上に重要であることに留意する。我々は、環境サービスに関するグローバルな議論に我々の地域が貢献するものとして、環境及び環境関連サービスの参照リスト(附属書2)を歓迎し支持する。自由化、円滑化及び協力の支援を含む、環境又は環境に関連するサービスにおける貿易増加の方法に関する議論を前に進めるためのMRTの実務者への指示を再確認する。

 我々は、2010年にAPEC首脳が、必要としている人々に必要不可欠なエネルギーサービスを提供することの重要性を認識しつつ、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し、段階的に廃止することにコミットしたことを想起する。この目標を達成するために、我々は加速度的に取組を続けていく。これに関連して、我々はMRT2021において、そうする立場にある加盟エコノミーに対して、非効率な化石燃料補助金の自主的な停止を追求するための選択肢を探求し、その進捗を11月に閣僚に報告するよう実務者に指示することを決定した。我々は、非効率な化石燃料補助金の自主的な停止を追求するために加盟エコノミーがとりうる、実務者から報告された選択肢を歓迎する。我々は、加盟エコノミーに対し、将来の実施を促進するため、2022年に議論を前進させることを求める。我々は、実務者に対し、この作業を支援するための追加的な能力開発活動を特定することを奨励する。我々は、既に自主的なピア・レビューを完了したAPEC加盟エコノミーの取組に感謝し、他のエコノミーにもこのプロセスへの参加を求める。

 我々は、安定した多角的なエネルギー供給が持続可能な経済開発の実現に果たす必要不可欠な役割を認識している。我々は、化石燃料への依存度を低減する持続可能なエネルギー移行の一環として、再生可能なエネルギー及びその他の環境上適正な技術に投資するとともに、地域のエネルギー強靭性、エネルギーアクセス及びエネルギー安全保障を支援するための協力を継続する。我々は、安定したエネルギー市場と、クリーンエネルギーへの移行を支援することの重要性を認識する。

持続可能な資源管理

 APEC地域は、環境悪化、自然災害、海面上昇及び生物多様性の損失によって増々影響を受けている。我々は、合法的に伐採された林産物の貿易促進及び違法伐採とその関連取引への対応にコミットする。我々は、地域の森林面積を少なくとも2千万ヘクタール増加させるというAPEC全体の意欲的な目標の成果を歓迎する。我々は、持続可能な循環型グリーンエコノミーの取組の潜在的な経済成長力を評価し、この分野の投資、研究及び経済・技術協力の強化を支援する。

 太平洋は、人々をつなぎ、経済発展を可能にし、地球の生物多様性及び健康を支え、世界の食料安全保障を支える重要な役割を果たしている。我々は、海洋・沿岸資源の持続可能な管理及び保全を支持する。我々は、「APEC海洋ゴミロードマップ」及び「IUU(違法・無報告・無規制)漁業と戦うためのロードマップ」の実施にコミットする。我々は、IUU漁業と闘う上でのそれらの取組の重要な役割を再確認しつつ、IUU漁業を防止、抑止、排除するための寄港国の措置に関する合意(PSMA)の実施原則に基づき、強固で効果的な措置を実行する。

 今も続く新型コロナウイルス感染症の影響は、我々の地域の食料サプライチェーン全体に及んでいる。我々は、人々の健康及び豊かさ、そして経済の成功に欠かせない、機能的かつ持続可能な食料システムを実現するための画一的なアプローチはないと認識している。我々は、食品ロスや廃棄物の削減に向けた取組、農業バイオテクノロジーにおける革新の促進、食料安全保障における持続可能性を支えるその他の方法の特定を支援する。我々は、デジタル化、イノベーション、生産性、包摂性及び持続可能性に焦点をあて、全ての人々にとって、十分で、安全で、栄養があり、アクセスしやすく、手の届く価格の食料を提供するという目標のためにAPECエコノミーが共に追求すべき活動及び目標を特定する「2030年に向けた食料安全保障ロードマップ」を歓迎する。

4. イノベーション及びデジタルによる回復の追求

 我々は、科学、技術及びイノベーションが、新型コロナウイルス感染症からの地域の回復を支え、将来の変化やショックのために経済を備え、良質な雇用を創出するために重要であると認識している。我々は、技術革命及び産業転換によってもたらされた歴史的な機会をとらえ、生産性を高めるための努力を倍加させ、科学技術の発展・適用のために、開かれた、公正で、包摂的な環境を育む必要がある。

 デジタルトランスフォーメーションの恩恵が全ての人々やビジネスに行き渡り、誰一人取り残さないことを確保するために、デジタル格差を縮小することが重要である。我々は、イノベーションを促進し、人々やビジネスが、特にスタートアップ企業と中小零細企業が、相互につながった世界経済に完全に参加するために必要なデジタルツールやインフラにアクセスできることを確保する能力開発に投資する。我々はスマートシティに関する取組にも留意する。APECは、混乱、状況の変化及び仕事の未来に適応できる敏捷な労働力を育成するためのデジタル技術開発及び生涯学習のためのベストプラクティスを引き続き共有すべきである。

 我々は、新型コロナウイルス感染症の中でAPECメンバーがとった、電子決済や電子文書を紙の文書と同等の法的効力を持つものとして認めることを含む、ペーパーレスによる貿易円滑化措置を定着させる取組の進展を歓迎する。ショックに対するサプライチェーンの強靭性を高め、ビジネスと政府のコストを削減するため、我々は、国境の手続きにおけるデジタル化及びシングルウィンドウの相互運用性に向けた作業を継続し、港湾協力を強化し、「WTO貿易円滑化協定」の完全な実施を加速させるこの取組にコミットする。我々は、全ての貿易実務者がAPECの税関当局と電子的に関与することができるように、税関手続きや法律の枠組を更新及び改善することに役立つ「ペーパーレス貿易に関するガイドライン」を歓迎する。

 我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらす前例のない保健・経済課題に対処する上でのデータの重要性を認識している。また、我々は、経済成長及び繁栄のための必要不可欠な基盤として、情報通信技術を利用するための、アクセス可能で、開かれた、相互運用可能で、信頼できる、安全な環境の必要性を認識する。我々は、新型コロナウイルス感染症による保健・経済への影響を緩和するため、データの流れの円滑化及びデジタル取引における消費者とビジネスの信頼強化に向けた協力を行う。

 我々は、適切なプライバシーの保護を確保しつつ、経済成長及び公共の利益を向上させるためのデジタル経済・技術の機会の活用に向けた相互支援にかかる我々のコミットメントを確認する。我々は、新しい技術・エコシステムを支える政策、計画及び事業を発展させながら、情報共有、協力及び相乗効果を特定するための取組を支援する。

 我々は、デジタル化した貿易の円滑化及び相互運用性の促進を含む包摂的な経済成長への影響が最も大きい分野における行動を優先し、「APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップ」の実施を加速するよう改めて呼びかける。

5. 組織としてのAPECの強化

 我々は、その構造及びガバナンスが、未来志向で、プトラジャヤ・ビジョン2040を実施するとの目的に適したものであることを確保する組織としてのAPECの継続的な改善に進んで取り組む。我々は、APECの合理化に向けた2021年の進捗に留意し、APECの委員会及びサブ・フォーラが効率的で、効果的で、意義があり、即応的かつ説明責任があることを確保するための努力を継続することを要請する。

 我々は、協力、能力開発、フォーラ間協力、APECと地域・国際機関とのエンゲージメントの重要性を再確認する。我々は、APECの取組がステークホルダーの幅広い見解と展望を継続的に考慮することを確保するよう努力する。

 我々は、2021年のAPECの作業に関する高級実務者会議議長の報告書を承認する。我々は、閣僚に対する貿易・投資委員会(CTI)年間報告書を承認し、経済・技術協力に関する高級実務者報告書に留意する。我々はまた、ABAC議長報告書に留意する。我々は、APEC事務局長が2022年から2024年の今後3年にわたって留任することを歓迎する。我々は、2022年APEC予算を承認し、一般及び特別サブファンドへの拠出を含むメンバーの貢献に感謝する。

 我々は、2021年のAPECを主催したニュージーランドに感謝し、タイが主催する2022年のAPECを楽しみにしている。

ハウミエ、フイエ、タイキエ。

共に参加し、共に取り組み、共に成長する。

附属書の提案

1. APECサービス競争力ロードマップ中間評価概要報告書

2. 環境及び環境関連サービスの参照リスト