データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2021年APEC首脳宣言

[場所] テレビ会議
[年月日] 2021年11月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳は、2021年11月12日に集まった。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、命を奪い続け、生活に影響を及ぼし続けている。新型コロナウイルス感染症のパンデミック及びその変異株の進化を続ける性質は、アジア太平洋地域における現行の不確実性及び不均一な経済的回復を生み出す。この最も深刻な問題への対応が、2021年の最優先事項であった。これに関して、我々は成長が早く立ち直ることを確保し、世界経済の回復を促進するための措置をとっている。

 本年、アジア太平洋経済協力(APEC)のエコノミーは、一致団結し、喫緊の取組を通じパンデミックにより作り出された差し迫った危機に対応し、そして、より革新的、包摂的かつ持続可能な方法で我々の地域が成長に戻れるように我々の協力を強化するというコミットメントを再確認した。

新型コロナウイルス感染症への対応

 7月、我々は新型コロナウイルス感染症のパンデミックに対するAPECの対応について協議するために集まった。我々は、新型コロナウイルス感染症ワクチンへの広範なアクセスにおける不平等を認識しており、よって、安全で、有効で、品質が保証され、かつ手の届く価格の新型コロナウイルスワクチン、診断薬、治療薬、及びその他の関連する必要不可欠な医療品への公平なアクセスを引き続き強く支持する。皆が安全になるまでは誰も安全ではないため、我々は、国際的な公共財として、人々が新型コロナウイルス感染症に対する広範な免疫獲得を確保することを決意している。ワクチンの生産及び供給を拡大することは優先事項であり続ける。

 この文脈において、我々は貿易と投資が、新型コロナウイルス感染症の影響に対処し、我々の経済がより力強いものに回復することを確保するための重要な成功要因であることを示した。APECメンバーは、引き続き以下に取り組む:

 − 相互に合意した条件に基づくワクチン生産技術の自主的な移転等を通じ、公平にワクチンを共有し、ワクチンの生産及び供給を拡大する国際的な取組を支援する。

 − 通関手続におけるベストプラクティスの実施及びデジタル化された貿易円滑化措置の取込みを含めた、新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連する必要不可欠な医療品の貿易を円滑化する。

 − パンデミックへの対応として実施されている国境措置の諸形式に関する理解と透明性を構築するとともに、不必要な輸出規制及びその他の非関税障壁の撤廃を奨励する。

 − 新型コロナウイルス感染症ワクチン及び関連する必要不可欠な新型コロナウイルス感

染症医療品の価格を、自主的に低下させる。

 − 「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」が、より多くの新型コロナウイルス感染症ワクチンの研究、開発、投資、生産及び分配のための取組を支援することを確保する。

 − 今月末に行われる、第12回世界貿易機構(WTO)閣僚会議において、新型コロナウイルス感染症に対する、実際的で、効果的で、未来指向な多国間対応を模索する。

 アジア太平洋の成長の大部分は、ビジネス、観光、そして教育のための人々の越境移動の能力に刺激されてきた。新型コロナウイルス感染症パンデミックによる人々の越境移動の制限の結果、実現しなかった経済活動の損失は非常に大きい。新型コロナウイルス感染症の蔓延を防止するための取組を損なうことなく、我々それぞれが再開を検討するに当たり、我々は、情報共有及び航空機及び船舶乗務員に関係するものや、新型コロナウイルス感染症の検査及びワクチン証明書を含む、人々の越境移動に関連する協調措置の促進において、APECがより大きな役割を担うことを支持する。我々は、2022年の具体的な成果のために取り組む。

 我々は、新型コロナウイルス感染症パンデミックへの対応及び将来の保健上の脅威に備える保健システムを強化している。我々は、現行の必要不可欠な保健サービスの維持、デジタルソリューションの改善、向上した保健公平性の追求及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成という我々の目標の重要性を認識している。我々は、協調的かつセクター横断的アプローチと協議を通じた、我々の対応の中心に人々を置く、新型コロナウイルス感染症に関するより深い地域的及び国際的協働を支持する。

回復への道のり

 危機によりもたらされた保健の課題への喫緊の対応は依然として必要不可欠であるが、我々は現在、今後何年かにわたり我々が直面する重大な経済、社会及び環境の課題への政策的対応についても協力を行っている。我々は、我々の全ての人々を包摂し、より持続可能な地球を支え、アジア太平洋地域を世界で最もダイナミックかつ相互に連結された地域経済とし続ける経済回復の機会を有している。

 我々のマクロ経済政策は、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響への対応、雇用と生活の保護、必要な公的サービスへの支出及びパンデミックにより最も影響を受けた人々への支援において鍵となる役割を果たした。新型コロナウイルス感染症の危機は終局から程遠いが、我々は、新型コロナウイルス感染症の負の結果に対処し、長期的な財政の持続可能性を維持しつつ経済回復を支えるため、全ての利用可能なマクロ経済的手段を使うことを決意している。我々の経済回復は、イノベーション、ダイナミズム及び向上した生産性を支える、安定した、包摂的、持続可能かつ強靱なマクロ経済環境の上に築かれる。この点につき我々は、APEC財務大臣の取組、特に、より財政的に統合された、透明性のある、強靱かつ連結したAPECという目標の達成に寄与する「セブ行動計画の実施に係る新戦略」を歓迎する。

 我々は、10月に、より安定的で公正な国際課税制度に関する歴史的合意に達したことを歓迎する。我々は、APEC地域における租税確実性の促進及び課税回避や課税逃避への対処への我々のコミットメントを強く再認識する。

 構造改革も経済回復を推進する重要なツールとなる。我々は、包摂的で、強靱で、持続的かつイノベーションフレンドリーであることを目指した、成長に焦点を当てた改革における協働をもたらす「構造改革のためのAPEC促進アジェンダ(EAASR)」を歓迎する。

 パンデミックは、いかにサービス分野の構造改革が、経済成長及び経済包摂の強力な成功要因となり得るかを浮き彫りにした。我々は、地域内でのサービス競争力の向上及びサービス市場へのアクセスのための、より開かれた、予見可能な環境の実現において、APECが一様でない進捗を遂げたことに留意する。我々は、2025年までの「APECサービス競争力ロードマップ(ASCR)」の完全な実施を目指し、中間評価に対応するための取組を加速させる。

 我々は、我々のエコノミー間で、デジタル導入や変革の顕著な加速を目の当たりにした。この巨大な成長の潜在能力を持続させるため、我々は、「APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップ(AIDER)」の実施を加速し、デジタルインフラを開発し、新しい技術の開発と適用を推奨し、デジタル格差を縮小することを含む、開かれた、公平かつ包摂的なデジタルビジネス環境に向かって取り組む。また我々は、デジタルの連結や包摂の支援のための、関連する国内政策及びプラクティスに関する構造改革の実施及び情報共有の向上に向け邁進する。我々は、地域におけるデジタルシステムやツールの相互運用可能性の重要性を認識する。また我々は、データの流通の円滑化のために協力するとともに、デジタル取引における消費者とビジネスの信頼を強化する。

 貿易は、全ての人々の開発及び将来の繁栄の柱であるべきである。現在の非常な混乱の中で、WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制は、経済回復において重要な役割を果たしうる。我々は、MC12の成功と具体的な成果を挙げることを確保するため、建設的に関与していく。

 我々は、自由で、開かれた、公正で、無差別で透明性があり、かつ予見可能な貿易・投資環境を支援するルールを制定するに当たっての、WTOの役割をより強化するため協力する。このアプローチは、我々の長きにわたるWTOへのコミットメントの中核にある。

 我々は、特に、WTOの全ての機能の改善のために必要な改革を通じ、即応的で、意義のある、活性化したWTOの形成に共に取り組んでゆく。第12回WTO閣僚会合(MC12)より示された機会を活用し、WTOが21世紀の我々のエコノミーに恩恵をもたらすことを確保するための取組を推し進めるために、我々のエコノミーは、より広範なWTO加盟国と協働する。

 我々は、市場主導による地域における経済統合を進める。我々は、人々及びビジネスに利益をもたらす地域の貿易協定の締結、批准、実施及び改訂に向けた進行中の取組を支持する。これに関連して、我々は、質の高い包括的な地域的取組に貢献するために、リマ宣言の実施に則したAPECアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のアジェンダを前進させる。我々は、ABACがFTAAPの実現を重要な経済的な優先事項とみなしていることにも留意する。

 我々は、困難な状況下であっても物品の流通が続くことを確保する取組を強化する。APECの、強靭なサプライチェーン、質の高いインフラ開発及び投資、そして港湾協力は、この取組の必要不可欠な要素である。我々は、物理的、制度的及び人と人との連結性をさらに改善するため、「APEC連結性ブループリント」の実施を続ける。我々は、税関協力の強化と国境プロセスのデジタル化及びペーパーレス貿易の導入の促進のために行われているAPECの取組に励まされている。この取組は、WTO貿易円滑化協定の履行に向けたAPECの取組の加速に寄与する。

 我々は、我々の回復のための取組に、汚職、詐欺、荒廃及び不正による深刻な脅威が及ばないことを確保するよう努める。我々は、汚職違反者及び彼らの資産の安全な逃避先を否定し続ける。我々は、権限ある当局間の、効果的で、実際的かつ適時の協力にコミットしている。我々は、汚職防止及び汚職との闘いの基礎として、透明性、説明責任及び高潔性を促進する。

持続可能性及び包摂性への我々のコミットメント

 2021年、世界は気候変動の影響により生じる、未曾有の課題に立ち向かい続ける。我々は、気候変動に強い将来の世界経済への移行のための喫緊かつ具体的な行動の必要性を認識するとともに、ネット・ゼロ又はカーボン・ニュートラルのコミットメントを評価する。我々は、我々の経済及び環境政策が相互に支え合うことを確保するために協働することにコミットする。  

 APECは、化石燃料への依存度を低減する持続可能なエネルギー移行の一環として、再生可能エネルギー及びその他の環境上適正な技術の適用のための地域の能力強化について一定の成果を挙げている。これに関連して、我々は、地域におけるエネルギー強靱性、アクセス及び安全保障を支援するための協働を継続する。我々は、安定的なエネルギー市場及びクリーンエネルギーへの移行支援の重要性を認識する。

 これを基に、我々は、気候変動に対処するためのアイディア及び能力構築のインキュベーターとしてのAPECの役割を活用することにコミットする。我々は、関連するAPECのワークストリームにおける気候変動に関する行動をより統合してゆく。

 我々は、誰一人取り残されないように、全ての人々の豊かさ及び安全、そして彼らの公平な経済への参画を支援する必要がある。中小企業、女性及びその他の未活用の経済的潜在力を持つ人々への新型コロナウイルス感染症の過分な影響を認識し、我々はまた、より包摂的な経済回復を実現するための行動をとっている。「女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ」は、女性のエンパワーメントを前面に打ち出しており、APEC全体で非常に多くのイニシアチブが進行している。我々は、ロードマップの完全かつ加速的な実施を支持する。APECは、未活用の経済的潜在力を持つその他の集団の経済的エンパワーメントに、特別な注目を払ってきた。本年は、先住民族や地方及び遠隔地に住む人々等も含まれている。我々は、グローバル市場へのアクセス改善を含め、彼らの経済的機会へのアクセスを確保するため、これらの関連分野における協力を引き続き深め、経済関係者の非公式経済から公式経済への移行を奨励する。  

 我々は、中小零細企業を含む我々の全ての企業へ、彼らがこの危機を乗り越えるため、前例にないレベルの支援を行ってきた。我々は、起業に対する構造上の障壁への対処及び能力構築の強化を通じ、中小零細企業へのデジタル・エンパワーメントの支援を続ける。また、我々は、労働市場参加及び仕事の未来に対するパンデミックの影響に対応するための取組を深化させる。

 デジタル連結性及びイノベーションは、包摂的で、強靱かつ持続可能な回復に向けた我々の取組全般にわたり極めて重要である。我々は、デジタル技能の促進、革新的な業務方法の採用の推奨、デジタルツール及びデジタルインフラへのアクセス拡大及び中小零細企業やスタートアップによる新規及び新興の技術とデジタルエコシステムの活用確保を通じ、デジタル格差を縮小し続ける必要がある。

 我々は、「2030年に向けた食料安全保障ロードマップ」を歓迎する。これは、全ての人への、十分で、安全で、栄養があり、入手しやすく、手の届く価格の食料を提供するという我々の目標に向けたAPECの取組の指針となる。我々は、食品ロスや食品廃棄の削減に向けた取組を支持する。また、我々は、違法・無報告・無規制(IUU)漁業と闘うためのAPECロードマップを実施するための具体的な措置をとり続ける。

今後の展望

 昨年我々は、我々の今後20年の取組の指針となる「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」を採択した。我々は、ビジョンの実施の鍵となるアオテアロア行動計画を採択する。これは、我々の地域が重大な困難に直面している中、APECに新たなモメンタムをもたらす。これは、我々が個別のアプローチを共有し、可能な分野では協働し、新たな課題に対処するためのアイディアに意欲的かつオープンであることへの確信を示している。

 アオテアロア行動計画は生きた文書となることを企図されている。我々は、我々の進捗を監視し、5年ごとに更新を行う。これらは全て、全ての人々と未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体を実現するという我々のビジョンを追求するためである。

 我々は、2021年APEC閣僚会合及び貿易、構造改革、食料安全保障、保健、女性と経済、中小企業及び財政分野での2021年分野別担当大臣会合の成果を歓迎する。

 我々は、ニュージーランドが2021年APECを主催したことに感謝するとともに、タイの主催する2022年APECを楽しみにしている。

ハウミ・エ、フイ・エ、タイキ・エ(マオリ語)

共に参加し、共に取り組み、共に成長する

附属書:アオテアロア行動計画