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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アオテアロア行動計画(Aotearoa Plan of Action)

[場所] テレビ会議
[年月日] 2021年11月12日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

(参考)アオテアロア(Aotearoa)はニュージーランド(島)のマオリ語呼称で、「白く長い雲がたなびく土地」を意味する。

 我々のビジョンは、全ての人々と未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体とすることである。

 APECプトラジャヤ・ビジョン2040を実施するに当たって、APECエコノミーは、1994年のボゴール目標及び1995年の大阪行動指針を含む、APECの設立文書を基礎とする。APECエコノミーは、APECのミッションとその自主的、非拘束的、かつコンセンサスの形成という原則に引き続きコミットし、また、APECエコノミーは、平等なパートナーシップ、共有された責任、相互尊重、共通の関心及び共通の利益の精神をもって、APECプトラジャヤ・ビジョン2040を推し進める。

 このアオテアロア行動計画は、我々がいかに我々の進捗を評価するかに加えて、我々のビジョンの達成に向けた個別及び共同の行動を提示するものである。エコノミーは、我々のビジョンの全ての要素にわたって、包括的で、均衡が取れた、意義あるものであり続けることを確保するために、時間をかけてアオテアロア行動計画を見直すとともに適合させていく。それは、生きた文書となることが意図されている。このアオテアロア行動計画は、APECプトラジャヤ・ビジョン2040を実施するためのAPECの他の取組を妨げるものではない。

3つの経済的推進力

貿易と投資

目的:我々は、アジア太平洋が、世界で最もダイナミックで相互に連結した地域経済であり続けることを確保するために、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性のある、予見可能な貿易・投資環境の重要性を認識し、実現するために共に作業を継続する。

● 進捗の評価:APECの貿易・投資環境は、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性のある、予見可能なものである。

● 個別行動:エコノミーは、それが自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性のある、予見可能なものとなるように、貿易・投資を自由化するための行動を取る。

● 共同行動:エコノミーは:

 ○ 不必要な障壁を減らし、貿易円滑化を強化し、規制改革を促進することにより、物品の貿易の自由化を進める;

 ○ APECサービス競争力ロードマップの実施等により、サービスの自由化、円滑化及び協力を進める;

 ○ 投資円滑化及び自由化に関する取組等といった措置を通じて、質の高い投資の流れを推進する;

 ○ 特に経済開発及びイノベーションを促進するための能力構築を提供すること等により、十分かつ効果的な知的財産権の保護及び施行を推進する;そして

 ○ 貿易措置及び政策を通じてエコノミーの透明性を向上させることにより、貿易の予見可能性及び開放性を高める。

目的:我々は、良く機能する多角的貿易体制を実現し、国際貿易の流れの安定性と予見可能性を促進するに当たり、WTOの合意されたルールへの支持を再確認する。

● 進捗の評価:APECメンバーの既存及び将来のコミットメントの効果的かつ透明性のある実施を通じて、WTOルールの適用範囲の拡大を含め、地域における国際貿易の流れの成長がより安定し予見可能なものとなる。

● 個別行動:エコノミーは、自らのWTOコミットメントを実施する。適切な場合には、エコノミーは、自らの実施を加速し、その範囲を超えて、貿易の流れの安定性及び予見可能性を更に推進するための方策に取り組むことも模索する。

● 共同行動:エコノミーは:

 ○ WTOをその中核として、良く機能する多角的貿易体制の実現を促進する新たなアプローチを推し進めることにより、アイディアのインキュベーターとしてのAPECの役割を支える;

 ○ 自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性のある、予見可能な貿易・投資環境を実現するために、WTOにおける交渉の進捗を支持する;

 ○ 有害な漁業補助金や農業交渉といった、今後期待される分野の交渉から生じるWTO規律の実施を支援する;

 ○ 適切な場合には、WTOの全ての機能に及ぶ必要な改革に向けたWTOメンバーの議論を奨励する;そして

 ○ 透明性及び通報義務等、WTOルールの実施及び遵守を支援するための能力構築プログラムを推し進める。

目的:我々は、高水準で包括的な地域での取組に貢献するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のアジェンダに関する作業等を通じて、ボゴール目標及び市場主導による地域における経済統合を更に推し進める。

● 進捗の評価:市場主導かつ高水準で包括的な地域の取組の発展を通じて、ボゴール目標の未達成の取組を推し進めることによって、地域において経済統合が起きる。

● 個別行動:エコノミーは、必要に応じて、高水準で包括的な貿易協定の締結、批准、履行及び見直しに向けた現行の取組を引き続き支持する。

● 共同行動:エコノミーは、

 ○ ボゴール目標の未達成の取組を完了させ、市場主導で地域における経済統合を更に深化させる;

 ○ リマ宣言と整合的な形で、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)のアジェンダに関する取組を効果的に推し進める;

 ○ 地域における貿易・投資の課題に関して、アイディアのインキュベーターとしてのAPECの主要な役割を強化する;

 ○ 高水準な地域の取組の発展及びその参加のための能力構築プログラムを推し進め、ベストプラクティスに関して協力する;そして

 ○ 高水準で包括的な取組に貢献する、地域における貿易協定の全ての章において一致と相違する分野に関する議論及び研究を行う。

目的:我々は、継ぎ目のない連結性、強靱なサプライチェーン及び責任ある企業行動を促進する。

● 進捗の評価:継ぎ目のない連結性、強靱なサプライチェーン及び責任ある企業行動を促進するために、APECエコノミーは、物理的、制度的及び人と人との連結性を強化する。

● 個別行動:エコノミーは、継ぎ目のない連結性、強靱なサプライチェーン及び責任ある企業行動を促進するための手段を発展させ、政策を採用する。

● 共同行動:エコノミーは、

○APEC域内における連結性を強化し、強靭なサプライチェーンの構築や、ビジネスに自らのサプライチェーンをより良く理解してもらうための協力等を通じて、APEC連結性グループリントを実施する;


 ○ 以下の取組等により、全ての人々のために貿易及び投資円滑化を促進する:

  i. WTO貿易円滑化協定を完全に実施し、適切な場合には、それを強化することを追求する;

  ii. 国際的に認められた基準の適用によって促進される国境手続のデジタル化に向けて取り組み、税関協力を強化し、港湾協力を拡大する;そして

  iii. 標準化、認定、計量、適合審査及び市場監視を包含する、効果的な基準及び適合性制度の採択及び改善;

 ○ 透明性のある規制環境を創出し、対話を推進し、そしてライフサイクルコストの観点から、アクセスが可能で、持続可能で、支払い可能な、質の高いインフラ開発・投資を可能とするベストプラクティスを共有することにより、主要なインフラ・ギャップに対処し、連結性を向上させる;

 ○ 地域におけるデジタル連結性を向上させる;

 ○ 観光業界、航空業界及び同様に影響を受けるセクターを強化するために、特にパンデミックに関連した保健及び渡航措置が変化するという文脈において、人々の安全な越境移動を促進する措置に関して推進及び協力する;

 ○ 責任ある企業行動を促進するために、特に民間分野とのマルチステークホルダー協力を強化する;そして

 ○ 物理的、制度的及び人と人との連結性を向上させるために、能力構築を推進する。

イノベーションとデジタル化

目的:我々は、イノベーションを促進し、生産性及びダイナミズムを向上させるために、構造改革及び健全な経済政策を追求する。

マクロ経済政策:

● 進捗の評価:地域における成長は、全ての人々にとって、安定し、持続可能で、強靭な、マクロ経済環境に基づくものである。

● 個別行動:エコノミーは、自らのマクロ経済政策、特に財政金融政策の強靭性及び持続可能性の継続的改善に取り組む。

● 共同行動:エコノミーは、

 ○ 新型コロナウイルス感染症等の世界的なパンデミックによるマクロ経済への悪影響に対処するために策定される健全な財政金融政策を含む、マクロ経済政策を促進し、回復を支援し、また、以下を通じて将来の成長に貢献する:

  i.情報及びベストプラクティスを共有する;

  ii.優れた規制措置及び規制協力を促進する;また

  iii.セブ行動計画等を通じて、コミットメントの実施を支援するために、能力を構築する;

 ○ 長期の強靭な発展及び将来の資金需要を支援するため、財政の持続可能性及び透明性を改善する;そして

 ○ サービス及びデジタル経済等、マクロ経済政策に関連する課題について、関連するAPECフォーラ間で協働する。

構造改革:

● 進捗の評価:地域は、イノベーションの継続的な成長によって促進される、生産性のプラス成長を維持する。

● 個別行動:エコノミーは、生産性及びイノベーションの向上を推進させるための最大限の潜在力を持つ経済分野に、自らの改革の取組を集中させる。

● 共同行動:エコノミーは:

 ○ 以下の取組等を通じ、構造改革のための強化されたAPECアジェンダ(EAASR)の4本の柱のもとで、構造改革に関する将来のAPECイニシアティブを推し進める;

  i. 情報及びベストプラクティスを共有する;

  ii. 優れた規制措置及び規制協力を促進する;また

  iii. EAASRのコミットメントの実施を支援するために能力を構築する;そして

 ○ サービス及びデジタル経済を含め、構造改革に関連する課題について、関連するAPECフォーラ間で協働する。

目的:我々は、全ての人々及びビジネスが、相互に連結された世界経済に参画し成長するための支援を行うために、市場主導で、デジタル経済及びイノベーションにより支えられた環境改善を推進する。

● 進捗の評価:APECのデジタル・イノベーション環境は、市場主導で、相互運用性の促進等を通じてより一層世界的に連結し、全てのAPECの人々及びビジネスが、イノベーション及びデジタル経済への参加を拡大し、そこから恩恵を享受することができる。

● 個別行動:エコノミーは、一貫性があり、相互運用性のある、無差別な、また、競争を促しイノベーションを促進する規制及び非規制アプローチを推進すること等により、ビジネス環境の改善を推進するための取組を強化する。

● 共同行動:エコノミーは:

 ○ 能力構築等を通じ、科学、技術及びイノベーション制度を活用することにより、強靭性及び回復を支援するための方法を特定する;

 ○ 成長、連結性及びデジタル変革を促進するための、新技術を採用する;

 ○ ベストプラクティスを共有し、また、競争を促しイノベーションを促進するデジタル経済のためのアプローチを促進する;

 ○ ビジネスがしやすく、包摂的で、開かれた、公正で、無差別なデジタル及びイノベーション環境を実現するための課題及び障壁に対処する;

 ○ 新たな技術の発展、適用、利用及び管理を奨励するベストプラクティスに関するフレームワーク及び合意等を通じ、革新的なデジタルビジネス環境を発展させるために協働する;

 ○ デジタル課題に関する、APECのマルチステークホルダーのエンゲージメントと協力を、特にビジネスとの間で深める;

 ○ 貿易・投資を円滑化するための施策、相互運用性のあるアプローチ及びデジタル技術の利用を促進する;そして

 ○ デジタル経済を活用するために、創造的産業を含む中小零細企業(MSMEs)を支えるエコシステムを推進する;そして

 ○ 新しい持続可能な運輸・移動技術及びサービスの特定及び統合を支援する。

目的:我々は、デジタル・インフラを強化し、デジタル変革を加速させ、デジタル格差を縮小させ、データの流通を促進するとともにデジタル取引に対する消費者及びビジネスの信頼を強化するために協力する。

● 進捗の評価:情報通信技術(ICTs)の利用における信頼性と安全性及び地域におけるデジタル・インフラへのアクセス可能性と支払い可能性、デジタル経済への参画の拡大、データの流れを促進するとともにデジタル取引に対する消費者とビジネスの信頼性を強化するために協力すること等により、地域は、エコノミー、ビジネス、人々の間のデジタル連結性を向上させる。

● 個別行動:エコノミーは、自らのデジタル・インフラを強化し、デジタル変革を加速させ、デジタル格差を縮小させ、データの流れを促進することに取り組むとともに、デジタル取引に対する消費者及びビジネスの信頼を強化する。

● 共同行動:エコノミーは、

 ○ APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップ(AIDER)の迅速かつ効果的な実施等により、APECの取組及びデジタル経済に関する能力構築を加速させる;

 ○ デジタル・インフラへのアクセスを促進し、デジタル技能及びデジタル・リテラシーの発展を支援する等、デジタル格差に対処するための措置に関して協力する;

 ○ サービス、製造業及び農業等の産業のデジタル化を支援すること等により、デジタル変革を加速させるために協力する;

 ○ デジタル経済のための国際・地域規範及び基準の発展及び実施、基準、規制及び制度の互換性を支援し、また、議論を支持し、電子商取引/デジタル貿易における規則及び規制に関するベストプラクティスを共有すること等により、電子商取引/デジタル貿易を促進する;

 ○ データの流通を促進するとともにデジタル取引に対する消費者及びビジネスの信頼を強化するために協力する;

 ○ デジタル環境における消費者保護の提供に関して協力する;

 ○ 電子取引及び、越境企業間の紛争におけるオンライン紛争解決に関するAPECの共同フレームワークを含む紛争解決等を通じ、国境を越えた企業間の取引を支援する、費用効果の高いメカニズムを促進する;そして

 ○ 貿易、金融、公共サービス及びヘルスケア等の分野における、包摂的かつ持続可能な成長のためのデジタル技術の実践的な適用を促す。

力強く、均衡ある、安全で、持続可能かつ包摂的な成長

目的:アジア太平洋地域が、打撃(ショック)、危機、パンデミック及びその他の緊急事態に対して強靱であることを確かなものとするために、我々は、中小零細企業(MSMEs)、女性及び未活用の経済的潜在力を有するその他の人々を含む皆に明白な恩恵並びに更なる健康及び豊かさ(ウェル・ビーイング)をもたらす、質の高い成長を促進する。

● 進捗の評価:APECの成長は、中小零細企業(MSMEs)、女性及び未活用の経済的潜在力を有するその他の人々に明白な恩恵並びに更なる健康及び豊かさ(ウェル・ビーイング)をもたらす、質の高い包摂的なものである。

● 個別行動:エコノミーは、規制アプローチを採択及び強化し、また、全ての人々のために、経済的包摂、更なる健康、豊かさ(ウェル・ビーイング)及び強靭性を支えるその他の措置を講ずる。

● 共同行動:エコノミーは:

○以下の取組等により、全ての人々のための経済的包摂を向上させるために、経済・金融・社会包摂の促進に関する行動アジェンダに立脚する:

  i. 持続可能な経済成長の機会を促進し、社会の全ての構成員の、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させるために、貿易・投資の経済的推進力、イノベーション及びデジタル化等の下で、包摂的な政策を推し進める;

  ii. 特に、女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップの実施計画の完全な履行の加速と、それに立脚した男女平等及び女性の経済的なエンパワーメントを推し進める;

  iii. 起業を促進し、中小零細企業(MSMEs)の金融、世界市場及びグローバル・バリューチェーンへのアクセスを推し進め、また、経済全体に効果的に参画するための彼らの能力を構築する支援を行う;

  iv. 中小零細企業(MSMEs)及び女性の経済的なエンパワーメントの支援に関するAPECの取組に依拠し、必要に応じて先住民、障がい者及び遠隔地の人々等、未活用の経済的潜在力を有するその他の集団に関する、APECの取組を更に発展させるために協力する;

  v. 能力構築及び包摂的な経済参画を向上させるために、経済・技術協力を推進する;そして

  vi. 経済参画への障壁を撤廃するための構造改革の促進、経済関係者の非公式から公式経済への移行の奨励、そして、データ分析等を通じて、包括性及び生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を促進するために、経験及びベストプラクティスを共有する。

 ○ ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現を目指し、保健制度の強化を含め、全ての人々が質の高い公平な医療アクセスと成果を享受できるよう、以下に関して協力する:

  i. パンデミックを防ぎ、発見し、対応し、それらから回復する;

  ii. 全ての人々のために、安全で、効果的で、品質が保証されかつ手の届く価格のワクチンへの平等なアクセスを加速させる;

  iii. 強靭な保健関連のサプライチェーンの安全で、確実かつ効率的な運用を支援する;そして

  iv. 遠隔医療及びデジタル医療等、保健システムのイノベーションを促進するデジタル技術を利用する;

 ○ 農業及び食品貿易、農業の持続可能性及びイノベーションを促進し、2030年に向けた食料安全保障ロードマップを実施することにより、全ての人々のための持続的な食料安全保障、食料安全性及び栄養の改善を確保し、また、地域における食品廃棄及びロスを減少させる;そして

 ○ 腐敗防止に関するAPEC北京宣言、腐敗との闘い及び透明性確保のためのサンティアゴ・コミットメント、そして、APECのテロ対策及び安全な貿易についての統合された戦略を実施すること等により、安全な成長を促すために、反腐敗及び透明性の措置に関する協力を向上させる。

目的:我々は、将来のための技能と知識をより良く人々に身につけさせるために、包摂的な人材育成及び経済・技術協力を強化する。

● 進捗の評価:全ての人々が、現在及び未来に適応し成功するために必要とする、技能及び知識をしっかりと身に付けている。

● 個別行動:エコノミーは、デジタル経済、包摂的な労働市場への広範囲にわたる参画を実現し、経済的なショックからの迅速な回復を支援するために、生涯を通じての技能発展及び社会保護に関する措置等、教育及び人材育成における公平性及び包摂性を保証するための政策を実施する。

● 共同行動:エコノミーは、

 ○ 技能及び人材育成に関する専門知識を刷新及び交換し、これらの分野における教訓及びベストプラクティスの共有に関して協力する;

 ○ 技能格差及び技能と雇用との間のミスマッチをより良く評価し解消すること等のために、技能及び労働市場に関するデータセットの収集及び分析の向上に協力する;

 ○ 包摂的な人材育成に関する能力構築を強化するために、経済・技術的協力を強化する;

 ○ APEC教育戦略及びデジタル時代における人材開発に関するAPEC枠組みを実施すること等により、地域のエコノミーのデジタル変革を加速するために、全ての人々のための技能及び知識の発展に関して協力する;そして

 ○ 資格の相互承認に関する既存のAPECの取組に立脚し、その範囲を深化させ拡大する。

目的:我々は、持続可能な地球のために、気候変動、異常気象及び自然災害を含む全ての環境上の課題に包括的に対処するための世界的な取組を支える経済政策、協力及び成長を促進する。

● 進捗の評価:APECの成長及び繁栄は、より一層環境的に持続可能な基盤の上で達成される。

● 個別行動:エコノミーは、APECの目標達成に貢献すること等により、環境的に持続可能で強靭な成長を推し進めるための、国際的義務と整合的な政策を実施する。

● 共同行動:エコノミーは、

 ○ 気候変動を含む全ての環境課題に対処し、持続可能な成長を支えるベストプラクティスとなる政策を発展、奨励及び交換し、能力構築プログラムを促進するために、以下等を通じて、適切なAPECフォーラにおいて協力する:

  i. 構造改革;

  ii. 環境物品及びサービスにおける貿易の円滑化に関するAPECの取組を含む、貿易;

  iii. 必要不可欠なエネルギーサービスを必要とする人々へ提供することの重要性を認識しつつ、税政及び無駄な消費を助長する非効率的な化石燃料補助金を合理化し、段階的に廃止することを含む、公共財政;

  iv. 持続可能なインフラ及び交通;

  v. 複数のセクターにまたがる持続可能な成長、また、費用対効果の高い低・ゼロ排出技術、持続可能な金融、そして適切な場合は、炭素価格決定メカニズムの発展を推進する;そして

  vi. エネルギー移行を通じて、エネルギー安全保障、アクセス、信頼性及び強靭性を保証する;

 ○ 特に、2030年までに2010年の基準から、発電を含むAPECのエネルギーミックスにおける、再生可能エネルギーのシェアを倍増させるという2030年目標に向けた進捗を加速し、2035年までに2005年の基準から、エネルギー強度を45%削減する計画を実現するため、エネルギー課題における既存の首脳のコミットメントを実現するよう模索する;

 ○ APEC海洋ごみロードマップ、IUU(違法・無報告・無規制)漁業と闘うためのロードマップ、そして、違法伐採及び関連貿易と戦うためのコミットメントを実施すること等により、農業、林業及び海洋資源と漁業の持続可能な資源管理に向けて取り組む;

 ○ APEC災害リスク削減に関するフレームワークを更に実施する;

 ○ APECの循環型経済に関する取組を推し進める;そして

 ○ 持続可能な観光に関する取組を促進する。

制度的枠組みとしてのAPECの継続的な改善

目的:APECが、地域経済協力のための主たるフォーラムとしての、また、近代的、効率的かつ効果的なアイディアのインキュベーターとしてのユニークな在り方を維持するため、我々は、良好なガバナンス及びステークホルダー・エンゲージメントを通じて、制度的枠組みとしてのAPECの継続的な改善に進んで取り組む。

制度的枠組みとしてのAPECの継続的な改善に進んで取り組み、また、良好なガバナンス及びステークホルダー・エンゲージメントに関連した主要な課題に対処するという我々の目標と整合的な形で、APECは:

● APECプトラジャヤ・ビジョン2040の全ての要素を効率的かつ効果的に実現することを目指し、APECのガバナンス及び組織構造を改善する;

● 制度的枠組みが財政的に慎重であり続けることを確保しつつ、APEC事務局及び政策サポート・ユニット(PSU)の人員及び財源の持続可能性を確保する;

● APECメンバー及びオブザーバーを拡大させる可能性を議論する方策を探求する;

● APECビジネス諮問委員会(ABAC)及び民間部門、そして、太平洋経済協力会議(PECC)、太平洋諸島フォーラム(PIF)、東南アジア諸国連合(ASEAN)及び他の国際・地域機関との関わりを深める;

● APECプトラジャヤ・ビジョン2040の幅広さを反映するために、NGOや市民社会等の多様な経済的ステークホルダーとの関わりを推進する;

● APECのAPECスタディ・センター・コンソーシアムとの関係を見直し、更新する;

● より幅広い市民へのAPECの取組の伝達を継続的に改善する;そして

● APECに参加するためにデジタル技術をいかにより良く活用するか検討する。

評価及び更新

目的:我々は、適切な実施計画及びその進捗に関する評価を行い、2040年までにビジョンを実現する。

個別行動の強調

2023年末までに、各エコノミーは、このアオテアロア行動計画の選択肢に基づいて、自らのいくつかの個別行動を自主的に示すこととなる。各エコノミーは、行動に関する自らの進捗を最新のものに保ち、また、適切な委員会を通じて、APECに進捗を隔年で報告することが奨励される。APECフォーラは、必要に応じて、これらに関する議論を行うことができる。進捗報告の際に、エコノミーは、必要に応じて、新たな行動を追加するとともに、既存の行動を削除することもできる。

進捗の評価

PSUからの支援を受け、APECエコノミーは、APECプトラジャヤ・ビジョン2040の実現に向けて進捗を評価する。各委員会は、この評価を支える関連指標を特定するために、PSUと共に取り組む。進捗は、既存の報告プロセスを通じて、各委員会によって2年ごとに報告される。高級実務者もまた、APEC閣僚会議に対して、継続的な改善のための分野に関する進捗を2年ごとに報告する。

共同行動の5か年レビュー

アオテアロア行動計画が“生きた文書”でありかつ意義あるものであり続けることを確保するために、APECは、5年ごと(2026年、2031年及び2036年)に、共同行動及び継続的な改善行動を見直す。共同行動は、APEC全体としての進捗の観点から評価される。既存の共同行動は、更新、修正又は削除されることがある。新たな共同行動が追加されることがある。次の5年間の共同行動は、承認のために、APEC閣僚会議に勧告される。

進捗及び個別行動の中間レビュー

共同行動の2031年の見直しと合わせて、APECは個別行動、また、我々がビジョンの全要素

の達成に向けた我々の進捗をいかに評価するかについても見直す。

フォーラ及びサブ・フォーラの取り決め事項(ToR)

APECフォーラ及びサブ・フォーラは、このアオテアロア行動計画等を通じて、活動計画及び戦略的計画において、APECプトラジャヤ・ビジョン2040を実施するための準備を行う。