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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 新型コロナウイルスの感染症の流行と今後におけるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に関する議長ステートメント

[場所] バンコク
[年月日] 2022年5月21日
[出典] 経済産業省
[備考] 
[全文] 

2022年5月21日にタイのバンコクで開催されたAPEC貿易担当大臣(MRT)会合の機会に行われたMRTとAPECビジネス諮問会議(ABAC)との官民対話(PPD)において、多様な情報が提示され議論された。MRT議長からは、APECエコノミーの統一見解ではない一般的見解が以下のとおり示された。

官民対話では、FTAAP及び新型コロナウイルス感染症の流行が地域経済統合アジェンダに関する今後のAPECの業務に与える影響について、興味深い議論を行った。

新型コロナウイルス感染症の流行は、我々の地域に前例のない課題を与えたが、APECの共有する願望及び長期目標であるアジア太平洋における自由で開かれた貿易・投資の達成に向けた進展が損なわれるようなことがあってはならない。したがって、APECのFTAAPに関する業務が、持続可能かつ包摂的な形で我々の地域の経済回復と成長に貢献し、将来の類似の危機に対して同地域が十分な備えを行うことを確保することが重要である。

進捗状況を把握するため、2016年のFTAAPに関するリマ宣言以降、例えば、非関税措置、サービス、税関手続、デジタル貿易・電子商取引及び環境分野といった従来及び次世代双方の貿易・投資問題に取り組む120以上のイニシアティブの実施を含む多くの作業が実施された。

従来FTAAPの道筋とされてきたものだけでなく、FTAAPの作業が有益に活用できるような新たな取組も含め、地域的取組において、最近の進展が留意される。FTAAPアジェンダの作業は、貿易円滑化と電子商取引を扱うが、これらは、地域における感染症流行といった打撃へ対処し、FTAAPに関する作業の方向性がそれないよう確保するために特に有用である。

APECがアイデアのインキュベーターとしての役割を担うことを認識し、FTAAPアジェンダのいくつかの要素に関して、APECエコノミー間で課題、隔たり、相違点が残っているが、同時に、感染症流行の観点からFTAAPに関する新たな議論を行う必要性について、新たなコンセンサスが生じている。

長年の主要なステークホルダーであるABACは、特に、質の高い方法による経路合意収束、RCEPの批准と履行、次世代・投資問題における質の高いルールの策定、中小零細企業、女性や恵まれない層の経済参画、気候変動に対する貿易政策手法等といった民間分野の視点と優先事項を明確にした。

一方、今回の会合では、感染症流行による即座の経済的衝撃に対し取り組む上でその継続した関連性は十分に明白な、非関税措置、サービス貿易、税関手続きと貿易円滑化、透明性ルールといった従来の貿易・投資問題に加え、例えば電子商取引、デジタル貿易とデジタル経済、中小零細企業、女性、貿易と環境、サプライチェーンの連結性及び気候変動対策といった次世代の課題にも取り組む必要があることが強調された。

APECは、能力構築と情報共有における強みと幅広い経験が評価されており、そのような手法は、FTAAPに関する将来の更新された業務を追求するために相応しい。FTAAPアジェンダに関する業務は、APECプトラジャヤ・ビジョン2040およびアオテアロア行動計画における首脳の任務を支援する観点から、能力構築、技術支援、知識共有を含む様々な方法を通じて実施することができる。

このため、APECは、対等なパートナーシップ、責任の共有、相互尊重、共通の利益と恩恵の重要性を再確認する形で、FTAAPに関する業務を進める必要があることを考慮すべきである。この点で、会合では、平衡が取れた方法で地域内の経済を再開し、再び連結させるために、FTAAPに関する業務を継続するよう実務者に奨励した。

(了)