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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2022年 タイAPEC閣僚会議 閣僚共同声明

[場所] バンコク
[年月日] 2022年11月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1. 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚は、2022年11月17日、タイのドン・プラムドウィナイ副首相兼外務大臣及びジュリン・ラクサナウィシット副首相兼商務大臣の議長の下、タイのバンコクに集った。

2. 我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、太平洋経済協力会議(PECC)、太平洋諸島フォーラム(PIF)の参加を歓迎した。

3. 我々は、全ての人々及び未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靭かつ平和なアジア太平洋共同体を実現するため、アオテアロア行動計画の実施を含む、APECプトラジャヤ・ビジョン2040の達成に向けた我々の強いコミットメントを再確認する。

4. 本年は、APEC2022のテーマである、「Open. Connect. Balance. 」の下、我々は、あらゆる機会に開かれた貿易・投資を促進し、あらゆる次元で地域を再びつなぎ、そしてバイオ・循環型・グリーン(BCG)経済などのアプローチによるバランスのとれた包摂的で持続可能な成長に向けてAPECを動かす、という3つの優先課題を通じて作業を進めた。

5. 本会合では、本年の優先課題の下での2022年のAPECの成果を協議し、今後の作業の指針を示し、APECの進むべき道について議論した。

優先課題1:全ての機会に開かれた

6. 我々が新型コロナウイルス感染症のパンデミックから脱却する際、貿易・投資は、世界経済の回復を加速し、成長を再生する重要かつ不可欠な役割を果たし、生活を向上させ、貧困を削減し、持続可能な経済開発を進める積極的な貢献をする。我々は、よりバランスのとれた包摂的な貿易・経済政策を採用し、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性があり、包摂的かつ予見可能な貿易・投資環境を実現するとの我々の決意を改めて表明する。我々は、サプライチェーンが機能し、安全で、強靱であり続けるための努力を継続する。我々は、好ましい貿易及び投資環境を促進する公平な競争条件を確保するための努力を続け、開かれた市場を維持し、サプライチェーンの混乱に対処するという我々のコミットメントを再確認する。

7. 今年、我々は、ウクライナにおける戦争が世界経済に更なる悪影響を与えていることも目の当たりにした。この問題に関して議論が行われた。我々は、3月2日の国連総会決議ES―11/1(141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権、12か国が欠席)においてロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、同国のウクライナ領土からの完全かつ無条件での撤退を要求している国連総会や、国連安全保障理事会を含む他のフォーラムで表明してきた立場を改めて表明した。ほとんどのメンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、また、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていることを強調した。この状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった。APECが安全保障問題を解決するためのフォーラムではないことを認識しつつ、我々は、安全保障問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。

8. 我々は、高いスタンダードの包括的な地域的事業に貢献するアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)アジェンダに関する作業等を通じて、市場による地域の経済統合を更に進める。我々は、リマ宣言及び北京ロードマップがFTAAPアジェンダの進展に有用な貢献をしたことを認識する。この観点から、我々は、2022年のAPEC貿易担当大臣会合での議論を想起し、新型コロナウイルス感染症のパンデミック及びそれを超えたFTAAPに関する新たな議論を歓迎する。そのため、我々は、プトラジャヤ・ビジョン2040及びアオテアロア行動計画における首脳の指示に応え、FTAAPアジェンダに関する作業を進めるためのFTAAPアジェンダ作業計画を歓迎する。我々は、作業部会間の協力と他の経済ステークホルダーとのエンゲージメントの重要性を強調する。我々は、来年のAPEC閣僚会議(AMM)において作業計画の実行の進捗を報告することを関係者に求める。我々は、作業計画に対する迅速な行動によって地域経済統合を加速させるというABACの呼びかけに留意する。我々はまた、各国の貿易交渉能力を向上させるための能力構築への努力を継続する。

9. 我々は、世界貿易機関(WTO)を中核とするルールに基づく多角的貿易体制の重要性を再確認し、これを維持し、更に強化することにコミットする。我々は、特に、食料及び新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関連する必需品及びサービスの移動とアクセスの円滑化を通じて、グローバルな課題からの経済回復を支援するための多国間貿易体制の重要な役割を認識する。我々は、2022年6月12日から17日にかけてスイスのジュネーブで開催された第12回WTO閣僚会合(MC12)の成功を歓迎する。これに関連して、我々は、MC12の成果を完全に実施するために建設的に取り組むことにコミットする。我々は、WTOの役割を称賛するとともに、持続可能で包摂的な成長を促進するための活動を継続するよう求める。我々は、第13回閣僚級会合(MC13)における前向きな成果に向けて引き続き努力する。我々は、我々のリーダーシップとアイデアのインキュベーターとしての役割を通じて、引き続き支援を提供する。我々はまた、多角的貿易体制の強化に対するABACの支援に感謝する。

10. 我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックへのWTOの対応及び将来のパンデミックへの備えに関する閣僚宣言を歓迎する。我々はまた、決定の日から遅くとも6ヶ月以内に、WTO加盟国が新型コロナウイルス感染症の診断薬及び治療薬の生産と供給の適用範囲を拡大する決定に合意した知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)に関する閣僚決定を歓迎する。我々は、SDG14. 6に資する環境の持続可能性に関するWTOの作業を称賛し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業に寄与する補助金、乱獲資源に関する補助金、無規制公海での漁業への補助金を禁止する漁業補助金に関する協定についての閣僚決定を歓迎する。この点において、我々はWTOルール交渉グループが途上国エコノミー及び後発開発途上国エコノミーに対する適切かつ効果的な特別かつ差異ある待遇がこれらの交渉の不可欠な部分であるべきであることを認識しつつ、過剰生産能力や乱獲などの一因となる特定の形態の漁業補助金に関する更なる規律を含む漁業補助金に関する追加規定についてMC13に勧告することを視野に入れ、包括的な合意を達成するための交渉を継続するよう留意し、APECエコノミー及び他のWTO加盟国に対し、いち早く協定の受諾書を提出するよう最大限の努力を払うことを要請する。我々は、WTO加盟国が農産物貿易の流れの必要性を強調し、WTO関連規定と矛盾しない輸出禁止や制限を課さないことの重要性を再確認した、食料不安への緊急対応に関する閣僚宣言を歓迎する。我々はまた、世界食糧計画(WFP)が非商業的な人道的目的のために購入される食料品に対して輸出禁止または制限を課さないことにWTO加盟国が合意したWFPによる食料購入の輸出禁止又は制限の免除に関する閣僚決定を歓迎する。我々はまた、現代の衛生植物検疫措置(SPS)の課題への対応に関する閣僚宣言、電子商取引についての作業計画に関する閣僚決定、小規模エコノミー及びTRIPS非違反及び状況訴求に関する作業計画を歓迎する。

11. 我々は、WTOのルールに支えられたグローバルな農業・食料システムが、食料、繊維、その他重要な産物を世界中の人々に届けていることの重要性を認識している。世界の食料安全保障と持続可能な経済発展のために重要であるにもかかわらず、農業は世界貿易の中で最も保護されている分野の一つである。我々は、WTO農業協定第20条に規定される農業改革課程の継続及び既存のマンデートに規定された助成及び支援の実質的で漸進的削減の達成を視野に、我々の集団的利益及び慎重さを反映した、WTOにおける農業に関する有意義な成果の必要性を認識する。

12. 各APEC参加エコノミーは、サービスの国内規制に関する交渉が成功裏に終了したこと、また、電子商取引に関するJSI及び開発のための投資円滑化に関するJSIにおいて実質的な進展があったことを歓迎する。

13. 我々は、WTOが既存及び新たに生じる世界貿易上の課題によりよく対処できるよう、WTOの全ての機能を向上させるために必要な改革を継続して支援することに引き続き協力することを約束する。我々は、2024年までに全てのWTO加盟国がアクセス可能な完全かつ十分に機能する紛争解決システムを有することを視野に入れた議論を行うとのコミットメントを含む、MC12で合意された改革の方針を歓迎する。

14. サービス業界が有する大きな可能性に留意しつつ、我々は、2021年のAPECサービス競争力ロードマップ(ASCR)中間レビュー(MTR)の総括報告における勧告を再確認しつつ、2025年までにASCRを実施するための継続的な努力の重要性を強調する。我々は、サービスに関する国内規制及び政策改革が、開放性、均衡、透明性、包摂性に資するものとなるよう、APECの構造改革アジェンダの中心的な焦点とし、APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップ(AIDER)、女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ(2019-2030)、構造改革のためのAPEC促進アジェンダ(EAASR)間の相乗効果を高めるという我々のコミットメントを再確認した。我々は、サービス・グループに、経済委員会及びデジタル経済運営グループと連携し、2025年までのこれらの作業部会のそれぞれのアジェンダにおけるサービス競争力の役割を検討するよう要請し、この点に関して現在進行中のイニシアティブを歓迎する。我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが物品に比べてサービスに大きな影響を与え、回復が遅れていることを認識する。パンデミックからの持続的かつ包摂的な回復を確保し、将来の経済的ショックに対する強靱性を強化するための健全かつ時宜を得た政策の重要性を考慮し、我々は、APEC地域におけるパンデミックからの回復についての評価の必要性を認識し、ASCRの下でのパンデミックからの回復のモニタリングに関する決定を歓迎する。

15. 我々は、健全で予見可能な規制環境を構築し、貿易・投資を更に促進し、地域における透明性、予見可能性及び相互運用性の向上を促進するために、優れた規制慣行及び国際的な規制協力を推進することにコミットする。我々は、迅速、強靱、包摂的、持続可能、グリーンかつ革新的な経済回復を支援するためのデジタル技術の利用と優れた規制慣行に焦点を当てた、第15回優れた規制慣行に関する会議を歓迎する。我々は、EAASRの4つの柱全てを引き続き積極的に実施し、特に女性と零細・中小企業(MSMEs)のための包摂的かつ強靭な成長の促進に焦点を当てた第3次ビジネス環境改善(EoDB)行動計画について協力するとともに、我々の進捗の測定を国際的なベストプラクティスと整合させるために行動計画を更新していく。

16. 我々は、このデジタル時代における持続可能な経済成長と発展を推進する上で、科学・技術・イノベーション(STI)が重要な役割を担っていることを認識する。我々は、研究開発、知識の共有、能力開発等を通じて、新興の技術を可能にする環境を促進するよう努めるとともに、この点において民間部門と学界が果たす重要な役割に留意する。我々は、経済的利益を増大させるため、デジタル経済におけるイノベーションと創造性を支援し、進める政策とプログラムを通じて、知的財産権を促進することへのコミットメントを改めて表明する。

優先課題2:全ての次元で連結した

17. 新型コロナウイルス感染症が数年続いた今、あらゆる次元で地域を再びつなげることが最も重要である。我々は、物理的、制度的及び人と人とのつながりを強化することにより、シームレスかつ包括的につながり統合されたアジア太平洋に向けたAPEC連結性ブループリントを実施することを含め、APECの連結性のアジェンダの推進に引き続きコミットする。この観点から、我々は、質の高いインフラ開発及び投資の重要性を再確認した。

18. 我々は、サプライチェーンの連結性を強化し、サプライチェーンの混乱を最小化するための努力を支持する。我々は、サプライチェーン連結性枠組行動計画(SCFAPIII)の第3段階を歓迎し、承認する。貿易円滑化は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック時のワクチン、診断薬、治療薬、その他の関連必要不可欠な医薬品を含む必要不可欠な物品の効率的な流れを支援する上で不可欠な手段である。我々は、APECの「物流関連サービス」の定義を留意し、必要不可欠な物品の流れの円滑化に関する宣言、新型コロナウイルス感染症ワクチンサプライチェーンに関する声明、必要不可欠な物品の流れを支援するサービスに関する声明の着実な実施を奨励する。我々は、WTO貿易円滑化協定、特に、必要不可欠な物品の時宜を得かつ効率的な放出に関連する条項の実施を加速することに引き続きコミットする。

19. デジタル経済の急速な発展は、巨大な経済機会をもたらし、持続可能で包摂的かつ革新的な成長の達成に向けた道を開くものである。我々は、電子商取引の円滑化及びデジタル貿易に関する協力の促進を含む包摂的な経済成長に関する行動を優先するAIDERの実施を加速するよう再確認する。我々は、エコノミーがデジタル経済に関するより先進的で包括的な協力イニシアティブを生み出すことを慫慂する。

20. 我々は、貿易を更に円滑化するために、デジタル連結性を強化し、デジタル・トランスフォーメーションを進める必要性を強調する。我々は、通関プロセスの電子化、並びに電子決済及び電子文書の受入を含むペーパーレス貿易円滑化措置の開発及び実施における進捗を歓迎する。我々は、新しい技術の使用及び革新的なソリューションの調査を含め、港湾及び国境における協力及びシングル・ウィンドウの相互運用性に関する作業を更に進め、通関及び税関手続の改善及び簡素化を図る。

21. 我々は、インターネット及びデジタル経済に影響を与える規制的アプローチやデジタル環境における適切な消費者保護ルールに関する協力等を通じて、データの流れの円滑化及びデジタル取引における企業及び消費者の信頼の強化に関する協力に加え、デジタル貿易及び電子商取引の分野において潜在的な経済成長をもたらす新たな分野を引き続き探求する。我々は、デジタルインフラを強化し、エコノミー間及びエコノミー内の情報格差を解消し、安全かつ安心なオンライン環境を醸成するための協力を深める。デジタル時代の労働能力を構築するため、デジタル・トランスフォーメーションの加速、デジタルリテラシーの向上、能力構築の強化、デジタルスキルの促進に向けた取組を強化する。我々はスマートシティに関する取組に留意する。

22. 我々は、MSMEsのデジタル経済と電子商取引への参加を拡大するための努力を継続する。我々は、MSMEsが電子商取引市場で成功し、国境を越えた電子商取引を通じてより多くの消費者に到達できるよう、建設的な提言を行うプロジェクトを更に進めていく。

23. 新型コロナウイルス感染症のパンデミックから脱するにあたり、国境を越えた旅行の安全かつシームレスに再開することは、特にビジネス関係者及び航空・船舶乗組員を含む必要不可欠な労働力の移動に関して我々の地域にとって引き続き重要な課題である。この点に関して、我々は、APEC域内の国境を越えた旅行の円滑化に貢献するAPECの取組みを調整する、安全な通行に関するタスクフォース(SPTF)の作業を称賛するとともに、将来の混乱に直面した際の強靱性を促進するために、安全な通行に関する取組みが継続されることを歓迎する。この関連で、我々は、APEC地域における予防接種証明書の相互運用性のための自主的原則を歓迎する。我々は、APEC政策サポート・ユニット(PSU)の研究「APEC地域における新型コロナウイルス感染症と国境を越えた移動:国境における不確実性への対応」における勧告を歓迎する。

24. 我々は、健康と経済に関する第12回ハイレベル会合での議論を歓迎し、安全でシームレスな国境を越えた旅行を確保する観点から、予防接種証明書の相互運用性に関する技術仕様の自発的共有、安全な通行情報を共有するための情報ポータルの開発、革新的でデジタルな保健技術の利用に関するエコノミーの取組を称賛する。我々は、APECビジネストラベルカード(ABTC)が、我々の地域におけるビジネス関係者の旅行の円滑化に大きく寄与していることを認識する。我々は、エコノミーがABTCをMSMEsにとってより包摂的なものにすることを奨励し、効率的でシームレスな国境を越えた旅行を更に支援するバーチャルABTCのエコノミーによる導入と受け入れを歓迎する。

優先課題3:全ての側面で均衡のとれた

25. アジア太平洋地域が直面する課題と混乱の高まりの中で、我々は、アジア太平洋地域における力強く、均衡ある、持続可能かつ包摂的な成長を追求するという、プトラジャヤ・ビジョン2040における我々の首脳によるコミットメントを再確認し、大胆、迅速かつ包括的にそれを実現する。我々は、持続可能な地球のために、気候変動、異常気象、自然災害を含む全ての環境問題に包括的に対処するための世界的な努力を支える経済政策、協力、成長を促進する。

26. 我々は、EAASRを引き続き実施し、エコノミーが個別行動計画(IAPs)で特定された行動を実施するための具体的な措置をとることを慫慂する。我々は、構造改革及び経済ショックからのグリーンな回復に関する2022年APEC経済政策レポート(AEPR)を歓迎し、エコノミーにその提言を考慮するよう慫慂する。我々は、持続可能なグリーン成長を促進する構造改革を支援するための、APEC全体での多様で継続的な努力及び追加的な資源の貢献を歓迎し、この観点から新たに設立された基金を歓迎する。我々は、構造改革と包摂的で強靭かつ持続可能なビジネスのための環境整備に関する2023年のAEPRに期待する。

27. 我々は、持続可能な金融の促進、財政政策及び金融包摂のためのデジタル化の利用に特に焦点を当てた、第29回財務大臣会合における議論を歓迎する。我々は、APECの優先事項を推進するために、APEC経済委員会とAPEC財務大臣プロセスとの間でより緊密に協調することを慫慂する。

28. 我々は、貿易・経済協力を通じて、環境の持続可能性を引き続き支援する。我々は、環境物品の分野における我々の協力を更に強化するためのAPEC環境物品作業計画の採択を歓迎する。この関連で、我々は、2012年版APEC環境物品リストを参照目的のために統一システム(HS)2022に更新する作業の実質的な進捗を歓迎し、できるだけ早期に移項作業を完了することの重要性を再確認する。我々は、環境及び環境関連サービスの貿易をいかに増大させるかについての議論の進捗を歓迎し、また、新たな環境物品の自主的かつ拘束力のない参考リストを作成する可能性のための勧告の策定についての議論を歓迎し、これらの作業を継続するよう関係者に指示する。この点に関して、我々は、環境及び環境関連サービスに関するコミットメントを予定するAPECエコノミーの能力を構築する最近の取組を歓迎する。

29. 我々は、不可欠なエネルギーサービスを必要としている人々に提供することの重要性を認識しつつ、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し段階的に廃止するという我々の首脳のコミットメントを想起する。この目標を達成するため、我々は、加速させる形で取組を継続する。我々は、非効率的な化石燃料補助金の自主的な停止を行うために、それを実施可能な立場にある加盟エコノミーに対して、関係者が努力を継続することを要請する。我々は、エコノミーが非効率的な化石燃料補助金対策の自主的な自己識別のためのAPECテンプレートを今日まで使用してきたことを歓迎し、他のエコノミーにそうすることを奨励する。

30. 我々は、関連する取組への投資を促進することを含め、地域におけるエネルギーレジリエンス、アクセス及び安全保障を確保しつつ、温室効果ガス排出を削減する持続可能なエネルギー転換を支援するために引き続き協力する。我々は、BCGエコノミーを通じて、地域の相互連結性、エネルギー移行、及び持続可能で包摂的な成長について、本年特に焦点を当てたことを歓迎し、この分野における協力の深化を求める。

31. この取組において、我々は誰一人として取り残されることがないよう確保する。我々は、MSMEsや女性及び未活用の経済的潜在性を有するその他の人々を含む皆に、明白な恩恵並びに更なる健康及び豊かさ(ウェル・ビーイング)をもたらす、質の高い成長を促進するという首脳のビジョンを堅持する。

32. MSMEsは、我々の経済のGDPに大きく貢献し、雇用と経済成長の不可欠な基盤となっている。したがって、我々は、MSMEsのグローバル化と金融へのアクセスの向上に引き続きコミットする。我々は、第28回APEC中小企業大臣会合での議論を歓迎する。我々は、MSMEsのグローバル化のためのボラカイ行動アジェンダの下での成果を踏まえ、MSMEsの競争力、専門性、革新性を高め、地域及び世界市場への参加を拡大し、グローバルなサプライチェーン及びバリューチェーンへの統合の機会を向上させるために協働していく。我々は、グリーンで持続可能かつ革新的なMSMEsのためのAPEC戦略の更新の重要性を再確認し、関係者にこれを進めるよう指示する。

33. 我々は、APEC女性と経済フォーラム(WEF)における議論を歓迎する。我々は、多様な背景を持つ女性を含む、女性のエンパワーメントを促進し、我々の地域におけるジェンダーの平等と包摂を進めるために、女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ(2019-2030)の完全な実施を加速させるという我々のコミットメントを再確認する。我々は、BCGエコノミーのようなアプローチの採用の増加、並びにデジタル・プラットフォーム及びデジタルリテラシーとスキルに関する教育の台頭が、全ての女性のための追加の雇用のための道筋を創出し得ることを認識する。このため、我々は、あらゆる経済活動への女性の完全で平等で有意義な参加並びにあらゆるレベル及び意思決定におけるリーダーシップを通じたジェンダーの主流化の重要性を強調するとともに、女性の経済的参加に対する障壁を除去する必要性を認識し、該当するAPECのプロセスにジェンダーの主流化アプローチを統合するための継続的な努力を歓迎する。我々は、多様な背景を持つ女性が率いるMSMEsを含め、女性主導のMSMEsが国内外市場で資本や資産を利用できるようにするために、官民の協力を促進し、促進することの重要性を認識する。

34. 社会のあらゆる層が経済の回復と成長に貢献できる可能性があることを認識する一方で、必要に応じて、先住民、障害者、遠隔地や農村地域の人々等、経済的潜在力があるその他の人々の既存の障壁を減らし、社会的、経済的、財政的な包摂を促進する必要性を認識している。我々は、APEC地域における経済的・金融的・社会的包摂の促進に関する行動アジェンダを求める。

35. 人々は、破壊的技術進歩の恩恵を十分に享受するために、働き方の未来に備える必要がある。我々は、教育や職業訓練の質を向上させ、雇用と働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を促進し、技能の再習得と技能向上の取組を強化し、生涯学習の機会を奨励して、熟練し、生産性及び敏捷性の高い労働力を生み出す必要性を認識する。

36. 我々はまた、有能で熟練した保健医療人材に支えられた強固で強靭な保健システムを構築し、健康安全保障を推進し、ひいては経済成長と生産性を促進するために、保健分野の投資と保健の資金調達等を通じたユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成の重要性を再確認する。新型コロナウイルス感染症の広範な免疫付与が世界的な公共財としての役割を果たすことを認識し、我々は、安全で、有効で、品質が保証され、かつ手の届く価格の新型コロナウイルス感染症ワクチン、治療薬、診断薬への公平なアクセスを促進する必要性を強く主張する。

37. 我々は、第7回APEC食料安全保障担当閣僚会合において承認された、長期的な食料安全保障、食料の安全、全ての人々の栄養改善及び食料システムを持続的かつ革新的に変革することによる地域における食料損失と食品廃棄の削減のための、2030年に向けた食料安全保障ロードマップの実施計画を歓迎する。我々は、フード・サプライチェーンを、混乱に対してより強靭なものにしすることにコミットする。我々は、農業食品分野におけるSTIの活用を奨励し、特に地方の小規模農家に、デジタル技術を含めた必要な知識と技能を付与することにより、この変化に備えることを支援するとともに、地域市場及び世界市場へのアクセスを引き続き促進する。

38. 我々は、天然資源の効率的かつ持続可能な管理の重要性及び環境に良い影響を生み出す農業政策の必要性を認識する。

39. 我々は、海洋・沿岸資源の持続可能な管理と保全及び海洋の保護を支持する。我々は、世界の食料安全保障を確保する上で、漁業及び養殖業が不可欠な役割を担っており、したがって、漁業資源の持続可能性を確保する必要性を認識する。我々は、IUU漁業と闘うためのAPECロードマップ及び海洋ごみAPECロードマップの実施に引き続きコミットする。この観点から、我々は、IUU漁業の防止、抑止、排除するための寄港国の措置に関する合意(PSMA)の実施原則に基づき、着実かつ効果的な措置を実施する。

40. 我々は、第11回観光大臣会合(TMM)における議論が、持続可能で包摂的かつ強靱で、観光エコシステム全体をつなぐ再生型観光、すなわち、各地域の固有の生物多様性、豊かな文化的多様性と地域の知識を尊重しつつ、地域のあらゆる種類の豊かさに貢献する観光の重要性に焦点を当てたことを歓迎する。我々は、第11回TMMで承認された、未来の観光のための政策提言:再生型観光及び更新版観光関係者のためのAPECガイドラインに留意する。

41. 我々は、第5回林業担当大臣会合での議論を歓迎する。この観点から、我々は、違法伐採及び関連する取引と闘い、木材及び木材製品の持続可能な利用を強化し、気候変動対策等を支援する合法的な木材取引を含む持続可能な森林管理を促進し、我々の活動を継続していく。

42. 我々は、政府のアカウンタビリティーと国民の信頼を損ない、経済成長を阻害する、汚職がもたらす深刻な脅威を引き続き強調する。国連腐敗防止条約の履行を促進するため、我々は、関係エコノミーが腐敗との闘いに関する北京宣言及び腐敗との闘い及び透明性の確保に関するサンチアゴ・コミットメント並びに贈収賄の防止及び贈収賄防止法の執行に関するAPEC原則を更に実施することに断固として取り組む。我々は、国内法に従って汚職犯罪者とその不正な資産に対する安全な避難所を拒否し、国境を越えた汚職と闘うという我々のコミットメントを再確認する。我々は、他の国際機関、民間セクター及び市民社会との必要に応じた協力等通じ、相互に学び、実践的な行動をとり、一致したアプローチをとることにコミットしている。我々は、国境を越えた腐敗に立ち向かうという我々のコミットメントを再確認する。我々は、女性のエンパワーメントを妨げ、経済発展の機会を減少させる腐敗に引き続き対処していく。

43. 持続可能性に関するAPEC全体のアジェンダを進めるため、我々は、BCGエコノミーに関するバンコク目標を歓迎し、首脳による採択のためにこれを提出する。バンコク目標は、新型コロナウイルスからの包摂的で、バランスのとれた、持続可能な回復、長期的で強靭な経済成長、APEC地域における環境・気候目標を、包括的かつ全体的な方法で達成するアプローチとして、複数の政策分野にわたるシナジーを創出し、APECの既存のコミットメントとワークストリームを基礎としつつ、BCGエコノミーを支援していく。我々はまた、APEC地域における持続可能性に関する業績を評価するため、本年、APECBCG賞が創設されたことを歓迎し、来年、初代のAPEC受賞者を表彰することを期待する。

44. 我々は、アオテアロア行動計画等を通じ、未来志向で、プトラジャヤ・ビジョン2040を履行する目的に適うものとなるよう、APECを更に改善していく。また、我々は、作業部会間の協力及びビジネス界を含む様々なステークホルダーとのエンゲージメントとアウトリーチの重要性を強調する。我々は、同ビジョンの全ての要素を、効率的かつ効果的に実現するために、APECのガバナンスと組織構造を改善する努力を継続する。我々は、全てのメンバーの利益のために、APEC内の経済・技術協力並びに能力構築の努力を強く支持する。

45. 我々はまたAPECの作業を支援するための調査・分析を提供する、政策サポート・ユニット(PSU)の重要な役割を認識している。我々は、2030年1月1日からの新しいPSUディレクターとしてカルロス・クリヤマを歓迎し、デニス・ヒュー博士の在任期間中の顕著な貢献に感謝する。

46. 我々は、ABACがAPECプロセスに引き続き積極的に関与していることを認識及び感謝するとともに、あらゆるレベルでAPECへの関与を深めることを要請する。我々はまた、PECC、ASEAN、PIF、APECスタディセンター・コンソーシアムを含む、様々なステークホルダーの年間を通じた貢献に謝意を示す。我々は、APECプトラジャヤ・ビジョン2040の幅広さを反映するために、NGOや市民社会を含むより広範な経済的ステークホルダーとの更なるエンゲージメントと、若者へのアウトリーチの拡大を奨励する。

47. 我々は、2022年APEC高級実務者会合(SOM)議長レポート及び経済・技術協力に関する高級実務者レポートを歓迎し、留意する。我々は、貿易・投資委員会による、閣僚に対する年次報告書を承認する。我々は、ABAC議長報告書にも留意する。我々は、2023年のAPEC事務局会計予算と、それに対応するメンバーの拠出金を承認する。また、我々は、一般及び特別サブファンドへの拠出を含む、各メンバーの対応する拠出金に感謝する。

48. 我々は、2022年APECを主催したタイに感謝し、米国が主催する2023年のAPECの準備を歓迎する。我々は、ペルーと韓国がそれぞれ2024年と2025年のAPECを主催することを改めて歓迎する。我々は、我々が実現を目指すアジア太平洋を構築するために、重要な作業を継続することを期待する。