[文書名] 2022年APEC首脳宣言
1. 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳は、2022年11月18日から19日に4年ぶりに対面でバンコクに集まった。我々は、アオテアロア行動計画も含め、APECプトラジャヤ・ビジョン2040の履行を継続する。本年、APECの「Open. Connect. Balance」というテーマの下、我々は、長期的に、強固で革新的かつ包摂的な経済成長及びアジア太平洋地域の持続可能性の目標を推し進めるための、①全ての機会に開かれた、②全ての次元で連結した、③全ての側面で均衡のとれた、という3つの優先分野を推し進める。
2. 我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応、保健及び福祉を促進するための我々の国民及び経済へのパンデミックの影響の最小化及び全ての人の全体的生活水準の改善のための取組を強化してきている。
3. 今年、我々は、ウクライナにおける戦争が世界経済に更なる悪影響を与えていることも目の当たりにした。この問題に関して議論が行われた。我々は、3月2日の国連総会決議ES―11/1(141か国が賛成、5か国が反対、35か国が棄権、12か国が欠席)においてロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、同国のウクライナ領土からの完全かつ無条件での撤退を要求している国連総会や、国連安全保障理事会を含む他のフォーラムで表明してきた立場を改めて表明した。ほとんどのメンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、また、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギー及び食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における既存の脆弱性を悪化させていることを強調した。この状況及び制裁について、他の見解及び異なる評価があった。APECが安全保障問題を解決するためのフォーラムではないことを認識しつつ、我々は、安全保障問題が世界経済に重大な影響を与え得ることを認識する。
4. 我々は、全ての人々及び将来の世代の繁栄のため、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靭かつ平和なアジア太平洋共同体のためのAPECプトラジャヤ・ビジョンの実現にコミットすることを再確認する。我々は、APECのリーダーシップの強化及びAPECをアジア太平洋の主たる経済的フォーラムとし、近代的で、効率的かつ効果的なアイディアのインキュベーターとするための取組を促進し続ける。APECの協力は、共通の課題への実際的な解決に貢献するとともに、持続可能な開発のための国連2030年アジェンダを含む国際的な取組を補完する。この点に関し、我々は、2022年に行われた取組のモメンタムを創出しバイオ・循環・グリーン(BCG)経済におけるバンコク目標を通じ、持続可能性のための我々APEC全体の行動を調整することを決意する。
5. 貿易・投資は、国際的な課題の解決を支援し、具体的な利益をもたらす機会を開き、我々の人々の繁栄を後押しするための重要かつ不可欠な役割を担う。我々は、国際経済の回復、成長、繁栄、貧困の緩和、全ての人々のための福祉、持続可能な開発及び環境の保護・保全に関する協力の円滑化における、国際貿易及びWTOの重要性を強調する。我々は、自由で、開かれた、公平で、無差別な、透明性のある、包括的かつ予見可能な貿易及び投資環境を実現する決意を再確認する。我々は、好ましい貿易及び投資環境の促進のために、公平な競争条件を確保するための取組を継続し、市場を開放し続け、サプライチェーンの混乱に対処するための我々のコミットメントを再確認する。
6. 我々は、第12回WTO閣僚会合(MC12)の成果を歓迎し、WTOを中心とした、ルールに基づく多角的貿易体制を更に強化することを決意する。我々は、MC12の成果の早急かつ着実な履行を期待する。我々は、既存及び新たに発生する世界貿易課題により良く対処できるようにするため、全ての機能の改善に必要なWTO改革を支援するために引き続きWTOにおいて協力する。我々は、第13回WTO閣僚会合までに有意義な進歩を遂げるために共に取り組むことにコミットする。
7. アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)アジェンダの進展におけるリマ宣言及び北京ロードマップの有益な貢献を認識し、我々は、新型コロナ・パンデミックとその後に係る新たな議論を通じた本年の同アジェンダの進捗を歓迎する。我々は、FTAAPアジェンダの作業計画を通じた、質の高い、包括的な地域の取組に向けたモメンタムを作り続ける。我々は、次年度のAMMに対して、作業計画の実行の進捗を報告するよう職員に課している。同時に、我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)を含むステークホルダーとの関与を更に強化し、官民セクターの対話を増加する。我々は、FTAAPの作業計画及びAPEC地域の経済統合における、ABACの提言を評価し留意する。我々は、包括的経済発展を推進することに係るAPECの重点を強調する、貿易担当大臣(MRT)及びABACの間での官民セクターの協働を賞賛する。また、エコノミーの貿易交渉力を向上させるための能
力構築に係る取組も継続する。
8. ポストコロナの経済回復を達成するために、包摂的で、持続可能で、イノベーションフレンドリーに設計された、成長に焦点を当てた構造改革を実現することが我々の優先事項である。これは、特に零細・中小企業(MSMEs)及びスタートアップ等の全ての種類のビジネスのための環境改善の促進、国際市場への進出のために、それらを競争的、専門的、革新的に改善するために協力することを含む。我々は、構造改革のためのAPEC促進アジェンダ(EAASR)及びビジネス環境改善を含む、集合及び個別の努力を行うことへのコミットメントを再確認する。
9. さらに、我々は、特に観光、交通及び新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより最も影響を受けたその他のサービスを含む、サービスセクターの競争力を強化することの緊急性を認識する。我々は、APECサービス競争力ロードマップ(ASCR)の2025年までの完全な履行を目指し、ASCR中期評価に対応するための取組を加速することへのコミットメントを再確認する。サービス貿易におけるAPECの国際シェアを増加することで、我々は、我々の経済にダイナミズムをもたらし、世界の成長の原動力としてのAPECの地位を下支えすることができる。
10. マクロ経済及び構造的政策は、加速するインフレへの対応、持続可能な経済回復の誘導、及び地域の生活水準の向上にとって死活的である。我々は、持続可能な資金調達、能力構築、イノベーションと成長のための技術支援及び気候変動を含む全ての環境課題に対処する重要性を再確認する。我々は、経済活動や、国民への支援や景気刺激策の提供を含む公共サービスの提供を促進し、金融包摂を推進するためのデジタルツールの推進を続ける。
11. 我々は、セーフ・パッセージ・タスクフォースを通じた、安全な渡航のためのAPECの取組を評価する。我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから抜け出す中、航空及び海運従事者等の必要不可欠な労働力のためのものも含め、我々の地域における安全かつ継ぎ目のない越境移動を推進し、例えばワクチン証明書の相互運用やAPECビジネス・トラベル・カード(ABTC)が包摂的であることを確保すること等のインフラ及びツールを改善するための協力を深化させる。
12. 我々は、APEC連結性ブループリント(2015-2025)の履行も含め、開かれた、相互に連結されたアジア太平洋地域の強化へのコミットメントを再確認する。我々は、物理的、制度的、人と人との連結性を強化するとともに、デジタル連結性を活用し、質の高いインフラ開発及び投資を通じた地域、準地域及び遠隔地の連結性を促進する取組を強化する。我々は持続可能で包括的かつ強靭な再生型観光を推進し、観光エコシステム全体をつなげていくことを促進する。我々は、開かれた、安全かつ強靭なサプライチェーンを育成し、サプライチェーンの接続性を強化し、サプライチェーンの混乱を最小化する努力を支持する。エコノミーが物流関連サービスに対する障壁を取り除く努力を継続することを奨励する。従って、我々は、APEC閣僚によるサプライチェーン連結性枠組行動計画の第3フェーズの承認を歓迎する。
13. デジタル技術及びイノベーションは、包摂的かつ持続可能な成長を促進し、サービスへのアクセスを改善するとともに、経済主体のインフォーマル経済からフォーマル経済への移行を促進することを含め、所得と人々のより良い生活を創出する機会を向上させるより大きな役割を果たす。我々はデジタル・インフラへのアクセスの促進、デジタル・スキルやデジタル・リテラシーの開発支援を含む、国家間のデジタル格差の橋渡しのための協力を深化させる。我々は、データの流通の円滑化及びデジタル取引における、ビジネスと消費者の信頼の強化のために協力する。
14. 我々は、地域内のデジタルシステム及びツールの相互運用性の醸成を通じ、貿易の円滑化及び障壁の撤廃と、急速な成長を解き放つためのデジタル変革の力を認識する。我々は、APECに、デジタル経済における、より先進的かつ包摂的な協力イニシアチブを育成することを推奨する。我々は、そのために、新規及び新興の技術並びに我々の社会の全ての潜在能力の活用確保とビジネス及び消費者のために実現可能な、包括的で、開かれた、公平で、無差別なデジタルエコシステムを創出するため、APEC インターネット及びデジタル経済に関するロードマップ (AIDER)の履行を加速する。
15. 我々は、力強い、バランスのとれた、安全な、持続可能かつ包摂的な成長を促進するコミットメントを確認する。我々は、気候変動、異常気象及び自然災害、食料安全保障、温室効果ガス排出を軽減する、持続可能なエネルギーへの移行を含む今日の課題に対処するために、関連する活動への投資を促進することを含め、地域におけるエネルギーの回復力、アクセス、安全保障を確保するため、より集中的な取組が必要であることを認識する。我々はまた、APEC・IUU(違法・無報告・無規制)漁業と闘うためのロードマップ及びAPEC海洋ごみロードマップの履行のために、具体的な措置を取り続ける。この点に関し、我々は、全ての環境的課題に包括的に対処するための国際的活動を支援する経済政策、協力、及び成長の促進のための取組を促進し、実際的な進展をもたらすため、ステークホルダーの協力の深化を求める。
16. 我々は、APECの持続可能性目標を進める包括的枠組としての「バイオ・循環・グリーン (BCG)経済のバンコク目標」を採択する。我々は、既存のコミットメントとワークストリームに加え、また新たな野心的なコミットメントを検討しながら、力強く、即応的かつ包括的な形でバンコク目標を推し進める。また、本年APEC・BCG賞が設立され、地域における持続可能性の成果を評価するようになったことを歓迎する。
17. 我々は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと闘うために我々のリソースを動員し、将来的な保健への脅威に対して予防及び準備し、対応するためのシステムを強化する。我々は、国際的な公共財としての新型コロナウイルス感染症に対する広範な免疫獲得に断固として取り組む。公共保健の従事者が、人々の命を守り、人々の健康を守ることに多大な貢献をしていることを認識し、我々が公共保健をより強化することは必須である。我々は、保健サービスへのデジタルソリューション及びアクセスの改善、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成することを目指す保健システムの強化のための取組を継続すべきである。
18. 我々は、世界的な食料サプライチェーンを強化し、食品ロスや食品廃棄を削減し、我々の農業及び食料システムを、より強靭で、生産的で、革新的で持続可能であることを確保することで、長期的な食料安全保障を促進するための我々の取組を推し進め、強化することを約束する。我々はまた、農業、林業、海洋資源、及び漁業における持続可能な資源管理に向けた取組へのコミットメントを再確認する。我々は、全ての人にとって食料を、十分、安全で、栄養があり、入手しやすく、手の届く価格のものとするための道筋として、2030年に向けた食料安全保障ロードマップの計画を歓迎する。
19. 長期的な経済成長は、我々の社会の全ての能力を実現させることにのみよって達成されることを認識し、我々は、APECの関連プロセスにおいて、ジェンダー主流化のアプローチをとる努力を継続すること及び女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップ(2019-2025)の完全な履行を加速させることを歓迎する。我々は、MSMEs及び女性を含む全ての人々が、経済機会へのアクセスを支援され、我々の経済に貢献し、利益を得る環境を構築することにコミットしている。これらの取組に加え、我々は、例えば、必要に応じて、先住民、障害者、遠隔地や農村地域の人々など、経済的潜在力があるその他のグループとのAPECの協力を拡大し、また、包括的かつ持続可能な経済成長を進める上での若者の役割を促進する更なる取組を推奨する。我々は、雇用及びディーセントワークを促進し、我々の労働力がデジタル及びグリーン経済に参加し主導することを可能にするため、人材育成、特に、リソースへのアクセス、リスキリング、アップスキリング、生涯学習及びその他の支援へのアクセスを強調する。
20. 汚職が、経済成及び開発に悪影響を及ぼしていることを再認識し、我々は、国境を越えた汚職に共同で対処し、汚職犯罪者及び彼らの不正な資産の安全な逃避先をなくすため、実質的な行動及び団結したアプローチを取ることにコミットしている。
21. 我々は、アオテアロア行動計画等も通じ、APECプトラジャヤ・ビジョン2040の実現を加速化することへのコミットメントを改めて表明する。この取組において、我々は、APECプトラジャヤ・ビジョン2040の全ての要素を効率的かつ効果的に達成するために、APECガバナンス及び組織構造を改善し、ABACを含むステークホルダー及び国際・地域機関との関与を深化させる。
22. 我々は、2022年APEC閣僚会議並びに貿易、観光、保健、林業、食料安全保障、女性と経済、中小企業及び財務の2022年分野別担当大臣会合の成果を歓迎する。
23. 我々は、2022年にAPECを主催したタイに感謝するとともに、米国が主催する2023年APECを楽しみにしている。我々は、ペルーと韓国がそれぞれ2024年と2025年のAPECを主催することを歓迎する。