[文書名] 2023年APEC首脳宣言「ゴールデンゲート宣言」全ての人々にとって強靱で持続可能な未来を創造
1. 我々、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳は、2023年11月16日から17日まで、カリフォルニア州サンフランシスコ市に集まった。米国が1993年にシアトル市近郊のブレイク島で第一回APEC首脳会議を主催してから30年が経ち、我々のAPECの使命に対する着実なコミットメントが、この地域が世界の成長の先駆者となることに貢献したのは明らかである。ここサンフランシスコ市において、我々は、効果的な政策には、全ての人々及びエコノミーに対する対応が何よりも必要であることを強調した。このコミットメントは、米国主催年を通じて、サンフランシスコ市、ホノルル市、パームスプリングズ市、デトロイト市及びシアトル市で開催された会議における我々のビジョンと実際の作業の土台を築いた。
2. 今日、我々は、これまでとは異なるダイナミックな一連の経済的課題に直面している。我々は、引き続き、地域の巨大な可能性とダイナミズムを解き放ち、経済成長を促し、気候変動含むあらゆる環境課題に対処するため、技術的・経済的進歩を活用しなければならない。このゴールデンゲート宣言におけるコミットメントは、これまでのAPEC議長エコノミーによる作業に基づいて構築されており、我々の地域が新たな方法により強靱性、持続可能性、相互連結性、イノベーション及び包摂性を優先課題に直接取り入れ、最も喫緊な経済的課題に対処するために協働する。我々のAPECにおける使命及び実際の作業は、APECプトラジャヤ・ビジョン及びアオテアロア行動計画に記載されるとおり、全ての人々及び将来の世代の繁栄のため、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体に向けた我々のコミットメントにより継続的に導かれる。今年のビジョンと取組の焦点を「全ての人々にとって強靱で持続可能な未来を創造」という米国のテーマに当てる上で、我々が直面する新たな課題及びそれに対処する革新的な方法を認識した。
3. 米国主催年では、環境問題に対処することを確保しつつ、持続可能で包摂的な経済政策を推進する目標を設定した、バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済に関するバンコク目標を基礎とする。我々は、包摂性及び持続可能性の貿易・投資政策への統合のためのサンフランシスコ原則(附属書)を歓迎し、また、公正なエネルギー移行におけるAPEC協力非拘束原則、APEC域内における持続可能な農業・食料システムを通じた食料安全保障実現のための原則等、交通、貿易、防災、食料安全保障、保健と経済、エネルギー、女性と経済、中小・零細企業、財務といった本年開催された分野別大臣会合における議論を歓迎する。我々はまた、最新の災害リスク削減に関するフレームワーク及び行動計画を歓迎する。
4. 我々は、自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性がある、包摂的かつ予見可能な貿易及び投資環境の実現に向けて協働するとの決意を改めて表明する。我々は、我々の地域の並外れた成長を触発し続ける、世界貿易機関(WTO)を中核とするルールに基づく多角的貿易体制の重要性を再確認する。我々は、2024年までに全てのメンバーにアクセス可能な完全で十分に機能する紛争解決システムの設立を目指した議論を行う等、WTOの全ての機能の改善に必要なWTO改革にコミットする。我々は、APECエコノミーに対して、WTO合意の適時かつ着実な履行に向けた作業を行うよう要請し、また、MC13の成功を確保して肯定的な成果をもたらすため、建設的に関与するコミットメントを再確認する。
5. 我々は、アジア太平洋自由貿易圏アジェンダに関する作業等を通じて、市場主導による地域の経済統合を更に進めるコミットメントを強調する。この目的のため、我々は、質の高い包括的な地域事業に参加するエコノミーの準備を支援する能力構築及び技術協力の取組を強化する。我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)を含むステークホルダーとの関係構築を更に強化し、官民の対話を増進していく。
6. 我々は、好ましい貿易及び投資環境の促進のために、公平な競争条件を確保するための取組を継続する。我々は、2025年までにAPECサービス競争力ロードマップ(ASCR)の完全な履行を目標として、ASCR中間レビューに沿った取組を加速化するコミットメントを再表明する。また、我々は、開かれた市場を維持し、サプライチェーンの混乱に対処するコミットメントを再確認する。これには、予見可能で、競争力のある、デジタルで連結したアジア太平洋地域を構築する、安全で、効果的で、強靱で、持続可能かつ開かれたサプライチェーンの構築において、ビジネスを支援することが含まれる。全てのステークホルダーの固有のニーズや関心を認識することにより、我々は、貿易及び投資が全ての人々及びエコノミーに公平に利益をもたらすことを確保する、より包摂的かつ持続可能な政策に向けて協働できる。我々は、物理的、制度的及び人と人とのつながりを強化することにより、APEC連結性ブループリント(2015-2025)の実施に引き続きコミットする。我々は、地域、準地域、遠隔地の連結性を推進する努力を強化する。これに関し、我々は、質の高いインフラ開発・投資の重要性を再確認する。
7. 世界は、気候変動の影響による深刻な課題に引き続き直面している。我々は、最新の科学発展と様々な国内事情を考慮しつつ、今世紀半ばまで又はその頃に、温室効果ガス排出のグローバルネットゼロ又はカーボンニュートラル目標に沿って、クリーンで、持続可能で、公平で、手の届く価格でかつ包摂的なエネルギー移行を加速化するためには、エコノミーによる更に集中的な取組が必要であることを認識する。その際、我々は、人間らしい仕事(ディーセント・ジョブ)、投資、経済成長の新たな時代を切り開き、地域におけるエネルギー、安全保障、強靱性、アクセスを確保するために努力する。我々は、不可欠なエネルギー・サービスを必要とする人々にそれを提供する重要性を認識しつつ、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金を合理化し、段階的に廃止するコミットメントを想起する。この目標の達成に向けて、我々は引き続き迅速に努力する。
8. 我々は、既存の目標や政策を通じて、世界における再生可能エネルギーの容量を3倍にする取組を追求し奨励していく。また、我々は、2030年までに、国内事情に応じて、排出削減・除去技術等を含むその他のゼロ・低排出技術に関して同様の意欲を示していく。様々な道筋を通じて、この地域における低・ゼロ排出交通への移行及び投資を加速化するため、我々は、低・ゼロ排出車両への移行、持続可能な航空燃料、そして、低・ゼロ排出海運及び港湾の脱炭素化を加速する努力を追求していく。
9. 我々は、農業の持続可能性に対する「万能の解決策」はないことを認識しつつ、農業・食料システムをより強靱かつ生産的で、また革新的かつ持続可能なものとする道筋として、2030年に向けた食料安全保障ロードマップを完全に実施することにコミットする。我々はまた、農業、林業、海洋資源、違法・無報告・無規制漁業との闘いを含む漁業の持続可能な資源管理に取り組むコミットメントを再確認し、開かれた、歪みのない農業・食料システムと気候変動、そして、食料安全保障・栄養との相互関係を強調する。我々は、食料安全保障の実現における農業生産性、国際貿易、食品ロスと廃棄物の予防・削減の重要性を再確認し、食料安全保障と栄養を確保する取組を強化していく。
10. 我々は、全ての人々の生活の向上、そして、全ての人々にとって強靱で持続可能な未来の創造に引き続きコミットする。そのため、我々は、ジェンダーの平等、そして、中小・零細企業、労働力、女性や青少年、必要に応じて、先住民、障害者、農村・遠隔共同体の人々等、未活用の経済的潜在性を有するその他のグループの経済包摂とエンパワーメントを推進し支援し続ける。
11. 我々は、中小・零細企業及びスタートアップ企業がより競争力があり、専門的で、革新的なものとなる機会等を通じて、中小・零細企業及びスタートアップ企業が成長する道筋を構築する重要性を強調する。我々は、グローバル・バリューチェーンへの統合、大企業との協力、そして、デジタルツール・技術の利用等を通じて、中小・零細企業の地域・世界市場への進出拡大を支援する。我々は、中小・零細企業によるデジタル変革の加速化に資する、使いやすく費用対効果の高い製品及び解決策の開発を奨励する。我々は、成長を促す金融へのアクセスの重要性を認識する。我々は、中小・零細企業が活動できる環境を整備する重要性、そして、経済主体の非公式から公式経済への移行を支援する重要性を再確認する。
12. 2011年にAPECが初の女性と経済フォーラムを開催したサンフランシスコにおいて、我々は、経済成長を推進するコミットメントを再確認した。これには、資本及び資産、市場、スキル及び能力構築、発言力と主体性、イノベーション及び技術に対する女性のアクセスの改善等を通じて、全ての女性の完全かつ平等な経済参加及びリーダーシップを促進することが含まれる。我々は、包摂的な経済成長を主導する女性と包摂的成長のためのラ・セレナ・ロードマップの完全な履行を促進する継続的な取組を歓迎する。我々は、有給・無給のケア及び家事における不平等な分担に対処するケア分野の政策とインフラ投資、そして、グローバル・バリューチェーンにおけるジェンダーの平等を進めることにコミットする。我々は、特に、持続可能な経済を始めとする女性の有意義な経済参加、そして、STEM分野等における女性及び女子の教育を支援する。我々は、多様な背景を持つ女性及び女子に対するジェンダーに基づいた暴力や差別を防止し、対処するためのイニシアティブ及び戦略を積極的に奨励するコミットメントを再表明する。
13. 我々は、ビジネス及び消費者のために実現可能な、包括的で、開かれた、公平で、無差別なデジタルエコシステムを創出するコミットメントを再確認する。我々は、全ての人々に向けた包摂的なデジタル経済を育成する、APECインターネット・デジタル経済に関するロードマップ(AIDER)を履行する米国の取組を歓迎する。我々は、全てのエコノミーに対して、個人情報保護・コンピューティング、電気通信ネットワーク、相互運用性の促進、ICTセキュリティ、デジタル貿易及び電子商取引、先端技術、イノベーション及び実現可能な技術・サービス導入の推進等の分野においてAIDERを履行する努力を加速化することを奨励する。デジタル技術の可能性を最大限引き出し、その恩恵を公平に分かち合い、リスクを緩和するために、我々は、協調・協力的な政策対応を模索し、デジタル技術における国際協力を促進する。我々は、デジタル技術のガバナンスに関する国際的な議論が継続していることを歓迎する。また、我々は、異なる国内事情を考慮しつつ、2030年までにジェンダー間のデジタル格差を半減すること等、デジタル格差を縮小することにコミットする。我々は、デジタルインフラを強化し、情報通信技術の物品・サービスへのアクセスを促進し、デジタル経済における繁栄を享受する上で全ての人々に必要なスキルを提供し、誰一人取り残されないことを確保する。我々は、デジタル変革を加速し、また、インターネットとデジタル経済、そして、デジタル環境における消費者保護及び個人情報保護に関する規制的アプローチにおける協力等を通じて、データ流通の促進、そして、デジタル取引におけるビジネスと消費者の信頼強化において協力する。更に、我々は、地域における効率的で途切れのないビジネス旅行の支援を可能とする技術として、より包摂的なAPECビジネストラベルカード(ABTC)に向けたAPECの取組、そして、パンデミック後の旅行と観光業の回復を促進するAPECの取組を認識する。
14. 我々は、汚職が経済成長及び開発にもたらす深刻な影響を認識し、国境を越え共同して汚職と闘い、汚職犯罪者と不正な資産に対する安全な避難所を拒否するため、実践的な行動及び統一したアプローチを取ることにコミットする。我々は、本年における関連の作業を歓迎する。
15. 我々のステークホルダー及びビジネス界は、創造性、ダイナミズム、エネルギーをもたらし、また、我々の作業における重要なパートナーである。我々は、APECのCEOサミットや持続可能な未来フォーラム等の行事を通じて、ABACや太平洋経済協力会議を含むマルチステークホルダーとの関係構築を更に強化することを期待する。
16. このゴールデンゲート宣言及び米国主催年における我々の協力は、アジア太平洋地域における経済協力のプレミア・フォーラムとしてのAPECのリーダーシップ及び立場を強化する上で、共通のコミットメントを具体化する。我々は、次回2024年のペルー主催年、2025年の韓国主催年、2027年のベトナム主催年に期待し、また、我々は、APECの重要な取組を推進する上で、これらエコノミーに対する支援を約束する。我々は、温かく歓迎してくれたサンフランシスコ市及びカリフォルニア州とその人々に対して感謝の意を表する。
附属書:
1. 包摂性及び持続可能性の貿易・投資政策への統合のためのサンフランシスコ原則