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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2023年APEC首脳宣言付属書:包摂性及び持続可能性の貿易・投資政策への統合のためのサンフランシスコ原則

[場所] 
[年月日] 2023年11月19日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

過去数十年にわたり、貿易及び投資はアジア太平洋地域の急速な経済成長に貢献し、世界の経済成長の原動力としての評価を高めてきた。これは、多くの人々にとって、生活水準の向上と経済機会の拡大につながった。一方で、持続可能性と強靱性を高めることにより経済を成長させ、すべての人とエコノミーに貿易及び投資による恩恵が及ぶよう意図的に確保する政策の推進に更なる焦点を当てる必要がある。貿易・投資政策は、アジア太平洋地域における包摂的かつ持続可能な成長の原動力となるべきであり、中小零細企業や女性、そして一部先住民、障害者及び農村・遠隔地の人々等の未開発の経済的潜在性を有する人々を含むすべての人に、明白な恩恵、健康増進及び福利をもたらす質の高い成長を促進する取組に貢献するものとなるべきである。

バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済に関するバンコク目標は、貿易及び投資がそれぞれ相互に環境に配慮した持続可能な政策を支持する包摂的な貿易及び投資を追求するAPECのコミットメントを再表明した。貿易政策立案において、持続可能性と包摂性を重視した選択を行うことは、気候変動を含む環境問題に対処しつつ、すべての人が国際貿易から利益を享受する機会を創出する上で極めて重要である。貿易政策を通じた包摂性及び持続可能性の支持は、気候変動やその他の環境上の課題における影響において、ジェンダーの平等を推進や、エコノミーに対して女性の潜在力を最大限に実現するための具体的な措置を求める「女性と包括的成長のためのAPECラ・セレナ・ロードマップ」の目標とも一致する。

自主的で非拘束的、そしてコンセンサスに基づく組織であるAPECは、アイデアのインキュベーターとして、また協力の触媒として当然の評価を得てきた。その性質上、APECは、持続可能性と包摂性を促進する方法を模索する上でユニークな立ち位置にあり、その模索は、すべての人と将来の世代の繁栄のため、2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体というAPECのビジョンを支持することに繫がる。自由で、開かれた、公正で、無差別で、透明性があり、予測可能な貿易及び投資環境を支持する政策は、我々のすべての人々とエコノミーの生活を向上させ、持続可能な経済成長の促進に積極的に貢献することを可能とし、そしてこれらの取組により、地域の経済統合を更に推進することができる。経済的な包摂性及び持続可能性を達成する方法は、我々の社会や経済が如何なるものであるかにより各エコノミーにおいて異なる可能性がある。その対策は、経済、社会、環境の各側面につき各エコノミーの状況に応じバランスよく考慮すべきであり、不平等を悪化させるものであってはならない。

APECにおいて進行中の作業及び2023年5月の貿易担当大臣会合に基づき、そして、アオテアロア行動計画の実施を含むAPECプトラジャヤ・ビジョン2040の達成に向けた我々のコミットメントを支持し、我々は、以下の原則が包摂性及び持続可能性の貿易・投資政策への実践的な統合を支持するものであることを認識する。

・ 強固で、バランスの取れた、確実で、持続可能かつ包摂的な経済成長、建設的な環境面の成果、及び全ての人の社会的福利を支える貿易・投資政策の立案及び実施において、包摂性と持続可能性が重要な役割を果たすことを認識する。

・ 環境面における持続可能性及び包摂性を重要かつ補完的な基準として取り入れることが、経済的なイニシアチブの恩恵を増幅させ、すべての人の機会を向上させる。

・ 貿易政策における包摂性を重視し、APECにおいて同協力を促進することは、気候変動やその他の地域が直面する課題を含む共通の課題を克服するために有効な人材やイノベーションを最大限に生かすことを可能とすることと認識する。

・ 貿易・投資政策の立案及び実施並びに提案された政策措置の検討において、特に経済参加の障壁に直面する人々の包摂に焦点を当てた提案や計画の公表、公聴会を含んだ開かれた、透明で、予測可能かつ参加型なプロセスの利用を促進する。これには、エコノミーの法律及び規則に従い、以下が含まれる。

 * 様々な利害関係者や影響を受ける人々やグループに対して、時宜を得て、明確で、入手しやすく、オンライン上そしてその他のメディアにおいて自由に入手可能な方法により(1)公聴会及び関与の機会及び(2)検討中の課題について情報を提供する。

 * 透明かつ包摂的な方法による貿易政策及び提案された貿易政策実施に関する公聴会及び参画を実施する。提案された政策の複雑さや起こりうる影響を考慮した上で、利害関係者が意見を提出するための十分な時間を確保し、受領した意見について検討する。

 * 貿易政策及び貿易政策計画の立案、実施、監視において、中小零細企業、労働者、消費者、女性、障害者、農村・遠隔地の人々及び必要に応じ先住民を含む特定の視点及び関心への配慮を確保する。

・ 中小零細企業が競争力、専門性、革新性を高め、国際市場に進出する機会を向上するために協力しつつ、クリーン・エネルギーへの移行を支援し、環境と経済のパフォーマンスを向上させ、生物多様性の損失を阻止及び回復させ、グリーン成長と適正な雇用に貢献し、地球規模及び地域的な環境問題により良く対処するための手段として、循環型経済アプローチを支援し、環境財・サービスの貿易と投資を促進する重要性を強調するため、APEC内の協力を強化する。

・ 国際貿易及び投資の機会へのアクセスに関連するものも含め、未開発の経済的潜在性を有するグループが直面する課題と障壁について理解を深める。貿易政策が異なる人々及びそのコミュニティに与える経済的、環境的、社会的な影響を理解及び監視するために、質的及び量的な公に入手可能なオープンデータの質、範囲、適時性、細分類、入手可能性及び共有の改善を行う重要性を認識する。

・ 細分類された人口グループも含む貿易及び貿易政策の分配効果について、経済に特化した分析、経験及びベストプラクティスを活用する機会を模索する。

今後の措置

貿易・投資委員会は、これらの原則を支援する作業を推進する責任を負う。これら作業には、任意の能力構築プログラム、情報共有及び対話が含み得る。必要に応じてAPECにおける関連フォーラム、APECビジネス諮問委員会(ABAC)及びその他の経済・貿易関係者との緊密な協力が奨励される。

2024年から2028年までの期間、貿易・投資委員会は、第3回貿易・投資委員会会合において、包摂性及び持続可能性の貿易・投資政策への統合に関する特定の議題を含むこととする。議題項目の具体的な焦点は、貿易投資委員会議長及び議長エコノミーが決定する。テーマとして、ボランティア・エコノミーが取り組む具体的なプラクティスに関する情報共有、専門家による発表及び民間部門による講演等が考えられる。

これらの原則の推進を支援するために実施された作業は、2024年から2028年におけるAPEC閣僚会議への貿易・投資委員会報告書に記載される。