[文書名] APEC閣僚共同声明 2025年第36回APEC閣僚会議
APEC閣僚共同声明
2025年第36回APEC閣僚会議
大韓民国・慶州
1.我々、アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚は、2025年10月30日、趙顕(チョ・ヒョン)韓国外交部長官と呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長を議長として、大韓民国の慶州で会合した。我々は、APECビジネス諮問委員会(ABAC)、東南アジア連合諸国(ASEAN)、太平洋経済協力会議(PECC)、世界貿易機関(WTO)事務局長及び経済協力開発機構(OECD)事務総長の参加を歓迎する。我々は、慶州市の温かいもてなしに謝意を表する。
2.我々は、全ての人々と未来の世代の繁栄のために、「アオテアロア行動計画(APA)」の実施などを通じて、2040年までに、開かれた、ダイナミックな、強靭かつ平和なアジア太平洋コミュニティを目指す「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」へのコミットメントを再確認する。APECのテーマである「持続可能な未来の構築(Building a Sustainable Tomorrow)」の下、これまでのAPECの成果に基づき、我々は三つの政策優先課題である「連結(Connect)」、「革新(Innovate)」及び「繁栄(Prosper)」を通じて、今年のAPECのアジェンダを推進してきた。
連結
3.我々は、アジア太平洋地域の全ての人々のための経済成長及び繁栄を支えるため、貿易・投資、サプライチェーンの強靱性、構造改革及び人と人とのつながりの促進を通じた地域の連結性を強化する重要性を強調する。我々は、地域経済協力の主要なフォーラムとしてのAPECへのコミットを継続し、経済課題に共に対処し、より強靭で繁栄した地域を創り出すため、我々を結束させるAPECの役割の重要性を強調する。
4.我々は、貿易課題の推進におけるWTOの重要性を認識する。我々は、WTOにおいて合意されたルールが国際貿易を円滑化するための鍵となることを認識する。我々は、WTOが課題を抱えており、今日の現実を踏まえ、より意義があり、対応力のある組織にするため、その全ての機能を改善させるための有意義で不可欠かつ包括的な改革が必要であることを認識する。我々は、WTOにおいて、現代の貿易課題に関する議論を深める取組を歓迎する。我々は、アイデアのインキュベーターとしてのAPECの役割を通じて協働し、2026年の「第14回WTO閣僚会議(MC14)」を成功させるため、APECエコノミー間の協力を支援する。
5.我々は、WTO漁業補助金協定の発効を歓迎し、未受諾のエコノミーに受諾書を可能な限り早期に寄託するよう要請するとともに、全WTO加盟国に追加的な規律の交渉を可能な限り早期に妥結するよう奨励する。我々は、WTOにおける農業に関する議論に建設的に関与する必要性を認識する。また、我々は、デジタル経済の拡大において、WTOの電子的送信に対する関税不賦課モラトリアムの積極的な役割を認識する。
6.我々は、WTO加盟国が関心を有する課題を改善し、WTOをより意義のある組織にするため、共同声明イニシアティブ(JSI)を含むWTOにおける複数国間交渉が果たす積極的な役割を認識する。我々は、共同声明イニシアティブに参加するWTO加盟国による、開発のための投資円滑化協定及び電子商取引に関する協定をWTOの法的枠組みに組み込むための取組に留意する。我々は、APEC貿易・投資委員会(CTI)の声明及び開発のための投資円滑化協定の支援に関するAPEC投資専門家会合(IEG)の声明を歓迎する。
7.我々は、地域の貿易・投資の円滑化及びサプライチェーンの強化にコミットする。我々は、進化する貿易環境におけるWTO貿易円滑化協定の重要性を認識し、その完全かつ効果的な実施に引き続きコミットする。我々は、「APEC投資円滑化行動計画(IFAP)」を実施するための作業計画の策定に向けた進展に留意する。
8.我々は、アジア太平洋地域の経済統合を市場主導型で進めるという共通のコミットメントを再確認し、それがAPECにとって重要であることを認識する。我々は、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)アジェンダの新たな視点に関するイチマ声明」に記載される全ての作業分野を、包括的かつ体系的な方法で進展させることを支持し、2026年にこれらの作業分野の取組を開始するよう実務者に指示する。我々は、APECエコノミーが高水準で包括的な取組に参加するための準備態勢を強化することを目的とする、「能力構築イニシアティブ(CBNI)」の実施及び更新に向けた継続的な取組を歓迎する。我々は、「非関税措置に関する分野横断的な原則を適用するためのベストプラクティス・ガイドライン」を歓迎する。これは、APECエコノミーにとって実用的かつ恒久的な資料であり、貿易を円滑化し、正当な政策目標を推進し、イノベーションを牽引する形により、APECエコノミーによる非関税措置(NTMs)の発展及び実施を支援するものである。
9.我々は、グローバル・バリューチェーンの不可欠の一部であるグローバル・サプライチェーンが多様な課題に直面していることを認識し、地域全体の持続可能な経済成長に向けて、サプライチェーンの強靱性を向上するため、APECにおいてサプライチェーンの課題を確実かつ継続的に議論する取組を支援する。我々は、サプライチェーンの連結性、貿易の円滑化、貿易手続きのデジタル化を促進するプラットフォームが、APEC内に存在することを認識する。我々は、官民対話を含め、APECにおけるサプライチェーンの議論への民間部門の更なる関与を奨励する。我々は、地域のサプライチェーンの脆弱性に対処するため、「サプライチェーン連結性枠組行動計画フェーズ3(SCFAP III)(2022-2026年)」の実施の重要性を強調する。
10.我々は、APECエコノミー地域全体の基準に関する協力の強化及び適合性評価手続の効率化のための現在進行中の取組を歓迎する。我々は、「APEC税関及び越境電子商取引に関する非拘束ガイドライン」を歓迎し、適法な越境電子商取引の貿易円滑化と高リスクな越境電子商取引貨物に対する強固なセキュリティ対策とのバランスを図りつつ、効率的な越境電子商取引管理に資する税関のデジタル化を進めるというコミットメントを確認する。
11.我々は、地域の発展を促進する上で連結性が果たす役割を認識し、この分野におけるこれまでの取組に留意する。この取組には、物理的、制度的及び人と人のつながりの強化を目指す「APEC連結性ブループリント(2015-2025年)」が含まれ、2026年にはその最終レビューが実施される。我々は、APEC・ビジネス・トラベル・カード(ABTC)などを通じてビジネス関係者の移動を円滑化し、域内の連結性を強化するAPECの取組を評価する。我々は、越境ビジネス活動を支援する上で効率的なデジタルツールであるバーチャルABTCを全てのAPECエコノミーが導入し、受け入れるための継続的な取組を奨励する。また、我々は、質の高いインフラ整備及び投資の重要性を再確認する。我々は、交通・観光が地域の連結性向上に果たす役割を強調する。
12.我々は、APEC地域のサービス部門における効果的な改革及び成長を支援する上で「APECサービス競争力ロードマップ(2016-2025年)」が果たす役割を認識する。我々は、革新的で競争力のある強靱なサービス部門のため、予測可能で開かれた環境を実現する有意義な改革及び協力イニシアティブの重要性を改めて表明する。この関連で、我々は2026年のAPEC貿易担当大臣(MRT)会合までに、2025年以降のサービスに関するロードマップについて、その野心的な枠組みを構築するよう実務者に奨励する。また、経済委員会(EC)とサービス・グループ(GOS)間の分野横断的な協力を奨励する。我々は、「環境及び環境関連サービスの参照リスト」のレビューの完了を歓迎し、2027年に実施される次回のレビューに期待する。
13.我々は、構造改革が効率性を高め、相互連結的な成長を支える上で不可欠であることを認識する。この関連で、我々は第4回APEC構造改革閣僚会合における、2030年に向けたAPECにおける構造改革の取組を導くための「構造改革のための強化されたAPECアジェンダ(SEAASR)」の承認を歓迎する。また、「第4次ビジネス環境改善(EoDB)行動計画」を歓迎かつ承認し、2035年までにAPECのビジネス環境を20%改善するというAPEC全体の目標の達成に向けて、APEC地域全体のビジネス環境改善のための協調的な取組を奨励する。また、我々は、APEC地域における規制環境の透明性、予測可能性及び効率性を促進するために「良い規制の実践(GRPs)」を実施する重要性を再認識する。さらに、「フォーマル経済への参加を拡大するための構造改革に関する2025年APEC経済政策報告書(AEPR)」の公表を期待し、「構造改革及びAI主導によるデジタル・トランスフォーメーション(DX)に関する2026年APEC経済政策報告書」のテーマを歓迎する。
14.我々は、「APEC文化・クリエイティブ産業(CCIs)ハイレベル対話」における議論の重要性を認識する。我々は、強力かつ新たな成長の推進力であるCCIの重要性及び知的財産権(IPR)の強固な保護の重要性を確認する。また、技術の発展によりCCIの創作、製作、流通及び消費のプロセスが急速に進展していることを認識する。我々は、APEC域内の経済成長の促進及び有形・無形の文化遺産の保全に資するCCIsの重要性に留意する。また、CCIsがAPEC域内のエコノミー間の観光、経済的、文化的、人と人とのつながり、相互理解及び相互尊重を促進する重要性にも留意する。
革新
15.我々は、アジア太平洋地域の経済競争力を強化することを目的として、デジタル格差を解消し、デジタル連結性を向上させ、デジタル・エコシステムを支援することにより、全ての人々がデジタル・トランスフォーメーション(DX)の恩恵に確実にアクセスできるよう取り組むためのコミットメントを再確認する。
16.我々は、地域全体のイノベーション、生産性及び経済成長の推進力として経済のデジタル化が果たす重要な役割を認識する。我々は、「APECインターネット及びデジタル経済に関するロードマップ(AIDER)」の目標が、急速に進化するデジタル環境における新たな機会と課題に対処する形で、2025年以降も継続的に実施されることを期待する。我々は、AIDERの進捗レビューに関し、今後の方向性を探る重要性を認識する。我々は、APECエコノミーが安価で強靱なデジタルインフラ及び能力構築を強化し、相互運用性を促進し、デジタルリテラシー及び技能を強化して円滑なDXを実施することを奨励する。我々は、デジタル経済におけるデータの重要性が増大していることを認識する。我々は、データ流通の円滑化及びデジタル取引における企業と消費者間の信頼強化に向けた協力を継続する。また、我々は、我々のデジタル経済に悪影響を与えるアジア太平洋全域の大規模なオンライン詐欺の増加を懸念し、留意する。
17.我々は、貿易の強化及び円滑化におけるデジタル化の恩恵に留意する。我々は、能力構築支援イニシアティブなどを通じた電子船荷証券、電子インボイスなどの貿易関連電子文書の越境認証の促進及び域内のペーパーレス貿易円滑化の促進に引き続きコミットする。我々は、ペーパーレス貿易の変革を促す上で官民連携が有益であることを認識する。この関連で、我々は、域内のペーパーレス貿易の推進に向けて、ABACなどの民間部門や他の関心を有するステークホルダーを含め、官民連携を強化するため、「APECペーパーレス貿易センター・オブ・エクセレンス(ACCEPT)」を設立することを歓迎する。
18.我々は、オンライン上の海賊行為や偽造品の撲滅、貿易機密の不正利用の取締り強化などの課題に対する継続的な取組を通じて、知的財産権(IPR)の保護及び行使の強化にコミットする。
19.我々は、革新的な技術の重要性を認識するとともに、科学技術の発展が課題に対処する上で有益であることを認識し、APEC地域における科学・技術・イノベーション(STI)能力の向上が重要であることを強調する。我々は、「科学者招へいプログラム」のように、科学人材の適切かつ自発的な交流などを含め、相互に利益をもたらす形による協力及び連携を通じて、そのような能力が強化され得ることを再確認する。我々は、研究開発の協力を拡大することが、共通の目標の推進及びイノベーションと技術の価値向上において重要な役割を果たす可能性があることを認識する。我々は、「デジタル週間」及び初の「デジタル・AI担当大臣会合」を主催した韓国の取組を歓迎する。
20.我々は、人工知能(AI)が世界経済に重大な影響をもたらしていることを認識しつつ、AIがイノベーション、競争力、生産性及び経済成長を推進し、アジア太平洋全域の日常生活において様々な側面を変革する重要なツールになったことを改めて表明する。この観点から、我々は、APECエコノミーがAI変革の成功裏の推進、全てのレベルにおけるAI能力構築及び強靱なAIインフラのためのエコシステム投資の促進により、AIから得られる機会を最大限に活用するために各エコノミーを支援する本年のAPECの取組を評価する。
21.また、我々は、国際貿易を変えるAIの潜在力を認識する。我々は、特に税関手続きの向上において、貿易の円滑化に寄与するようなAI活用型の手続きを導入する重要性を認識する。我々は、APECエコノミーに対し、AI関連政策に対する国内のアプローチについて民間部門と共有すること、また、貿易関連のAI標準や技術に関する自発的な交流の機会について議論することを奨励する。この関連で、実践的な協力や能力構築に焦点を当て、APEC域内の越境貿易におけるAIの活用に関する議論を継続する。
22.我々は、柔軟で活気に満ちた労働市場の重要性、また、強固な保護を全ての労働者に提供し、全ての人々のための質が高く高給で完全な雇用機会へのアクセス拡大を促進するようなダイナミックで積極的な労働市場政策を通じて、将来の雇用に対応する重要性に留意する。我々は、労働市場制度がAIなどの新興技術の急速な台頭により生じる変化に対応することが非常に重要であることを認識する。我々は、人材開発を近代化し、生涯学習プログラムを促進し、質が高く持続可能な社会的セーフティネットの強化に取り組み、それによって労働参加を推進し、労働者のための研修やリスキリング、技術向上を支援するというコミットメントを再確認する。
23.我々は、革新的な学習環境の整備に向けて、AIを含むデジタル技術を教育に組み込むAPECの取組を認識する。この目的のため、我々は、官民連携を通じた教育協力やネットワークの強化、デジタル学習リソースへのアクセスと活用の拡大及び全ての学習者にとってアクセス可能かつ安価な教育機会を確保する必要性を確認する。
24.我々は、生産性向上のためのイノベーションの促進、急速なデジタル・AIの発展に対応するデジタル金融の推進及び金融政策に関する議論を称賛する。我々は、特に「第32回財務大臣会合」において「APEC財務大臣プロセス(FMP)」の下で承認された「インチョン(仁川)プラン」を歓迎する。同計画は、イノベーション、金融、財政政策及び全ての人々へのアクセスと機会という4つの柱を中心に構成されている。
繁栄
25.異常気象、山火事、感染症の発生、食料サプライチェーンの混乱、地域における人口動態の変化の影響など、世界規模の課題が増大する中、このような共通の問題に効果的に対処するためには、共同で対応する必要があることを認識する。また、我々は、災害リスクの軽減及び対応能力の強化における進展を認識しつつも、リスク状況の進展に対処するためAPEC全体の行動を拡大する重要性を強調する。
26.我々は、「APEC海洋担当大臣会合」において議論されたとおり、海洋・沿岸地域コミュニティの強靱性及び災害対応能力を強化するため、「APEC海洋強靱性強化ロードマップ」を策定する。我々は、海洋資源の持続可能な管理を確保するための取組、海洋ごみ及びその影響への対処、海洋・海事経済問題に対する意識向上のための能力構築及び海洋リテラシーの強化、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の取締り及びAPECにおける海洋・漁業関連の強固な協力を維持する取組の重要性を強調する。我々は、漁業資源の持続可能性及びそれに依存する人々の生計にとって「寄港国措置協定」が極めて重要であることを認識する。世界の食料安全保障に寄与する上で、漁業・養殖業が果たす重要な役割を認識する。
27.我々は、万能の解決策は存在しないことを認識し、効率的な農業資源の利用を通じた生産的で強靱で革新的な農業・食料システムの促進により、地域の食料安全保障を強化する重要性を改めて表明する。我々は、食料安全保障を実現し、農業・食料サプライチェーンの混乱を最小化し、全ての人々に裨益する開かれた、公正で、透明性があり、生産的で、持続可能で、強靱で革新的な農業・食料システムを促進する上で、貿易が非常に重要な役割を果たすことを認識する。我々は、食品ロス・廃棄を減らす取組を支援し、農業・バイオテクノロジーにおけるイノベーションを促進し、地域の食料安全保障を確保し、全ての人々に安全で栄養があり十分な食料を保障するため、全てのレベルにおいて食料システムに有意義に参加する能力を強化する重要性に留意する。我々は、食料システムの現在及び新たに生じるリスクに対処するため、科学を活用した協力の促進の重要性を認識する。この関連で、我々は「2030年に向けた食料安全保障ロードマップ」を通じて、食料安全保障の強化に向けて具体的に行動するという我々の取組みを堅持する。
28.我々は、アジア太平洋全域における人口動態の重大な変化、特に出生率の低下、人口の高齢化、加速する都市化に直面し、人口動態の変化に伴う長期的な経済問題に対処し、機会を最適化する重要性を強調する。この関連で、我々は、人口動態の変化に協働で対応する方法を模索するという本年のAPECの取組を歓迎する。また、人口変動が若い世代に及ぼす影響を認識し、強靱で豊かな未来を築くため、若い世代のエンパワーメントを向上させ、必要なツールを与える重要性を強調する。この関連で、我々は「将来世代の繁栄のためのASF(APEC支援基金)サブファンド」の設立を歓迎する。
29.我々は、アジア太平洋地域の全ての人々が経済成長の恩恵と機会を享受できるよう確保する重要性を認識する。この関連で、我々は、APECがこれまで行ってきた、また現在も継続している取り組み、すなわち、強靱な経済成長のための環境整備、全ての人々の経済的エンパワーメントの促進、能力構築活動や対話を含む地域・世界市場への人々の参加向上に向けた取り組みを十分に留意する。
30.我々は、エネルギー安全保障やアクセシビリティを含むAPECエコノミーのエネルギー課題に対処するには、国内状況と優先事項に沿って、先進エネルギー貯蔵、電力網及びエネルギー効率化ソリューションと共に、利用可能なエネルギー源及び技術を利用することが必要であることを認識する。我々は、APEC地域全体で電力需要が増加していることに留意し、電力市場設計やエネルギー属性証明書(EAC)などの市場的手法が果たす役割に留意しつつ、各エコノミーの国内状況と優先事項に沿って安定した電力供給を確保する必要性を認識する。また、天然ガス及び液化天然ガス(LNG)が、各エコノミーのエネルギー・システムにおいて持続可能で、安全で、安価で、信頼性のあるエネルギーを供給するだけでなく、供給面の柔軟性をもたらす上で重要な役割を果たすことを認識する。我々は、APECエコノミーに対し、エネルギー関連の貿易と投資に有利な環境を整えることを奨励する。我々は、APECエコノミー全域におけるエネルギー安全保障及びエネルギーへのアクセスを強化する上で、エネルギー貯蓄システム、マイクログリッド、スマート送配電網及び海底電力ケーブルを含むグリッドエネルギーインフラの強化や地域の相互連結性の深化は、より効率的で信頼性のある電力ネットワークを促進し得ることを認識する。我々は、再生可能エネルギー及びエネルギー集約度に関する議論に留意する。我々は、AIの革新的な潜在力を強調し、エネルギー分野全体における導入を奨励し、また、エネルギー資源を効率的に活用し、全ての人々に恩恵をもたらす方法でデータ需要を満たす必要性に留意する。これらの取組を通じて、我々は、各エコノミーの国内状況と優先事項を尊重しつつ、均衡の取れた、安価で、信頼性のある、安全で革新的なエネルギー・システムの持続可能な発展を支援し、雇用創出や地域経済発展といった利益を生み出すことを目指す。
31.我々は、中小・零細企業(MSMEs)が経済成長エンジンであることを再確認し、中小・零細企業によるAIやデジタル技術の効果的な活用などを通じた良好なビジネス環境が、イノベーション、成長及び競争力を促進することを認識する。我々は、中小・零細企業のための環境及び革新的なエコシステムを整備するため、官民連携、また必要に応じて他のステークホルダーとの連携などを通じて連結性と協力を強化する必要性を改めて表明する。我々は、中小・零細企業及びスタートアップ企業が成長してグローバル市場に参入できるよう支援するため、サプライチェーン網の強化、ファイナンスへのアクセスの促進、連携型イノベーションの促進、規制障壁の撤廃及び大企業との関係構築を通じて、これら企業の発展を促進するアプローチを歓迎する。この意味で、我々は、「フォーマルかつグローバル経済への移行を促進するリマ・ロードマップ(2025-2040年)」などを通じた中小・零細企業の発展を促進するAPECの取組に留意する。また、「第31回APEC中小企業担当大臣会合」で承認された「APECスタートアップ企業連携に関する済州イニシアティブ」を歓迎する。
32.我々は、強靱でアクセス可能であり、高齢化に対応した質の高い医療制度を構築し、全ての人々の健康を増進するコミットメントを改めて表明する。我々は、統合された地域密着型のプライマリーヘルス・介護制度の重要性を認識する。我々は、患者中心の健康、サービスの提供、早期発見、診断、治療及び健康アウトカムを強化する上で、デジタルヘルスとAIが持つ変革的な潜在力を認識する。我々は、人間、動物、植物の健康とより広範な環境との相互関連性に対処するため、医療上の緊急事態に備えて調整された多部門サーベイランスシステムと早期警告システムの構築及び改善に向けた分野横断的な共同の取組を支持する。我々は、「保健・経済ハイレベル会合」において議論されたとおり、生涯にわたる包括的ながん対策の強化に対する共同の取組、及び自発的な知識の交換やベストプラクティスの共有におけるAPECエコノミーの協力を支持する。
33.我々は、刑事共助(MLA)に関する議論、関係当局間の情報共有強化のための方策、及び国境を越えた腐敗犯罪の撲滅におけるデジタル技術の活用を歓迎し、「国連腐敗防止条約(UNCAC)」の実施を更に促進する。我々は、国内及び海外の贈収賄を含む腐敗の防止及び撲滅に当たって、マルチステークホルダーによる関与が果たす役割に留意し、APEC腐敗対策・法執行機関ネットワーク(ACT-NET)などを通じた取組を含め、企業インテグリティ(清廉性)の強化、公益通報者の保護の推進を重視する。また、官民の両部門における腐敗防止のための研修、教育及び技術支援の重要性を強調する。また、我々は、腐敗が組織犯罪を含む他の犯罪を助長する役割を果たしていることを認識する。腐敗行為者及び不正財産に対する安全な避難先(セーフ・ヘイブン)の提供を拒絶するという我々のコミットメントを再確認する。この観点から、我々は、「腐敗と闘うための北京宣言」及び「腐敗との闘い及び透明性確保のためのサンチアゴ・コミットメント」の重要性を認識する。
組織としてのAPECの強化
34.我々は、地域経済協力のための主要なフォーラムとしてのAPECを強化するというコミットメントを再確認し、APECの使命とその自主性、非拘束性及びコンセンサス形成という基本原則に引き続きコミットする。我々は、アジア太平洋地域が直面している経済問題に対処し、より強靱で豊かな地域を創り出すため、APECエコノミーを結束させる上でAPECが果たす役割の重要性を強調する。また、我々は、APEC内におけるフォーラ横断的な連携の重要性を認識し、ビジネス界及び関連のステークホルダーと連携・協力することを奨励する。
35.我々は、2025年における全ての作業と貢献に対し、APECの各委員会、作業部会及びサブフォーラ、並びにAPEC事務局及びAPEC政策支援ユニット(PSU)に謝意を表する。我々は、2026年のAPEC事務局勘定予算及び各エコノミーの拠出金分担率を承認する。また、APECの財務管理及び持続可能性に関する課題について、財務管理委員会(BMC)において引き続き検討が行われていることを歓迎する。さらに、事務局運営の支援及び一般・専門プロジェクト資金の提供などを含め、APECエコノミーによる貢献に感謝する。我々は、財務管理委員会とPSU理事会による措置に沿って、APEC事務局の効率性の促進及び持続可能な人員配置と資源確保に引き続き取り組んでいく。我々は、ABACによる協力及び提言に感謝し、ビジネス界のステークホルダーとの関係を強化するために2025年に実施された様々な活動を歓迎する。
36.我々は、「2025年APEC高級実務者会合(SOM)議長報告」を歓迎、留意し、また、経済・技術協力運営委員会(SCE)が実施した取組を認識する。我々は、閣僚に対する「貿易・投資委員会(CTI)年次報告書」を承認する。また、「ABAC議長報告書」に留意する。我々は、PECCとAPECスタディ・センター・コンソーシアム(ASCC)による貢献を認識する。
37.我々は、韓国のAPECに対する強いコミットメントに感謝し、2025年APECを主催した韓国に謝意を表する。我々は、中国が主催する2026年APECの準備を歓迎し、2027年に議長を務めるベトナムへの歓迎の意を改めて表明する。
38.我々は、「APEC会合及びその関連会合を主催するためのガイドライン」に従い、コンセンサスに基づく多国間主義の精神により、全てのAPECエコノミーが「首脳週間」を含む全ての行事において平等な立場で参加する上で、APECが継続的に協力することを重視する。