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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 習近平主席のナザルバエフ大学での講演

[場所] 北京
[年月日] 2013年9月08日
[出典] 中華人民共和国駐日本国大使館
[備考] 
[全文]

習近平主席のナザルバエフ大学での講演

習近平国家主席は7日、カザフスタンのナザルバエフ大学で「人民の友情を広く発揚し、共にすばらしい未来を開こう」と題する重要な講演を行った。講演の全文次の通り。

人民の友情を広く発揚し、共にすばらしい未来を開こう‐ナザルバエフ大学における講演

(2013年9月7日、アスタナ)

中華人民共和国主席習近平

尊敬するナザルバエフ大統領

尊敬する学長

教官、学生の皆さん

ご在席の皆さん

こんにちは。今回、私はナザルバエフ大統領の招きで、偉大な隣邦カザフスタンを公式訪問した。ナザルバエフ大学を訪れ、皆さんとお会いする機会にめぐまれたことを非常に喜んでいる。

まず、友好的なカザフスタン人民に、ナザルバエフ大学の教官、学生の皆さんに、本日ご在席の友人の皆さんに、中国人民の心からのあいさつと祝福をお伝えしたい。

カザフ民族には、「ある土地の歴史は、そこに住む人民の歴史だ」ということわざがある。独立以来、カザフスタンはナザルバエフ大統領の指導下に、政治が長期間安定し、経済が急速に発展し、民主が大幅に改善され、国際的影響力が著しく高まった。

われわれのいるアスタナ市が、わずか十数年の間に美しい近代都市に発展したのは、カザフスタン人民がこの神奇な大地に記した一編の美しい詩にほかならない。ここで、私はカザフスタン人民の勤勉で知恵に富む奮闘を見、またカザフスタン人民の光明に満ちた将来を見た。

ご在席の皆さん。

2100年余り前、中国漢代の張騫が平和・友好の使命を担い、2度にわたり使節として中央アジアを訪問し、中国と中央アジア各国の友好往来の扉を開き、東西に横断して欧州とアジアを結ぶシルクロードを開いた。

私の故郷陜西は、古代シルクロードの起点に位置している。ここに立って、歴史を振り返ると、山間にこだまするラクダの鈴の音が聞こえ、大砂漠にゆらゆら立ち上る煙が見えるようだ。それは私に非常な親しみを感じさせる。

カザフスタンの大地は、古代シルクロードが通っていたところで、かつて東西の文明をつなぎ、異なる民族、異なる文化の相互交流と協力を促すのに重要な貢献をした。東西の使節、隊商、旅人、学者、工匠の往来が絶えず、沿線の各国は有無相通じ、互いに学び・参考にして、共同で人類文明の進歩をはかった。

古代シルクロード上の古都、アルマトイには?星海通りがあり、一つの物語が伝えられている。1941年大祖国防衛戦争が勃発し、中国の有名な音楽家?星海は転々としてアルマトイにたどり着いた。見知らぬ土地で、貧しさと病にさいなまれている時、カザフの音楽家バイカダモフが彼を引き取り、温かい家を提供した。

アルマトイで、?星海は「民族解放」、「神聖な戦い」、「満江紅」など有名な作品を創作するとともに、カザフの民族英雄オマンギャルドの話を基に、交響詩「オマンギャルド」を創作し、ファシズムに抵抗・反撃するため戦うよう人々を励まし、地元人民に幅広く歓迎された。

何百何千年来、この古いシルクロードで、各国の人民は長く語り継がれる友好の編章を共に綴ってきた。2千余年の交流の歴史で証明されたように、団結・相互信頼、平等互恵、包容〈inclusive〉・相互参照、協力・ウィンウィンを堅持しさえすれば、異なる種族、異なる信条、異なる文化的背景の国が完全に平和を共有し、共に発展することが完全に可能である。これは古代シルクロードがわれわれに残した尊い啓示〈教え〉である。

ご在席の皆さん。

20余年来、中国とユーラシア諸国の関係の急速な発展に伴って、古いシルクロードが日増しに新たな生気と活力をみなぎらせ、新しい形で、中国とユーラシア諸国の互恵協力をたえず新たな歴史的高さに押し上げている。

遠くの親戚より近くの隣人という。中国と中央アジア諸国は山河が連なった友好的隣邦である。中国は中央アジア各国との友好協力関係を大いに重視し、それを外交の優先的方向と見なしている。

目下、中国と中央アジア諸国の関係は得難い発展のチャンスを迎えている。われわれは中央アジア諸国とともに、たえず相互信頼を増進し、友好を強固にし、協力を強化して、共同の発展と繁栄をはかり、各国人民の福祉〈幸福〉をはかることを希望している。

‐‐われわれは代々の友好を堅持し、調和した、睦まじいよき隣人になるべきだ。中国はあくまでも平和的発展の道を歩み、揺るぎなく独立自主の平和外交政策をとっていく。われわれは各国人民が自主的に選んだ進路とその内外政策を尊重し、決して中央アジア諸国の内政に干渉しない。中国は地域の問題における主導権を求めず、勢力圏をつくらない。われわれはロシアおよび中央アジア各国との意思疎通と協調を強め、共に調和した地域づくりのためにたゆまぬ努力を払うことを願っている。

‐‐われわれは揺るぎなく相互に支持し、心から信頼し合うよき友人になるべきだ。国家主権、領土保全、安全・安定など重大な中核的利益にかかわる問題で、相互に支持することは、中国と中央アジア各国の戦略的パートナーシップの本質と重要な内容である。われわれは二国間と上海協力機構(SCO)の枠組み内で各国との相互信頼を強め、協力を深め、力を合わせて「三つの勢力」、麻薬密輸、国際的組織犯罪を取り締まり、地域の経済発展と人民が心安らかに暮らし楽しく働けるためのよい環境を整えることを願っている。

‐‐われわれは実務協力を大いに強化し、互恵・ウィンウィンに基づくよきパートナーになるべきだ。中国と中央アジア諸国は共に大事な発展段階にあり、かつてないチャンスを迎え、チャレンジ〈課題〉に直面している。われわれは共に自国の国情に合った中長期の目標を打ち出している。われわれの戦略的目標は一致しており、それは経済の長期的安定的発展を確保し、国家の繁栄・富強と民族の振興を実現することにほかならない。われわれは実務協力を全面的に強化し、政治関係の強み、地理的に隣接している強み、経済面の相互補完の強みを実務協力の強み、持続的成長の強みに転化させ、互恵・ウィンウィンに基づく利益共同体を築くべきだ。

‐‐われわれはより大きい度量とより広い視野をもって地域協力を広げ、ともに新たな栄光を築いていくべきだ。目下、世界経済の融合が加速し、地域協力が深まりつつある。ユーラシア地域にはすでに複数の地域協力組織ができている。ユーラシア経済共同体(EAEC)とSCOの加盟国とオブザーバー国はユーラシア、南アジア、西アジアに跨がっており、EAECとSCOの協力強化によって、われわれはより大きな発展の空間を獲得できる。

ご在席の皆さん

われわれユーラシア各国の経済的つながりを一層緊密にし、相互協力を一層深まらせ、発展空間を一層広々としたものにするため、われわれは革新的な協力モデルによって、「シルクロード経済帯」を共同で建設することができる。これは沿線の各国人民に幸せをもたらす大事業である。まず以下のいくつかの面から始めて、点で面を引っ張り、線から面へと広げ、地域の大協力を徐々に作り上げることができる。

第一、政策の疎通を強化する。各国は経済発展戦略と対策について十分な交流を行い、小異を残して大同につく原則にのっとり、協議によって地域協力推進の計画と措置を定め、政策面と法律面で地域経済融合の「ゴーサイン」を出すことができる。

第二、鉄道の連絡を強化する。SCOはいま交通円滑化協定について協議中だ。この文書に早急に調印し、それを実行に移すことで、太平洋からバルト海に至る大輸送ルートが開かれるだろう。これを基礎に、われわれは各国と国境を越えた交通インフラの整備を積極的に検討し、徐々に東アジア、西アジア、南アジアをつなぐ交通輸送網を形成し、各国の経済発展と人的往来の利便をはかることを願っている。

第三、貿易をよりスムーズにする。シルクロード経済帯の総人口は30億に近く、その市場規模と潜在力は唯一無二だ。各国の貿易、投資分野の協力の潜在力は極めて大きい。各国は貿易と投資の円滑化問題で検討を進めるとともに適当な手配をして、貿易障壁を取り除き、貿易と投資のコストを引き下げ、地域経済の循環速度と質を高め、互恵・ウィンウィンを実現すべきである。

第四、通貨の流通を強化する。中国とロシアなどは自国通貨による決済面で良好な協力を繰り広げ、喜ばしい成果を収め、また豊富な経験を積んだ。このよいやり方は押し広める必要がある。もし各国の経常取引と資本取引における自国通貨の交換性と決済が実現すれば、流通コストを大きく引き下げ、金融リスクへの抵抗力を強め、地域経済の国際競争力を高めることができる。

第五、人民の心がより通じ合うようにする。国の交わりは民の相親しむにあるという。上に述べた分野の協力をうまく進めるには、各国人民の支持を得なければならず、人民の友好往来を強化し、相互理解と伝統的友誼を増進し、民意と社会の面で地域協力のためのしっかりとした基礎を築かなければならない。

教官、学生の皆さん。

青年は民族の未来だ。カザフスタンの偉大な詩人、思想家アバイ・クナンバエフは「世界はあたかも大海のようで、時代はあたかも疾風のようだ。前の波は兄貴のようで、後の波は兄弟のようだ。風が寄せて後の波が前の波を押し、昔からずっとそうだ」と述べている。学生諸君の生気はつらつたる様子をみて、我知らず自分の大学時代を思い出した。それは忘れがたい青春の記憶である。

カザフスタンの人々はよく、「知識があれば、世界は一面の光明だ。知識がなければ、眼の前は一面の混沌だ」と言う。知識こそ力である。青年時代は知識を学び、情操を培い、能力を伸ばす黄金時代である。私は、ここから巣立った多くの学生が、必ずカザフスタンの民族振興の架け橋になるものと信じている。

SCOの枠組み内の青年交流を促進するため、中国は今後10年間、SCO加盟国に3万の政府奨学金枠を提供し、孔子学院の教師・生徒1万人を中国で研修させる。諸君がこの奨学金を利用して勉学や交流のため中国に来るよう希望する。

ここで、貴校の200人の教官・学生を来年中国でのサマーキャンプ活動に招待したい。

ご在席の皆さん。

青年は人民の友情の新たな担い手だ。若者は趣味が似ており、気持ちが通じやすい。最も話が合い、純真な友情を最も結びやすい。ここで、私は中国カザフ両国人民の付き合いにおける二つの感動的な話を思い出した。

一つ目はこんなものだ。1940年代末、新疆で仕事をしていた中国の若者が、現地の病院で働く美しい娘のワレンチナさんと知り合った。二人は心から愛し合い、結婚して子供が生まれた。その後、いくつかの客観的理由から、ワレンチナさんは帰国した。当時息子はわずか6歳だった。この子供は大きくなった後、自分の母親を探し続け、さまざまな方法を考えたが、ずっと音信がなかった。2009年、息子はついに自分の母親ワレンチナさんを探し出した。母親はアルマトイにいた。この年、息子は61歳、ワレンチナさんは80歳だった。その後、息子はアルマトイの母親を訪ね、さらに中国に招いて観光をさせた。この半世紀遅れの幸福は、中国カザフ人民の友好の力強い生き証人である。

二つ目はこんな話だ。RHマイナスは中国では非常にまれな血液型で、「パンダの血」と呼ばれている。この血液型の患者は輸血のための血液がなかなか見つからない。カザフスタンからの留学生、ルスラン君はこの血液型だった。海南大学で学んでいる時、ルスラン君は2009年から無償献血に参加し、毎年2回、中国の患者の病苦を取り除くために貢献した。中国の友人から称賛されると、ルスラン君は「僕は他人を助けるべきだと思う。献血は当たり前のことだ」と話していた。

この二つの感動的な話は、中国カザフ両国人民の友好往来の叙事詩の中の二つの断片にすぎないが、われわれ両国の人民は心がぴったり合い、兄弟のように親しいことをよく物語っている。

私は、ここにいる学生諸君を含む中国カザフ両国の青年は、必ず中国カザフ友誼の使者となり、中国カザフの全面的な戦略的パートナーシップの発展のために青春と力を捧げてくれるものと信ずる。

ご在席の皆さん。

中国カザフ両国は唇歯相依る友好的な隣邦である。1700㌔余りの国境、2千年余の往来の歴史、幅広い共通の利益はわれわれを固く一つに結びつけ、また両国関係の発展と互恵協力の深化のための広々とした展望を開いている。手を携えて、伝統的友誼を広く発揚し、共にすばらしい未来を開こうではないか。

ありがとうございます。