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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 林芳正外務大臣会見記録

[場所] 東京,外務省会見室
[年月日] 2022年7月12日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

冒頭発言

日・フィリピン外相電話会談

【林外務大臣】私(林大臣)から1点ございます。

 先ほど、マルコス政権下で外務大臣に任命されました、マナロ・フィリピン外務大臣と電話で会談を行い、マナロ外務大臣の就任につきまして、祝意を伝達いたしました。やり取りの詳細は貼り出しのとおりでございますが、マナロ大臣との間で、「自由で開かれたインド太平洋」、これの実現に向けた協力、更には、海上保安・安全保障協力、自衛隊とフィリピン国軍の間の訓練等の強化・円滑化等の二国間協力の推進、更には、東シナ海・南シナ海、ウクライナ、北朝鮮、ミャンマー、こうしたところの地域情勢、そして安保理改革を含む国連の機能強化といった分野で、連携して対応していくことで、一致したところでございます。

 本日は、南シナ海に関する比中仲裁判断、これの発出から、ちょうど6年目にあたります。マナロ大臣との間で、同判断に従って、南シナ海における紛争の平和的解決を求めていくことを確認をいたしました。また、本件に関する我が国の立場に関して、先ほど外務大臣談話を発出したところでございます。私(林大臣)からは以上です。

安倍元総理逝去(各国からの弔意)

【朝日新聞 野平記者】安倍晋三元首相が、銃撃事件で亡くなったことを受けて、各国の政府要人等から、弔意が示されていると思うんですけれども、大臣の受け止めをお願いします。

【林外務大臣】安倍元総理のご逝去に際しまして、これまで259か国・地域・機関等から、計1,700件以上の弔意メッセージが接到しておるところでございます。こうした多数の弔意メッセージが寄せられていることを受けまして、改めて、安倍元総理が、外交において残された大きな足跡、これを改めて感じているところでございます。

 安倍元総理が残されましたご功績に対しまして、敬意を表するとともに、私(林大臣)といたしましても、我が国の様々な外交課題に、引き続き、全力で取り組む決意を新たにしたところでございます。

安倍元総理逝去(外交上の功績)

【読売新聞 依田記者】今の質問の関連で、安倍元総理が、外交において残された功績、これについて、具体的にどのように考えていらっしゃるかというのと、今後の外交に、そういった点をどういうふうに生かしていくかお伺いします。

【林外務大臣】まず、民主主義の根幹である選挙が行われている中で、理不尽な暴力により命を落とされた安倍元総理に、改めて心からご冥福をお祈り申し上げるとともに、憲政史上、最長となる8年8か月もの間、内閣総理大臣として、この国を導いてこられた、様々なご功績に敬意を表し、哀悼の誠をささげたいと思います。

 安倍元総理は、外交面においても卓越したリーダーシップと実行力をもって、「地球儀を俯瞰する外交」を実践され、多大なる功績を残されておられます。強固な日米同盟の構築をはじめ、積極的に首脳外交を展開し、各国・地域と、良好な関係を築かれました。

 また、国際情勢が大変厳しい中で、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組、更には、平和安全法制の整備など、我が国の、そして世界の平和と安定のために努力をされ、その礎を築かれたところでございます。

 中でも、2016年に提唱されました「自由で開かれたインド太平洋」は、包括的かつ透明性のある方法で、インド太平洋にルールに基づく国際秩序を確保し、そのような自由で開かれた秩序を発展させていくことを目指すビジョンとして、今や世界の多くの国・地域から支持を受けております。国際秩序が大きな挑戦を受ける中、このビジョンの重要性は、かつてなく高まっていると認識をしております。

 今後の日本外交の礎を築かれた安倍元総理の遺志を継いで、岸田政権として、国際社会の平和と繁栄、これを実現すべく、日米同盟の一層の強化、ASEANや欧州などの同志国との連携、そして「自由で開かれたインド太平洋」、この実現に向けた協力にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

安倍元総理逝去

【読売新聞 依田記者】もう一点、関連で、所掌外になってしまうので、大変恐縮です。今回、安倍元総理が亡くなられた事件は、警備上の問題が各所で指摘されておりますけど、ご所感があればお願いいたします。

【林外務大臣】いろいろなご指摘等が報道等であることは承知しておりますが、まさに所管外でございますので、私(林大臣)からコメントは差し控えたいと思います。

ウクライナ情勢(対ロシア制裁)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 木原記者】昨日、岸田総理は普遍的価値と国際ルールに基づく新たな時代の秩序作りをG7が主導していく意思を歴史の重みをもって示しています。中立的な立場を取っている、一部のASEAN諸国やアフリカ諸国に働きかけると述べられています。

 現在、対露制裁に参加している国は、欧米中心に世界の40か国弱のみで、国連加盟国のうち150か国以上が、制裁に参加していません。ロシアは、中国やロシア産石油を旺盛に格安で購入しているインドなど、BRICSとSCOを軸に、イランや親米国家だったはずのサウジアラビア、アルゼンチンなどと連携が進んでいます。米国主導で、ロシアを排除するのは、もっぱら欧米と日本で、他の国は、むしろ米国の覇権の下での国際秩序から抜け出して、多様性ある国際秩序を作ろうとしているように見えます。対露制裁は、G7がインフレなどに苦しむ一方、制裁に参加していない国々は、成長率はG7を上回っています。ロシアが提唱した新G8は、名目GDPの合計額がG7の67%ですが、購買力平価GDPで見れば1.25倍と逆転しています。日本が働きかけることで対露制裁に参加し、G7が主導する新たな時代の秩序に参加するアジア・アフリカ諸国は、どの国で、何か国ぐらいと見込んでいらっしゃいますでしょうか。よろしく願います。

【林外務大臣】我が国としては、これまでのG7首脳声明等を踏まえて、厳しい制裁措置を着実かつ速やかに実施してきておるところでございます。

 我が国を含む各国の制裁措置によりまして、物価の上昇や外国企業の撤退、操業停止など、ロシア経済には、様々な影響が出ていると認識をしております。

 ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙でありまして、高い代償を伴うことを示していくことが重要であります。一刻も早く、ロシアが侵略を止めるように、また、そのためにも、制裁の抜け道が生じないようにして、制裁が一層効果的なものとなるよう、我が国としても、引き続き、G7を始めとする国際社会と結束して、強固な制裁を講じていきたいと考えております。

 また、G20等のバッファーを活用しながら、中間的な立場と言われている国々にも、引き続き、しっかりと働きかけ、アウトリーチをしてまいりたいと考えております。

安倍元総理逝去(頼清徳台湾副総統の訪日)

【朝日新聞 野平記者】最初の質問の関連になるんですけれども、台湾の副総統が、安倍総理の弔問のために訪日されました。現職の高官が訪日されるのは異例のことだと思うんですけれども、大臣の受け止めをお願いします。

【林外務大臣】今、ご指摘のあった人物につきましては、安倍元総理の葬儀に参加するため、あくまで私人として私的に訪日をされているものというふうに承知をしております。

 何れにせよ、台湾との関係を非政府間の実務関係として維持するという、我が基本的立場、これには何ら変更はないということでございます。

ウクライナ情勢(対ロシア制裁)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 木原記者】先ほどの…。

【司会】質問は、マイクにてお願いします。

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 木原記者】先ほどの繰り返しになるんですけれども、日本が働きかけることによって、対露制裁に参加するアジア・アフリカ諸国はどの国で、何か国ぐらいというふうに見込んでいらっしゃいますでしょうか。

【林外務大臣】特に具体的な数字を申し上げることは控えたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、G7等を中心として、いろいろな場を活用しながら、アウトリーチ、働きかけを継続してまいりたいと思っております。