[文書名] 林外務大臣会見記録(2023年7月25日)
冒頭発言
林外務大臣の南西アジア・アフリカ訪問
【林外務大臣】私(林大臣)から1件ございます。
改めてになりますが、7月27日から8月4日まで、インド、スリランカ、モルディブ、南アフリカ、ウガンダ、エチオピアをそれぞれ訪問いたします。なお、ウガンダは、我が国外務大臣として、初めての訪問になります。
日本と南西アジア諸国は、伝統的に友好な関係にございまして、「自由で開かれたインド太平洋」、FOIPの実現に向けた重要なパートナーであります。3月に、岸田総理が発表されましたFOIPの新たなプランにおいても、最重点地域の一つと位置づけられております。また、アフリカは、今後長期にわたって人口の増加及び市場の成長が予想されまして、日本外交における重要性が、ますます高まる地域であります。日本は、TICADプロセスを通じて、長年にわたりアフリカのパートナーとして、その自律的発展を支援してまいりました。これら南西アジア地域、そして東部・南部アフリカ地域の安定と発展、これは、広くインド太平洋地域の平和と繁栄につながります。
国際社会が様々な課題に直面する中で、いわゆるグローバル・サウスと呼ばれる国々を始めとする、国際社会の幅広い声を聞き、これらの国々に寄り添って、様々な課題の解決に向けて取り組んでいくことが、ますます重要となっております。今回の訪問では、南西アジア・アフリカ諸国の政府要人と胸襟を開いて意見交換を行い、二国間関係の更なる強化について議論をするとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、これに向けまして、協力を確認したいというふうに思っております。
私(林大臣)からは以上です。
林外務大臣の南西アジア・アフリカ訪問(インド日程)
【NHK 岩澤記者】冒頭の外遊の関連で伺います。グローバル・サウスの代表格とされるインドとの間では、今年に入り、岸田総理がインドを訪れたり、モディ首相がG7広島サミットに出席したりするなど、首脳間の外交が活発になっていますが、こうした中で、今回インドで外相会談を行うことの意義をどのようにお考えでしょうか。また、インド滞在中に、モディ首相と会談する予定は、今あるでしょうか。
【林外務大臣】基本的価値と戦略的利益、これを共有をするインドは、FOIP実現のための重要なパートナーであります。
今回の訪印では、G7・G20の議長国間の連携、そして、二国間関係の強化など、5月の広島で行われた首脳会談のフォローアップを行いまして、9月のG20ニューデリー・サミットに向けた協力、これを確認していきたいと思っております。
インドにおける具体的な日程は、引き続き調整中でございますが、モディ首相は、デリーを不在にしていらっしゃるということで、モディ首相への表敬は予定をされておりません。
林外務大臣の南西アジア・アフリカ訪問(アフリカ日程:食料安全保障)
【朝日新聞 上地記者】出張に関連してお伺いします。ロシアとアフリカの関係についてですが、「黒海イニシアティブ」のロシアの参加終了によって、ロシアは、要因が西側の経済制裁にあるとし、独自でアフリカの食料を支援する考えを示しています。大臣が訪問する前には、ロシア・アフリカ首脳会議も開かれますが、食料安全保障をめぐって、大臣は、この日本の立場を、どのように理解を求め、働きかけを行う考えでしょうか。
【林外務大臣】ロシアの拒否によって、「黒海穀物イニシアティブ」が終了したということは極めて遺憾であり、世界の食料安全保障に与える影響、これを懸念しております。
我が国は、世界の食料安全保障を確保していくために、ロシアが国際的な枠組みに復帰をし、ウクライナからの穀物輸出が再開されますように、強く求めることが重要であると考えております。今回訪問するアフリカ諸国とも、こうした考えを共有していく考えでございます。
なお、日本を含むG7各国による対露制裁、これは、人道的な観点から、食料、肥料等、日常生活の必需品は対象にしていないということ、このことについても、しっかりと説明してまいりたいと思います。
林外務大臣の南西アジア・アフリカ訪問(南アフリカ共和国:ウクライナ情勢)
【NHK 岩澤記者】続けて外遊の関連で伺います。今回訪問する、この南アフリカは、ロシアと長年友好関係にあり、ウクライナ情勢をめぐってもロシアを明確に非難せず、中立的な立場をとっていますが、今回の訪問では、ウクライナ情勢をめぐって、この南アフリカに対して、どのような働きかけを行う方針でしょうか。また、南アフリカ滞在中に、ラマポーザ大統領と会談する予定はあるでしょうか。
【林外務大臣】今後、長期にわたりまして成長が見込まれるアフリカ、これは、日本外交における重要性が、ますます高まっている地域でございます。特に、南アフリカは、G20メンバーであると同時に、本年のBRICSの議長国でもあるわけです。そうした同国との間で、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして、その他の重要な国際課題への対応において議論をし、更なる連携を図る意義、これは現下の情勢で、ますます高まっていると考えております。
こうした観点から、今回の訪問においては、南アフリカとしっかり協議を行う考えでございます。滞在中の具体的な日程については、現在調整中でありまして、何か決まっていることはございません。
ALPS処理水(多言語による情報発信)
【産経新聞 岡田記者】中国が拡散する偽情報の対策について伺います。中国は、福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり偽情報を発信して、日本への批判を強めています。また、現在、外務省はYouTubeのチャンネルで、この処理水の安全性を説明する動画を公開しています。最新の動画では、英語で配信されているわけですが、今後この動画を中国語や韓国語など、多言語で配信するお考えはありますか、今後の対応方針を教えてください。
【林外務大臣】ALPS処理水につきましては、科学的根拠に基づいて、客観的かつ正確な情報提供するということが、その安全性についての国際社会の一層の理解を得る上で、また、風評を抑制する上でも、極めて重要だと考えております。
この動画についても、こうした観点から制作をいたしました。
英語版についてお話がありましたように、既に外務省ホームページやYouTubeチャンネルで公開しております。効果的な情報発信の観点から、日本語、中国語、これは簡体字・繁体字ですが、韓国語を含む多言語の字幕版も随時公開しております。
外務省としては、今後とも、ALPS処理水の安全性について、科学的根拠に基づいて、高い透明性を持って、国際社会に対して、日本の立場を丁寧に説明をし、理解が深まるように努めてまいりたいと考えております。
日中韓プロセスの再稼働
【TBS 宮本記者】話題変わりまして、日中韓の高官協議について伺います。先日14日に、ジャカルタで、中国の王毅(おう・き)さんと会われた際に、先方から日中間の高官級の協議について提案があったと報道されています。この協議について持ちかけてきた中国政府の意図をどういうふうに分析してらっしゃるか、日中韓で、実際にその高官級の協議が行われるとしたら、その意義、期待するところがあればお伺いさせてください。
【林外務大臣】14日に行われました王毅・中国共産党中央外事工作委員会弁公室主任との会談では、4月に行われました日中外相会談に引き続き、日中韓プロセスの重要性について意見交換を行い、首脳・外相レベルを含む、日中韓プロセスを再稼働させていくということで、改めて一致をいたしました。
中国側の意図についてお答えする立場にはございませんが、地域の平和と繁栄に大きな責任を共有する日中韓の3首脳が一堂に会して、日中韓の協力の方向性、また具体的な協力の在り方、更には地域の諸課題等について議論するということは、大変有意義だと考えております。
今後の日中韓協力の具体的なプロセス日程等につきましては、ご指摘のあった協議も含めて、まだ何ら決まっておりませんが、中国との間で首脳・外相レベルにおいて、日中韓プロセスを再稼働させていくということで一致していること、そして、韓国との間でも、日中韓プロセスについて、議長国である韓国の取組を支持していること、こうしたことを踏まえつつ、3か国の事務レベルで、しっかりと検討を進めていきたいと考えております。
【毎日新聞 川口記者】関連して、日中韓の3か国首脳会談についてお伺いします。先日、ASEAN+3の外相会談の中では、韓国の朴振(パク・チン)外相が、首脳会談を今年末の開催推進をしたいという表明をされていますが、日本政府として、どのような対応をとるのか、併せて、日中関係、二国間では、ALPS処理水の放出に関する懸案も今ありますが、3か国首脳会談の開催に影響があるとお考えか、大臣の所感をお願いします。
【林外務大臣】地域の平和と繁栄に大きな責任を共有いたします日中韓の3首脳が、一堂に会して、日中韓の協力の方向性や具体的な協力の在り方、地域の諸課題等について議論することは、有意義だと考えております。先ほど申し上げたとおりでございます。
その上で、ALPS処理水の放出につきましては、IAEA包括報告書において、関連の国際安全基準に合致しており、人及び環境への放射線影響は、無視できる程度であるということが結論として示されております。こうした点を含めて、政府としては引き続き、ALPS処理水の安全性について高い透明性をもって、国際社会に丁寧に説明していく考えでございまして、また中国に対しては、科学的根拠に基づく基づいた議論を行うように強く求めてまいります。
いずれにいたしましても、今後の日中韓協力の具体的なプロセスや日程については、中国との間で首脳・外相レベルにおいて、日中韓プロセスを再稼働させていくことで一致していること、韓国との間でも、日中韓プロセスについて議長国である韓国の取組を支持していること、これを踏まえながら、3か国の事務レベルで、しっかりと検討を進めていきたいと考えております。
北朝鮮によるミサイル発射
【朝日新聞 上地記者】北朝鮮のミサイルについてお伺いします。昨夜遅くに、北朝鮮が弾道ミサイル2発を発射しましたが、抗議や電話会談など、外務省としての対応をお伺いします。
【林外務大臣】昨日の北朝鮮による、2発の弾道ミサイル発射を含めまして、北朝鮮が前例のない頻度と新たな態様で、弾道ミサイル発射を繰り返していることは、我が国の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であります。また、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できないと考えております。こうした発射は、関連する安保理決議に違反するものであります。
昨日の北朝鮮による弾道ミサイル発射を受けまして、北京の「大使館」ルートを通じて厳重に抗議し、強く非難をいたしました。
また、本25日ですが、船越アジア大洋州局長は、ソン・キム米国北朝鮮担当特別代表、そして、金健(キム・ゴン)韓国外交部朝鮮半島平和交渉本部長と、日米韓電話協議を行いまして、北朝鮮による弾道ミサイル発射を強く非難をした上で、日米韓による緊密な連携を確認をいたしました。
我が国としては、安保理理事国、そして本年のG7議長国として、米国、韓国を始めとする国際社会と協力しながら、日米韓の安全保障協力を含む地域の抑止力強化、関連する国連安保理決議の完全な履行を進めて、北朝鮮の非核化を目指して参ります。