データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 患家消毒薬品費ハ市町村費支弁ニ関スル件

[場所] 
[年月日] 1908年5月
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(臨時検疫局長あて大阪府知事照会)

法律第三十六号ヲ以テ伝染病予防法御改正相成其第五条ニ於テ消毒薬費等ハ患家負担ニ規定相成候処抑々予防消毒ノ事務ハ最敏速ヲ要スルハ論ヲ俟タサル次第ニ候然ルニ之ヲシテ患家ノ支弁ニ属セシメムカ伝染病発生ノ通報ニヨリ当該吏員患家ニ臨検シ消毒ヲ施行セムトスルモ薬品器具ノ設備ナク消毒人夫ニ至リテハ普通人ノ応スルモノナク遠ク其人ヲ需メサルへカラス夫レ斯クスルトキハ一人ノ患者ニ対シ十数時間ヲ要シ一日数十名ノ患者ヲ発生スル場合ニ於テハ其消毒己済ニ至ルハ数日ヲ費ササルへカラス殊ニ各自雇入レル消毒人夫等ノ消毒ヲモ一々執行セサレハ之ヨリ病毒ノ伝播ヲナスノ虞アルヨリ一定ノ方法ヲ設ケ消毒人夫等ハ区役所若ハ警察署ニ常設シ何時ニテモ実用ニ応スルノ準備ヲナシ従来ヨリ予防消毒ニ要スル費用ハ全然市ノ負担ヲ以テ支弁シ来リ予防消毒ノ実ヲ挙ケ来リタルニ該法律ノ改正ニ伴ヒ市費支弁ノ良習慣ヲ破リ因習ノ久シキ今日ニ於テ俄カニ患家ノ負担ニセンカ市費支弁ノ消毒スラ実行上困難ナリ況ンヤ各自支弁ニ於テヲヤ到底言フへクシテ行ハレ難ク予防上大ナル関係ヲ来シ候次第ニ市ニ於テ必要ヲ認メ市ノ任意ニヨルトキハ従ノ如ク市費支弁敢テ差支無之哉至急何分ノ御指示相成度此段相伺候也

(明治四一年五月 阪甲第一七三号)

(大阪府知事あて臨時検疫局長回答)

右患家消毒ノ義務ハ新法ニ依リ新タニ創定セラレタルモノニ無之従前ト雖トモ患家ニ於テ消毒スへキモノナレトモ之ヲ施行セス又ハ遅滞スルノ状況ニシテ患家ニ任スルトキハ不十分ナルヲ以テ市町村費ヲ以テ消毒ヲ行ヒ来リタルモノニ有之市町村内患家ノ状況右ノ如クナルニ於テハ新法施行後ト雖トモ市町村費ヲ以テ消毒ヲ施行スヘキモノニ有之予防法第二十六条ノ精神亦此ニ外ナラサル儀ト存候ニ付従来ノ慣行ニ依リ市費ヲ以テ患家ノ消毒ヲセラレ差支無之ト存候経伺ノ上此段及通牒候也