[文書名] 海港ノ國際制度ニ關スル條約,規程(海港の国際制度に関する条約,規定)
(定訳)
海港ノ國際制度ニ關スル條約
大正一二年一二月九日 ジュネーヴで署名
大正一五年七月二六日 効力発生
大正一五年八月四日 批准
大正一五年九月三〇日 批准書寄託
大正一五年一〇月二八日 公布(条約第五号)
大正一五年十二月二九日 効力発生
(前文省略)
右各員ハ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認󠄁メタル後左ノ如ク協定セリ
第一條
締約國ハ千九百二十三年十一月十五日「ジュネーヴ」ニ於テ開催セラレタル交通及通過ニ關スル第二囘總會ニ依リ棌擇セラレタル本條約附屬ノ海港ノ國際制度ニ關スル規程を受諾スルコトヲ宣言ス
右規程ハ本條約ノ一部ヲ構成スルモノト認󠄁メラレルヘシ從テ締約国ハ同規程中ニ定ムル條項及條件ニ從ヒ同規程ノ義務及約定ヲ受託スルコトヲ玆ニ宣言ス
第二條
本條約ハ千九百十九年六月二十八日「ヴェルサイユ」ニ於テ署名セラレタル平和條約又ハ其ノ他ノ同種ノ諸條約ノ署名國又ハ受益國ニ關スル限リ右諸條約ノ規定ヨリ生スル權利及義務ニ何等ノ影響ヲ及ホスコトナシ
第三條
本條約ハ佛蘭西語及英吉利語ノ本文ヲ以テ共ニ正文トシ本日ノ日附ヲ有スヘク且「ジュネーヴ」會議ニ其ノ代表者ヲ出セル國、國際聯盟ノ聯盟國及署名ノ爲国際聯盟理事會ヨリ條約ノ謄本ヲ送付セラレタル國ハ何レモ千九百二十四年十月三十一日迄署名スルコトヲ得ヘシ
第四條
本條約ハ批准ヲ要ス批准書ハ國際聯盟事務總長ニ之ヲ寄託スヘク事務總長ハ之カ受領ヲ本條約ニ署名シ又ハ加入シタル一切ノ國ニ通知スヘシ
第五條
第一條ニ掲ケタル會議ニ代表者ヲ出セル國、國際聯盟ノ聯盟國又ハ加入ノ爲國際聯盟理事會ヨリ條約ノ謄本ヲ送付セラレタル國ハ何レモ千九百二十四年十一月一日以後本條約ニ加入スルコトヲ得
加入ハ國際聯盟事務局ノ記錄ニ寄託スル爲事務總長ニ送付スル文書ニ依リ之ヲ爲スヘシ事務總長ハ直ニ該寄託ヲ本條約ニ署名シ又ハ加入シタル一切ノ國ニ通知スヘシ
第六條
本條約ハ五國ノ名ニ於テ批准セラルル迄實施セラレサルヘシ其ノ實施ノ日ハ國際聯盟事務總長カ第五ノ批准書ヲ受託シタル後九十日目トス爾後本條約ハ其ノ批准書又ハ加入ノ通吿ノ受領ノ後九十日ニシテ各當該國ニ關シ効力ヲ生スヘシ
事務總長ハ國際聯盟規約第十八條ノ規定ニ從ヒ本條約ノ實施ノ日ニ於テ本條約ヲ登錄スヘシ
第七條
國際聯盟事務總長ハ本條約ニ署名シ、之ヲ批准シ、之ニ加入シ又ハ之ヲ廢棄シタル當事國ヲ、第九條ノ規定參酌ノ上、表示スル特別ノ記錄ヲ保存スヘシ右記錄ハ聯盟國ヲシテ何時ニテモ之ヲ閲覽スルコトヲ得シムへク又聯盟理事會ノ指示ニ從ヒ成ルへク屢之ヲ公表スヘシ
第八條
前記第二條ノ規定ハ之ヲ留保シ各當事國ハ自國ニ關シ本條約ノ實施セラレタル日ヨリ五年ヲ經タル後ハ之ヲ廢棄スルコトヲ得廢棄ハ國際聯盟事務総長ニ宛テタル書面ノ通吿ニ依リ之ヲ爲スヘシ事務總長ハ直ニ他ノ一切ノ當事國ニ右通吿ノ謄本ヲ送付シ右通吿受領ノ日ヲ通知スヘシ
廢棄ハ事務總長カ其ノ通吿ヲ受領シタル日ノ後一年ニシテ其ノ効力ヲ生シ且通吿ヲ爲シタル國ニ關シテノミ効力アルモノトス
第九條
本條約ニ署名シ又ハ加入スル國ハ其ノ本條約ノ受諾カ其ノ主權又ハ權力ノ下ニ在ル植民地、海外屬地、保護領又ハ海外地域ノ何レカ又ハ全部ヲ含マサル旨ヲ其ノ署名、批准又ハ加入ノ際宣言スルコトヲ得ヘク且右宣言ニ依リ除外セラルル右植民地、海外屬地、保護領又ハ地域ノ爲ニ其ノ後ニ於テ第五條ノ規定ニ從ヒ加入スルコトヲ得ヘシ
廢棄ハ亦右植民地、海外屬地、保護領又ハ地域ニ付各別ニ之ヲ爲スコトヲ得ヘク第八條ノ規定ハ右廢棄ニ適用セラルヘシ
第十條
本條約ノ改正ハ締約国ノ三分ノ一ニ依リ何時ニテモ之ヲ請求スルコトヲ得ヘシ
右證據トシテ前記各全權委員ハ本條約ニ署名セリ
千九百二十三年十二月九日「ジュネーヴ」ニ於テ本書一通ヲ作成シ之ヲ國際聯盟事務局ノ記錄ニ寄託保存ス
(署名省略)
(定訳)
規程
第一條
航海船ノ平常出入シ且外國貿易ノ爲使用セラルル一切ノ港ハ本規程ノ意味ニ於テ海港ト認󠄁メラルヘシ
第二條
相互主義ノ原則ニ從ヒ且第八條第一項ニ掲クル留保ノ下ニ各締約国ハ其ノ主權又ハ權力ノ下ニ在ル海港ニ於テ該海港ヘノ出入ノ自由及該海港ノ使用ニ關シ竝船舶、其ノ積荷及旅客ニ右締約國カ許與スル航海上及商業經營上ノ便益ノ完全ナル享有ニ關シ他ノ各締約國ノ船舶ニ對シ自國船舶又ハ他ノ何レカノ國ノ船舶ニ許與スルト均等ナル待遇ヲ許與スヘキコトヲ約ス
斯ク確立セラレタル均等待遇ハ碇泊地點ノ振當、荷積上及荷卸上ノ便益ノ如キ一切ノ種類ノ便益竝政府、官公署、特許事業者若ハ各種企業ノ名ニ於テ又ハ其ノ計算ニ於テ課セラルル一切ノ種類ノ稅金及料金ニ及フヘシ
第三條
前條
ノ規定ハ權限アル港ノ官憲カ港務ノ適當ナル處理ノ爲ニ便宜ナリト認󠄁ムル措置ヲ執ルノ自由ヲ何等制限スルモノニ非ス但シ右措置ハ同條ニ規定セラルル均等待遇ノ原則ニ適合スルモノタルヘシ
第四條
海港ノ使用ニ對シ課セラルル一切ノ稅金及料金ハ其ノ實施前適當ニ之ヲ公表スヘシ
前項ノ規定ハ港ノ內規及規則ニ之ヲ適用スヘシ
各海港ニ於テハ港ノ官憲ハ現行ノ稅金及料金ノ表竝內規及規則ノ寫ヲ備ヘテ一切ノ利害關係者ノ閲覽ニ供スヘシ
第五條
締約國ノ主權又ハ權力ノ下ニ在ル海港ニ依ル貨物ノ輸入又ハ輸出ニ對シ課セラルヘキ關稅及其ノ他ノ類似ノ稅、地方入市稅若ハ消費稅又ハ附帶的課金ノ決定及適用ヲ爲スニ付テハ船舶ノ國籍ハ之ヲ考慮ニ入ルへカラス從テ締約國中ノ何レカノ國ノ船舶ノ不利益ト爲ルヘキ何等ノ差別ハ右船舶ト港ノ上ニ主權若ハ權力ヲ有スル國ノ船舶又ハ其ノ他ノ何レカノ國ノ船舶トノ間ニ於テ之ヲ設クルコトヲ得ス
第六條
第二條ニ規定スル海港ニ於ケル均等待遇ノ原則カ海港ヲ使用スル締約國ノ船舶ニ對スル他ノ差別方法ノ採用ニ依リテ實際上無效ナラシメラルルコトナカラシムル爲各締約國ハ其ノ千九百二十三年十二月九日「ジュネーヴ」ニ於テ署名セラレタル鐵道ノ國際制度ニ關スル條約ノ當事國タルト否トヲ問ハス該條約附屬規程ノ第四條、第二十條、第二十一條及第二十二條ノ規定カ海港ニ到リ又ハ之ヨリ發スル運輸ニ適用セラレ得ル限リ之ヲ適用スヘキコトヲ約ス前記諸條ハ右條約ノ署名議定書ノ規定ニ從ヒ之ヲ解釋スヘシ(附屬書參照)
第七條
特別ナル地理上、經濟上又ハ技術上ノ特殊狀態ニ基ク理由ノ如キ例外ヲ設クルノ正當ナル特別理由アル場合ヲ除クノ外締約國ノ主權又ハ權力ノ下ニ在ル海港ニ於テ課セラルル關稅ハ同國ノ他ノ關稅境界ニ於テ同一種類ニ屬シ同一發送地ヨリ來リ又ハ同一到逹地ニ到ル貨物ニ課セラルル關稅ヲ超ユルコトヲ得ス
締約國ノ一カ貨物ヲ輸入シ又ハ輸出スル他ノ通路ニ於テ前記ノ特別理由ニ依リ關稅上ノ特別便益ヲ許與スルトキハ同國ハ其ノ主權又ハ權力ノ下ニ在ル海港ニ依ル輸入又ハ輸出ニ對スル不公正ナル差別ノ手段トシテ該便益ヲ使用スルコトヲ得ス
第八條
締約國ノ各ハ該締約國ノ船舶、其ノ積荷及旅客ニ對シ本規程ノ條項ヲ自己ノ主權又ハ權力ノ下ニ在ル海港ニ於テ有效ニ適用セサル國ノ船舶ニ對シ、外交手續ニ依リ通吿ヲ爲シタル後、均等待遇ノ便益ヲ停止スルノ權ヲ留保ス
前項ニ規定スル處置ノ執ラレタル場合ニ於テハ處置ヲ執リタル國及處置ヲ受ケタル國ハ何レモ常設國際司法裁判所ニ、書記宛ノ請求ニ依リ、出訴スルノ權利ヲ有スヘシ同裁判所ハ簡易手續ノ規則ニ從ヒ右事件ヲ解決スヘシ
尤モ各締約國ハ本條第一項ニ規定スル處置ヲ執ルノ權利ヲ抛棄スル旨ノ宣言ヲ爲スコトアルヘキ他ノ國ニ對シ右處置ヲ執ルノ權利ヲ抛棄スルコトヲ本條約ノ署名又ハ批准ノ際宣言スルノ權利ヲ有スヘシ
第九條
本規程ハ海上沿岸貿易ニ何等適用ナルモノトス
第十條
各締約國ハ第二條及第四條ノ規定ニ違反セサル限リ自国ノ海港ニ於ケル曳船業務ニ關シ其ノ適當ト認󠄁ムル施設ヲ爲スノ權利ヲ留保ス
第十一條
各締約國ハ水先案內業務ヲ其ノ適當ト認󠄁ムル所ニ從ヒ組織シ且管理スルノ權利ヲ留保ス水先案內カ强制的ナル場合ニ於テハ料金及提供セラルル便益ニ付テハ第二條及第四條ノ規定ニ從フヘキモノトス尤モ各締約國ハ必要ナル技術的資格ヲ有スル自国民ニ對シ强制的水先案內ノ義務ヲ免徐スルコトヲ得
第十二條
各締約國ハ自國法規ノ規定ニ從ヒ出移民運送ヲ、右法規ノ要件ヲ充スモノトシテ特別許可ヲ與ヘラレタル船舶ノミニ局限スルノ權利ヲ留保スル旨ヲ本條約ノ署名又ハ批准ノ際宣言スルノ權能ヲ有スヘシ尤モ右権利ヲ行使スルニ付テハ締約國ハ能フ限リ本規程ノ原則ニ從フヘシ
斯ク出移民ノ運送ヲ許サレタル船舶ハ本規程ノ一切ノ利益ヲ一切ノ海港ニ於テ享有スヘシ
第十三條
本規程ハ一切ノ船舶ニ對シ其ノ所有者又ハ管理者ノ公私ヲ問ハス之ヲ適用ス
尤モ本規程ハ軍艦、警察上若ハ行政上ノ職務ヲ執行スル船舶、一般ニ何等カノ公權ヲ行使スル船舶又ハ國ノ海軍、陸軍若ハ空軍ノ爲ニ一時專用セラルル其ノ他ノ船舶ニ對シテハ何等之ヲ適用セサルモノトス
第十四條
本規程ハ漁船又ハ其ノ漁獲物ニ何等適用ナキモノトス
第十五條
締約國カ他ノ國ノ領域ニ到リ又ハ之ヨリ來ル貨物又ハ旅客ノ通過ヲ容易ナラシムル爲條約、協約又ハ取極ニ基キ自國海港ノ一定區域內ニ於テ該國ニ對シ特殊權利ヲ許與シタル場合ニハ他ノ締約國ハ同様ナル特殊權利ノ要求ヲ支持スル爲本規程ノ條項ヲ援用スルコトヲ得ス
締約國タルト否トヲ問ハス他ノ國ノ海港ニ於テ前記ノ特殊權利ヲ享有スル各締約国ハ自國ト通商スル船舶、其ノ積荷及旅客ノ待遇ニ關シ本規程ノ條項ニ從フヘシ
非締約國ニ前記ノ特殊權利ヲ許與スル各締約國ハ前記權利ヲ享有スルニ至ル國ニ對シ許與ノ條件ノ一トシテ該國ト通商スル船舶、其ノ積荷及旅客ノ待遇ニ關シ本規程ノ條項ニ從フノ義務ヲ課スルコトヲ要ス
第十六條
締約國カ其ノ國ノ安全又ハ緊切ナル利益ニ影響スル事變ノ場合ニ於テ執ルノ巳ムナキニ至リタル一般的又ハ特別的性質ノ措置ニ在リテハ例外トシテ且成ルヘク短期間ニ限リ第二條乃至第七條ノ規定ニ依ラサルコトヲ得但シ本規程ノ原則ハ成ルヘク廣キ範圍ニ於テ之ヲ遵守スルコトヲ要スルモノトス
第十七條
何レノ締約國ト雖公衆衞生若ハ公安ノ爲又ハ動植物ノ病疫豫防ノ爲其ノ領域內ニ入ルコトヲ禁止セラルル旅行者又ハ其ノ輸入ヲ禁止セラルル種類ノ貨物ニ對シ通過ヲ許容スルノ義務ヲ本規程ニ依リ負フルコトナカルヘシ通過運輸以外ノ運輸ニ關シテハ何レノ締約國ト雖其ノ國法ニ依リ其ノ領域內ニ入ルコトヲ禁止セラルル貨物ノ輸送ヲ許容スルノ義務ヲ本規程ニ依リ負フコトナカルヘシ
各締約國ハ危險ナル貨物又ハ之ト類似ノ性質ヲ有スル貨物ノ輸送ニ關シ必要ナル豫防措置及自國領域ニ入リ又ハ之ヨリ出ツル移民ノ取締ヲモ包含スル一般警察措置ヲ執ルノ權利ヲ有スヘシ但シ該措置ハ本規程ノ原則ニ反スル何等ノ差別ヲ齎スルコトヲ得サルモノトス
本規程ハ締約國ノ一カ其ノ當事國タル又ハ今後締約セラルルコトアルヘキ一般的國際條約殊ニ國際聯盟ノ主宰ノ下ニ締結セラルル條約ニシテ婦人及兒童ノ賣買ニ關シ又ハ阿片其ノ他ノ有害藥物、武器若ハ漁業產物ノ如キ特殊ノ物品ノ通過、輸出若ハ輸入ニ關スルモノニ從ヒ或ハ工業所有權、文學的若ハ美術的著作權ノ侵害ヲ防止スルコトヲ目的トスル又ハ虚僞ノ標章、虚僞ノ原產地表示若ハ其ノ他ノ不正競爭方法ニ關スル一般的條約ニ従ヒ執ルコトヲ要スル措置又ハ執ルコトヲ要スト思惟スルコトアルヘキ措置ニ何等ノ影響ヲ及ホササルヘシ
第十八條
本規程ハ戰時ニ於ケル交戰國及中立國ノ權利及義務ヲ規定スルモノニ非ス尤モ本規程ハ戰時ニ於テ右權利及義務ノ許ス限度ニ於テ其ノ效力ヲ持續スヘシ
第十九條
締約國ハ千九百二十三年十二月九日現行ノ諸條約ニシテ本規程ノ條項ニ牴觸スルモノニ對シ、事情ノ許ス限リ速ニ及如何ナル場合ニ於テモ右條約ノ終了ニ際シ、關係國又ハ關係地方ノ地理的、經濟的又ハ技術的事情ノ許ス限リ該條項ト調和セシムル爲ニ必要ナル修正ヲ加フルコトヲ約ス
右規定ハ海港ノ全部又ハ一部ノ利用ニ付千九百二十三年十二月九日以前ニ許與セラレタル特許ニ對シ適用セラルヘシ
第二十條
本規程ハ本規程ニ規定セラルルモノヨリモ一層大ナル便益ニシテ海港ノ使用ニ關シ本規程ノ原則ニ合致スル條件ヲ以テ許與セラレタルモノノ撤廢ヲ何等齎スモノニ非ス本規程ハ又將來ニ於テ右ノ如キ一層ナル便益ヲ許與スルコトノ禁止ヲ齎スモノニ非ス
第二十一條
第八條第二項ノ規定を害スルコトナク、本規程ノ解釋又ハ適用ニ關シ締約國間ニ生スルコトアルヘキ紛爭ハ左ノ方法ニ依リ解決セラルヘシ
直接ニ當事國間ニ於テ又ハ其ノ他ノ友誼的解決方法ニ依リ右紛爭ヲ解決スルコト能ハサルニ至リタルトキハ紛爭當事國ハ仲裁裁判手續又ハ司法的解決ニ訴フルニ先チ交通及通過ニ關スル聯盟國ノ諮問及專門機關トシテ國際聯盟ニ依リ設置セラルル機關ニ勸吿的意見を徴スル爲右紛爭ヲ付託スルコトヲ得緊急ノ場合ニ於テハ假意見トシテ紛爭ノ原因ト爲リシ行爲又ハ事實ニ先チ存在シタル國際運輸上ノ便益ヲ恢復スルノ措置ヲ包含スル一時的措置ヲ勸吿スルコトヲ得
前項ニ掲ケタル手續中ノ何レニ依ルモ紛爭ヲ解決スルコト能ハサルニ至リタルトキハ締約國ハ其ノ相互間ノ協定ニ基キ右紛爭ヲ常設國際司法裁判所ニ付託スルコトニ決シタルカ又ハ決スヘキ場合ヲ除キ之ヲ仲裁裁判ニ付託スヘシ
第二十二條
事件ヲ常設國際司法裁判所ニ付託シタル場合ニ於テハ該事件ハ同裁判所規程第二十七條ニ規定スル條件ニ依リ之ヲ裁判スヘシ
仲裁裁判ニ付シタル場合ニ於テ當事國カ別段ノ決定ヲ爲ササル限リ各當事國ハ一名ノ仲裁裁判官ヲ任命シ右仲裁裁判官ハ仲裁裁判所ノ第三ノ裁判官ヲ選定スヘク又右仲裁裁判官ノ意見一致セサルトキハ常設國際司法裁判所規程第二十七條ニ掲クル交通及通過事件補佐員ノ名簿中ヨリ國際聯盟理事會之ヲ選定スヘシ此ノ場合ニ於テハ第三仲裁裁判官ハ聯盟規約第四條ノ最終ヨリ第二番目ノ項及第五條第一項ノ規定ニ從ヒ之ヲ選定スヘシ
仲裁裁判所ハ當事國相互間ニ一致セル付託條件ヲ基礎トシテ事件ヲ裁判スヘシ當事國間ニ一致ヲ見ルニ至ラサルトキハ仲裁裁判所ハ當事國ノ提出ニ係ル要求ヲ考査ノ上其ノ全員ノ一致ヲ以テ自ラ付託條件ヲ作成スヘシ全員ノ一致ヲ得ルコト能ハサルトキハ國際聯盟理事會ハ前項ニ規定スル條件ニ依リ付託條件ヲ決定スヘシ手續カ付託條件中ニ定メラサレルトキハ仲裁裁判所之ヲ定ムヘシ
仲裁裁判ノ進行中付託條件中ニ反對ノ規定ナキ限リ國際法上ノ問題又ハ本規程ノ法律的意義ニ關スル問題ニシテ仲裁裁判所カ當事國中ノ一國ノ請求ニ依リ其ノ解決ヲ以テ紛爭解決上必要ナル前提ナリト宣シタルモノハ当事國ニ於テ之ヲ常設國際司法裁判所ニ付託スルノ義務ヲ有ス
第二十三條
本規程ハ同一主權國ノ部分ヲ構成シ又ハ其ノ保護ノ下ニ置カルル地域相互間ノ權利及義務ニ付テハ此等ノ地域カ各別ニ締約國タルト否トヲ問ハス何等之ヲ規律シタルモノト解釋スヘカラサルモノトス
第二十四條
前諸條ハ何レモ國際聯盟ノ聯盟國トシテノ締約國ノ權利又ハ義務ニ何等影響ヲ及ホスモノト解スヘカラス