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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 伝染病予防法の一部改正について

[場所] 
[年月日] 1949年6月17日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(昭和二四年六月一七日)

(発衛第七三号)

(各都道府県知事あて厚生次官通達)

 伝染病予防法の一部を改正する法律は、今次第五国会を通過し、五月一九日法律第八一号として公布せられ、六月一日より施行せられることとなつたがこれに伴う政令、省令は近く公布せられる予定である。

 今次の改正は、最近の機構や制度の改革に伴つたもので、その大要は左の通りである。

一 最近の衛生行政機構が保健所を中心として、運営されておる関係上保健所の衛生行政上の責任を明確にするため、従来伝染病の発生及び転帰の届出受理者の、市町村長等を改正し、市町村長等を経由し保健所長としたこと。

二 防疫の国家的要請により都道府県に駐在させておつた防疫職員を防疫監吏及び防疫技師として都道府県に移譲し、厚生大臣が伝染病予防上必要があるときは、他の都道府県に派遣を命ずることができることとしたこと。

三 地方財政法の制定に伴い、国庫と地方公共団体との費用負担の割合を法律に明らかにした外、用語等の統一に伴い、所要の改正を行つたこと。

四 昨年夏解散を命ぜられた、衛生組合関係規定その他現在適用されていない規定を削除又は改正をしたこと。これが実施に当つては、特に左記事項に留意の上、本法の実施に遺憾なきよう致されたい。

   記

一 届出について

 (一) 衛生行政について、保健所が第一線機関たるに鑑み、防疫についてもその責任を明確にするため警察官吏、区長、戸長を削除し、市町村長を経由し、届出受理者を管轄保健所長としたこと。

 (二) 伝染病予防法第三〇条の医師の届出時間については、市町村長等を経由する場合は、経由機関へ届出する迄の時間である。

 (三) 転帰届において、死亡届を省略せる理由は、昭和二三年六月四日発健第五六号「伝染病統計速報について」の伝染病簡速統計作成要領第七において、保健所長が人口動態調査令による死亡票と伝染病予防法による死亡届とを照合することとなつていて、事務処理に繁雑をきわめたため、今回の改正により死亡については、伝染病予防法による死亡届は廃止した。

(四) 前各号については、法の改正内容の説明を医師会に行い、周知徹底に努めること。

二 防疫監吏及び防疫技師について

 (一) 従来、厚生省官制第一〇条の二において、厚生事務官及び厚生技官を防疫上の見地より、都道府県に駐在せしめ、都道府県知事の指揮監督の下に伝染病予防事務に従事せしめていたのであるが、昨年閣議決定の出先機関整理に伴い、六月一日より都道府県へ移譲することとした。

 (二) 防疫監吏及び防疫技師に補職する者の資格は左記の通りである。

  イ 防疫監吏に補職する者の資格は、都道府県の主事たる者で、左記各号の一に該当する者とする。

   (イ) 学校教育法による大学、高等学校卒業者(但し、旧大学令、専門学校令及び高等学校令による卒業者を含む。)

   (ロ) 防疫行政の実務に一カ年以上の経験のある者

   (ハ) その他前各号と同等以上の実力を有する者として、知事が認めた者

  ロ 防疫技師に補職する者の資格は、都道府県の技師たる者で、左記各号の一に該当する者とする。

   (イ) 医師法による医師の免許を受けた者

   (ロ) 歯科医師、獣医師及び薬剤師等で細菌検査の実務に習熟している者

   (ハ) 旧中学校令による卒業者及びこれと同等の学力を有する者で、細菌検査に三カ年以上の経験を有し、権威ある講習会の講習を一回以上受けた者

  ハ 昭和二四年五月三一日現に厚生事務官及び厚生技官の職にあつて、都道府県に駐在を命ぜられていた者で、引き続き当該都道府県の事務又は技術吏員に任命され、防疫業務に従事するものは、前記各号の規定にかかわらず防疫監吏又は防疫技師に補することができる。

 (三) 都道府県別定員は五月二日付政令第八五号に基く五月二○日付予発第四三八号によつて通牒済である。

 (四) 第一九条の三「伝染病予防上必要と認むる場合とは」災害或いは特に著しき伝染病の集団発生の場合等をいう。

三 地方財政法の制定に伴うもの

 (一) 地方財政法第一○条第三項により、国と地方公共団体とが負担する経費の種目、算定基準及び負担割合は、法律又は政令でこれを定めなければならないことになつているので、従来伝染病予防法施行規則第五一条に規定していた負担区分を第二四条において規定したこと。

 (二) 地方公共団体が第一次的に費用を支払う場合は「支弁」、府県が市町村に対して負担する場合は「支出」とし、従来国庫からの補助は「負担」という用語に統一されたこと。

四 その他

 (一) 昨年夏衛生組合の解散に伴い第二三条を削除したこと。

 (二) 陸海軍廃止に伴い第二○条第二項を削除したこと。

 (三) その他現在適用せられない条文或いは用語を訂正したこと。