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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 売いん常習者の定期検診について

[場所] 
[年月日] 1949年8月10日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(昭和二四年八月一〇日)

(衛防第一二四号)

(各都道府県衛生部長あて厚生省公衆衛生局防疫課長通知)

標記の件について視察の結果今尚若干の府県においては、衛生部の手により定期検診が行われている。性病予防法には定期検診の条項はないのみならず左記の理由により労多くして効少いものである。従つて衛生部自身定期検診を行う必要はなくかようなものに全勢力や注意を没頭するより一般大衆の性病予防計画を指導する方が適当である。性病診療所においては、これらの者を特別のグループとして特別考慮を払うのではなく一般人と同様に一個人として診断をうけ治療をうけるようにした方がよいと思われるので、本年度六月九日衛防第九六号「健康診断強化等について」を併せ考慮の上これが実施に遺憾なきを期せられたい。

1 売いん常習者の定期検診は却つて一般人に誤つた安全感をもたせる。

2 医学的にみて定期検査をどんな組織の下に行つても伝染を完全に防止することは出来ない。即ち検査と検査の間に伝染の危険が多く効果がある如くするためには絶えず行わなければならず実現不可能のことである。ただ効果があるのは隔離期間の伝染防止が出来ることだけである。

3 慢性淋の診断は子宮口の分泌物の塗抹標本検査のみでは信頼がおけないことは医学上認められており、売いん常習者にはこの慢性淋が多い。

4 殆んどすべての売いん常習者は性病をもつており、これに接する場合は常に伝染の危険があることを一般人に知らせることが寧ろ性病予防上効果的である。

5 業者は商売上の利益のため定期検診を利用することが多い。

{売いんのいんに傍点あり}