データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 伝染病予防法施行令等の一部を改正する政令の施行について(厚生省発衛第二二九号)

[場所] 
[年月日] 1955年6月23日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(昭和三〇年六月二三日)

(厚生省発衛第二二九号)

(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)

 「伝染病予防法施行令等の一部を改正する政令」は、昭和三○年四月一五日政令第五六号をもつて別紙のとおり公布され、即日施行されたが、今回の改正は、昨年六月一日法律第一三六号をもつて行われた伝染病予防法の一部改正に関連して、市町村が行うねずみ族、こん虫等の駆除の実施の取扱上の区分、駆除方法及び職員等の設置基準について所要の改正を行うとともに、清掃法による環境衛生指導員の任用資格を実情にそうように改正したものであるが、今回の改正中最も重要な点は、本事業の特質にかんがみ、平常時のねずみ族、こん虫等の駆除事業を最も効果的、能率的に運営するために、市町村の行う駆除の実施方法を特に地域社会の住民の自主的な活動を基盤として推進し、この活動によつては駆除が期待されない場所については衛生班による実施を行わせるようにして、その根本理念の確立を図つたものであるから、この趣旨を十分普及徹底させるのは勿論、特に左記事項に留意し、改正政令の所期する目的達成に特段の努力をわずらわしたく、命によつて通達する。

 なお、この通達においては、昨年六月改正された伝染病予防法を「改正法」、今回改正された伝染病予防法施行令を「改正政令」と、従前の伝染病予防法を「旧法」、従前の伝染病予防法施行令を「旧政令」と、それぞれ略称する。

おつて、この改正に伴う伝染病予防法施行規則の一部を改正する省令は、近く定められることとなつているので、念のため申し添える。

   記

第一 改正の要点

 一 ねずみ族、こん虫等の駆除の実施を改正法の趣旨にそい、すべての市町村において行わせるようにするため、従来の人口一万三○○○を基準とした実施の取扱上の区分を廃止したこと。

 二 右に伴い、ねずみ族、こん虫等の駆除の職務を行わせるため都道府県及び市町村に設置する職員についても、その設置主体及び数の基準について所要の改正を行つたこと。

 三 ねずみ族、こん虫等の駆除を実施する衛生班についても、改正法の趣旨にそいすべての市町村に設置するようにするとともに、その設置基準及び組織について設置主体の規模、地方の実情を考慮して合理的な設置と運営とを図るようにしたこと。

 四 市町村が行うねずみ族、こん虫等の駆除の実施についての合理的、効率的運用を図るため、地域住民の自主的活動を基盤とする駆除の実施を重視し、これを根本理念として明示するとともに、市町村の衛生班が自ら行うべき範囲についても規定したこと。

 五 都道府県及び政令市に置くねずみ族、こん虫等の駆除吏員の資格については、ねずみ族、こん虫等の駆除事業が環境衛生施策の基本であり、かつ、高度の技術性を要することに鑑み、清掃法による環境衛生指導員の資格と同様に改め、従来の省令から政令に引き上げたこと。

 六 清掃法施行令に規定する環境衛生指導員の資格を実情にそうように改めたこと。

第二 運営上に特に留意すべき事項

 一 駆除の実施区分

従来人口一万三○○○未満の市町村については都道府県が直接駆除を実施していたのであるが、改正政令により当該市町村が実施することになるので、特にこれら市町村に対し早急にその実施態勢が整うように指導の万全を期せられたいこと。

 二 駆除の計画

都道府県が改正法第一六条ノ二第二項の規定による計画を樹立するにあたつては、改正政令の根本理念に基いて各市町村が効率的な運営を図りうるような基本計画について十分考慮するとともに、特に今後あらたに駆除事務を実施することとなつた人口一万三○○○未満の市町村については、基本計画にとどまらず当該実施計画についても適切な指導をされたいこと。

 三 駆除事務に従事する職員

  (一) 駆除事務に従事する職員の設置に関しては、都道府県分、市町村分のいずれも地方交付税の単位費用の算定基礎に措置されているので、これが経費予算化に格段の努力をはらうとともに、その設置状況を常に把握し遺憾のないようにされたいこと。

  (二) 今回の設置基準の改正に伴つて、清掃法による環境衛生指導員の設置に関しては、従来のねずみ族、こん虫等駆除職員の設置に要する経費の枠の一部をもつてあらたに地方交付税の単位費用の基礎に算定されることとなつたので、当該部分についてはねずみ族、こん虫等駆除職員に対する地方交付税の単位費用の算定基礎額が減少することとなるが、元来環境衛生指導員とねずみ族、こん虫等駆除職員とはその性格上表裏一体となつて業務を遂行するものであるので、この趣旨により適正な運営を図られたいこと。

 四 衛生班の設置

  衛生班は、従来人口一万三○○○以上の市町村に限り設置され、当該市町村全域にわたつて直接駆除を実施することとなつていたが、今回の改正によつてすべての市町村に編成されることを要することとなり、かつ、市町村の区域のうち原則として公共的な場所を中心として直接実施する建前をとつて効率的な運用を図つたので、今後はこの趣旨に従い、地方の実情に応じて合理的効果的な衛生班の活動を推進するようせられたいこと。

 五 地域住民の自主的な活動

  (一) 市町村の行うねずみ族、こん虫等の駆除の実施は地域住民の自主的な活動を基盤として行うことになつたが、この活動は地域社会として組織的になされることが最ものぞましいので、この事業の本質を住民に徹底させることによつて、住民の良識と建設的な意欲を喚起し、おのずからこれらの活動がその効果を挙げるように不断の指導と啓蒙につとめられたいこと。

  (二) ねずみ族、こん虫等駆除事業の効率的な運用にあたつて、地域住民の自主的組織活動を必須要件とすることは前述のとおりであるが、更に従来の実績にも明らかなようにこの活動は、この事業を契機として自ら生活環境をあらゆる角度から見直し、その改善を促すに至るように発展することが最も望ましい活動のあり方であるから、予めこの点をも考慮して指導育成するようにされたいこと。

 六 その他

  (一) ねずみ族、こん虫等駆除事業は清掃事業と一体的な環境衛生基本施策であるので、当該吏員の本事業に対する理解の徹底、技術の向上等について更に指導監督を行い、市町村の指導上遺憾のないようにされたいこと。

  (二) 清掃法に定める環境衛生指導員の資格については、従来環境衛生業務に多年従事した経験を有するにも拘らず資格を有しなかつたものもあり、地方の現状にそぐわない点があつたので、今回これを救済し、清掃行政の推進に支障ないよう考慮したものであること。

別紙 略