[文書名] 急性灰白髄炎の予防対策について
(昭和三六年五月二二日)
(衛発第四四三号)
(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生省公衆衛生局長通知)
急性灰白髄炎の防疫対策については、昭和三十四年六月十五日衛発第五四三号「急性灰白髄炎の指定について」に基づき、実施してきたが、その後の本疾患の発生状況等により今後は更に左記の点につき留意のうえその万全を期されたい。
なお、急性灰白髄炎の予防接種については、昭和三十六年三月二十八日法律第七号により、予防接種法の一部改正が行なわれたので前記「急性灰白髄炎の指定について」の通知中「一方針の3」は、削除する。
記
一 流行の認定
管下における流行の端緒を早期に発見することは、防疫対策の早急な実施上必要であるから、過去数年の管下保健所あるいは市町村別の本疾患発生状況を各種の資料により分析しておくこと。
本疾患の届出の励行についても、最大限に医師の協力が得られるよう措置しておくこと。
さらに、左記に例示する条件等によつて流行あるいは、流行のおそれある状況を速やかに判断しうるよう計ること。
(1) 流行のおそれある場合
特定地域(市においては町、村においては字程度の区域)内において二週間以内に引続き二名の患者が発生したとき
(2) 流行の場合
イ 流行のおそれある区域につき最後の患者の発生した後二週間以内に新しく患者が発生したとき
ロ 一保健所管内における年頭初からの患者の累計数が人口一〇万対の比率として一〇万に達し、その時日より更に一週間以内に新たに患者が発生したとき
二 疫学調査
従来流行時(流行のおそれある場合も含む)の疫学調査は、その他の防疫措置の繁忙によつて十分行なわれ難かつた場合もあるので、疫学調査に当り、疫学、病原学、臨床等の専門家を含む特別疫学調査班を編成し、その実施を効果的ならしめること。さらにその調査活動を円滑ならしめるよう、人員の配備等についても特別の考慮をはらうこと。
なお、調査については、被調査者の住所、氏名、性、生年月日等基本的事項の他最小限、次の事項を明らかにしうるよう調査事項について考慮すること。
1 患者あるいは、疑似症を有する者およびその接触者について
(1) 診断の確認
ア 臨床的診断
初発症状、臨床経過、病型、治療状況等について(病型については、非麻痺型か麻痺型か、麻痺型については、球麻痺、球脊髄麻痺、脊髄麻痺かの区別ならびに麻痺発現の部位を明らかにすること。)
イ 病原学的診断
ウイルス分離同定、血清学的検査
ウ 疫学的診断
患者発生の地域的時間的、性別、年齢的関係および接触者あるいは感染経路状況について
(2) 後遺症調査
患者について後遺症の程度ならびにその残存回復の状況の時間的関係について
(3) 感受性調査
急性灰白髄炎予防接種その他予防接種の経歴について接種の時期、量、接種をうけなかつた理由等について
2 患者等のほか流行地区全般の小児について
(1) 検病検査
有熱その他有所見者の発見
(2) 後遺症者調査
過去における急性灰白髄炎後遺症者の地域的、時間的分布
(3) 感受性調査
1の(3)と同様の事項について
(4) 病原学的調査
地域、全般の小児のうちから抽出した者についてのウイルスの分離同定、血清学的検査
三 防疫対策組織
流行時(流行のおそれある場合も含む)には、その規模に応じて防疫対策組織を編成し、防疫活動の円滑を期すること例えば市町村においては予防委員の任命とともに、市町村防疫対策本部の設置を行うこと。流行が数地区にわたる時は都道府県防疫対策本部の設置も必要であること。
四 鉄の肺
呼吸麻痺患者発生の場合、その救急措置は、適切かつ敏速を要するので、鉄の肺、簡易補助呼吸器および必要な医療機械器具の配置、整備を十分に措置しておくとともに、患者の救急輸送も遅滞なく行なわれるよう機動計画も樹立しておくこと。
五 その他
衛生教育については、機会をとらえて強力な啓もうをはかるよう、各種の方法を講ずるよう、保健所ならびに市長村を指導すること。