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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インフルエンザの防疫対策について

[場所] 
[年月日] 1973年9月20日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(昭和四八年九月二〇日)

(衛情第一〇二号)

(各都道府県・各指定都市衛生主管部(局)長あて厚生省公衆衛生局保健情報課長通知)

 標記については昭和四十八年九月二十日衛発第六一○号をもつて通知されたところであるが、これが実施にあたつては、別紙インフルエンザ防疫実施要領により万全の措置を講ぜられるようお願いする。

別紙

インフルエンザ防疫実施要領

1 患者の届出

 都道府県、指定都市は、医師会、国公立病院、その他の医療機関と連絡を密にし、インフルエンザ患者の発生の届出の励行を求めるとともに、疑しい感冒の多発又は流行についても情報の提供を要請し、また、管内の学校、事業所等の協力を求め、早期にインフルエンザの流行を発見するよう努めること。

2 血清検査及びウイルス分離

 地方衛生研究所は、次により血清検査及びウイルス分離を行ない、分離した株を国立予防衛生研究所(ウイルス第三室)に送付するとともに、必要に応じ血清も送付すること。

 (1) 血清検査

  ア 疑わしい感冒が多発し、又は流行した場合はできる限り地域別、かつ、各流行ごとに患者約一〇名について血清検査を行なうこと。

  イ 血清検査は、各患者について急性期(発病後三日以内)及び回復期(発病後一四日以後)の二回採血を行ない、両期の血清の抗体価の差により判定を行なうこと。

  ウ 血液採取量は、通常三~五ミリリットルとすること。

  エ 血清検査の手技については、別添インフルエンザ検査術式によること。

  オ 検査に使用する抗原は、その年のワクチン製造株並びに新分離株を用いること。

  カ 血清検査の結果、インフルエンザと診断した場合は初発発生例の急性期、回復期血清各々○・五ミリリットルを試験管に入れ、ゴム栓で封じて、すみやかに国立予防衛生研究所(ウイルス第三室)に送付すること。

 (2) ウイルス分離

  ア 地方衛生研究所は、血清検査と併行して孵化鶏卵累代接種法により、ウイルスの分離を行うこと。

  イ 接種材料は、急性期患者の咽頭うがい液とし、これを採取するときは、患者にあらかじめ軽くせきばらいをさせてから、ブイヨン一〇ミリリットルで患者に念入りにうがいをさせ、清潔な容器に受けること。

  ウ イにより採取した材料は、接種までの時間が短時間の場合は氷室に保存し、五時間以上の場合はドライアイス又はフリーザーで凍結して保存すること。

 (3) 検体の送付

 地方衛生研究所は、血清検査及びウイルス分離のため検体を国立予防衛生研究所(ウイルス第三室)に送付する場合は、昭和四十二年十月二十日衛防第五○号「ウイルスの行政検査について」により、必ず記録を添付すること。

 なお、血清を送付する場合は、特に同通知様式(3)「検体送付票(1)」に、血清に対する処置(非動化又はエチル水銀チオサルチル酸ナトリウム添加の有無)を付記すること。

 (4) 地方衛生研究所は、血清検査及びウイルス分離を行なつた場合は、その結果について、すみやかに厚生省公衆衛生局保健情報課あて電話及び文書にて通報すること。

3 通報

 (1) 各都道府県・指定都市において疑わしい感冒が多発し、又は流行した場合は、ただちに次の事項を厚生省公衆衛生局保健情報課あて電話で通報するとともに、必要に応じて隣接都道府県、指定都市にも通報すること。

 また、その後流行の拡大、症状の悪化等特に通報すべき事態が発生した場合にもすみやかに通報すること。

  ア 病名

  イ 流行発生年月日

  ウ 流行発生地区名(施設名)、人口(人員)

  エ 患者数及び死者数

  オ 臨床症状

  カ 見通し

  キ その他

 (2) インフルエンザの流行発生後は、次の事項を記載したインフルエンザ流行状況週報を遅滞なく保健情報課あて提出すること。

  ア インフルエンザ施設別発生状況(別紙様式1)

  イ その他特に連絡すべき事項

 (3) 報告事務担当者については昭和四十五年六月五日衛防第一八号「伝染病発生特殊事例報告について」により報告を円滑に遂行せしめること。

4 防疫措置

 (1) 予防接種

 小学校、中学校、幼稚園及び保育所の生徒、児童を対象として実施するが、とくに二歳以下(三歳未満)の乳幼児については、インフルエンザの流行が予測され、感染による危険が大きいと判断される等特別な場合を除いては、実施しないものとすること。

 なお、対象のうち市部の人口密度の高い地域に居住するものについては特に重点的に実施するよう配慮すること。

 (2) 隔離

 患者の隔離については、次の措置をとるよう勧奨すること。

  ア 患者は、通常自宅において別室に隔離すること。ただし、別室がない場合は、カーテン、屏風、衝立等で健康者と隔てること。

  イ インフルエンザ様疾患が多発し、又はインフルエンザが流行している場合は、その地域内の学校、幼稚園等については、状況により学級、学年閉鎖又は休校等の措置をとるよう指導すること。

  ウ 寄宿舎、寮等にあつては、早期隔離のためあらかじめ適当な室を定めて疑わしい患者を収容すること。

 (3) 消毒

 消毒及び換気については、次ぎの措置をとるよう指導すること。

  ア 患者のつば、たん、鼻汁等で汚染された紙片等は、焼却すること。

  イ 室内の換気及び日当りはよくし、また寝具及び衣類はしばしば日光消毒を行なつて十分乾燥したものを使用すること。

  ウ 患者の使用したタオル・ハンカチ・食器等は、煮沸するか、又は熱湯に浸すなど消毒について配慮すること。

5 衛生教育

 次の事項等について、ラジオ、テレビ、新聞等の報道機関又はパンフレット、リーフレット、ポスター等を利用して一般住民に周知徹底させること。

 (1) 本病は、飛沫感染によつて伝播され、病原体の排泄及び侵入の門戸は、口腔及び鼻腔に限られているので、本病を予防するためには、頻繁にうがいを励行することが望ましく、また、患者は他人への伝染を防止するため必ずマスクを使用する必要があること。

 (2) 保温及び栄養には充分注意し、過労及び不摂生を避け、身体の抵抗力の保持を図ること。

 (3) 本病に罹患した場合には、すみやかに医師の診断を受け、安静を保ち、死亡の原因となる肺炎等の合併症の併発を防止すること。

 (4) 患者は通常自宅において別室に隔離すること。別室がない場合は、カーテン、屏風、衝立等で健康者と隔てること。

{別紙様式1は省略}