[文書名] 輸入動物特にサルによる人の健康被害の防止について
(昭和49年5月9日)
(衛情第10号)
(各都道府県・各指定都市・各政令市衛生主管部局長あて厚生省公衆衛生局保健情報課長通知)
標記について、近時、群馬、東京、神奈川等において輸入されたサルからと考えられる赤痢の感染事例が発生し、輸入動物特にサルの取扱いについて伝染病予防対策上種々の問題を提起するところとなつている。
従つて、このような事例の発生を防止するため下記の諸点に御留意の上関係方面への指導等についてよろしく御配意願いたい。
記
1 輸入業者に対する指導
(1) 愛がん用に供する輸入サルについては、輸入後、輸入業者の手元に停留させ赤痢菌の保菌検査等健康監視を行つた上健康と判断されるもののみを販売するよう本職において指導し、輸入業者間で自主規制させることとしたので、輸入サルの赤痢菌保菌検査等自主規制の実施にあたり、業者への指導方について特段の御配慮をいただきたい。
なお、具体的な自主規制の方法については別添のとおりであり、輸入業者の一覧表については、「人畜共通伝染病予防動物輸入業者協議会(会長河野通敬…京浜鳥獣貿易株式会社)」から別途送付される予定である。
(2) 赤痢罹患サルおよび保菌サルについては隔離治療および消毒が必要となるので、隔離施設の整備、死体の処理、今まで使用していた施設の消毒等について十分な指導をされたいこと。
(3) 赤痢罹患サルおよび保菌サルに対する赤痢菌陰性の判断は少なくとも三日間以上の間隔をおき三回以上の検便陰性の結果によることとし、最終的治ゆの決定は獣医師の診断によることとされたいこと。
(4) 感染予防および従業員等に対する健康管理については十分注意するよう指導されたいこと。
2 輸入サルを飼育する家庭に対する指導
これまでに輸入されたサルを飼育している家庭に対しては、輸入サルは赤痢菌を保有する可能性が高いことを周知徹底させ、下痢をくり返す等異常の見られるサルについては速やかに獣医師の診察を受ける等適切な取扱いをするよう指導されたいこと。また、赤痢菌保菌検査等について依頼のあつた場合は何分の便宜を図られたいこと。
3 医師及び獣医師会への協力依頼
輸入動物による人の健康被害の防止を図るため、医師会及び獣医師会に対し、この通知の趣旨を説明し、その対策について十分な協力を得られるよう努められたいこと。
4 その他
(1) これまでに輸入されたサルを保有する鳥獣店に対しては、1の取扱に準じて赤痢菌の有無を検査した上で販売するよう指導されたいこと。
(2) 今後サルを飼育しようとする家庭に対しては、サルは家庭で飼育するには危険性が高い動物であることを周知されるとともに、一般的には愛がん用には不適当であるのでもしその飼育を行う場合においても十分注意するよう、また、獣医師による健康である旨の証明書を有するもののみ購入するよう指導されたいこと。
(別添)
輸入サルの取扱いについて
サル輸入業者において任意団体を設立し、輸入サルに対し自主的に健康監視を行い、健康なサルを市場に出す。なお、この際下記事項を実施するにあたり、都道府県衛生主管部局ならびに保健所の指導を受けるものとする。但し、大学、研究所、動物園の施設等に納入するサルについてはそれぞれの施設において、健康監視を行うことができるものとする。
I 健康監視体制
1 サルの輸入を行うものは、全てこの団体に加盟する。
2 全てのサルについて、輸入直後Ⅱに定める方法により健康監視を実施し健康なサルを市場に出す。
3 輸入業者は、獣医師を責任者とするサルの健康監視を行うための組織と施設を整備することとし、サルを市場に出す場合においては、獣医師による健康である旨の証明書を添付する。
4 健康監視にあたつては、記録台帳を整備し、万一の事故発生防止に備える体制を確保する。
II 健康監視の方法
1 健康監視期間は、二週間以上とする。
2 輸入サルは、健康監視期間中は原則として一頭づつ分離収容する。但し、やむをえず二頭以上同一のケージで飼育し健康監視を行つた際はその中の一頭に赤痢菌を検出する等異常を認めた場合は、同一のケージ内の全てのサルが汚染されているとみなした取扱いをすること。
3 健康監視期間中は、獣医師による皮膚粘膜の発疹、神経症状、下痢等に重点をおいた一般健康診断及び赤痢菌等を対象とする検便を実施する。
4 外見上健康と判断されるサルについては原則として、輸入後五日目と十日目に検便を実施する。
5 輸入時すでに下痢症状のあるもの及び輸入後において下痢症状が出たものについては、速やかに検便を実施するとともに下痢症状消失後、原則として三日以上の間隔をおき、三回以上の検便を行うこととする。
III 赤痢罹患サル、赤痢菌陽性サルその他異常サルの取扱いについて
1 業者において、健康監視施設とは別の隔離施設を設け、治療等適当な処置を行うものとする。
2 これらのサルを収容していた健康監視施設は必ず消毒し、排泄物は焼却する。
3 これらのサルに接する場合には、予防杖、長靴等を着用し、感染防止に十分注意する。
4 これらのサルに対する赤痢菌陰性の判断は、三日以上の間隔をおき少なくとも三回以上の検便陰性の結果によることとし、最終的に治ゆの判定は、獣医師の診断によることとする。
5 死体は、クレゾール液に浸す等消毒を行つた後速やかに業者の責任において焼却処理を行う。
IV その他
サルと接触する者は、定期的に検便を行う等健康管理に十分注意すること。