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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「エイズ問題総合対策大綱」について

[場所] 
[年月日] 1987年2月26日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(昭和六二年二月二六日)

(薬発第一八六号)

(各都道府県知事あて厚生省薬務局長通知)

 昭和六二年一月二八日付健医第六二号厚生省保健医療局長通知において、エイズの感染防止について御高配をお願いしたところであるが、今般、血液製剤の安全性の確保等エイズ対策に万全を期するため、別添(写)のとおり関係団体の長あて協力依頼を行つたので、御了知いただきたい。

〔別添写〕

「エイズ問題総合対策大綱」について

(昭和六二年二月二六日 薬発第一八六号)

((社)日本薬剤師会・(社)日本病院薬剤師会・(社)全日本薬種商協会会長・(社)日本血液製剤協会理事長・日本赤十字社社長あて厚生省薬務局長通知)

 薬務行政の円滑な推進について、平素から特段の御協力を頂き感謝申し上げます。

 さて、エイズ(後天性免疫不全症候群)対策については、かねてより血液製剤の安全性確保対策について御協力をいただいているところでありますが、今般、政府は、二月二四日に「エイズ対策関係閣僚会議」を開催し、「エイズ問題総合対策大綱」を別添のとおり決定して、政府挙げてエイズ対策に取り組むこととなりました。

 貴職におかれましてもこの主旨を十分御理解のうえ、エイズ対策に万全を期すとともに、貴会会員(各血液センター)に対し周知方特段の御配慮をお願いします。


(別添)

エイズ問題総合対策大綱

(昭和六二年二月二四日)

(エイズ対策関係閣僚会議決定)

 エイズのまん延は、欧米をはじめ世界的に深刻な状況にあるが、我が国では、エイズ患者の発生は今なお少数にとどまつており、現段階において、緊急に強力な対策を講じ、エイズのまん延の防止を図ることが必要である。

 このため、当面、次の事項を重点として、総合的な対策の推進を図る。

 なお、対策の推進に当たつては、プライバシーと人権の保護に十分な配慮を払う。

I 重点対策

 1 正しい知識の普及

  現段階におけるエイズ対策の基本は、国民がエイズに関する正しい知識を持ち、感染の危険を回避することである。

  このため、エイズの予防のための正しい知識の普及を図る。

   (1) 政府広報等においてエイズ問題を重点的に取り上げるとともに、地域、職域等あらゆるルートを通じ、国をあげて啓発運動を展開する。

   (2) 学校教育における啓発等若い世代のエイズの予防の徹底を図る。

   (3) 海外旅行者、在留邦人及び海外からの入国者に対する啓発を行う。

 2 感染源の把握

  エイズウイルスに感染している者の完全な把握に努め、二次感染の防止に万全を期する。

   (1) エイズの患者及びウイルス保有者を診断した医師からの届出制を導入する。

   (2) 国民が迅速にエイズに関する適正な検査が受けられるよう、スクリーニング検査(第一次検査)については公私の医療機関の協力を得ることとし、確認検査(第二次検査)については各都道府県に一か所以上の検査機関を確保する。

 3 相談・指導体制の充実及び二次感染防止対策の強化

   (1) 国民の不安の解消を図るため、エイズに関する相談が容易にできるよう、保健所、公私の医療機関等に相談窓口を整備するとともに、電話相談等を実施する。

   (2) エイズウイルスに感染するおそれが大きい、いわゆるハイリスク・グループに対しては、関係省庁が協力して、健康診断の勧奨、保健相談・指導の徹底を図る。

   (3) 二次感染の防止を図るため、健康診断命令、感染防止上の指示等の予防措置の制度化を図る。

   (4) 血液対策については、既に実施されている全献血への抗体検査を引き続き実施するほか、献血時の問診の強化等を図り、安全確保の一層の徹底を期する。

   (5) エイズウイルスに感染している外国人の入国規制に関する関係諸国の事例を早急に調査するとともに、かかる外国人の我が国への上陸を拒否できるよう所要の措置をとる。

なお、かかる措置に関する国際的理解を得るための所要の措置を検討する。

 4 国際協力及び研究の推進

   (1) エイズ対策に関し、諸外国との情報交換を強化するとともに、国際的なエイズのまん延の防止対策に参加し、積極的に推進する。

   (2) エイズについては、未解明、未確立の部分が多いので、国公立及び民間の試験研究機関、大学等を通じ、基礎研究及び予防、検査、治療等に関する研究の組織化、積極的な推進を図るほか、諸外国との研究の交流を行う。

 5 立法措置

前記の対策を実施するため、必要な事項についてエイズ予防法(仮称)において法制化する。

II 推進体制

 1 国における推進体制

   (1) エイズ対策関係閣僚会議の下に関係省庁からなる幹事会を設置し、関係省庁相互の連携を図りつつ、医療関係者、関係団体等の協力を得て、総合的な対策の推進を図る。

   (2) エイズ対策に関し、専門的事項について意見を求めるため、エイズ対策関係閣僚会議の下に学識経験者をもつて構成するエイズ対策専門家会議を置く。

 2 地方公共団体における推進体制

   地方公共団体に対し、国の体制に応じた推進体制の整備を要請する。

 3 エイズに関する医療・情報センター機能の整備

   エイズに関する情報の集積、研究の連絡調整、広報啓発活動の支援等を行う、エイズ対策推進のためのセンター機能を持つ組織の整備を図る。