[文書名] 小鳥のオウム病対策について
(昭和62年10月7日)
(衛乳第47号)
(各都道府県・各政令市衛生主管部局長あて厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知)
人畜共通伝染病の人への感染を予防するためには、感染源となる動物の対策を講じることが最も効果的である場合が多い。これらのうち、一部については、「と畜場法」、「狂犬病予防法」等により、人への感染を防止するための動物対策が講じられているが、ペット動物を感染源とするものについては、狂犬病を除きその動物対策が講じられていない現状にある。
近年、小鳥を感染源とする人のオウム病が発生していることから、昭和61年度に小鳥のオウム病対策検討会(座長上田雄幹国立公衆衛生院衛生獣医学部長)を設け、感染源である小鳥の対策について検討してきたところであるが、今般、小鳥から人へのオウム病感染予防方策について、検討会から報告書(別添)が提出された。
今後、厚生省においては、本報告に示された小鳥のオウム病対策実施指針(以下「指針」という。)に基づき、対策の趣旨を広く一般に提唱し、対策実施体系の整備に関する関係者間の協議を進めるなど対策の推進を図ることとしている。
ついては、貴都道府県・政令市においても、指針に基づき、営業者に対する衛生指導、一般飼養者に対する小鳥の適正な飼養管理等に関する知識の普及啓発など地域の実情に即した対策の推進について特段の配慮をお願いする。
なお、関係業界団体、社団法人日本獣医師会会長あてそれぞれ別紙1〔略〕及び2〔略〕のとおり通知したところであるので申し添える。
別添
小鳥から人へのオウム病感染予防方策について
昭和62年8月27日
小鳥のオウム病対策検討会
我が国では約3分の1の家庭で何らかのペット動物が飼養され、その種類は犬、ねこに次いで鳥類が多く、現在、約300万世帯で鳥類が飼養されていると推定される。鳥類は、犬、ねこに比べ環境の変化や疾病に対する抵抗力が弱い反面、飼養が容易なことから、今後も増加すると思われる。
オウム病は、クラミジアを病原体とする鳥類の感染症で、本病にり患し、病原体を排出する鳥類から人に感染し、人の呼吸器疾患等の原因となる人畜共通伝染病である。
我が国における人のオウム病については、昭和32年の初発事例以来、現在まで散発的な発生が報告されているほか、昭和59年に行われた民間の検査機関におけるクラミジア抗体検査結果によれば、呼吸器疾患患者の2.8%にオウム病感染が推測されるなど、オウム病感染予防のための方策推進の必要性が高まっている。
以上のような背景を踏まえ、本検討会は、小鳥から人へのオウム病感染を予防するための方策について検討を加え、「小鳥のオウム病対策実施指針」を別添のとおり取りまとめた。
今後、本指針に基づき、小鳥のオウム病対策の組織的な推進が図られるよう望むものである。
別添
小鳥のオウム病対策実施指針
第1.目的
本指針は、人のオウム病の感染源として重要な位置を占める小鳥(愛がん動物として飼養される鳥類をいう。以下同じ。)について、その生産、輸入及び販売時における衛生管理体制確立のために必要な事項を示すとともに、適正な飼養管理等に関する知識の普及啓発を促進し、もって、小鳥から人へのオウム病感染を予防することを目的とする。
第2.小鳥のオウム病対策
1.基本的進め方
我が国において販売に供される小鳥は、国内で生産されるものと輸入されるものがあり、大部分が卸売、小売を経て、一般飼養者(以下「飼養者」という。)に購入される。したがって、小鳥から人へのオウム病感染は、これらの各段階で起こる可能性がある。
感染症の一般的な予防方策としては、感染源における病原体の駆逐、感染経路のしゃ断及び宿主側の抵抗力増強のいずれかが必要とされているが、オウム病については、感染源である小鳥の制御が最も効果的である。すなわち、小鳥がオウム病にり患した場合は、り患した小鳥の排除又は抗生物質の投与による治療を実施して病原体の駆逐を図ることが基本となる。更に、前記のような多岐かつ広範な経路をたどる小鳥の流通実態及びワクチン投与等の小鳥に対する適切な免疫付与手段が現在のところないことを勘案すると、小鳥がオウム病にり患しないような飼養環境を整備するとともに、オウム病り患鳥が発生した場合は病原体の拡散の防止に努めることが現時点で最も有効であると考えられる。
以上から、対策の推進に当たって、国は、対策の趣旨を広く一般に提唱し、小鳥の適正な飼養管理等の重要性について関係者の自覚を促す必要がある。都道府県(保健所を設置する市を含む。以下同じ。)は、国の提唱した趣旨に沿って地域の実情に即した具体的な対策推進に努める。また、小鳥の生産、輸入及び販売を業とする者(以下「営業者」という。)は、獣医師、行政機関等関係者の協力を得て衛生管理体制を確立し、飼養者に対する小鳥の適正な飼養管理等に関する知識の普及啓発を行って対策の推進を図ることが極めて重要である。これに加えて、営業者の組織する団体は、積極的にオウム病予防知識の普及啓発活動に取り組み、対策の実施体系を整備して効果的な推進を図る必要がある。
2.関係者の役割
基本的進め方を踏まえ、関係者それぞれの対策推進のための役割について以下に述べる。
(1) 国及び都道府県
国は、小鳥から人へのオウム病感染予防について広く一般に提唱するとともに、対策の円滑な推進のため、営業者の組織する団体、獣医師の組織する団体である社団法人日本獣医師会及び都道府県に対する指導・連絡調整などを行う。
都道府県は、地域の実情に即した対策の推進を図るため、営業者に対する衛生指導、飼養者に対する小鳥の適正な飼養管理等に関する知識の普及啓発、営業者の組織する団体及び都道府県獣医師会に対する指導・連絡調整、営業者、飼養者及び獣医師相互の円滑な連携に関する必要な調整などを行う。
(2) 営業者
営業者は、自己の施設・設備の衛生管理、小鳥の飼養管理等の改善を図るとともに、獣医師の協力を得て衛生管理体制を確立する(別紙1「衛生管理要領」参照)。
また、飼養者に対して、小鳥の適正な飼養管理等に関する知識の普及啓発に努める(別紙2「飼養者の留意すべき事項」参照)。
また、営業者の組織する団体は、次の事業を行うこと等により、オウム病予防知識の普及啓発の中心として活動する。
ア) 小鳥の適正な飼養管理等に関する講習会の開催など営業者の衛生知識の向上に資する普及啓発。
イ) 小鳥の適正な飼養管理等に関するパンフレットの発刊など飼養者に対するオウム病予防知識の普及啓発。
ウ) 本指針に基づいて衛生管理体制を確立した営業者に対して当該営業施設を小鳥のオウム病対策を推進する施設として認証するなどの方法による対策の推進。
(3) 獣医師
小鳥の診療に当たる獣医師は、営業者の衛生管理体制の確立及び飼養者に対する小鳥の適正な飼養管理等に関する知識の普及啓発に協力する。
また、社団法人日本獣医師会は、対策に協力する獣医師の技術向上に資する研さんの場を設けるなど対策推進のための技術的援助に努める。
3.実施体系
関係者は、それぞれの役割を自覚し、営業者の自助努力を中心とした体系のもとに有機的な連携を持って対策の実施に当たる。
別紙1
衛生管理要領
第1.施設の構造及び設備
1.小鳥の生産に係る施設の周囲の環境は、採光、通風及び排水が良好であること。
2.施設は、採光、通風がよく十分な広さがあること。
3.施設には、飼養室及び飼料室があること。また、病鳥隔離室があることが望ましいこと。
4.飼養室、飼料室及び病鳥隔離室(以下「飼養施設」という。)は、野鳥等の侵入を防ぐ構造であること。
5.飼養施設の床、内壁、天井は清掃しやすい構造であること。
6.飼養施設の床は、コンクリート等の不浸透性材料で作られ、排水が良好であること。
7.施設には、衛生的な水を豊富に供給できる給水設備が設けられていること。
8.施設には、使用に便利な位置に流水式手洗設備が設けられていること。
9.施設には、洗浄・消毒に必要な器具等を備えた洗浄・消毒設備が設けられていること。
10.施設には、専用の密閉できる廃棄物容器が設けられていること。
11.小鳥を飼養するためのケージ等の器具(以下「飼養器具」という。)は、洗浄、消毒しやすい構造であること。
第2.施設及び設備の衛生管理
1.施設及びその周辺は、常に清潔に保持し、必要に応じて補修すること。
2.ねずみ、昆虫等の侵入を防止するとともに、必要に応じて駆除すること。
3.排水溝等は、排水がよく行われるように、定期的に清掃すること。
4.飼養器具は、常に清潔に保持し、必要に応じて消毒すること。
5.手洗設備には、消毒液等を設け、常に使用できるようにしておくこと。
6.廃棄物は、焼却するなど適正に処理すること。
7.清掃用器材は、専用の場所に保管すること。
8.小鳥を販売する施設の展示場所以外の飼養施設には、みだりに関係者以外を立ち入らせないこと。
第3.小鳥の飼養管理
1.小鳥の生態に応じた良好な飼養環境の保持に努めること。
2.適正な給餌・給水を行うこと。
3.常に小鳥の健康状態の観察を行い、異常な小鳥を認めた場合は、隔離し、獣医師の指示を受けて必要な措置を講じること。
4.小鳥を新たに仕入れた場合は、仕入先ごとにそれぞれ他の小鳥と別にして一定期間健康状態を観察し、異常の有無を確認すること。
5.小鳥を輸送する場合は、輸送の状況を考慮し、適正な輸送容器を使用して小鳥の健康保持に努めること。
6.輸入時の取扱い
(1) 小鳥の生産国及び輸出国における衛生管理状況等を把握し、健康な小鳥を輸入するよう努めること。
(2) 生産地等が明らかでなく衛生管理状況等が不明のものについては、隔離し、一定期間健康状態を観察し、異常の有無を確認すること。
(3) 常に小鳥の健康状態の観察を行い、異常な小鳥を認めた場合は、隔離し、獣医師の指示を受けて必要な措置を講じること。
第4.営業者及び従事者
1.営業者
(1) 白ら小鳥衛生管理責任者となり、又は小鳥衛生管理責任者を選任し、都道府県等の指導のもとに、施設・設備の衛生管理及び小鳥の飼養管理を適正に行うこと。
(2) 小鳥の適正な飼養管理等に関する講習を受講するなど衛生知識の向上に努めること。
(3) 従事者の衛生教育に努めること。
(4) 従事者の健康状態に留意して作業に従事させ、異常があれば、医師の診断を受けさせること。
2.従事者
(1) 常に健康な状態で作業に従事すること。
(2) 手指を清潔に保ち、少なくとも作業開始前、終了後及び病鳥等の取扱い時には、その都度、手指の洗浄・消毒を行うこと。
(3) 作業中、専用の作業衣及び履物を着用すること。
別紙2
飼養者の留意すべき事項
1.小鳥を購入した場合は、少なくとも2週間は他の小鳥との接触を避けて、健康状態を観察する。
2.適正な給餌・給水を行う。
3.ケージ等の飼養器具は、定期的に洗浄及び消毒を行う。
4.汚物等の処理は、焼却するなど適正に行う。
5.口移しによる給餌など濃厚な接触は避ける。
6.日頃から小鳥の状態を観察し、異常を認めた場合は、獣医師に相談する。
7.飼養者白身及びその家族の健康状態に留意し、異常があれば医師の診断を受ける。
衛生管理要領【解説】
第1.施設の構造及び設備
施設とは、小鳥の生産、輸入時の一時保管及び販売(卸売及び小売)時の保管又は展示を行う場所をいう。
1.小鳥の生産に係る施設の周囲の環境は、採光、通風及び排水が良好であること。
小鳥の生産に係る施設は、小鳥の繁殖・育雛の場であり、これをとりまく環境は、常に良好なものでなければならない。小鳥の健康状態を維持するためには、日当たり、風通しのほか、施設の乾燥保持のため周囲の地面の水はけのよさなどが必要であり、生産施設の立地条件として重要である。
2.施設は、採光、通風がよく十分な広さがあること。
施設は、内部の明るさ、風通し及び広さについて、飼養する小鳥の種類、羽数、作業の効率等を勘案した構造とすること。
3.施設には飼養室及び飼料室があること。また病鳥隔離室があることが望ましいこと。
ア) 施設には、衛生保持の観点から、飼養室及び飼料室を設けること。これらのほか、病鳥専用の隔離室を設けることが望ましい。
イ) 生産、輸入及び卸売販売に係る施設の飼養室は、病鳥発生時の汚染の拡大防止のため、飼養する小鳥の種類ごと及び一定の羽数等ごとに間仕切り、区画等を設けることが望ましい。
ウ) 国内生産鳥と輸入鳥の両方を取り扱う卸売販売に係る施設の飼養室には、国内生産鳥と輸入鳥それぞれ専用の保管室を設けることが望ましい。
4.飼養室、飼料室及び病鳥隔離室(以下「飼養施設」という。)は、野鳥等の侵入を防ぐ構造であること。
カラス、ドバト等の野鳥は、外部からオウム病の病原体を持ち込むおそれがあることから、それらの飼養施設内への侵入を防止し、また、ねずみ、昆虫等の侵入による飼養施設内の汚染を防止するため、飼養施設の窓等の開口部には、金網や網戸を取りつけるほか、出入口は、自動的に閉まる構造とするなどの措置を講ずること。
5.飼養施設の床、内壁、天井は、清掃しやすい構造であること。
飼養施設の床、内壁、天井は、平滑で、ほこりの集積を防ぎ、清掃しやすい構造であること。
6.飼養施設の床は、コンクリート等の不浸透性材料で作られ、排水が良好であること。
ア) 床は、病原菌等の汚染源となるほこりの集積やたまり水を防止するため、表面に凹凸が生じにくいものがよく、コンクリート、モルタル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の不浸透性材料を使用すること。
イ) 床は、水はけをよくするため、適当な勾配を設けるなどの措置を講ずること。
7.施設には、衛生的な水を豊富に供給できる給水設備が設けられていること。
施設・設備、器具等の洗浄、従事者の手洗い、小鳥の給水等のために、水道水等の衛生的な水を使用し、これを十分に供給できる設備が設けられていること。
8.施設には、使用に便利な位置に流水式手洗設備が設けられていること。
手洗設備は、従事者が手洗いする際、利用しやすい位置(飼養施設の出入口付近等)に設けること。受水槽は、手洗いがしやすく、手洗水が飛散することによって周囲が汚染されることがないよう、十分な大きさ(幅60cm、奥行50cm程度が望ましい。)であること。
9.施設には洗浄・消毒に必要な器具等を備えた洗浄・消毒設備が設けられていること。
ア) 洗浄設備は、ケージ、餌入れ、水入れ等の洗浄に必要な給水栓、洗浄用具等を設け、洗浄剤を備えること。
イ) 消毒設備は、少なくとも病鳥の収容ケージの浸漬が可能な容積を持つ消毒槽及び施設全体の消毒に必要な噴霧消毒器等を設けることが望ましく、消毒用途に応じた薬剤を備えること。
ウ) 生産に係る施設の飼養施設には、外部からの汚染を防止するため、出入口に踏込み消毒槽を設置することが望ましい。
10.施設には、専用の密閉できる廃棄物容器が設けられていること。
廃棄物容器は、洗浄、消毒しやすい構造のものが望ましく、有蓋で大きめの専用の密閉できる合成樹脂製容器等が適当である。
11.小鳥を飼養するためのケージ等の器具(以下「飼養器具」という。)は、洗浄、消毒しやすい構造であること。
ア) 飼養器具は、耐久性、耐水性、乾燥の容易さなどを考慮して選び、大きさは、飼養する小鳥の種類、活動習性等に適したものであること。
イ) 病鳥発生時の消毒等が容易に行えるようケージを1個1個取り出すことのできる配列などを考慮することが望ましい。
第2.施設及び設備の衛生管理
1.施設及びその周辺は、常に清潔に保持し、必要に応じて補修すること。
ア) 施設及びその周辺は、1日1回以上清掃するなど、常に清潔に保持し、必要に応じて消毒を実施すること。
イ) 施設の破損状況等を随時点検し、必要に応じて補修すること。
2.ねずみ、昆虫等の侵入を防止するとともに、必要に応じて駆除すること。
施設の出入口は、開放しないよう留意するなどねずみ、昆虫等の侵入の防止に努め、施設内又はその周辺に、ねずみ、昆虫等の巣を発見した場合は、巣の撤去、焼却、殺虫剤の散布等を実施すること。
3.排水溝等は、排水がよく行われるように、定期的に清掃すること。
排水溝等は、病原菌等の汚染源となりやすいので、排水状況を常に点検し、排水がよどむことのないよう注意し、定期的に清掃するとともに、必要に応じて消毒を実施すること。
4.飼養器具は、常に清潔に保持し、必要に応じて消毒すること。
飼養器具は、定期的に洗浄・消毒するなど清潔に保持し、ケージ内の小鳥の入れ替え時及び病鳥発生時は、その都度、洗浄・消毒を徹底すること。
5.手洗設備には、消毒液等を設け、常に使用できるようにしておくこと。
手洗設備に、石けん、消毒液等が備えられていることを点検し、常に使用できるようにしておくこと。
6.廃棄物は、焼却するなど適正に処理すること。
ア) 廃棄物は、合成樹脂製の容器等に入れ周辺を汚染することのないよう留意し、焼却炉で焼却可能な場合はこれを実施し、実施できない場合は、袋等に密封して確実に廃棄すること。
イ) 病原菌等の汚染が疑われるものについては、消毒後に廃棄すること。
7.清掃用器材は、専用の場所に保管すること。
清掃用のブラシ、ホウキ等は、当該施設専用のものを所定のロッカー等に整理しておき、必要に応じて消毒を実施すること。
8.小鳥を販売する施設の展示場所以外の飼養施設には、みだりに関係者以外を立ち入らせないこと。
小鳥を小売する店舗の展示場所以外の保管・収容場所には、外部からの汚染を防止するため、関係者以外を立ち入らせないような措置を講ずること。
第3.小鳥の飼養管理
1.小鳥の生態に応じた良好な飼養環境の保持に努めること。
営業者は、飼養する小鳥の行動等の習性をよく理解して、飼養施設内の採光、換気、温度及び湿度管理に留意すること。
2.適正な給餌・給水を行うこと。
ア) 小鳥の種類、大きさ、活動等に見合った飼料を、1日1~2回決まった時間に与え、食べ残しや汚れた飼料は全部取り替えるようにすること。
イ) 給水は、飲水及び水浴びを考慮して、毎日、清潔な水を十分な量供給すること。
ウ) 飼料が昆虫やカビ等によって汚染されないよう、その品質管理に留意すること。
3.常に小鳥の健康状態の観察を行い、異常な小鳥を認めた場合は、隔離し、獣医師の指示を受けて必要な措置を講じること。
ア) 小鳥が、(1)体つきが良く、がっしりしている、(2)羽毛が清潔できれいである、(3)眼がぱっちりして、清潔で目脂がでていない、(4)鼻汁がない、(5)嘴や脚が大きくしっかりしている、(6)活発で動きが良い、(7)食欲があるなどの健康な状態(以下「健康な小鳥」という。)にあることの観察を常時行い、
イ) (1)さえずり、おしゃべり、水浴び等の行動が少なくなるか全く無くなる、(2)食欲や水の摂取量が減少し削痩する、(3)飛翔は低下し、活動性が乏しくなる、(4)羽毛を立て、肛門部、口、眼孔周囲が粘着性の滲出物で汚れる、(5)軟便、白色水様便、緑白色便、血の混じた便になる、(6)脚と翼が細かく震えたり、まひしたりするようになる、(7)衰弱し脱水症状を呈して死亡するなどの異常(以下「異常」という。)を認めた時は、
ウ) 速やかに病鳥隔離室等他の健康な小鳥と直接接触しない場所に移動(以下「隔離」という。)し、
エ) 異常の状況等を指定する獣医師に連絡し、必要に応じ小鳥の診断を受け、オウム病であることが明らかになった場合は、獣医師の指示を受けてり患鳥の排除、施設等の消毒などの必要な措置を講じること。
オ) 健康状態の観察に当たっては、確実な管理を行うため、小鳥の個体又は同一飼養条件の単位ごとに、年月日、小鳥の種類、羽数、異常の有無(異常の場合、その羽数、症状等)、異常時の措置等の事項について記録することが望ましい。
カ) 生産に係る営業者にあっては、同一ケージ内に飼養する小鳥を一単位として、また、輸入に係る営業者にあっては、輸入時の小鳥の種類別等を一単位として、健康状態の確実な観察を行い、健康な小鳥の出荷を徹底すること。
4.小鳥を新たに仕入れた場合は、仕入先ごとにそれぞれ他の小鳥と別にして一定期間健康状態を観察し、異常の有無を確認すること。
ア) 営業者は、小鳥を他の施設から仕入れる場合、健康な小鳥であっても輸送時のストレスによって、異常を呈することがあるので、仕入れ先ごとに、既に飼養している小鳥と直接接触しない場所において、一定期間、3のアで述べた健康状態の観察を行い、健康な小鳥であることを確認すること。異常を認めた場合は、3のウ、エで述べたことと同様の措置をとること。
イ) 生産に係る営業者にあっては、繁殖鳥として他の施設から小鳥を仕入れる場合は、当該鳥の仕入先での衛生管理状況を確認するなど、その健康状態に十分留意すること。
ウ) 国内生産鳥と輸入鳥の両方を取り扱う卸売販売に係る営業者にあっては、双方を区別して保管し、それぞれの健康状態の観察を行うこと。
5.小鳥を輸送する場合は、輸送の状況を考慮し、適正な輸送容器を使用して小鳥の健康保持に努めること。小鳥を輸送する場合は、輸送の距離、時間、季節等の輸送状況及び小鳥の種類、大きさ等を勘案して、適切な材質、大きさの輸送容器を使用して小鳥に与える輸送中のストレスを軽滅させ、健康状態を悪化させないよう留意すること。
6.輸入時の取扱い
(1) 小鳥の生産国及び輸出国における衛生管理状況等を把握し、健康な小鳥を輸入するよう努めること。輸入に係る営業者は、輸入前にできる限り生産国及び輸出国における衛生管理状況等を調査し、健康な小鳥を輸入するよう努めること。
(2) 生産地等が明らかでなく衛生管理状況が不明のものについては、隔離し、一定期間健康状態を観察し、異常の有無を確認すること。
生産地又は原産地における衛生管理状況が不明なものについては、当該鳥の健康状態が不明であることから、隔離し、一定期間健康状態を観察し、異常の有無を確認すること。異常を認めた場合は、次の(3)に示す措置を講じること。
(3) 常に小鳥の健康状態の観察を行い、異常な小鳥を認めた場合は、隔離し、獣医師の指示を受けて必要な措置を講じること。
輸入時についても、3で述べたことと同様の措置をとる必要があること。
第4.営業者及び従事者
1.営業者
(1) 自ら小鳥衛生管理責任者となり、又は小鳥衛生管理責任者を選任し、都道府県等の指導のもとに施設・設備の衛生管理及び小鳥の飼養管理を適正に行うこと。
営業者は、自ら小鳥衛生管理責任者となって、又は施設ごとに小鳥衛生管理責任者を選任して、第2及び第3に定められた事項の遵守に努め、都道府県、指定する獣医師等の指導のもとに施設・設備の衛生管理及び小鳥の飼養管理を適正に行い衛生管理の向上を図ること。
(2) 小鳥の適正な飼養管理等に関する講習を受講するなど衛生知識の向上に努めること。
営業者は、都道府県又は営業者の組織する団体が実施する小鳥の適正な飼養管理等に関する講習会に積極的に参加するなど衛生知識の向上に努めること。
(3) 従事者の衛生教育に努めること。
従事者の衛生知識の向上を図るため、次項2従事者に示す事項を中心に、営業者は、従事者の衛生教育に努めること。
(4) 従事者の健康状態に留意して作業に従事させ、異常があれば、医師の診断を受けさせること。
営業者は、従事者に定期的に健康診断を受けさせ、また、毎日の作業開始前に健康状態を申告させるなどの健康管理を実施すること。
2.従事者
(1) 常に健康な状態で作業に従事すること。
ア) 従事者は、定期的に健康診断を受けるなど自己の健康状態を把握して、常に健康な状態で作業に従事し、発熱、咳等風邪様の症状がある場合は、作業に従事しないようにすること。
イ) 発熱、咳等風邪様の症状がある場合は、医師の診断を受け、その際、小鳥の取扱い作業に従事している旨を医師に述べること。
(2) 手指を清潔に保ち、少なくとも作業開始前、終了後及び病鳥等の取扱い時には、その都度、手指の洗浄・消毒を行うこと。
従事者は、爪を短く切るなど手指を清潔に保ち、作業開始前、終了後及び病鳥の取扱い時には、必ず手指の洗浄及び消毒を行うこと。
(3) 作業中、専用の作業衣及び履物を着用すること。
従事者は、専用の清潔な作業衣及び履物を着用して作業に従事し、必要に応じて帽子、マスク等を着用すること。作業衣等は専用のロッカー等に保管し、汚れに応じて、また、定期的に洗濯を行うこと。
飼養者の留意すべき事項【解説】
1.小鳥を購入した場合は、少なくとも2週間は他の小鳥との接触を避けて、健康状態を観察する。
小鳥が販売店など営業者の手を離れて飼養者の手に渡ることは、小鳥にとって環境が大きく変わり、体力的、精神的に大きな負担となるので、見た目では健康でも環境に慣れるまで、既に飼っている小鳥がいる場合は、それらと同じケージに入れたり、ケージを隣り合わせにするようなことは避けて、健康状態を観察することが大切です。
2.適正な給餌・給水を行う。
ア) 小鳥は、他の動物と異なり、常に餌を食べられるようにしておくことが必要ですので、小鳥の種類、体の大きさに見合った飼料を1日1~2回決まった時間に与えるようにします。
イ) 小鳥がいつでも清潔な水を飲めるように十分な量を備えるようにします。また、小鳥の種類によっては、水浴び用の水も必要です。
3.ケージ等の飼養器具は、定期的に洗浄及び消毒を行う。
ケージ、餌入れ、水入れ等の飼養器具を常に清潔に保持することは、小鳥の病気を防ぐうえで大切です。餌入れ、水入れは、複数用意し、給餌、給水の都度十分に洗浄することが大切です。ケージも定期的に清掃し、特に汚物受皿等は、必要に応じて熱湯等で消毒するようにします。
4.汚物等の処理は、焼却するなど適正に行う。
糞やその他の汚物の処理は、ケージの底に紙等を敷いておき、これを毎日取り替えるようにします。その際には、風向きに注意し、霧吹で湿らせるなどして、ほこり等を吸わないようにします。汚物等は、焼却することが望ましいのですが、焼却ができない場合にはビニール袋等に入れ、輪ゴムで封をするなどして周辺を汚染することのないようにして廃棄することが必要です。
5.口移しによる給餌など濃厚な接触は、避ける。
オウム病は、通常、病鳥や保菌鳥の分泌物や排泄物に含まれる病原体を吸入することによって、人に感染しますが、餌の口移しや咬傷などによっても感染すると言われており、このような場合は、病原体が多量に人の体内に侵入して、症状を重くすることもあるので、小鳥との接触は、節度を保つことが重要です。
6.日頃から小鳥の状態を観察し、異常を認めた場合は、獣医師に相談する。
小鳥の病気は、オウム病以外にも数多くあり、同じような症状をあらわすことが多くあります。次のような異常を認めたら、病気の疑いがあるので早めに獣医師に相談するようにします。
<健康な状態にある小鳥>
(1) 体つきが良く、がっしりしている
(2) 活発で動きが良い
(3) 食欲がある
(4) 羽毛が清潔できれいである
(5) 眼がぱっちりしていて、清潔でめやにがでていない
(6) 鼻汁がない
(7) 嘴や脚が大きくしっかりしている
<異常な状態にある小鳥>
(1) さえずり、おしゃべり、水浴び等の行動が少なくなるか全くなくなる
(2) 食欲や水の摂取量が減少し痩せてくる
(3) 飛びはねるなどの活動性が乏しくなる
(4) 羽毛を立て、肛門部、口、眼孔周囲が粘着性の滲出物で汚れる
(5) 軟便、白色水様便、緑白色便、血の混じた便になる
(6) 脚と翼が細かく震えたり、まひしたりするようになる
(7) 衰弱し、脱水症状を呈する
7.飼養者白身及びその家族の健康状態に留意し、異常があれば医師の診断を受ける。
飼養者白身及びその家族が風邪又はインフルエンザ様の症状を呈したときは、オウム病に感染した可能性もあるので、医師の診断を受けることが大切です。
その際には、医師に対し小鳥を飼育していること及びその小鳥の異常の有無などを話すようにします。
消毒方法について
「衛生管理要領」では、日常の衛生管理における施設・設備、手指等の必要に応じた消毒の実施が述べられている。また、病鳥発生時には、獣医師の指示に従って、汚染拡大、再発防止等の目的で消毒を徹底しなければならない。
消毒薬の使用に当たっては、次に示す「消毒薬使用時の一般的な注意事項」に留意し、「消毒目的物別消毒方法の例」を参考として行うこととする。なお、状況によっては、消毒薬等による消毒のほか、焼却又は埋却についてその実施を考慮しなければならない場合もある。
1.消毒薬使用時の一般的な注意事項
(1) 使用説明書に定められた使用濃度を守る。
(2) 消毒目的物に付着した有機物(糞尿、敷料、飼料、羽毛等)を完全に排除する。
(3) 薬液の散布量は、目的物を十分に濡らす量を用いないと効果が不十分になる。
(4) 薬液中での浸潰は、目的物が一定時間浸漬されなければ効果はない。
(5) 消毒薬には、アルカリ性で効力の強くなるもの(両性石けんの一部、逆性石けん)と酸性でないと効力が発揮できないもの(ヨード剤、サラシ粉、次亜塩素酸ソーダ)とその中間的なもの(両性石けんの一部、クレゾール石けん液、オルソ剤)がある。
(6) 一般に、温度が高くなると消毒力は強くなり、低いと弱くなる。
(7) 消毒薬は、他剤と混合しないことを原則とする。
(8) 薬剤を溶解する水の鉄分や石灰分が多い(硬水)と、溶解性を妨げて効力を低下させる。クレゾール石けん液、オルソ剤、逆性石けん、両性石けん等は影響を受けやすい。
2.消毒目的物別消毒方法の例
(1) 施設・設備
次亜塩素酸ソーダ(100~200ppm)、逆性石けん液(0.1~0.5%)、両性石けん液(0.1~0.2%)、クレゾール石けん液(2.0~3.0%)等を使用し、散布量は、3.3m2当たり約3mlを基準として、十分散布又は洗浄し、1時間以上経過した後、水で洗浄する。
(2) 施設周辺の土壌
5%サラシ粉水溶液又は石灰乳(生石灰1に対し、水9を徐々に加え乳状にしたもの)を十分な量散布する。
(3) 汚物、排水溝、湿潤な土壌等
消石灰又はサラシ粉を消毒目的物に十分な量散布する。
(4) 飼養器具
ア) 沸騰水中で15分以上煮沸する。
イ) 次亜塩素酸ソーダ(100~200ppm)、逆性石けん液(0.1~0.5%)、両性石けん液(0.1~0.2%)、クレゾール石けん液(2.0~3.0%)、ヨード剤(ヨードホール)等を使用して、十分浸漬又は洗浄し、その後水で洗浄する。
(5) 皮膚、手指
皮膚、手指の汚れを十分洗い落とした後、逆性石けん液(0.1~0.5%)、両性石けん液(0.1~0.2%)、クレゾール石けん液(2.0~3.0%)、消毒用エタノール(エタノール70~75%水溶液)、イソプロパノール(50%水溶液)、ヨード剤(ヨードホール)等を使用して、十分浸漬し、水で洗浄する。
薬液は、原則として毎日取り替える。
(6) 作業服
ア) 沸騰水中で15分以上煮沸する。
イ) 両性石けん液(0.1~0.2%)、クレゾール石けん液(2.0~3.0%)等に3時間程度浸漬した後、洗濯をし、日光等で乾燥させる。
(7) 履物
踏込み式の消毒槽には、クレゾール石けん液(2.0~3.0%)、オルソ剤(0.5~1.0%)等を使用するが、大部分の消毒薬は、泥などの混入や直射日光によってその効力を失うので、汚れに応じた薬液の交換、消毒槽の設置場所の配慮などが必要である。
オウム病について
1.病原体
オウム病の病原体は、細菌とウイルスの中間の性状を有する微生物で、リケッチアに近縁のクラミジアに属するChlamydiapsittaciである。
2.感染経路
オウム病は、元来オウム・インコ類の疾病であるが、鳥類に幅広い感染性を示し、多種の鳥類から病原体が分離されている。鳥類間の伝播は、接触、吸入、経口による水平感染である。
人への感染源として最も重要なものは、オウム・インコ類であり、次いでブンチョウ、ジュウシマツ、カナリアなどである。小鳥から人への伝播は、病鳥又は保菌鳥の分泌物や排泄物に含まれる病原体の吸入による経気道感染が最も多い。また、餌の口移しにより経口的に、咬傷等により経皮的に感染する場合もある。
3.症状等
(1) 小鳥のオウム病は、敗血症を特徴とする全身性の疾患で、オウム・インコ類における感受性は、一般に育雛中の幼若鳥に高く、日齢の進んだ鳥では極めて軽い症状で回復するか、全く症状を示さない不顕性感染で終わる場合が多い。潜伏期は、1から数週間とさまざまであるが、その一般的な症状は、次のとおりである。小型のインコ類では一部の症状のみ呈する場合が多い。ブンチョウ、ジュウシマツ、カナリアなどは、自然の保菌鳥ではないので、感受性が高く、潜伏期も3~10日と短く、比較的急性の致死的経過をとることが多い。
ア) さえずり、おしゃべり、水浴びなどの行動が少なくなるか全くなくなる。
イ) 食欲や水の摂取量が減少し、削痩する。
ウ) 飛翔は低下し、活動性が悪くなる。
エ) 羽毛を立て、肛門部、口、眼孔の周囲は、粘着性の滲出物で汚れる。
オ) 糞便の性状が軟便、白色水様便、緑白色便、血様便にたる。
カ) まれに脚と翼の振せんとまひがある。
キ) 衰弱し、脱水で死亡する。
(2) 不顕性感染鳥の発症は、飼養環境の不良による細菌、ウイルス、真菌、原虫等の混合感染、急激な飼養環境条件の変化、輸送、密飼いなどのストレス、栄養不良などの代謝性疾患、宿主防御機構の障害等によって起こる。
(3) 人の症状は、軽症のカゼ程度から重症の全身感染まで多様な症状を示すが、肺炎が主で、異形肺炎像を示すのが定型的である。重症の場合、高熱、悪寒、倦怠感、筋肉痛、頭痛などの敗血症様症状を示す。
4.治療方法
オウム病の治療には、テトラサイクリン系薬剤が著効を示す。